インプラントへの変更が難しい場合
顎の骨や歯の状態によっては、ブリッジからインプラントへの変更が困難です。
そこで、インプラントへの変更が難しいケースを2つ紹介します。
ケース①骨が痩せている場合
インプラント治療では、顎の骨にインプラント体を埋め込み、その上にアバットメントを取り付けて人工歯を被せます。
そのため、顎の骨にある程度の厚みがなければ、インプラント体を埋入できません。
ただし、骨の厚みを補うための「骨造成治療」を受けることで、インプラント治療が可能になる場合もあります。
当院でも「骨造成治療」に対応しておりますので、骨の薄さを理由に他院で治療を断られた方はぜひご相談ください。
骨造成手術の費用については「【GBR法】インプラント治療の骨造成手術にかかる費用の相場はどのくらいですか?」をご覧ください。
ケース②歯周病に感染している場合
歯周病を放置したままインプラント治療を受けると、治療中に口腔内感染を起こし、「インプラント周囲炎」にかかるリスクがあります。
インプラント周囲炎は、インプラント周辺の組織が歯周病にかかっている状態をいい、症状が進むと抜歯が必要となりかねず、治療が難しくなります。
インプラント治療を受ける際は、歯周病の治療を済ませたうえ、万全の状態で受けましょう。
ブリッジからインプラントに変えるメリット
ブリッジからインプラントに変えるメリットは、以下のとおりです。
インプラントのメリット
- 審美性を高められる
- 歯の負担を軽減できる
- 長期間使用できる
- 強い力で咀嚼できる
耐用年数の平均で見ると、ブリッジは7~8年程度、インプラントは10年以上とされています。
また、インプラントはブリッジと比べて土台の面積が大きいため、耐用年数だけでなく噛む力にも大きな違いがあります。
ブリッジからインプラントに変えるデメリット
ブリッジからインプラントに変えると、メリットがある一方、デメリットにも考慮しなければなりません。
インプラントには、以下のデメリットがあります。
インプラントのデメリット
- 治療費が高い
- 治療期間が長い
- 治療の負担が大きい
インプラント治療は自由診療なので、保険適用内のブリッジと比較して、治療費が高くなります。
ブリッジの費用は数千円ですが、インプラント1本あたりの費用は約30万円です。
治療は複雑で高度な医療技術が必要なため、ブリッジ治療と比べて治療期間も長くなります。
インプラント治療は手術もともなうので、体への負担も考慮したうえで、治療を受けるか判断しましょう。
インプラントとブリッジの費用については「インプラントとブリッジにかかる費用を教えてください」をご覧ください。
インプラント治療がおすすめの方
インプラントかブリッジか迷っている方に向けて、まずはインプラント治療がおすすめの方の特徴をご紹介します。
次の2つの条件に当てはまるようでしたら、インプラント治療を選んでみてはいかがでしょうか。
特徴①健康な歯をそのまま残しておきたい方
健康な歯をそのまま残したいようであれば、インプラント治療のほうをおすすめします。
なぜならブリッジ治療では、健康な歯を削って土台として使用するためです。
インプラントは顎の骨の中に部品を埋入して、骨と結合させることで人工歯を装着します。
対してブリッジは、失われた歯の両隣の歯を大きく削り、被せ物をして土台にすることで義歯を装着する治療方法です。
そのため健康な歯であっても削られてしまいますし、土台となることで弱りやすくなる傾向があります。
健康な歯をできる限り残したいと考えるのであれば、インプラントの方が向いているでしょう。
特徴②メンテナンスに手間をかけたくない方
メンテナンスに手間をかけたくない方も、インプラント治療のほうが向いているでしょう。
ブリッジは失われた部分の両隣の歯を土台にするため、両隣の歯のメンテナンスも必要となります。
しかしインプラントは顎の骨に埋入されている独立した人工歯。
メンテナンスの際に、他の歯に気を遣う必要はありません。
もちろんインプラントであっても、他の歯のケアは必要です。
しかしメンテナンスやケアの手間を考えると、インプラントは手間がかからないと言えます。
インプラント治療をおすすめできない方
インプラント治療をおすすめできない方もいます。
以下で詳しく解説するので、ぜひご参考ください。
妊娠中の方
インプラント治療は身体に負担がかかる治療であるため、妊娠中の方にはおすすめできません。
歯の治療は妊婦に、想像以上の疲労とストレスを与えます。
まして、出血をともなう外科手術のリスクを考えると、インプラント治療は出産後、折をみて行うのが賢明な判断といえます。
妊娠中の治療によるリスクについては「妊娠中にインプラント治療はできますか?」をご覧ください。
ヘビースモーカーの方
