インプラントは歯並びを直す治療ではない

まず、インプラントは歯並びを直すための治療ではなく、虫歯や歯周病、外傷などで歯を失った際の治療法の一つです。顎の骨に人工の歯根を埋め込んだ上で、上部にセラミックやジルコニア製の人工歯を取り付け、失った歯の機能を取り戻します。

インプラントとは?メリット・デメリットや他の治療との違い

インプラント治療で使われる人工歯は、機能面のみならず、見た目の面でも優れているため、インプラント治療をすれば歯並びもきれいになる、と考える方も多いかもしれません。また、芸能人やSNSのインフルエンサーが、歯並びを整えるためにインプラントを入れた、といった話を見聞きした方もいるでしょう。

このような事例から、ガタガタの歯を全部抜いてインプラントにしたら、矯正と同じような結果が得られるのでは?と考えてしまうかもしれませんが、特別な理由がない限り、積極的な抜歯はおすすめできません。ご自分の歯はできるだけ残しておいたほうがよいでしょう。

あくまでも、インプラントの目的は、失った歯の機能を補い、噛んだり話したりできるようにすることにあり、歯並びをきれいにするのは「歯科矯正」です。

インプラント治療と歯科矯正の違いについては、次項で詳しく解説します。

インプラント治療と歯科矯正の違い

インプラント治療と歯科矯正には、治療の目的などの違いがいくつかあります。
以下の表に、それぞれの違いを比較してまとめました。

インプラント治療と歯科矯正の違い

インプラント治療 歯科矯正
治療の目的 失った歯を補う 歯並びをきれいにする
治療費 30~250万円程度 10~150万円程度
保険適応の条件 基本的に保険適用外 基本的に保険適用外
治療期間 約半年~1年 約半年~3年

インプラント治療は、永久歯が抜けた部分にインプラントと呼ばれる人口の歯を装着する治療法で、失った歯を補うことが目的です。
対して歯科矯正は、患者様自身の歯を移動させて歯並びをきれいにすることが治療の目的であり、マウスピース矯正やワイヤー矯正などの種類があります。

また、インプラント治療と歯科矯正のどちらも健康保険適用外であるため、治療費や補償内容などは歯科医院によって異なるケースが多いです。
適正な価格で治療を受けるためにも、治療費の相場と比較しながら信頼できる歯科医院を選びましょう。

治療の期間は、インプラント治療と歯科矯正のどちらも半年から1年以上かかります。
インプラント治療の場合は、あごの骨の状態などによって期間が延びることもあり、歯科矯正の場合はもともとの歯並びの状態などによって、変動することがほとんどです。

治療費や治療の期間は、歯科医院によってそれぞれ異なるため、治療の疑問や不安などはカウンセリングの際に解消することをおすすめします。

インプラントの治療費用

歯並びを直したい場合は歯科矯正を先にする

歯並びを直す場合は、歯科矯正を先にしてからインプラント治療を行います。

インプラント治療では、土台としてチタン製のねじをあごの骨に埋め込んで、そのうえに人口の歯であるインプラントを装着します。
チタン製のねじをあごの骨に埋め込むため、一度治療をすると埋め込んだ位置からインプラントを動かすことが基本的にはできません。

そのため、先に歯科矯正を行わないとインプラントを入れたとしても、歯並びが悪くなってしまいます。
患者様自身の歯を、必要な位置まで動かす治療である歯科矯正を先に行い、歯並びをきれいにして歯の隙間をなくすことで、インプラントを適切な位置に入れられます。

また、歯科矯正を先にすることにより、歯の全体のバランスや嚙み合わせをインプラント治療の前に決めることが可能です。
そのため、インプラント治療のあとに、インプラントと患者様自身の歯の間に隙間ができてしまったというトラブルなどが起こりにくいです。

治療後のトラブルを避けるためにも、歯科矯正で歯の位置を直したあとに、インプラント治療を行うことをおすすめします。

インプラントがすでに入っている場合も歯科矯正から行う

インプラント治療を以前にしたことがある場合も、歯科矯正を先に行います。
すでに埋め込まれているインプラントはそのままの状態にしておき、依頼する歯科医師と相談して歯科矯正とインプラント治療の計画を立てましょう。

また、歯科矯正を行う歯科医院は、以前にインプラント治療を行った歯科医院と同じにするか、同じ系列のクリニックにすることをおすすめします。
なぜなら、以前のカルテが残っているため、正確かつスムーズに治療を進められるからです。

別々の歯科医院で歯科矯正とインプラント治療を行う場合であれば、それぞれの歯科医院が密に連絡を取り合って、患者様の歯の治療を進めていかなければなりません。
インプラント治療後に歯科矯正を行う際は、通常の歯科矯正やインプラント治療を行う以上に慎重な計画が必要です。

歯並びを直したい場合は歯科矯正を先にしてからインプラント治療を行う

いかがでしたでしょうか?

インプラント治療は、永久歯が抜けた部分にインプラントという人口の歯を装着する治療法で、失った歯を補うことが治療の目的です。
一方で、歯科矯正は歯並びをきれいにすることが治療の目的で、患者様自身の歯をワイヤーなどで移動させます。

そのため、歯並びを直したい場合は歯科矯正を先に行って、歯の隙間をなくすことでインプラントを適切な位置に入れられるでしょう。
安心して治療を受けるためにも、カウンセリングの際に治療に関しての疑問や不安は解消することをおすすめします。

きぬた歯科は、国内でトップクラスのインプラント治療の実績を持つ歯科医院です。
カウンセリングの際にご遠慮なく質問してください。

この記事の監修者

日本歯科大学新潟生命歯学部を卒業後、インプラント治療に従事。現在では年間3000本以上のインプラント治療の実績がある。

日本でインプラント治療が黎明期だったころからパイオニアとして活躍し、インプラントメーカーのストローマン社やノーベルバイオケア社から公認インストラクターの資格を得た。

本の執筆やTV・雑誌などのメディア出演、自身のYouTubeチャンネルなどで情報発信を積極的に行っている。

<主な著書>
インプラント治療は史上最強のストローマンにしなさい!!
歯医者が受けたい!インプラント治療
あっそのインプラント、危険です!!

<YouTubeチャンネル>
八王子きぬた歯科

<外部サイト>
きぬた 泰和 Wikipedia