そもそもインプラント治療とはなにか?
インプラント治療とは、歯を失ってしまった際に歯根から人工物に置き換えて、元の歯と遜色のない噛み心地や見た目が得られる治療方法です。
インプラントとは日本語で「埋め込む」「植え付ける」を意味する言葉です。歯科治療においては、インプラント体(人工歯根)を歯根の代わりに骨へ埋め込んで、その上に被せ物として上部構造(人工歯)を取り付ける治療方法を指します。
インプラント体はアバットメント(支台)と呼ばれる部品と接続し、アバットメントの上に人工歯である上部構造が取り付けられると、天然の歯のような見た目に仕上がります。
インプラント治療の概要については「インプラントとは?メリット・デメリットや他の治療との違い」をご覧ください。
インプラント治療でやらなきゃよかったと後悔するケースとは?
インプラント治療で「やらなきゃよかった」と後悔するケースは、おもに以下の6つです。
- 歯科医師の技術が低く治療に失敗した
- インプラントが脱落した
- 強い痛みが出て日常生活に影響がある
- 下顎の神経が麻痺した
- 上顎洞にインプラントが入り込んだ
- 費用が高くついて家計を圧迫した
インプラント治療で後悔しないためには、手術に伴うトラブルや日常生活への影響などを考慮しなければなりません。
実際にインプラント治療でどのようなトラブルや影響が生じるのか、1つずつ詳しく見ていきましょう。
歯科医師の技術が低く治療に失敗した
インプラント治療は手術をともなう治療のため、一定以上の経験や技術力が求められます。口腔外科に関する知識が必要であり、安全に配慮して治療を進めなくてはなりません。
インプラントの埋入を行う際、角度によっては上に被せる歯に傾きが出てしまい、出っ歯のように見える可能性があります。審美性の高い治療ではありますが、歯科医師の技術力が低いと見え方に違和感が出る可能性が考えられます。
インプラント治療を受ける際に起こりうる失敗例については「インプラント治療で失敗することはありますか?」をご覧ください。
インプラントが脱落した
インプラントを埋入しても、埋め込みや結合が十分ではないとぐらつきが発生することがあります。ものを噛むときには歯に強い力がかかるため、正しくインプラント体を埋め込んで強固に結合しなければ脱落のおそれがあります。
インプラント自体のトラブル以外では、「インプラント周囲炎」にも注意が必要です。歯周炎の一種であり、インプラントを埋め込んだ後に歯周病菌が増殖して炎症を起こすトラブルです。
インプラント周囲炎が悪化すると、歯茎が炎症を起こして歯槽骨が溶けてしまうため、埋め込んだ人工歯の動揺が起こり、脱落を引き起こす可能性があります。
強い痛みが出て日常生活に影響がある
埋め込んだ部分は時間をかけて治癒していくため、人によっては痛みが続く場合があります。しかし、治療後は鎮痛剤を使って痛みを軽減できるので、通常であれば強い痛みの心配はありません。
しかし、術後の経過が悪ければ痛みが発生するおそれがあります。装置に異常が起きて破損すると、その部分を中心に痛みが出ることもあるため、異常や違和感があればすぐに歯科医院を受診してください。
インプラント歯周炎は炎症が起きるトラブルのため、炎症が酷くなると腫れや痛み、出血が起こります。炎症が起きたときは放置せず、お口の中を衛生的に保ちましょう。
下顎の神経が麻痺した
インプラント治療のリスクとして、神経が損傷して麻痺する可能性が考えられます。神経麻痺が出現するケースはわずか数%(0.5%〜約4%程度)と低いものの、精密検査によって正しい位置に埋入場所を定める必要があります。
技術力が低い歯科医師や、精密検査の結果が正確に得られなかったときには、下顎の神経付近に穴を開けてしまい、神経が傷ついて麻痺が発生するおそれがあります。
上顎洞にインプラントが入り込んだ