へビースモーカーの方も、場合によっては治療を受けられません。
インプラント体と顎の骨を結合するには血流が重要ですが、たばこに含まれているニコチンには、血管を収縮させる作用があります。
血管の圧縮により血流が悪くなると、インプラントを支える顎の骨に、酸素や栄養素が行き渡りません。
その結果、インプラント体と顎の骨がうまく結合できなくなります。
インプラント治療をお考えの方は、治療後のトラブルの発生を防ぐためにも、喫煙を控えましょう。
未成年の方
インプラント治療を受けるには、顎の厚みも重要です。
未成年の方の場合、顎が十分に発達していないので、インプラントを埋入すると歯並びに悪影響を与えてしまう可能性があります。
骨が成長過程にあるという理由から、未成年はインプラント治療の対象外になっています。
ブリッジのほうが向いている方の特徴
それでは続いて、ブリッジのほうが向いている方の特徴について解説します。
インプラントかブリッジかどちらにしようかと迷っているなら、前述した「インプラント治療がおすすめの方」もあわせて確認してください。
それぞれの項目を比較すれば、どちらの治療方法がご自身に向いているか判断しやすくなるはずです。
①手術に抵抗がある
外科手術に抵抗がある方であれば、インプラントではなくブリッジのほうをおすすめします。
インプラント治療は歯肉を切開して、顎の骨にドリルで穴を開ける手術を必要とする治療です。
手術への恐怖心が強くストレスになったり、治療後の痛みが気になったりすることもあるでしょう。
その点ブリッジであれば外科手術は必要ありません。
身体的に影響を与える処置と言えば、両隣の歯を削ることくらいです。
そして製作した義歯を両隣の歯を土台とし、装着するだけで完成します。
手術を受けたくない、抵抗があると思われているなら、ブリッジ治療を受けられたほうがストレスが少ないでしょう。
②費用を抑えたい
費用を抑えたい方にもブリッジ治療がおすすめです。
ブリッジとインプラントの費用は大きく違います。
ブリッジは保険が適用される治療ですが、インプラントはほとんどのケースで保険適用外の治療となります。
保険適用外のインプラントにかかる費用は、1本あたり300,000~400,000円が相場です。
しかしブリッジであれば、1本あたり20,000円ほどに抑えられるでしょう。
治療方法を選ぶにあたって、費用面は重要なポイントとなるはずです。
見た目にこだわるなら、保険適用外のブリッジ治療も受けられます。
しかし自由診療となったとしても、インプラントよりもブリッジのほうが安価です。
費用を考慮したうえで選択肢が多いのがブリッジ治療だと言えるかもしれません。
保険診療にてできる限り費用を抑えたいと思われるなら、ブリッジを選んでください。
③治療を早く完了させたい
治療期間を短くしたい方にもブリッジが向いていると言えます。
まずはそれぞれの治療期間を比較してみましょう。
【治療期間】
- ブリッジ:1~3か月
- インプラント:6~12か月
治療方法により前後しますが、ブリッジは義歯治療の中でも早く完了する治療として知られています。
対してインプラントは治療期間が長く、完了までに1年ほどかかることも珍しくありません。
もし骨造成治療など、インプラントのために必要なほかの治療が行われればさらに長期化するはずです。
1年間の通院は人によってはストレスになり、数回の通院で治療が完了するブリッジのほうが良いと言われる方もいます。
治療期間の短さを重視する場合は、ブリッジが最善の選択と言えるでしょう。
インプラントとブリッジの違い
インプラントかブリッジか迷ったときにわかりやすいよう、それぞれの違いについて見てみましょう。
それぞれの治療の特徴について簡単にまとめました。
インプラント | ブリッジ | |
---|---|---|
治療期間 | 6か月~12か月 | 1か月~3か月 |
治療費用 | 328000~399000円[1] | 保険診療:10000~20000円 自費診療:50000~150000円 |
外科処置 | あり | なし |
咀嚼力 | 天然歯の80~100% | 天然歯の60~100% |
機能性 | 天然歯と同等 | 天然歯に近い |
違和感 | なし | なし |
審美性 | 天然歯と同等 | 素材による |
寿命 | 10~15年で90~94%[2] | 10年で92.3%[3] |
トラブルの有無 | 外科手術による感染症や痛み インプラント周囲炎 |
両隣の歯への負担増大 将来的な歯槽骨吸収 |
治療期間や治療費用を見ていくと、ブリッジのほうが治療を受けやすいと感じられるのではないでしょうか。
しかし咀嚼力や機能性に関してはインプラントのほうが優れています。
寿命は10年間で見ると同程度もしくはインプラントのほうが少し長いと言われています。
