インプラント歯周炎とは

インプラント歯周炎とは、インプラント周辺の組織が歯周病に感染する病気のことです。
インプラントは丈夫な印象がありますが、天然の歯よりも抵抗力が低く、歯根膜がないため隙間ができており、細菌が進行しやすい状態となっています。

インプラント歯周炎と歯周病の違い

インプラント歯周炎と歯周病の違いは、主に進行速度と重症化するリスクです。
インプラント歯周炎は痛みが出にくいため、自覚症状がありません。
進行が早く、気付いたときには骨にも炎症が起こり、かなり進行していたという事態になります。

インプラント歯周炎の症状

インプラント歯周炎の症状は、主に歯茎の出血です。
初期段階は通常の歯周病と一緒で、痛みはほとんどありませんが、歯茎の腫れや出血が目立ち、歯磨きや歯間ブラシをしたときに出血が見られます。
症状を放置していると痛みが出てきて、そのときにはかなり進行している可能性が高いです。

インプラント歯周炎の原因

インプラント歯周炎の原因は1つではありません。主に以下の5つです。
これから紹介する原因を押さえて、インプラント歯周炎の予防に繋げましょう。

  • 治療後のケアが不十分
  • 喫煙習慣
  • 糖尿病
  • 歯ぎしり・食いしばり
  • 歯周病

治療後のケアが不十分

しっかりと歯磨きを行わなかったり、磨けていない箇所が多かったりすると、インプラント周辺に汚れが溜まって細菌が増殖しやすくなり、インプラント歯周炎を引き起こします。
歯の汚れはデンタルフロスと歯磨きで十分に落とすことができます。しかし、歯の汚れを放置していると歯垢(プラーク)が歯石になってしまいます。歯石は、歯科医院でないと落とすことができません。
歯石も歯周病の原因となるため、歯科クリニックでクリーニングをしましょう。

喫煙習慣

喫煙習慣がある方も要注意です。
タバコの煙に含まれるニコチンは、血管を収縮させる作用があり、血の巡りを悪くさせます。
血の巡りが悪くなると、歯茎に十分な酸素や栄養素が渡らなってしまうのです。
その結果、抵抗力が弱まり、インプラント歯周炎を発症するリスクが高くなります。
さらに治療効果を低下させる働きもあり、治療が進みにくくなるデメリットもあります。

糖尿病

糖尿病を患っている方は血糖値が高くなり、そして血糖値が高いと免疫力が弱まります。
その結果、インプラント歯周炎にかかりやすく、タバコと同じように傷が治りにくくなります。
その他の免疫不全も疾患リスクを上昇させるため、十分なケアを行うよう注意してください。

歯ぎしり・食いしばり

歯ぎしりや食いしばりは無意識に行ってしまいがちですが、歯や顎の骨に大きな負担がかかります。
その負担は体重の2倍から3倍ほどです。口腔内に負担がかかると炎症が起こりやすくなり、その結果、インプラント歯周炎を発症します。

歯周病

インプラント治療を受けるならば、歯周病を完治させなければなりません。
インプラント治療を受ける前は、必ず歯周病を治療してください。

インプラントが歯周病になる原因については「インプラントでも歯周病になりますか?」をご覧ください。

インプラント歯周炎を放置するリスク

インプラント歯周炎を放置していると、骨が溶けていき、インプラントがグラグラになります。そして、最終的にインプラントが抜け落ちます。
また、歯周病菌が広がるため他の歯にも感染していきます。
結果として多くの方が歯周病を発症することになり、噛み合わせに問題が生じ、歯が割れたり欠けたりするリスクもあります。
一度破壊された組織の完治は困難です。インプラントを行っている方は、日頃のケアが非常に重要です。

インプラント周囲炎かどうかのチェック項目

インプラント歯周炎は自覚症状がなく、気付いたときにはかなり進行しているケースが多いです。
しかし、以下の症状が見られる方はインプラント歯周炎の可能性があります。

  • ブラッシング時の歯ぐきからの出血有無
  • 歯周病への罹患歴
  • インプラントへの違和感
  • 歯ぎしりの有無

当てはまっている項目が多い方は、一度定期検診へ行きましょう。

ブラッシング時の歯ぐきからの出血有無

インプラント歯周炎の初期症状では、ブラッシングのときに歯茎からの出血が見られます。
特に強い力で磨いているわけでもないにもかかわらず、歯茎から出血する方は要注意です。
インプラント歯周炎は早期治療が重要です。すぐに歯科医師に診てもらいましょう。

歯周病への罹患歴

歯周病への疾患歴がある方でしっかりと治療していない方は、インプラント歯周炎を起こすリスクが高くなります。
インプラントは天然歯以上に感染しやすく、進行しやすいものです。
そもそもインプラント治療を受けるにあたって歯周病があるとできませんが、その前に放置していた心当たりがある方は要注意です。

インプラントへの違和感

インプラントを支えている歯槽骨が溶けると、インプラントを支えるのが難しくなり、ぐらぐらします。
そのまま放置していると、さらにぐらつきが強くなり、最終的には抜け落ちてしまいます。

歯ぎしりの有無

歯ぎしりをしていると歯茎が下がりやすくなり、歯周組織がその傷つくため、細菌が侵入しやすくなり、炎症を起こしやすくなります。したがって、インプラント歯周炎発症するリスクが高くなります。

