前歯のインプラント治療はできるのか
インプラント治療は、失った歯を補うための選択肢の一つです。
ですが、前歯の治療に適している場合と、そうでない場合があります。
自分の場合は治療可能か判断するためには、歯科医院で検査を受けなければなりません。
インプラント治療ができないケースに該当しなければ問題なく治療可能です。
前歯のインプラント治療を行うことができないケース
前歯に限ったことではありませんが、インプラントはすべての人が選択できる治療方法ではありません。
以下に該当する場合、前歯のインプラント治療は難しいと判断される可能性があります。
【治療できないケース】
- 骨粗しょう症で治療に必要な骨密度を満たしていない
- 18歳未満である
- 虫歯・歯周病があり、状態が悪い
- 治療に支障をきたす全身疾患がある
- 妊娠中である
年齢に関しては、基本的に18歳以上であればインプラント治療は可能です。
18歳未満だとインプラント治療が受けられないのは、完全にあごの骨の成長が終わる前に治療を行うのは良くないとされているからです。
将来的な噛み合わせや歯並びなどに影響があることを考え、18歳未満の治療を受け付けていない歯科医院があります。
ただ、中には20歳未満は治療に適さないとしている歯科医院もあるため、詳細は歯科医院によって判断が異なります。
虫歯や歯周病に関してはこれらの治療を行い、状態が改善すれば検討できることも多いです。
前歯のインプラント治療を行うのが難しい理由
インプラント治療を行うことができないケースに該当していなかったとしても、前歯のインプラント治療は慎重に検討しましょう。
これは、治療が難しいとされているためです。
以下3つのような理由があります。
①あごの骨や歯茎が薄い
インプラントは、歯を失った部分のあごの骨に人工歯根を埋入し、そこに人工歯を装着する治療法です。
人工歯根をあごの骨に埋入し、それがしっかりと骨と結合することによって非常に強い土台になります。
ですが、そのためには十分な量のあごの骨がなければなりません。
前歯は奥歯と比べるとあごの骨の量が少ないため、どうしても治療の難易度が高くなってしまいます。
また、歯茎が薄いことから、無理にインプラントを埋入した場合、骨を突き抜け歯茎側に露出してしまう恐れもあります。
中でも注意しなければならないのが、歯を失ってからの期間が長い方です。
ものを噛むとその刺激が骨に伝わり、骨の発育を促進します。
一方、歯がない期間がないとこの働きが弱まっていくことから、骨が痩せて少なくなっている方も多いです。
あごの骨や歯茎が薄い場合は、増骨治療を行えばインプラント治療ができることもあります。
②前歯と神経の位置が近い
治療途中であごの中を通っている神経を傷付けてしまうと、麻痺が起こってしまう可能性があります。
前歯の下あごには下歯槽神経と呼ばれる重要な神経があり、ここを傷付けてしまった場合に大事に至る可能性もゼロではありません。
特にあごの骨が薄い状態のままインプラント治療を行った場合は、下歯槽骨神経を傷つけてしまうリスクが高くなります。
③審美性が損なわれる場合がある
前歯は会話をする際に目に入りやすい部分です。
そのため治療する際は審美性を重視しなければなりませんが、治療する際に不適切な取り付けが起こった場合は審美性が損なわれてしまう可能性があります。
また、周囲の歯と見た目をうまく合わせられなかった場合も差が目立ち、それが審美性を損ねてしまう原因になるケースも多いです。
それから、歯茎に埋入したインプラント体と人工歯をつなぐ役割を持ったアバットメントと呼ばれる部品があるのですが、歯茎が薄い方だとこのアバットメントが透けて黒ずんで見えてしまうこともあります。
このような理由があることから、前歯のインプラント治療は難しいとされます。
前歯のインプラント治療にかかる期間
前歯のインプラント治療にかかる期間は個人差がありますが、虫歯・歯周病の治療や骨を増やす治療が必要なければ、3カ月~半年程度です。
その他の治療を伴う場合は、1年を超えるケースもあります。
あごの骨を作る骨造成を行う場合は、骨が増えるのを待つだけでも数カ月~半年以上かかり、ここからインプラント治療を検討していかなければなりません。
自分の場合はどの程度の費用がかかりそうかに関しては、検査を受けてみなければわかりません。
治療予定の歯科医院で相談してみると良いでしょう。
前歯のインプラント治療にかかる費用
