オールオン4で起こりうる失敗や後悔
オールオン4は多くの患者にとって有効な治療法ですが、以下のリスクがあります。
- インプラント埋入に関する問題
- 血管や神経が傷ついた
- 噛み合わせや色など審美性の不満
- 発音の困難
- 鼻の下がくぼんで顔が変わったと感じる
- 予想外の高額費用や長期治療
これらを理解することで、よりよい治療結果を得られる可能性が高まります。
インプラント埋入に関する問題
インプラント埋入時の問題は、治療の成否を大きく左右する重要な要素です。とくにオールオン4では、4本のインプラントで上下の歯列全体を支えるため、1本でも埋入に失敗すると深刻な事態となります。
おもな問題として、インプラント体の初期固定が不十分な場合や、骨との結合(オッセオインテグレーション)が上手くいかないケースがあります。また、埋入位置や角度が適切でないと、人工歯を取り付けた際のバランスが悪くなり、長期的な安定性に影響をおよぼす可能性も。
さらに、インプラントの長さや太さの選択が不適切な場合、骨量が不足している部位への埋入では、後々のトラブルにつながることがあります。これらの問題を防ぐためには、術前のCTスキャンなどによる綿密な検査と、熟練した医師による適切な治療計画が不可欠です。
血管や神経が傷ついた
オールオン4のインプラント埋入手術では、血管や神経を傷つけるリスクがあります。神経損傷による麻痺やしびれ、顔面の知覚異常、出血による治療の中断、術後の持続的な痛みなどが起こりうる症状です。厚生労働省の調査では、インプラント手術での神経麻痺発生率は0.13〜8.5%とされています。
神経や血管の損傷を防ぐためには、術前のCT撮影による位置確認や3D画像を用いた手術計画の立案が必要です。また、サージカルガイドを使用した正確な埋入と、経験豊富な歯科医による施術も重要です。
術後に異常を感じたら、すぐ担当医に相談してください。
噛み合わせや色など審美性の不満
オールオン4の審美性に関する失敗や後悔は、おもに以下の3つに分類されます。
分類 | 具体的な問題点 |
噛み合わせの問題 |
|
見た目の違和感 |
|
形状の不満 | サイズの違和感や長さのバランス |
これらの問題を防ぐためには、治療前の詳細なカウンセリングが効果的です。
発音の困難
オールオン4では、上部構造の設計によって舌の動きが制限されるため、発音の困難を感じる方がいます。もっとも多いのは「サ行」や「タ行」などの子音の発音で、歯と舌が触れる音が不明瞭になったり、サ行が「シャ行」のように聞こえたりする場合があります。また、歯擦音が濁ってしまうことも。
これらの問題に対しては、上部構造の調整や毎日の発音練習が効果的です。多くの方は2〜3ヶ月程度で改善を実感されますが、完全な改善が難しいケースもあるため、術前に担当医と十分な相談をすることが大切です。
鼻の下がくぼんで顔が変わったと感じる
オールオン4への移行後、とくに従来の入れ歯から切り替えた方に多い悩みの1つが、顔の印象が変化することです。これは、装着物の設計の違いによって生じる現象です。
入れ歯は歯肉部分を広くカバーする設計なのに対し、オールオン4は清掃性を重視して歯肉部分を最小限に抑えた設計となっています。そのため、入れ歯で膨らんでいた部分がオールオン4では補われず、くぼみを感じやすくなります。
このくぼみには、人工骨の移植や既存の骨を削って形を整えるなどの対応が可能です。また、上部構造を工夫し、歯肉部分を若干厚めに設計したり、ピンク色の人工歯肉を付与したりすることで改善できます。
予想外の高額費用や長期治療
オールオン4の治療では、仮歯から本義歯への交換費用や定期的なメンテナンス費用など、予想外の出費が発生することがあります。とくにメンテナンス費用は1回で3,000円から1万円程度かかることもあり、これを知らずに治療を始めてしまうと大きな負担となってしまいます。
また治療期間は抜歯後の治癒期間や、骨の状態によるインプラントの埋入位置の変更など、さまざまな要因で当初の予定より長引くことも。術後の腫れや痛みのために通院期間が延びたり、仮歯から本義歯への交換までの期間が予想以上にかかったりするケースも少なくありません。
オールオン4で失敗や後悔を防ぐポイント
オールオン4は、技術と知識が求められるインプラント治療のため、事前準備やアフターケアが大切です。ここでは、オールオン4での失敗や後悔を防ぐための具体的なポイントを紹介します。
- 経験豊富な歯科医院の選択
- 安価なオールオン4は避ける
- 先に禁煙しておく
- 歯周病や虫歯は治療しておく
- 術後は患部を刺激しない
- 定期メンテナンスや日々の手入れを怠らない
- 不安や疑問点はすぐ担当医へ相談する
これらのポイントを押さえ、安全で満足度の高い治療を目指しましょう。
経験豊富な歯科医院の選択
オールオン4の治療結果は、施術する歯科医院や医師の経験値によって大きく左右されます。理想的な治療結果を得るためには、インプラント治療の実績が豊富な医師を選ぶことが肝要です。医院選びのポイントは以下の4つです。