そのほか

ここで紹介した項目以外にも、糖尿病や糖尿病で免疫力が下がっていたり、喫煙習慣で歯茎の血液の巡りが悪くなっていたりする方も、インプラント歯周炎を引き起こしやすいため注意が必要です。

インプラント歯周炎の治療方法

インプラント歯周炎の治療方法は、非外科的治療と外科的治療の2種類に大きく分けられます。
ここでは、それぞれの治療法を解説します。

非外科的治療

非外科的治療とは歯周ポケットの掃除をし、そこから薬剤、もしくはレーザーで細菌を死滅させます。
そして、抗生物質で炎症を抑制して、歯磨きや生活指導する治療方法です。

この治療方法は歯肉を切開する必要は無いものの、骨の吸収が軽度の場合に限ります。
重症化している場合は、次に紹介する外科的治療が行われます。

外科的治療

光的治療とは骨の吸収が進んでいる場合に行う治療です。
歯肉を切開して、そこから殺菌します。そして骨移植もしくは骨の再生を促すメンブレンで覆って、骨を再生します。
それでも改善されない場合は、インプラントを除去しなければなりません。

インプラント歯周炎の予防方法

インプラント歯周炎のリスクを下げるためには、以下の予防法が効果的です。

  • 日頃の正しいケア
  • クリニックでの定期的な検診・ケア
  • 禁煙
  • 生活習慣の改善

日ごろのケアをしっかりとすることでリスクを大幅に下げられますので、ぜひこれから紹介する予防に取り組んでください。

日頃の正しいケア

日頃の正しいケアを行いましょう。まず、日頃の正しいケアとは、ブラッシング・フロスのことです。
ブラッシングをするのはもちろんですが、それだけでは落とせない汚れがたくさんあります。
フロスでケアすることで、歯石の除去率は80%と大幅にアップします。
初めは時間がかかるものの、慣れてしまえば5分足らずで終了する作業です。寝る前に1日1回はするようにしましょう。
また、フロスでのケアは口臭予防にもつながります。

クリニックでの定期的な検診・ケア

日頃正しいケアをしていたとしても、3ヶ月から最低でも半年に1回は、クリニックで定期検診を受けるようにしてください。
定期検診を受けることで、日頃、歯をしっかりと磨けているかわかり、歯周病や虫歯の早期発見につながります。
定期検診は保険適用で受けられます。3ヶ月から半年に1回は定期検診を受けるようにしましょう。

禁煙

喫煙者は非喫煙者に比べて歯周病にかかりやすく、悪化しやすいことがわかっています。
喫煙しても治療すれば治るだろうと思う方もいるかもしれませんが、喫煙していると治療効果は低く、治りが悪くなります。
これは、タバコの煙や成分には血管を収縮する効果があり、血液循環を悪化させるためです。歯茎に十分な酸素が行き渡らなくなると、歯周病の原因となる細菌が増殖しやすくなります。
歯にヤニが着色することも考えると、喫煙は望ましくありません。

生活習慣の改善

生活習慣が乱れていると、歯茎が腫れたり、出血したりする原因になります。これは体の免疫力が下がり、歯周病菌の力が強まるためです。

免疫力を高めるためには、バランスの取れた食事を1日3食摂り、質の高い睡眠をとるようにしましょう。また、アルコールを控えるのも効果的な方法の1つです。

さらに意外ですが、よく笑うことで免疫力を上げる効果があります。これは副交感神経が優位になり、身体がリラックスするためです。
ストレスは日々の免疫力を下げてしまうため、ストレス解消をしていきましょう。

インプラント歯周炎のリスクを下げるジルコニア製インプラント

インプラント歯周炎のリスクを下げる方法の1つに、ジルコニア製インプラントが挙げられます。
ジルコニア製インプラントはチタンと比較すると、プラークがつきにくく落としやすいという特徴があります。
日ごろのケアを怠っているとインプラント歯周炎になる可能性はあるものの、リスクを下げることができます。さらに審美性にも優れており、強度が高いのも魅力です。
治療費が高いのはデメリットであるものの、検討してみてはいかがでしょうか。

インプラントとは

まとめ

いかがでしたでしょうか?
インプラント歯周炎は自覚症状がなく、気づいたときにはかなり進行しているとのケースが多くあります。上に厄介なものですが、日ごろのケアをしっかりとすれば、リスクを下げられます。
日頃のケアでは、ブラッシングだけではなくフロスも取り入れるようにしましょう。そして、半年に1回は定期検診を受け、3ヶ月に1回はクリーニングを受けるようにしてください。

インプラント治療で悩みがある方は、ぜひきぬた歯科へご相談ください。
きぬた歯科では年間で、3,000本ものインプラント治療を行っています。
インプラント治療を検討されている方は、ぜひお気軽にお問い合わせください。

この記事の監修者

日本歯科大学新潟生命歯学部を卒業後、インプラント治療に従事。現在では年間3000本以上のインプラント治療の実績がある。

日本でインプラント治療が黎明期だったころからパイオニアとして活躍し、インプラントメーカーのストローマン社やノーベルバイオケア社から公認インストラクターの資格を得た。

本の執筆やTV・雑誌などのメディア出演、自身のYouTubeチャンネルなどで情報発信を積極的に行っている。

<主な著書>
インプラント治療は史上最強のストローマンにしなさい!!
歯医者が受けたい!インプラント治療
あっそのインプラント、危険です!!

<YouTubeチャンネル>
八王子きぬた歯科

<外部サイト>
きぬた 泰和 Wikipedia