前歯のインプラント治療にかかる費用は、1本あたり30~40万円程度です。
ただ、前歯ということもあり、人工歯の素材にこだわりたい方もいるでしょう。
どの素材を選択するのかによって費用が変わり、場合によっては30~50万円程度の費用がかかります。
また、これらの費用は他の治療が必要なかった場合の話です。
例えば、あごの骨が足りないために骨を増やす治療を行う場合、追加で15~30万円ほどの費用がかかることになります。
具体的な費用は現在の口腔内の状態によっても変わってくるので、歯科医院で相談してみてください。
なお、基本的にインプラント治療は全額自己負担となり、保険は適用されません。
前歯のインプラント治療を行うメリット
失った歯を補うには他にもいくつか選択肢がありますが、中でもインプラント治療を選択するメリットにはどういったものがあるのでしょうか。
ここでは、代表的なメリットを3つ紹介します。
メリット①天然歯に近い
入れ歯だと見た目が気になるという方もいるでしょう。
ですが、インプラントの場合は審美性が高く、天然歯に近い見た目になります。
技術力の高い医師が担当すれば、インプラントであることがわからないほど自然な見た目にすることも可能です。
失った歯を補う治療法を検討するにあたり、見た目を重視したいと考えている方からも選ばれています。
また、天然歯に近いのは見た目だけではありません。機能性も変わらず、インプラントがしっかりと骨と定着してからは固いものなども食べられるようになります。
部分入れ歯のように取り外してお手入れする必要もなく、自分の歯と同様に扱えるのが特徴です。
メリット②ほかの歯を傷つけずに施術できる
インプラントは、失った歯部分だけの独立した治療が可能です。
周囲の歯に影響を与えることはありません。
これは、ブリッジや部分入れ歯などと異なるポイントです。
前歯の治療をしたいと思っているけれど、他の健康な歯に影響があるような治療法は避けたいと考えている方にも向いているでしょう。
メリット③寿命が長い
インプラントは非常に寿命が長いのも特徴です。
10年またはそれ以上の寿命があるとされているので、できるだけ長持ちする方法を選択したい方にぴったりです。
ただ、これはあくまで適切なメンテナンスを継続して行った場合です。
インプラント自体が虫歯になることはありませんが、ケアを怠るとインプラント周囲炎などのトラブルにつながってしまう可能性があるので、注意しましょう。
長持ちさせるためには定期的に歯科医院でケアを受けることが重要です。
前歯のインプラント治療を行う際の注意点
前歯のインプラント治療を行う際には、いくつか注意しておきたいポイントがあります。
以下の5つをよく確認した上で検討しましょう。
クリニックが限られる
紹介してきたように、前歯のインプラント治療は簡単なものではないこともあり、対応できるクリニックが限られてしまいます。
前歯の治療に対応しているクリニック自体はそれほど珍しいものではありません。
ですが「治療できる=十分な経験と技術を持っている医師がいる」とは言えないので、注意が必要です。
治療自体が難しいことに加え、審美性も重視しなければならないので、前歯のインプラント治療を得意としているクリニックを選択しましょう。
歯がない期間は仮歯が入る
インプラント治療では、あごの骨にインプラント体を埋入し、それが安定してから人工歯を取り付ける治療法です。
こういったステップを踏まなければならないことから、一時的に歯がない状態になります。
その間は見た目が気になりますが、審美性の問題もあり、歯がない期間は仮歯が入るので心配いりません。
仮歯の期間は、インプラントの手術をしてから3~4カ月程度です。
仮歯でインプラント骨が結合するための回復期間を過ごし、そのあと人工歯を装着していきます。
喫煙を避ける
喫煙している方は、インプラント治療をすることが決まったらできるだけ早い段階で禁煙に取り組みましょう。
これは、タバコに含まれるニコチンやタールといった有害物質の影響でインプラントと骨が結合しにくくなってしまうためです。
予定通りに結合できなければ手術が失敗してしまうリスクもあります。
それだけではなく、インプラント周囲の歯茎が炎症を起こすインプラント周囲炎といったトラブルも発生しやすくなります。
これはインプラントの手術終了後も同様のことがいえるので、治療後も禁煙を継続していきましょう。
高価なクリニックではインプラントの保証期間を設けていますが、喫煙している方は保証の対象外になってしまうこともあります。
