インプラント治療とは

インプラント治療は、どのような治療法なのかから確認しておきましょう。
歯を失った時に検討できる選択肢の一つであり、入れ歯やブリッジに次ぐ第3の治療法として注目されています。

大きな特徴として挙げられるのが、歯を失った部分のあごの骨に人工歯根を埋入し、そこに人工歯を装着することです。
あごの骨に埋入した人工歯根は時間をかけて骨と結合するので、非常に強固な土台となります。

状態が安定してからはまるで自分の歯と同じようになるので、硬いものでも問題なく食べられるのが特徴です。

人工歯根をあごの骨に埋入する際は、外科手術を伴います。
そのため、入れ歯やブリッジのように気軽に検討できるものではありませんが、審美性や機能性に優れていることから、これらを重視する方に向いている治療法です。

老後にインプラント治療を受けるデメリット

インプラント治療は、メリットばかりが注目されることも多いです。
ですが、老後にインプラント治療を受ける場合、どのようなデメリットが考えられるのでしょうか。

ここでは、代表的なメリットを4つ解説していきます。

デメリット①治療が受けられない可能性がある

まず、老後になるとそもそもインプラント治療が受けられない可能性があります。
インプラント治療は、あごの骨に埋入した人工歯根が骨としっかり結合することによって強い土台を作る治療法です。

ですが、年を重ねると若い頃と比較して骨がもろくなったり少なくなったりするので、インプラント治療に必要なあごの骨の量を確保できないことがあります。
また、高齢になると骨粗しょう症のリスクも高まるので、これらの理由によって骨の量が少なく、治療が受けられないことも珍しくありません。

骨造成と呼ばれる治療で骨の量を増やせれば対応できることがありますが、すべてのクリニックで骨造成に対応しているわけではないのはデメリットです。
骨造成をしてもインプラント治療は難しいと判断された場合は、その他の治療方法を検討する必要があります。

デメリット②体力が必要になる

インプラントは外科手術を伴うことから、体力がない場合は施術が受けられないことがあります。
若い頃よりも疲れやすくなった、体力がないと実感している方は多いのではないでしょうか。

入院を伴うような外科手術ではありませんが、歯茎を切開してあごの骨に穴を開けなければなりません。
体への負担は通常の抜歯とそれほど変わらないとされていますが、体力が著しく低下しているような場合は向いていません。

デメリット③インプラントと骨が結合しにくい

インプラント治療では、外科手術によってあごの骨に人工歯根を埋入し、それがあごの骨と結合するまで待ちます。
埋入するのは、人体に異物と判断されにくい性質を持ち、骨と結合しやすいチタン製の人工歯根です。

埋入した人工歯根は、代謝により少しずつ骨と結合していくことになるのですが、加齢によって少しずつ代謝機能は落ちていきます。
そのため、若い人と比較するとインプラントと骨が結合しにくい状態になってしまうケースも多いです。

すると、傷口がなかなか治らないため感染リスクが増加するだけではなく、インプラントが骨と結合しないために抜け落ちてしまう恐れがあります。
こういった理由から老後はインプラントと骨が十分に結合せず、失敗してしまう可能性があるのもデメリットです。

デメリット④費用が高くなりがち

あごの骨が足りず骨を増やす治療を行う場合は、追加費用がかかります。
これを増やす治療が必要なかったとしても、インプラント治療には保険が適用されないため、全額自己負担です。

インプラント1本あたりの費用は30~40万円程度であり、安いものではありません。
高齢になると他にも病院代がかかりやすくなるため、インプラント治療の費用を工面できず、断念してしまう方もいます。

老後にインプラント治療を受けるメリット

デメリットについて紹介してきましたが、メリットも多々あります。
ここでは、メリットを4つ紹介するので、自分にとってメリットの方が大きいと感じる場合は前向きに治療を検討してみると良いでしょう。

メリット①食事が楽しめるようになる

自分の歯と同じように扱えるようになるので、食事が楽しめるようになります。
食べることが好きな方にとっては、何よりのメリットといえるでしょう。

入れ歯などと異なり、比較的固いものでも食べられます。

メリット②若々しくなる

インプラントは審美性に優れており、見た目が非常に自然です。
まるで自分の歯と同じような見た目になるので、歳をとっても若々しい見た目を維持しやすくなります。

しっかりものを噛めることから、あご周りの筋肉が維持されるのも若々しくなる理由の一つです。

メリット③認知症になるリスクを下げられる

ものをしっかり噛めると脳が刺激を受けるため、認知症になるリスクを下げられるのもメリットです。
また、失った歯をそのままにすると噛み合わせが悪くなってしまいますが、インプラント治療により噛み合わせの改善ができます。

噛み合わせに異常があると血液中のストレスホルモンが増加し、アルツハイマー病の原因といわれるアミロイドβも増加してしまうとされています。
一方で、噛み合わせを回復することでアミロイドβの蓄積は減少するので、認知症を心配している方もインプラントで噛み合わせ改善を目指しましょう。

参考:(PDF)岡山大学:<かみ合わせの異常がアルツハイマー病の原因であるアミロイドβを海馬に増加させることを世界で最初に証明>[PDF]

メリット④コミュニケーションがとりやすくなる

歯を失った状態だとうまく話すことができないほか、見た目も気になるので人との会話を避けてしまう方がいます。
入れ歯にしても見た目が気になる、ずれてしまって発音が聞き取りづらくなるといった理由からコミュニケーションに支障をきたすことも珍しくありません。