着ブリッジであれば71.4%まで生存率が低下するとの報告がありました。
どちらにもメリットもデメリットもあります。
ご自身がどの部分を重視するかによって、適した治療方法は変わるでしょう。
【出典】
[1]竹本和代ほか,「いい歯科インプラント治療医」を選ぶ!. 朝日新聞出版 2013; 188
[2]厚生労働省:(PDF)歯科インプラント治療のためのQ&A
[3]JSTAGE(PDF)岩手医科大学付属歯科医療センター義歯外来における3ユニットブリッジの予後に関する10年間の後ろ向きコホート研究
インプラントとブリッジで迷ったときに考慮すべきポイント
インプラントかブリッジかで迷ったときに考慮すべきポイントについてもう少し解説します。
それぞれの治療方法の特徴を踏まえたうえで、次の5つのポイントについて考えてみてください。
そうすればどちらが適した治療であるかが見えてくるはずです。
治療方法を決める際には、必ず医師との相談が必要となります。
相談する際に次のようなポイントが明確になっていると、よりスムーズに治療方法を選べるようになるでしょう。
ポイント①口内の健康状態
治療方法を決めるときの重要なポイントとなるのが、口内の健康状態についてです。
インプラント治療を受けるには、口内が健康でなければなりません。
たとえば虫歯や歯周病が進行していると、治療を終えてからでなければインプラントの埋入は不可とされます。
また糖尿病や心臓病などの全身疾患を患っている方であれば、インプラント治療を受けられないこともあるでしょう。
口内はもちろん、全身の健康状態を考慮する必要があります。ただしブリッジであれば、どのような健康状態でも治療を受けられるわけではありません。
失われた歯の両隣の歯を土台にするため、歯の状態が良好でなければブリッジ治療を行えないこともあります。
それぞれの口内の状態を踏まえたうえで、より適していると思われる治療方法を選ぶことが重要です。
ポイント②耐久性
続いては耐久性についてです。
治療方法によって、10年後、20年後の残存率は変わります。
インプラントは義歯治療の中でも特に残存率が高いとされ、適切なケアとメンテンナンスをすればほとんどのケースで15年ほど残ります。
ブリッジも残存率は高いとされていますが、土台となる両隣の歯に負担が強いられることが問題です。
もし再治療となった場合、両隣の歯にも影響が及ぶ可能性があるでしょう。2つの治療法において耐久性を考えるなら、治療を受けた人工歯はもちろん、その他の歯についても考慮すべきです。
健康な歯に悪影響が及びにくいことを考えると、インプラントのほうが耐久性において優れているかもしれません。
ポイント③審美性
審美性も考慮したいポイントのひとつです。
笑ったときに違和感がないか、美しく見えるかはQOLに影響を与えます。
インプラントは天然歯と同等の審美性を誇り、口元の美しさを重視する方にとっては良い選択でしょう。
ブリッジで審美性を高めようとすると、自由診療となることがあります。
保険診療内で選択できる素材では、審美性に欠けると感じられることもあるはずです。いずれも自由診療となれば、審美性の高い人工歯を選べます。
ただし義歯治療の中で最も審美性に優れるのはインプラント治療でしょう。
ポイント④費用
インプラントかブリッジかと迷ったら、費用面での比較も重要となります。
2つの治療法において、費用は大きく異なるためです。
前述したとおりインプラントはごく稀なケースを除いて保険適用外の治療であり、高額な治療費がかかります。
その点ブリッジは、義歯の素材を選ばなければ保険が適用可能です。
しかし、審美性を重視する場合は、保険適用外となり、インプラントと同様に治療費が全額自己負担となります。費用をできる限り抑えたい方であれば、保険診療でブリッジ治療を受けられるのがおすすめです。
ただし機能性、審美性と費用を天秤にかけることも大切でしょう。
費用対効果を考慮しながら、予算内で受けられる治療を選ぶのが最善だと考えられます。
ポイント⑤ライフスタイル
最後に考慮すべきポイントはライフスタイルです。
ライフスタイルによって口元に求める要素は違います。
たとえば接客業や営業をしている方であれば、審美性の高い美しい口元を求めるでしょう。
自宅で過ごすことが多く、あまり人と接しない方であれば機能性や費用面を重視するかもしれません。
仕事で忙しく、通院のために時間を割けない方は、通院期間が短い治療法を選ぶ傾向があります。
以上のようにご自身のライフスタイルに合う治療方法を選ぶことも大切です。
無理な通院になっては、最後まで治療が受けられなくなることもあります。
ライフスタイルを考え、無理なく治療を受けられる方法を相談することも重要なポイントでしょう。
インプラントやブリッジ以外に歯の機能を取り戻す方法はある?