費用が高額になる可能性がある
インプラント1本あたりの費用相場は、30~40万円です。
ですが、前歯の場合は骨生成など骨を増やす手術が必要になるケースも多く、こういった場合は費用が高額になってしまうことがあります。
どの程度の費用がかかるかに関しては、どういった治療を行わなければならないかによって異なるので、クリニックで確認してみてください。
その際、デンタルローンの取り扱いがあるかなども聞いておくと良いでしょう。
治療期間が長い
部分入れ歯やブリッジなどの治療方法と比較すると、治療期間が長めになります。
場合によっては1年を超えることもあるので、クリニックを選ぶ際は無理なく通い続けられるかも考えなければなりません。
自宅から遠過ぎるクリニックを選んでしまうと、定期的に通うのが難しくなるので注意しましょう。
インプラント以外の前歯の治療法
失った歯を補う方法として、インプラント以外にも入れ歯やブリッジなどの選択肢があります。
これらはどのような特徴を持った治療法なのか解説します。
入れ歯
失った歯とその周囲の歯茎や粘膜を補う目的で使われるのが入れ歯です。
前歯のみ補う場合は部分入れ歯、全体を補う場合は総入れ歯を選択しましょう。
保険適用なものと適用外のものがあります。
自分で脱着できることから、お手入れの際などは取り外せるのが特徴です。
ただ、噛む力はインプラントほどではありません。
また、入れ歯が合わないと発音がうまくいかなくなってしまうこともあります。
金具を使って固定する形になるのですが、残っている歯にかけて固定することから、安定しないのがデメリットです。
ブリッジとは異なり周囲の歯を削ることはありませんが、バネであるクラスプを引っかける歯には負担がかかってしまうことも理解しておきましょう。
保険適用のものであれば安く済ませられますが、使い心地や違和感の無さを重視する場合は、自費診療のものも検討してみるのがおすすめです。
ブリッジ
ブリッジは、失った歯の両隣にある歯を削り、そこを土台として連結した人工の歯を装着する方法のことです。
入れ歯と比較すると噛む力が強いことに加え、審美性も高い特徴を持っています。
保険適用のものであれば安く抑えられるので、費用面を心配している方も検討しやすいでしょう。
部分入れ歯とは異なり、発音を邪魔することもありません。
一方は、土台となる歯を調整のために削らなければならないのがデメリットです。
土台となる歯が虫歯であれば治療ついでに削る形になりますが、そうでない場合は健康な歯であっても削る必要があります。
削られた歯は弱くなるので、健康な歯と比較して虫歯になりやすくなる点に注意しておきましょう。
また、保険適用のブリッジでは見た目が気になることもあるので、審美性にこだわりたい場合は自費診療のものを検討する必要も出てきます。
インプラントと比較すると費用を抑えて治療できるものの、寿命はインプラントの方が長いため、どちらが適しているのかよく検討してみると良いでしょう。
前歯のインプラント治療はクリニック選びが重要
いかがだったでしょうか。
前歯はインプラント治療ができないのかについて解説しました。
奥の歯と比較すると治療が難しいこともありますが、不可能ではありません。
ただし、医師の技術力が求められること、費用が高額になることなども理解しておく必要があります。
審美性を重視する必要もあるので、経験豊富なクリニックを選びたいということであれば、きぬた歯科にご相談ください。
インプラント症例数は40,000本と、非常に多くの実績があります。
難症例も数多く治療してきたので、他院で断られた場合も一度ご相談いただければと思います。
この記事の監修者
日本歯科大学新潟生命歯学部を卒業後、インプラント治療に従事。現在では年間3000本以上のインプラント治療の実績がある。
日本でインプラント治療が黎明期だったころからパイオニアとして活躍し、インプラントメーカーのストローマン社やノーベルバイオケア社から公認インストラクターの資格を得た。
本の執筆やTV・雑誌などのメディア出演、自身のYouTubeチャンネルなどで情報発信を積極的に行っている。
<主な著書>
インプラント治療は史上最強のストローマンにしなさい!!
歯医者が受けたい!インプラント治療
あっそのインプラント、危険です!!
<YouTubeチャンネル>
八王子きぬた歯科
<外部サイト>
きぬた 泰和 Wikipedia