上顎洞とは、上顎のさらに上部にあいている空洞です。上顎の骨にインプラントを埋め込む際、骨を突き抜けて上顎洞までインプラントが入り込んでしまうことがあります。
インプラント治療は上顎から上顎洞までの距離が10mmあいていなければ実施できませんが、10mmが確保できていても埋め込み位置が重要です。
上顎洞にインプラントが入り込んでいると上顎洞炎と呼ばれる炎症が起きるため、上顎へのインプラント治療については、埋め込み後の経過にも注意しなければなりません。
費用が高くついて家計を圧迫した
インプラント治療は自費診療のため、埋め込みの本数が多いと費用がかさんでしまいます。1本のみの埋入でも、骨造成や骨移植治療が含まれるとさらに高額になります。
インプラント治療は安全が最優先になりますが、費用がかさんで家計を圧迫すると治療後の後悔に繋がる可能性があります。
インプラント治療で後悔しないためのポイント
インプラント治療で後悔しないためのポイントは、おもに以下の4つです。
- インプラント治療の実績に優れる歯科医院を選ぶ
- 費用だけで決めない
- 普段のメンテナンスを入念に行う
- 情報収集を入念に行う
単に費用が安いという理由だけで歯科医院を選ぶと、技術力が伴わずインプラント治療に失敗する可能性があります。
インプラント治療で後悔しないためには、治療内容や自身の口腔状態を詳しくチェックしなければなりません。注意すべきポイントを詳しく見ていきましょう。
インプラント治療の実績に優れる歯科医院を選ぶ
外科手術をともなうインプラント治療では、安全第一に配慮する必要があります。執刀医の技術力とインプラント治療の件数が豊富な歯科医院を選びましょう。
一例として、インプラント治療のみに特化したクリニックは治療実績が豊富です。医師が口腔外科の経験を豊富にもっているようなクリニックも、インプラント治療の選択肢に入れられる可能性があります。
費用だけで決めない
自費診療では少しでも安い病院を選びたいものです。しかし、インプラント治療は外科手術を1回以上実施しなければならないため、費用だけをみて病院を決めるのはおすすめできません。
格安インプラントは認可されていない材料を使っていたり、医師の技術力が十分ではなかったりするリスクがあります。治療後に後悔しないためにも、費用だけをみて決めてしまわないように注意が必要です。
普段のメンテナンスを入念に行う
お口の中は、普段から清潔に保ちましょう。食べかすを残したままにしていると、歯周病菌や虫歯菌が増殖してトラブルの元になってしまいます。
特に、インプラントを埋め込んだ部分は歯茎まわりを中心にケアしましょう。しっかりとブラッシングして、歯ブラシだけで除去できない汚れは歯間ブラシやフロスを使ってください。
自宅でのメンテナンスに加えて、インプラント治療を実施したクリニックでの定期検診も忘れずに行いましょう。お口の中全体の確認とあわせて、インプラントを埋め込んだ箇所の周りに歯垢や炎症が発生していないかを確認しましょう。
情報収集を入念に行う
インプラント治療を受ける前に、治療方法や病院についての情報収集を十分に行いましょう。
安全に配慮し、衛生環境を整えているかどうか・歯科医師に口腔外科医としての治療実績や技術力が備わっているかといった部分を中心に、複数のクリニックや病院を比較してみてください。
また、インプラント治療は顎の骨の状態や量が重要になるため、治療に適しているかどうかは精密検査を受ける必要があります。画像診断によって適性を把握することも大切です。
仮に骨量が少なければ骨造成が必要になり、費用が高額になるリスクが発生します。治療期間が長くなるおそれもあるため、費用以外の部分もよく調べたうえで、納得したうえで治療を受けてください。
関連記事:「インプラントは絶対だめ」と言われる理由は何ですか?