失われた歯を補うためにインプラントかブリッジか、どちらの方法を選ぶべきかと解説してきました。
しかし歯の機能を取り戻す方法は2つだけではありません。
ケースによってはその他の方法を適用できることもあるので、選択肢のひとつとして事前に検討することが大切です。
方法①入れ歯
失われた歯を補うための治療方法のひとつであるのが「入れ歯治療」です。
すべての歯を義歯にする総入れ歯と、部分的に失われた歯を補うための部分入れ歯の2種類があります。
治療方法はブリッジに似ており、失われた歯の両隣の歯にワイヤーをかけて土台とし、義歯を装着するタイプの治療です。
ブリッジ同様に土台となる歯に負担がかかります。
審美性や機能性はブリッジほど高くありません。
しかし費用が安いため、費用を抑えて義歯治療を受けたい方におすすめの方法です。
方法②再植
「再植」にて失われた歯を補う方法もあります。
親知らずなどの噛み合わせに影響のない歯を抜歯して、歯が失われたところに植え込んで補う治療法です。
ご自身の歯なので歯茎との親和性が高く、うまくいけば違和感のない仕上がりになります。
いわば「自分の歯を他の部分に移植する治療法」だと考えてください。
親知らずが残っているなら、再植も選択肢のひとつとなるでしょう。
方法③歯列矯正
歯を失った場合、「歯列矯正治療」を受けるのも良いでしょう。
歯は失われた部分に移動する性質を持ちます。
その性質を利用すれば、歯が失われた部分の空白部分を埋められるかもしれません。
本来であれば噛み合わせを改善するために行う治療であるため、治療完了後には噛み合わせの問題も起こらないでしょう。
むしろ歯の外観が良くなる可能性もあり、選択肢のひとつとして考えてみたい治療方法です。
ブリッジからインプラントに変えられるが、難しい場合もある
今回は、ブリッジからインプラントへの変更について詳しく解説しました。インプラントに変えることは可能ですが、どなたでも大丈夫というわけではありません。
顎の骨が薄い、または歯周病に感染している方などは、インプラント治療が難しくなります。
しかし、インプラントには多くのメリットがあるため、ブリッジからインプラントへの交換をお考えの方は、ご検討なさってはいかがでしょうか。インプラント治療の実績が豊富なきぬた歯科は、年間3,000本のインプラントの埋入実績を持つ歯科医院です。
ブリッジからインプラントに変えたいとお考えの方は、ぜひお問い合わせください。
この記事の監修者

日本歯科大学新潟生命歯学部を卒業後、インプラント治療に従事。現在では年間3000本以上のインプラント治療の実績がある。
日本でインプラント治療が黎明期だったころからパイオニアとして活躍し、インプラントメーカーのストローマン社やノーベルバイオケア社から公認インストラクターの資格を得た。
本の執筆やTV・雑誌などのメディア出演、自身のYouTubeチャンネルなどで情報発信を積極的に行っている。
<主な著書>
インプラント治療は史上最強のストローマンにしなさい!!
歯医者が受けたい!インプラント治療
あっそのインプラント、危険です!!
<YouTubeチャンネル>
八王子きぬた歯科
<外部サイト>
きぬた 泰和 Wikipedia