インプラント治療はなぜ自費診療なのか

インプラント治療は、患者様が治療費の全額を支払う自費診療に該当します。
インプラント治療をご検討中の方のなかには「なぜ自費診療扱いになってしまうのか」という疑問をお持ちの方もいらっしゃるのではないでしょうか。

保険治療では、「必要最低限の健康」を維持する治療しかできません。
もちろん、失った歯を補う目的で行うインプラント治療は、健康を維持するためのものです。
しかし審美性を追求する治療法の側面が強いため、保険適用の対象となる必要最低限の治療とは認められず、原則保険適用外の自費診療扱いになってしまいます。

インプラント治療で保険が適用されるケース

条件を満たしていれば、インプラント治療で保険が適用されるケースはあります。

保険が適用されるケースは、次の3つです。

インプラント治療が保険適用される条件

  • 病気や事故が原因で、顎の骨の大部分が欠損している
  • 先天性疾患で1/3以上の顎の骨が欠損している
  • 先天的にあごの骨が形成不全である

虫歯や歯周病など、一般的な病気が原因のインプラント治療は当てはまりません。

さらに保険適用の条件には、次の条件をすべて満たしている歯科医院で治療を受けることも含まれています。

保険適用するための歯科医院の条件

  • 歯科もしくは歯科口腔外科の病院である
  • 歯科または歯科口腔外科で5年以上の経験を積んでいる、もしくはインプラント治療の経験が3年以上ある常勤医師が2名以上配置されている
  • 当直体制が整っている
  • 医療機器や医薬品を安全に使用できる環境である
  • 入院用ベッドが20床以上備わっている

インプラント治療の保険適用には、患者様の顎の骨の状態と、施術を受ける歯科医院に関する2種類の条件を満たす必要があります。

インプラント治療で保険が適用されないケース

インプラント治療で保険が適用されないケースは、虫歯や歯周病、加齢による歯の欠損の治療などです。
虫歯や歯周病の治療自体は保険が適用されますが、抜歯後の選択肢としてインプラントを選ぶと、咀嚼機能の向上が主な目的とみなされ、自費診療扱いになります。

また、歯を美しく見せることを目的とした治療も対象外です。

インプラント1本あたりの費用相場

インプラント治療の際に一番気になるのは、費用ですよね。

インプラント1本あたりの費用の相場は、上部構造(人工歯)と手術費を含めて、20万~40万円です。
ただし、埋入場所や、上部構造・インプラント体のメーカー、素材の違いによって大きく変わります。
たとえば、人に見られる機会の多い前歯は、特に審美性が求められるため、30万~40万円と相場が高い傾向があります。

上部構造の素材も、セラミックを選べば7万~15万円のところ、より強度と審美性が高いジルコニアにすると10万~20万円と高額です。

治療箇所や審美性の追求の度合いによって、費用は多岐にわたります。

インプラント治療が高額な理由

インプラント治療費が高額な理由は、以下のとおりです。

インプラント治療費が高い3つの理由

  1. 自費診療である
  2. インプラントの材料や設備にコストがかかる
  3. 優秀な歯科医師を雇うための人件費がかかる

まずは、先ほどお伝えしたように自費診療であることが関わっています。
インプラント治療は医療保険適用外のため、どうしても出費はかさみます。

次の理由は、インプラント自体や設備にお金がかかるからです。
丈夫で審美性の高い材質のインプラントを埋入すれば、そのぶん費用は高くなります。
さらに、インプラント治療には手術がともなうので、安全性に妥協できません。
手術前の検査に1台で数千万円する歯科用CTや、万が一の細菌感染を防ぐための無菌状態の手術室も必要です。
質の高いインプラントや最新設備を用意するぶん、治療費を高くせざるをえません。

また、優秀な歯科医師を集めるのにも、多くの人件費がかかっています。
安全な施術ができるような専門知識や豊富な経験をもっている人材を抱えているからこそ、治療費も高額なのです。

インプラント費用を分割で払えるデンタルローン

高額なインプラント治療費をまとめて工面するのが難しい場合は、デジタルローンの利用をおすすめします。

デンタルローンとは、金融機関に歯科治療にかかる費用を立て替えてもらい、分割で返済する仕組みのことです。
ほかのローンと同様に審査が必要で金利も上乗せされますが、クレジットカードなどの分割に比べ、金利が低いという利点があります。