インプラント治療を受けるメリット
自分の歯と同じ感覚で咀嚼できる
インプラント体は歯槽骨と呼ばれる骨に埋め込まれ、その後自身の骨と結合して体の一部となります。インプラント体に繋がるアバットメント・上部構造も同様に、強固な歯根に支えられて歯を形成します。
根元部分からしっかりと作り込まれるため、入れ歯のように脱着するおそれがなく、またブリッジ治療のように支えられているだけの歯が存在せず、ものを噛む際のぐらつき・不安定さがありません。
健康な歯に影響を与えない
ブリッジ治療では、健康な隣り合う2つの歯が必要になります。失われた歯を支えるために健康な歯を削って、その中間に人工歯を取り付けなくてはなりません。
人工歯が入るという点ではインプラントと同じですが、虫歯になっていなくても歯を削る必要があります。できるかぎり自分の歯を残したいと考えている場合には適していない治療です。
一方、インプラント治療は歯が失われた箇所のみを治療します。隣り合う歯の有無や強度に関わらず、健康な歯に一切影響を与えずに人工歯を取り付けられます。
審美性が高い
入れ歯は突然外れるリスクがあり、ブリッジは装着状況や歯のトラブルの発生時に大きく審美性が下がるおそれがあります。
インプラント治療の場合は脱着の心配がない治療です。埋め込んだ後は時間をかけて骨と結合させるため、骨との結合が行われないうちに上部構造を被せるということはありません。
ブリッジのようにズレてしまったり、虫歯によって黒ずみが見えてきたりといった可能性も少ないため、外から見て違和感のない仕上がりが期待できるでしょう。
発音がクリアになる
インプラント治療で噛む力や発音に必要な舌の力が回復し、発音がクリアになります。
入れ歯だと口の中に違和感が生じたり、発音時に動くため言葉がこもりがちです。一方、インプラントはしっかりと固定されるため、違和感なく発音できます。
また歯並びも改善されるため、歯の隙間や出っ張りといった、発音に影響を与える要素も改善します。
もし入れ歯や出っ張りなどが原因で発音に違和感を覚える方は、歯科医に相談しインプラント治療を検討してみましょう。
耐久性が高い
インプラントはチタンやジルコニアなどの強度の高い素材で作られるため、耐久性が高いのが特徴です。生体適合性に優れ骨とも結合しやすいため長期間、機能を維持できます。
またインプラントは「オッセオインテグレーション」と呼ばれる、顎の骨と直接結合する治療法です。自分の歯のように強固に固定され、耐久性を高めているのです。
なおインプラント治療はCTなどの診断機器を用い、精密な計画のもと実施されます。歯科医師の高度な技術力のもと、最適な位置にインプラントを埋め込みます。
素材の耐久性と手術方法、そして歯科医師の高度な技術力が合わさるため、インプラントは高い耐久性を誇り長期間使用できるのです。
インプラント治療を受けるデメリットや注意点
インプラント治療を受けるデメリットや注意点は、おもに以下の5つです。
- 高額な治療費がかかる
- 治療期間が長い
- 手術が必要になる
- 持病により受けられないケースがある
- インプラント歯周炎のリスクがある
インプラント治療は、すべての患者に対し有効な手術ではありません。デメリットや注意点を解説しますので、参考にしたうえで検討しましょう。
高額な治療費がかかる
インプラント治療は自由診療のため、保険の適用外です。そのため、基本的に治療費は全額自己負担となります。
治療費は歯科医院の設備や医師のスキルにより変動しますが、最低でも1本30万円以上はかかります。複数の箇所を治療するほど、高額な治療費がかかる点には注意しましょう。
ただしインプラント手術が見た目の美しさや歯列矯正といった美容目的でない場合は、医療費控除が使えます。
最高で200万円まで控除でき、過去5年間をさかのぼって申請もできます。医療費控除に該当するケースや計算方法などは、下記の記事をご参照ください。
関連記事:インプラントの治療に使える「医療費控除」とは何ですか?
治療期間が長い
インプラント治療は、手術を終えた時点で完了する訳ではありません。インプラントが顎の骨と結合するまで、数ヶ月から半年はかかります。
また手術前も型取りや仮歯の作成など、複数のステップを踏まなければなりません。手術前の段取りから手術後の結合期間を含むため、必然的に治療期間も長くなるのです。
なお患者の骨の状態や治療が必要な歯の数、全身疾患の有無などにより治療期間は異なります。治療の流れとトータルの治療期間は、下記のページをご確認ください。
関連記事:インプラント治療の流れとトータルでかかる期間について
手術が必要になる
インプラント治療は、入れ歯のように簡単に対応できるものではありません。治療には手術が必要となり、個人差はありますが患部が腫れるケースもあります。
ただし腫れは数日でピークを迎え、徐々に引いていきます。また痛み止めを服用すれば、ある程度は痛みを緩和できるでしょう。
インプラントに限らず、外科手術には腫れや出血といったリスクが伴います。とはいえ医療技術の進歩により大幅に軽減されているため、さほど気にする必要はないでしょう。
持病により受けられないケースがある
インプラント手術は外科手術であるため、持病がある場合は受けられないケースがあります。たとえば糖尿病や骨粗鬆症、心臓病や高血圧などの持病です。
出血のリスクを高めたり感染を起こしやすい疾患を持っている場合は、手術の合併症のリスクが高まるため手術を受けられない可能性があります。
また血液を固まりにくくする薬を服用している場合も、手術中の出血が止まらない可能性があり注意が必要です。
持病がある場合は事前に医師と相談し、リスクを考慮したうえで手術するか検討しましょう。
インプラント周囲炎のリスクがある
インプラント周囲炎とは、インプラントを支えている骨の周りに炎症が起こるトラブルです。歯周病と似たような状態になり、放置するとインプラントが抜け落ちる恐れがあります。
歯垢や歯石が溜まり口腔内の衛生環境が悪化し、細菌が繁殖するためリスクが高まります。糖尿病などの全身疾患による免疫力の低下も、要因の1つです。
インプラント歯周炎を予防するためには、日頃の歯磨きや定期的な歯科検診が重要になります。なお、きぬた歯科ではインプラント治療を受けた方の定期健診は無料です。
インプラント治療でよくある質問
インプラント治療でよくある質問を、3つ紹介します。
- インプラント治療で失敗する確率はどれくらいですか?