インプラントは機能性と審美性に優れているので、コミュニケーションがとりやすくなるのもメリットです。

老後にインプラント治療を受ける際の注意点

老後にインプラント治療を受けようと考えている方は、注意点も確認しておきましょう。
以下3つのような注意点があります。

毎日の手入れが必要

インプラント自体が虫歯や歯周病になることはないのですが、日々のお手入れを怠ってしまうとインプラント周囲炎と呼ばれる歯周病のような状態になることがあります。
周囲の状態が悪化しインプラントが抜け落ちてしまう可能性もあるので、毎日、丁寧にお手入れしなければなりません。

入れ歯のように取り外しができないので、歯ブラシやフロスなどを活用してケアしていくことになります。

対応できる歯医者が限られる

インプラントはすべての歯医者で対応しているわけではありません。
特に、老後であごの骨が少なくなっている場合はインプラントに対応している歯医者でも治療を断られてしまうことがあります。

選択する歯医者によって対応できる範囲が異なるので、そういった場合は難症例も対応できるような歯医者で相談すると良いでしょう。

持病関連のリスクが高まる

歳を重ねると体調を崩しやすくなり、高血圧や糖尿病といった持病のリスクも高まります。
インプラントは全身の健康状態が良くなければ受けられないので、特に全身疾患が悪化した場合はインプラント治療が受けられなくなる可能性も考えておきましょう。

持病を抱えながらインプラント治療を受けようと考えている方は、持病の主治医ともよく相談した上でタイミングを考える必要が出てきます。
自分の場合はインプラント治療が適しているかわからない場合は、医師に相談しておきましょう。

老後にインプラント治療を受けるのが困難なケース

希望すれば誰でも老後にインプラント治療ができるわけではありません。
以下に該当する場合は治療が難しくなります。

【困難なケース】

  • 持病があり全身の健康状態が悪い人
  • 歯周病や虫歯があるなど口腔状態に問題がある人
  • 喫煙している人
  • インプラント埋入に必要なあごの骨の量が不足している
  • 定期的なメンテナンスが難しい

持病の中でも全身疾患がある場合は治療が難しいと判断されることがあります。
例えば、糖尿病や高血圧、心疾患、骨粗しょう症などです。
ただし、これらの持病があっても現在の状態が良好であればインプラント治療ができることもあります。

なお、喫煙している人は埋入した人工歯根と骨が結合しにくいなどの理由から治療が難しいケースが多いです。
それからインプラントは治療完了後も歯磨きによるケアやクリニックでの定期メンテナンスが必要なので、これらが難しい場合には適していません。

インプラント以外の歯を失った際の治療法

歯を失った部分を補うためには、インプラント以外にも入れ歯やブリッジといった選択肢があります。
それぞれ特徴を確認しておきましょう。

入れ歯

一部分のみ歯がない場合は部分入れ歯、全体的に補う必要がある場合は総入れ歯を検討することになります。
部分入れ歯は、クラスプと呼ばれる留め金を残っている歯に引っかけて固定するものです。

総入れ歯は、床(しょう)と呼ばれる土台部分を下あごの場合は歯茎の上に、上あごの場合は上あごにぴったりと吸着させるような形で使用します。

保険が適用されるものは安く作れますが、違和感や異物感があり、慣れるまでに時間がかかってしまう方が多いです。
お手入れする際は口から取り外して清掃します。

ブリッジ

ブリッジは、失った歯の両隣の歯を削って土台とし、連結した人工歯を取り付ける治療方法です。
入れ歯よりも自然な使い心地が特徴ではありますが、支えとなる歯を削らなければなりません。

また、ブリッジ周辺に汚れが残りやすくなるため、歯周病や虫歯になりやすいのが特徴です。
入れ歯と同様に保険適用のものであれば治療費を安く抑えられます。

老後でもインプラントはメリットの大きい治療法

いかがだったでしょうか。
老後にインプラントを選択するデメリットを紹介しました。
確かにデメリットは考えられますが、健康状態や口腔内の状態に大きな問題がなければ老後であってもインプラントは魅力的な選択肢です。

ただし、若い人が選択するのと比較すると注意したいポイントも増えるので、歯科医院選びは慎重に行いましょう。

きぬた歯科ではこれまでに数多くの症例を手がけており、難症例も治療してきました。
もし、他のクリニックで治療が難しいと断られてしまった方も、一度ご相談ください。
インプラントに関する無料相談にも対応しています。

この記事の監修者

日本歯科大学新潟生命歯学部を卒業後、インプラント治療に従事。現在では年間3000本以上のインプラント治療の実績がある。

日本でインプラント治療が黎明期だったころからパイオニアとして活躍し、インプラントメーカーのストローマン社やノーベルバイオケア社から公認インストラクターの資格を得た。

本の執筆やTV・雑誌などのメディア出演、自身のYouTubeチャンネルなどで情報発信を積極的に行っている。

<主な著書>
インプラント治療は史上最強のストローマンにしなさい!!
歯医者が受けたい!インプラント治療
あっそのインプラント、危険です!!

<YouTubeチャンネル>
八王子きぬた歯科

<外部サイト>
きぬた 泰和 Wikipedia