デンタルローンの金利相場は、4~8%です。
クレジットカードの金利相場が12~15%のため、かなりの低金利といえます。

また、デジタルローンは、インプラント治療以外にも利用できます。
ただし、すべての歯科医院がデンタルローンを取り扱っているわけではないので、利用を希望する際は事前に確認しましょう。

デンタルローンについては「デンタルローンとは?インプラント治療の費用をローンで支払えるのは本当ですか?」をご覧ください。

インプラント治療費用を安くできる医療費控除

デンタルローンで分割払いができるのは非常に便利ですが、治療費自体を安くする方法を知りたい方もいらっしゃるでしょう。

医療費控除という制度を利用すれば、治療費の一部が返還されます。

医療費控除とは、自分または自分と家計を共にしている配偶者や親族のために支払った医療費が、1年間で一定額を超えた場合に、所得控除が受けられる制度のことです。
その年の1月1日から12月31日までに支払った医療費の総額が、次のうち、どちらかの条件に当てはまれば医療費控除を申請できます。

控除対象となる医療費の条件

  • 支払った金額が10万円以上である
  • 支払った金額が総所得金額の5%以上である

総所得金額が200万円以上の場合は、1年間にかかった医療費が10万円を超えると申請が可能です。
一方で、200万円未満であれば、総所得金額の5%以上の医療費を支払った時点で申請できます。

医療費控除で還付される金額の計算方法

医療費控除の申請で還付される金額は、簡単に計算できます。
まずは、以下の計算式で医療費控除額を計算してみましょう。

【1月1日から12月31日までに支払った医療費-保険金など補填された金額-10万円もしくは総所得金額の5%の金額=医療費控除額】

この計算式で算出された医療費控除額に所得税率をかけた数字が、還付される金額です。

なお、所得税率がわからないという方は、以下の表にまとめたので参考にしてみてください。

所得税率の一覧表

所得金額 所得税率
195万円以下 5%
195万円を超え330万円以下 10%
330万円を超え695万円以下 20%
695万円を超え900万円以下 23%
900万円を超え1,800万円以下 33%
1,800万円を超え4,000万円以下 40%
4,000万円超 45%

たとえば、1年で30万円の医療費を支払っていて、300万円の所得がある場合は【30万円-0円-10万円=20万円】で、20万円に10%をかけた2万円が戻ってきます。

医療費には通院にかかった交通費も含まれているので、控除の対象外だと思っても、ぜひ一度計算してみてください。

医療費控除を申請する方法

医療費控除は、翌年の確定申告の際に申請します。
必要な書類は、以下のとおりです。

医療費控除のために用意する書類

  • 確定申告書AもしくはB
  • 源泉徴収票
  • 医療費控除の明細書

会社員や公務員、アルバイトの方は確定申告書Aを、個人事業主の方は確定申告書Bを用意してください。
医療費保険者から発行される書類である医療費通知をお持ちの方は、明細書の記入の省略が可能です。

医療費控除の申請を忘れてしまった場合でも、過去5年分まではさかのぼって申請できます。

インプラントとは

インプラント治療は自費診療だが医療費控除を申請して還付金を受け取れる場合がある

今回は、インプラント治療が自費診療である理由や、治療費の負担を軽減させる方法などを詳しく解説しました。

インプラント治療は審美性が高いために、「必要最低限の健康」を維持する治療にはあたらないと判断されます。

自費診療であるゆえに、どうしても治療費は高額になってしまいますが、デンタルローンを利用すれば、支払いの負担を軽減できます。
また、医療費控除を申請すれば治療費の一部が戻ってくるので、計算してみてください。

きぬた歯科では、デンタルローンも受け付けています。
良心的な価格で安全なインプラント治療を提供しておりますので、ぜひ一度ご相談ください。

この記事の監修者

日本歯科大学新潟生命歯学部を卒業後、インプラント治療に従事。現在では年間3000本以上のインプラント治療の実績がある。

日本でインプラント治療が黎明期だったころからパイオニアとして活躍し、インプラントメーカーのストローマン社やノーベルバイオケア社から公認インストラクターの資格を得た。

本の執筆やTV・雑誌などのメディア出演、自身のYouTubeチャンネルなどで情報発信を積極的に行っている。

<主な著書>
インプラント治療は史上最強のストローマンにしなさい!!
歯医者が受けたい!インプラント治療
あっそのインプラント、危険です!!

<YouTubeチャンネル>
八王子きぬた歯科

<外部サイト>
きぬた 泰和 Wikipedia