- インプラント治療の豊富な実績(症例数や経験年数)
- オールオン4の施術実績(専門的な技術と知識)
- 術前診断のための設備(CTなどの最新機器の有無)
- アフターケア体制(定期メンテナンスや緊急時の対応)
具体的な症例数は、各医院の公式サイトなどで事前に確認することをおすすめします。
安価なオールオン4は避ける
低価格を売りにしているオールオン4の治療には、以下のリスクが潜んでいます。
- 低品質なインプラント材料の使用
- 経験の浅い医師による施術
- 術前診断や治療計画の省略
- アフターケアの不足
とくに注意が必要なのは、人工歯やインプラント体などの材料のグレードです。安価な材料を使用すると、インプラントの早期脱落や人工歯の破損、噛み合わせの不具合などの問題が起こりやすくなります。
適切な価格の目安として片顎あたり200万〜400万円程度が一般的です。これより大幅に安い場合は注意しましょう。
先に禁煙しておく
タバコに含まれる化学物質は、血管を収縮させ、酸素や栄養の供給を妨げるため、オールオン4の治療結果に大きな影響を与えます。とくに手術後の治癒過程では免疫力が低下し、炎症リスクが高まりインプラントと骨の結合も妨げられる可能性があります。
理想的な禁煙のタイミングは、治療開始の数ヶ月前からです。徐々に本数を減らしていき、手術までに完全禁煙を目指しましょう。また、治療後も継続的な禁煙が必要です。
一時的な禁煙ではなく、この機会に完全な禁煙を目指すことで、治療の成功率を高め、長期的な口腔内の健康維持にもつながります。禁煙が難しい場合は、禁煙外来の受診も検討してください。
歯周病や虫歯は治療しておく
オールオン4を成功させるためには、インプラント埋入前の口腔内環境を整えることが重要です。歯周病や虫歯が残っている状態でインプラント治療を行うと、インプラント周囲炎や骨との結合不全などのリスクが高まります。
多くの歯科医院では、以下のような手順で治療を進めています。
- 歯周病・虫歯の診断と評価
- 歯周病基本治療の実施
- 虫歯治療の完了
- 歯茎の炎症が治まるまで経過観察
- オールオン4の治療開始
早期の治療を希望される方もいますが、口腔内環境が整っていない状態での治療は避けるべきです。事前の治療に時間をかけることで、オールオン4の成功率を大きく高められます。
術後は患部を刺激しない
オールオン4の術後は患部を刺激しないことが、治療の成功に大きく関わります。手術直後は腫れや痛みが生じるため、注意して過さなければいけません。
まず、手術部位を指で触ったり、舌で何度も触れたりすることは避けましょう。これらの刺激により傷口が開き、細菌感染のリスクが高まります。また、うがいは優しく行い、強い力で含嗽することは控えてください。
食事は術後1週間程度は柔らかい食事を心がけ、固いものは避けましょう。また、熱い飲み物も避け、常温か少し冷ましたものの摂取をおすすめします。
定期メンテナンスや日々の手入れを怠らない
オールオン4の失敗を防ぐためには、術後のメンテナンスや日々の口腔ケアが極めて重要です。一般的な歯のように虫歯になるリスクはありませんが、インプラント周囲炎のリスクは依然として残ります。
定期的なメンテナンスとして、3ヶ月に1回は必ず歯科医院でプロのクリーニングを受けましょう。その際、噛み合わせのチェックやインプラント周囲の骨の状態も確認します。
日々のセルフケアでは、柔らかめの歯ブラシを使用して1日3回以上の丁寧なブラッシングを心がけましょう。
不安や疑問点はすぐ担当医へ相談する
オールオン4の治療中に不安や違和感がある場合、すぐに担当医に相談することが大切です。とくに痛みが長引いたり急に強くなったりする場合、腫れが引かない、または悪化する場合、違和感が続く場合などは早めの受診をおすすめします。
症状を我慢して放置してしまうと、トラブルが深刻化する可能性も。些細な違和感でも、担当医に相談することで早期発見・早期対応が可能となります。
また、定期検診の際にも気になることは積極的に質問しましょう。担当医とのコミュニケーションを密にすることで、治療の満足度を高められます。
オールオン4で失敗や後悔しないための代替案
オールオン4は、歯をまとめて支えるインプラント治療法として優れた選択肢ですが、すべての患者にとって最適であるとは限りません。以下に、オールオン4以外の治療法について紹介します。
- オールオン6
- インプラントブリッジ
- インプラントオーバーデンチャー
- ブリッジ
- 入れ歯
それぞれの特性を理解し、より自分に適した治療法を検討することで、失敗や後悔を防げます。
オールオン6
オールオン6は、顎骨が薄い日本人の骨格特性に合わせて開発された、オールオン4の改良版治療法です。6本のインプラントを使用することで、より高い安定性と耐久性を実現しています。
