奥歯の7番の抜歯後は治療しなければならない?

親知らずと隣り合って生えている歯を「奥歯の7番」と言います。
虫歯や歯周病の悪化などが原因でこの歯を抜いた方のなかには「治療を受けたほうがよいのかな……」と思われている方もいらっしゃるのではないでしょうか。

しかし、奥歯の7番を抜歯した場合、必ずしも治療しなければならないというわけではありません。

奥歯の7番の抜歯後の措置は、2つあります。
「放置する」あるいは、インプラントなどの人工歯を入れる「補綴(ほてつ)治療」を受けるかのどちらかです。

実は、奥歯の7番の抜歯後に治療を受けたほうがよいのかという問題は、専門家のあいだでも意見が分かれています。
歯の治療は、噛み合わせや歯の本数などの条件を考慮したうえで実施するので、歯並びや歯茎の状態によっては、あえて放置したほうがよいこともあるからです。

奥歯の7番の抜歯後に放置したほうがよいケース

まずは、奥歯の7番の抜歯後に放置したほうがよい3つのケースを紹介します。

ケース①顎の骨が薄い・弱っている

顎の骨がほとんど残っていない、あるいは弱っていると、治療を受けられないことがあります。
補綴治療は顎の骨に負担がかかり、無理に治療を受けると健康被害が出ることもあるからです。

治療を検討するのであれば、まずは歯科医院でレントゲン写真を撮影し、ご自身の顎の骨の状態を確認してもらいましょう。

ケース②開口障害がある

顎関節症や破傷風などの開口障害がある方も、治療を受けないほうがよいです。
開口障害を発症すると、口が縦に3cm程度あるいはそれ以下しか開かなくなります。

奥歯の7番は親知らずの手前に生えているので、状態を確認するには、口を大きく開けなければなりません。
スムーズに口を開けられない方が治療を受けると、開口障害が悪化することも起こりえます。

ケース③上下両方の奥歯の7番を抜歯している

上下両方の奥歯の7番を抜いていて、なおかつ噛み合わせに問題がなければ、必ずしも治療を受ける必要はありません。
すでに噛み合う歯も失っている場合は、上下ともに7番目の歯がない状態でバランスがとれていることがあるからです。

ただし、奥歯で食べ物を噛めないことや、歯の見た目がよくないことが気になる方は、治療を受けるのも1つの手です。

奥歯の7番の抜歯後に治療したほうがよいケース

続けて、奥歯の7番の抜歯後に治療したほうがよい3つのケースを紹介します。
これから紹介するケースに当てはまる方は、奥歯の7番の抜歯後にはインプラントなどの人工歯を入れることを検討してみてください。

ケース①親知らずが生えている・親知らずがこれから生える

親知らずが生えている方、あるいは親知らずがこれから生える方は、治療を受けましょう。
親知らずが生えている状態で奥歯の7番を抜歯すると、支えを失った親知らずが傾くことがあるからです。

また、親知らずがこれから生える場合においても、歯が斜めに生えてくることがあります。

ケース②上下どちらか一方の奥歯の7番を抜歯している

上下どちらか一方の奥歯の7番を抜歯している場合は、治療を受けてください。

どちらか一方の歯がない状態だと、本来噛み合っている歯が相手を失い、空いている部分に歯が伸びることがあるかもしれません。
歯が伸びると、歯茎や頬を傷つけるだけではなく、健康な歯に負担をかけて、寿命を縮めてしまうおそれもあります。

ケース③審美性を重視している

歯の見た目を重視するのであれば、人工歯を入れたほうがよいかもしれません。
奥歯の7番は、日常生活においてほかの人からは見えにくい部分ではありますが、会話や食事の際に見えてしまうこともあります。

なお、後述する補綴治療にはいくつか種類があり、見た目もそれぞれ異なります。
審美性にこだわる方は、インプラント治療の選択を視野に入れたいところです。

補綴治療の種類

補綴治療の種類は、「インプラント治療」「入れ歯治療」「ブリッジ治療」の3つがあります。
ここからは、3つの治療方法の特徴を紹介するので、治療方法に迷った際は参考にしてみてください。

種類①インプラント治療

「インプラント治療」は、顎の骨にインプラント体という金属製の人工歯根を埋め込み、その上から被せ物を装着する歯科治療です。

耐久性や審美性に優れており、口内の違和感もほとんどなく、自分の歯と同じような感覚で咀嚼できます。

ただし、インプラント治療は外科手術なので、糖尿病などの全身疾患を抱えている方や、麻酔に弱い体質の方は、治療を受けられないこともあります。
また、ほかの治療方法とは異なり、健康保険が適用されないので、治療費が高くなる点には留意しておきましょう。

インプラント治療については「インプラントとは?メリット・デメリットや他の治療との違い」をご覧ください。

種類②入れ歯治療

口内に人工歯がついている土台を設置して、天然歯にバネをかけて安定させる歯科治療が、よく知られている「入れ歯治療」です。

型取りをするだけなので治療期間が短いうえに、なにより身体への負担がほとんどありません。
健康保険が適用されるので、奥歯の7番のみの「部分入れ歯」であれば、数千円程度で作成できます。

ただし、入れ歯はインプラントと比較すると、耐久性や審美性の面で劣ります。
サイズが合わないと、歯がぐらついたり、食べ物を噛んだ際に取れてしまったりするので、使い心地を重視される方にはあまりおすすめできません。

種類③ブリッジ治療

「ブリッジ治療」は、両隣に生えている天然歯を土台にブリッジをかけて、人工歯を装着する歯科治療です。

外科手術が不要なので、身体への負担を抑えることができ、さらに、入れ歯よりもフィット感があるので、歯がぐらつきにくいという特徴があります。

ただし、ブリッジをかける際には、両隣に生えている歯を削らなければならないので、健康な歯の寿命を縮めてしまいます。
また、奥歯の7番は親知らずと隣り合って生えているので、すでに親知らずを抜いていたり、親知らずがきれいに生えていなかったりする方は、ブリッジ治療を受けられません。

インプラントとは

奥歯の7番の抜歯後は口内の状態に合わせてインプラント治療などを検討しましょう

いかがでしたでしょうか?

奥歯の7番を抜歯した場合、必ずしも補綴治療を受けたほうがよいとは限りません。
歯の治療は、噛み合わせや歯の本数などの条件を考慮したうえで実施するので、歯並びや歯茎の状態によっては、あえて放置したほうがよいこともあるからです。

開口障害がある方や上下両方の奥歯の7番を抜歯している方は、治療を受けるとかえって健康被害が出てしまう可能性があります。
反対に、上下どちらか一方の奥歯の7番を抜歯している方や、審美性を重視する方は、治療を受けるほうがよいでしょう。

きぬた歯科ではインプラント治療を実施しております。
歯の機能性や審美性を取り戻したいとお考えの方は、お気軽にご相談ください。

この記事の監修者

日本歯科大学新潟生命歯学部を卒業後、インプラント治療に従事。現在では年間3000本以上のインプラント治療の実績がある。

日本でインプラント治療が黎明期だったころからパイオニアとして活躍し、インプラントメーカーのストローマン社やノーベルバイオケア社から公認インストラクターの資格を得た。

本の執筆やTV・雑誌などのメディア出演、自身のYouTubeチャンネルなどで情報発信を積極的に行っている。

<主な著書>
インプラント治療は史上最強のストローマンにしなさい!!
歯医者が受けたい!インプラント治療
あっそのインプラント、危険です!!

<YouTubeチャンネル>
八王子きぬた歯科

<外部サイト>
きぬた 泰和 Wikipedia