奥歯の重要性
奥歯の抜歯後のインプラント治療のメリット・デメリットをみていく前に、奥歯の役割を確認しておきましょう。
歯のなかでも噛む力が非常に強い奥歯には、食べ物を噛み砕いたり、すりつぶしたりする役割があります。
また、歯の噛み合わせにも大きな影響があるので、失ってしまうと噛み合わせのバランスが崩れます。
このように、奥歯がなくなると、食べ物がうまく噛めなくなるうえに、歯全体に負荷がかかるので、健康な歯の寿命を縮めてしまうかもしれません。
奥歯のインプラント治療の特徴
奥歯のインプラント治療には、ほかの歯と比べると難易度が高いという特徴があります。
ここからは、その理由を上顎と下顎で分けて説明します。
上顎の奥歯のインプラント治療
上顎の奥歯のインプラント治療は、口内でもっとも難しいと言っても過言ではありません。
理由は、「上顎には硬い骨が少ない」「上顎の奥に空洞がある」などの2つが挙げられます。
下顎と比較すると、上顎は硬い骨が薄いので、骨造成や骨移植といった骨の厚みを増やす手術が必要になる場合があります。
また、上顎の奥には「サイナス」とよばれる空洞があり、治療の際にはこの部分を避けてインプラントを埋め込まなければなりません。
治療を成功させるには高度な技術が必要なので、上顎の奥歯をインプラントにしたい場合は、実績や技術力に優れた歯科医師が在籍している歯科医院を選びましょう。
関連記事:【GBR法】インプラント治療の骨造成手術にかかる費用の相場はどのくらいですか?
下顎の奥歯のインプラント治療
下顎の奥の骨は、上顎よりも厚みがあるので、治療自体はそれほど難しくありません。
しかし、下顎の骨には、顔全体に関わる重要な神経が集まっていて、この神経を傷つけてしまうと、顔の麻痺やしびれなどの後遺症が出る可能性があります。
また、舌につながっている血管も通っているので、傷がつくと大出血を起こして、命に関わる事態になりかねません。
精密な検査と診断をもとに治療の計画を立ててもらえれば、後遺症などのトラブルの防止につながります。
奥歯をインプラントにするメリット
奥歯をインプラントにすると、どのようなメリットを享受できるのでしょうか。
主なメリットを、以下にまとめました。
奥歯をインプラントにするメリット
- 見た目や噛み心地が自然になる
- 言葉の発音が改善される
- 噛み合わせが整う
インプラント治療は、「入れ歯治療」や「ブリッジ治療」と比べると、審美性に優れています。
また、奥歯を抜歯すると、母音が「イ」の言葉がうまく発音できなくなりますが、インプラント治療を行えば、発音による会話のストレスを軽減できます。
奥歯をインプラントにするデメリット
奥歯を抜歯した際のインプラント治療には、メリットがある一方でデメリットもあります。
奥歯のインプラント治療を受けるデメリットは、以下のとおりです。
奥歯をインプラントにするデメリット
- 入れ歯治療やブリッジ治療と比較すると費用がかかる
- 治療が長期間になる
- 骨造成や骨移植が必要な場合がある
インプラント治療は、保険が適用されない自由診療なので、入れ歯治療やブリッジ治療と比較すると費用がかかります。
特に上顎の骨は薄いので、インプラント治療とは別途で、骨の厚みを増やす治療が必要な場合があります。
その場合は、治療費や治療期間がさらにかかってしまう点を留意しておきましょう。
奥歯のインプラント治療にかかる費用の相場
奥歯のインプラント治療にかかる費用の相場を、具体的にみていきます。
以下の表に、奥歯を1本抜歯した際の、治療の相談から治療完了までにかかる費用をまとめました。
インプラント治療にかかる費用の一例
治療の内容 | 費用の相場 |
診察・検査料 | 1万~5万円程度 |
人工歯の作成・装着費 | 5万~18万円程度 |
インプラント手術費 | 15万~35万円程度 |
合計 | 30万~40万円程度 |
インプラント治療は外科手術をともなううえに、基本的に全額自己負担なので、費用が高額になります。
ただし、紹介した例はあくまでも一例であり、患部の状態や人工歯の種類によっても費用は変わるので、治療を受ける際に歯科医師に相談しましょう。
また、インプラントは治療完了後も、歯科医院で定期的にメンテナンスを受ける必要があります。
患部や人工歯を守るためにも必要なので、治療後も費用がかかる点を覚えておいてください。
関連記事:インプラントを10本入れる際の費用を教えてください
奥歯のインプラント治療の流れ
ここからは、奥歯のインプラント治療の流れを紹介します。
手順①カウンセリング・診察
まずは、口内の状態を把握する必要があるので、カウンセリングや診察を行って、インプラント治療の計画を立てます。
診察では、口内の状態を調べたあと、患者様の健康状態や服用中の薬など、全身の状態を詳しく診ていきます。