治療費用は片顎あたり230万〜500万円程度で、オールオン4より若干高額です。しかし、顎全体の歯を一度に治療できるため、複数回のインプラント治療と比べると費用対効果は高いといえます。
手術は2〜3時間程度かかりますが、施術当日から仮歯を装着でき、個人差はあるものの約3ヶ月後に本義歯へ移行できます。また、骨のある部分を選んでインプラントを埋入できるため、骨量が不足している方でも治療を受けられます。
ただし、残存歯の抜歯が必要な点や、高度な技術が必要なため対応医院が限られる点、保険適用外である点などのデメリットもあります。
インプラントブリッジ
インプラントブリッジは、2〜3本のインプラントで3〜4本分の歯を支える治療法です。天然歯に近い見た目と使用感が特徴で、部分的な歯の欠損に対応できます。また、状況によっては残存歯を活かすことも可能です。
歯を削る範囲が最小限で済み、取り外しの必要がないため違和感が少ないのが特徴で、顎の骨の維持にも効果的です。
一方で、完治までには3〜6ヶ月程度の期間が必要で、定期的なメンテナンスも欠かせません。しかし、オールオン4ほど大がかりな手術は必要なく、部分的な歯の欠損に対する効果的な選択肢といえます。
インプラントオーバーデンチャー
インプラントオーバーデンチャーは、2〜4本のインプラントで入れ歯を固定する治療法です。通常の入れ歯と比べて安定性が高く、食事や会話時の不安が軽減されます。費用は片顎あたり40万〜150万円程度で、埋入するインプラントの本数や使用する材料によって変動します。
メリットは、通常の入れ歯のような「ズレ」や「外れ」が少なく、顎の骨量が比較的少なくても治療が可能な点です。また、入れ歯を取り外して清掃できるため、衛生管理が容易です。
一方、デメリットは保険適用外のため費用負担が大きいことや、残存歯に被せる場合は虫歯のリスクが高まる点があります。また、持病やヘビースモーカーなど、治療できない場合もあります。
ブリッジ
ブリッジは、欠損した歯の両隣の歯を削り、その歯を支えとして人工歯を固定する治療法です。短期間で治療が完了し、保険適用が可能な場合が多いため、経済的な負担が比較的少ないのが特徴です。
治療期間は通常2週間程度で、セラミック製のブリッジを選択すれば自然な見た目も実現できます。また、周囲の歯で支えられるため安定感があり、食事や会話も問題なく行えます。
一方で、健康な歯を削る必要があるため、将来的に虫歯や歯周病のリスクが高まる可能性も。また、平均寿命は7〜8年程度と比較的短く、定期的なメンテナンスが欠かせません。さらに、ブリッジの下に歯垢や食べかすが溜まりやすいため、日々の丁寧な清掃が重要です。
入れ歯
入れ歯は、欠損した歯を補うための取り外し可能な人工歯です。おもな特徴として、保険が適用される場合が多く、総入れ歯なら1〜3万円程度、部分入れ歯なら5,000円から2万円程度で治療可能です。また、治療期間も1ヶ月程度と比較的短期間で完了します。
一方、デメリットは咀嚼力が天然歯の半分以下になることや、プラスチック製の場合は3〜5年程度で作り替えが必要になる点です。また、金属のバネが見える場合があり、審美性で劣ります。
オールオン4と比較すると、入れ歯は費用面や治療期間で有利ですが、安定性や噛み心地、見た目の自然さではオールオン4の方が優れています。選択の際は費用や治療期間、求める機能性などを総合的に検討することが重要です。
まとめ:オールオン4で後悔・失敗せず満足度の高い治療を実現
オールオン4で後悔や失敗を防ぐためには、まず経験豊富な歯科医院を選ぶことが重要です。安価な治療は避け、術前の禁煙や歯周病・虫歯の治療を確実に行いましょう。
治療後は定期的なメンテナンスと日々の丁寧なケアを継続し、違和感や不安がある場合は早めに担当医に相談することが大切です。
また、オールオン6やインプラントブリッジなど、代替治療法についても検討することで、より自分に合った選択ができます。十分な事前準備と適切なアフターケアを行うことで、満足度の高い治療結果を得られるでしょう。
きぬた歯科では、25年の施術経験と年間3,000本を超える埋入実績があります。
幅広い症例に対応可能ですので、インプラント治療を検討されている方は、お気軽にお問い合わせください。
この記事の監修者
日本歯科大学新潟生命歯学部を卒業後、インプラント治療に従事。現在では年間3000本以上のインプラント治療の実績がある。
日本でインプラント治療が黎明期だったころからパイオニアとして活躍し、インプラントメーカーのストローマン社やノーベルバイオケア社から公認インストラクターの資格を得た。
本の執筆やTV・雑誌などのメディア出演、自身のYouTubeチャンネルなどで情報発信を積極的に行っている。
<主な著書>
インプラント治療は史上最強のストローマンにしなさい!!
歯医者が受けたい!インプラント治療
あっそのインプラント、危険です!!
<YouTubeチャンネル>
八王子きぬた歯科
<外部サイト>
きぬた 泰和 Wikipedia