- インプラント治療をしない方がよい人はいますか?
- インプラントが臭いのはなぜですか?
いずれもインプラント治療を受けるうえで、把握しておきたい内容です。インプラント治療を検討している方は、ぜひ参考にしてみてください。
インプラント治療で失敗する確率はどれくらいですか?
インプラント治療の成功率は非常に高く、90%以上と言われています。失敗する可能性がまったくない訳ではありませんが、比較的安心して受けられる手術と言えるでしょう。
なお当院きぬた歯科の成功率は98〜100%で、下顎の成功率は100%です。また、上顎の成功率も98%と高い水準を維持しています。
万が一インプラントが脱落した場合も10年保証があり、無償で再度埋入できます。
インプラント治療をしない方がよい人はいますか?
当院きぬた歯科では、骨粗しょう症の方でビスフォスフォネート製剤(以下ビスフォス)を5年以上静脈注射されていた方は、インプラント治療をお受けできません。
なぜなら7年前にすでにビスフォスを停止していたにもかかわらず、インプラント治療の1年半後に骨ごと脱落したケースがあるためです。
そのためビスフォスを長期間静脈注射していた経歴がある方は、現在使用していなくてもインプラント治療をお断りしております。
インプラントが臭いのはなぜですか?
インプラントで口臭が発生する原因は、大きく分けて以下の2つです。
口臭が発生する原因 | 対処法 |
磨き残しによる細菌の繁殖 | 歯科医に相談のもと、日常的な歯磨きを改善する |
インプラント周囲炎による炎症 | 歯周病対策と同様に、日頃の口腔ケアを見直す |
いずれもインプラント自体が口臭の原因ではなく、口腔内の環境悪化による細菌の繁殖が原因です。
なおインプラント周囲炎とは、細菌感染によって歯ぐきが炎症を起こしている状態です。放置すると歯槽骨が破壊され、最悪の場合インプラントが抜け落ちます。
またインプラント周囲炎は天然歯の歯周炎と同様に、自覚症状が出にくい特徴があります。症状が進行する前に、定期的にメンテナンスを受けて予防しましょう。
情報収集と比較検討をしっかりと行う
今回はインプラント治療を受けて後悔する可能性と、後悔しないために押さえておきたいポイントを紹介しました。
自費診療であり外科手術を伴う治療のため、治療前からしっかりと内容や病院を調べる必要があります。治療実績が豊富で、患者さんの立場に立ってくれる歯科医院を選んでください。
事前にお口の中がインプラント治療に適しているかを検査し、その上で保証制度などを設けてトラブル対策を手厚く行ってくれるクリニックを探しましょう。
きぬた歯科では、25年の施術経験と年間3,000本を超える埋入実績があります。
幅広い症例に対応可能ですので、インプラント治療を検討されている方は、お気軽にお問い合わせください。
この記事の監修者
日本歯科大学新潟生命歯学部を卒業後、インプラント治療に従事。現在では年間3000本以上のインプラント治療の実績がある。
日本でインプラント治療が黎明期だったころからパイオニアとして活躍し、インプラントメーカーのストローマン社やノーベルバイオケア社から公認インストラクターの資格を得た。
本の執筆やTV・雑誌などのメディア出演、自身のYouTubeチャンネルなどで情報発信を積極的に行っている。
<主な著書>
インプラント治療は史上最強のストローマンにしなさい!!
歯医者が受けたい!インプラント治療
あっそのインプラント、危険です!!
<YouTubeチャンネル>
八王子きぬた歯科
<外部サイト>
きぬた 泰和 Wikipedia