カウンセリングや診療を受けて、不安な点や事前に確認しておきたい点がある場合は、歯科医師に質問し不安を解消しましょう。
手順②レントゲン撮影・CT撮影
次に、インプラント治療で欠かせない、レントゲン撮影やCT撮影を行います。
患者様によって顎の骨の状態は異なるので、患部および顎全体を立体的に撮影して、インプラント手術が可能かどうかを判断します。
特に、奥歯は目視では確認しにくく、抜歯後の骨の状態ならびにサイナスや神経、血管の位置などを、正しく把握する必要があるので重要な検査です。
もし、手術前にこれらの検査が行われない場合は、安全なインプラント治療を行う歯科医院とは言えないので、治療を続けずにほかの歯科医院を検討しましょう。
手順③術前治療
インプラント治療の前に、口内に虫歯や歯周病があるかどうかを確認して、必要であれば治療を行います。
患者様によっては、数回にわたって通院が必要なケースもあります。
インプラント治療を行う部分に問題がない場合であっても、切開をともなう外科手術なので、傷口に細菌が入り込み感染症を引き起こすおそれがあるからです。
口内に歯周病などが残っていると、患部にも感染するリスクが高まるので、必ず治療しなければなりません。
手順④インプラント体を埋入する手術(一次手術)
術前治療が完了したら、一次手術を行います。
まず、抜歯した患部の歯茎を切開して、顎の骨に穴を空け、「インプラント体(人工歯根)」を埋入します。
歯茎を縫合すると、一次手術は完了です。
一度歯茎を縫合するのは、埋入したインプラント体が、周囲の骨と結合するまで待つ必要があるからです。
なお、この一次手術の時点で、インプラント体と人工歯(被せ物)をつなぐためのアバットメント(土台)も同時に装着する、「1回法」という手術方法もあります。
しかし、この方法はできる条件が限られているので、奥歯の治療ではあまり行われません。
手順⑤アバットメントを取りつける手術(二次手術)
インプラント体が骨と結合したら、歯茎を再び切開してアバットメントを取りつけます。
この二次手術が完了すると、外科手術はすべて終了です。
手順⑥人工歯を取りつける治療
続いて、型を取って作成した人工歯を、アバットメントに取りつけると、見た目も自然な仕上がりになり、奥歯として天然歯と同様に機能します。
一般的に人工歯を取りつけるまでの期間は、3~6か月程度ですが、事前の治療が長引く場合や、骨の厚みを増やす治療が別途必要な場合は、1年程度かかるケースもあります。
手順⑦定期的な通院でのメンテナンス
治療完了後は、6~12か月程度に1回を目安に歯科医院でのメンテナンスを受けましょう。
インプラントは、正しく扱えば10年程度使用できます。
歯科医院でのメンテナンスにくわえて、毎日の歯磨きなどのセルフケアも行ってください。
奥歯のインプラント治療を受ける際の注意点
奥歯のインプラント治療を受けるときは、病気や薬の服用状況を、歯科医師に必ず伝えましょう。
外科手術の際に、合併症や偶発症を引き起こさないようにするためです。
また、たばこには、インプラント体と骨の結合を妨げる成分が含まれているので、喫煙も控えてください。
たばこは歯周病の原因にもなりやすいので、歯科医師と相談しながら、治療の前から計画的に禁煙を進める必要があります。
奥歯を抜歯してインプラントにする際はメリット・デメリットがあるのでよく考えて判断しましょう
いかがでしたでしょうか?
奥歯のインプラント治療のメリットは、審美性や機能性に優れる点です。
一方で、施術が難しく、治療費が高額になるというデメリットもあります。
奥歯のインプラント治療はほかの歯と比べると難易度が高いので、技術や実績が高い歯科医師がいる歯科医院を受診しましょう。
きぬた歯科では、患者様に安心していただけるインプラント治療を信条に、年間3,000本の治療実績を誇ります。
無料カウンセリングも実施しているので、奥歯のインプラント治療をご検討中の方は、ぜひお気軽にご相談ください。
この記事の監修者
日本歯科大学新潟生命歯学部を卒業後、インプラント治療に従事。現在では年間3000本以上のインプラント治療の実績がある。
日本でインプラント治療が黎明期だったころからパイオニアとして活躍し、インプラントメーカーのストローマン社やノーベルバイオケア社から公認インストラクターの資格を得た。
本の執筆やTV・雑誌などのメディア出演、自身のYouTubeチャンネルなどで情報発信を積極的に行っている。
<主な著書>
インプラント治療は史上最強のストローマンにしなさい!!
歯医者が受けたい!インプラント治療
あっそのインプラント、危険です!!
<YouTubeチャンネル>
八王子きぬた歯科
<外部サイト>
きぬた 泰和 Wikipedia