インプラント治療における仮歯とは

インプラント治療における仮歯とは、人工歯根であるインプラント体(土台)の埋め込みから、最終的な人工歯の装着までの間だけ使用する、仮の歯のことです。

一般的なインプラント治療では、まずあごの骨にインプラント体を埋め込む手術を行います。インプラント体が骨と結合し、定着するまで数か月ほど待ってから、上部構造となる人工歯を装着します。この期間を土台のみの状態で過ごしていると、さまざまなデメリットが生じるため、インプラント体の埋入と併せて仮歯をつけます。

仮歯はプラスチック製で、見た目は自分の歯とそれほど変わりません。しかし、人工歯に比べると耐久性に劣り、すり減ったり割れたりすることもあります。あくまでも人工歯の代用であり、一時的に使用するものと捉えましょう。

インプラントの治療で使用する仮歯の役割

インプラント治療をするうえで、仮歯を入れることには2つの役割があります。
なぜ仮歯を入れなければならないのか、それぞれの役割を詳しく見ていきましょう。

役割①歯並びの歪みを抑制する

歯を失ったところを長期間放置すると、あいたすき間の両側にある歯が動いてしまうことで、歯並びが歪む可能性があります。

あごの骨に埋め込んだインプラント体が骨としっかり定着したあとに、人工歯を被せることになります。
インプラント体を入れた段階では、周りの組織とまだ結合していないため、人工歯をすぐに被せることができないのです。
そのため、一時的な役割として仮歯を入れる必要があります。

また、インプラント体は金属であるため、むき出しの状態では周りの粘膜を傷つけてしまう可能性が高いです。
そのため、人工歯を被せるまでの期間に仮歯を入れて、歯並びが歪んでしまうことや新たな傷ができることを防ぐ必要があります。

役割②患部を保護する

口内はつねに約1,000億~6,000億もの細菌が存在しており、なかには虫歯や歯周病の原因となる細菌も含まれていることがあります。

インプラント体が結合する前に、周囲の歯肉が細菌感染を起こした場合には炎症を引き起こす可能性が高いです。
炎症を起こすとインプラント体が結合するまでに時間がかかってしまうため、注意しなければなりません。

また、食事や会話など、口は普段の生活を送るうえでよく動かしている部分なので、食事の噛み合わせや冷たいものの刺激が、インプラント体への負担となってしまいます。
そのため、インプラント体や周辺組織を守ることを目的として仮歯を入れる必要があるのです。

役割③見た目をよくする

仮歯には、見た目の違和感をなくし、審美性を保つ役割もあります。

仮歯を入れていないと、見た目には歯が抜けているように見えます。前歯の場合は特に目立ってしまうでしょう。また、発声の際に隙間から空気が漏れてしまうため、うまく発音しにくくなります。

仮歯を装着することで、治療中もストレスなく日常生活を送ることができます。

役割④顎骨や歯茎を安定させる

仮歯を入れることには、あごの骨や歯ぐきを安定させる目的もあります。

入れ歯を長期間使っていた方や、歯が抜けたまま放置していた方は、あごの骨や歯ぐきが変形していることがあります。このような場合は、仮歯の形を調整しながら、人工歯を入れるまでの期間に、口内状態の安定を図ります。

インプラント治療において仮歯を入れる期間

インプラント体を入れてから周りの組織と結合するまでの期間は、人工歯を被せることができず仮歯で過ごすことになります。
その期間は人によって異なりますが、約3~6か月は必要だと考えておきましょう。

インプラント体の固定されている強度によっては、目安の期間よりも早まることや長引くこともあります。
気になる方は、仮歯をどのくらいの期間入れなければならないのか、主治医に直接確認しておくことをおすすめします。

仮歯が入っているときに気をつけたいこと

仮歯が取れたり壊れたりした場合には、インプラント治療に影響を及ぼす可能性があります。
そのため、仮歯を入れている期間は、以下3つの注意点に気をつけましょう。

注意点①患部を刺激しない食べものを選ぶ

仮歯が取れたり壊れたりすることを防ぐためには、食べるものに注意しなければなりません。
仮歯は、一時的な歯の役割で入れるものなので、耐久性が低いです。
さらには、粘着があるものや硬いものを噛んだ場合には、仮歯が取れてしまうことや壊れてしまうことがあります。
そのため、仮歯を入れている期間には以下の食べものは控えましょう。

仮歯を入れている期間におすすめしない食べもの

  • キャラメル
  • ガム
  • ソフトキャンディ
  • グミ
  • せんべい

仮歯を入れている期間は、歯を使わなくても食べられるヨーグルトやスープなどがおすすめです。

できるだけ、インプラント治療をしている箇所に刺激を与えないような食事を意識しましょう。

注意点②破損した際にはすぐに診てもらう

もし、なにかの拍子に仮歯が取れたり壊れたりした場合は、放置せずにすぐに主治医に相談しましょう。

仮歯がついていない状態が長引いてしまうと、インプラント体を入れた両側の歯が動くことで仮歯が入らなくなることや噛み合わせが悪くなる可能性が高まります。
また、仮歯が壊れている場合には、周りの粘膜を傷つける恐れもあります。

いずれにせよ、仮歯が取れたり壊れたりしている状態で、なにもせず長期間放置することにメリットはないので、なるべく早く治療を行えるようにしましょう。

注意点③仮歯のまま治療を放置しない

インプラント治療をするうえで、仮歯を入れたまま治療を放置してしまうと、インプラント体が周りの組織と結合しない可能性があるため、放置しないようにしましょう。

仮歯はプラスチックで作られているので、普段の食事や会話によって徐々にすり減っていきます。
その仮歯を入れた状態で治療をせずに長期間放置してしまうと、噛み合わせが変化する可能性があります。
噛み合わせが変化すると、インプラント体へ強い衝撃がかかることや周りの組織と結合しないまま抜け落ちるといったことが懸念されるのです。

また、仮歯を入れたまま治療を長期間放置すると、仮歯そのものが変色することや口臭の発生源になることもあるので、注意しましょう。

もし、なにか事情があり、インプラント治療を途中で止める場合には、早めに主治医に相談することをおすすめします。

インプラント治療の仮歯は歯並びの歪みや患部を保護するために必要

いかがでしたでしょうか?

インプラント治療をする場合には、必ず仮歯を入れなければならない期間があります。
仮歯を入れる理由としては、歯並びの歪みを抑制することや患部の保護することなどの役割があるためです。

仮歯を入れる期間は、人によって異なるものの約3~6か月が目安となります。
仮歯を入れた状態では、仮歯にやさしい食べものを選ぶことや破損した場合にはすぐ相談をすること、途中で治療を中断しないことが注意点として挙げられます。

インプラント治療の本数が国内最多のきぬた歯科では、仮歯を入れる期間もしっかりご説明しておりますので、不安な方もお気軽にご連絡ください。
インプラントの費用について気になる方はぜひ、「インプラントの費用の基礎知識と1本あたりの費用について」をご覧ください。

この記事の監修者

日本歯科大学新潟生命歯学部を卒業後、インプラント治療に従事。現在では年間3000本以上のインプラント治療の実績がある。

日本でインプラント治療が黎明期だったころからパイオニアとして活躍し、インプラントメーカーのストローマン社やノーベルバイオケア社から公認インストラクターの資格を得た。

本の執筆やTV・雑誌などのメディア出演、自身のYouTubeチャンネルなどで情報発信を積極的に行っている。

<主な著書>
インプラント治療は史上最強のストローマンにしなさい!!
歯医者が受けたい!インプラント治療
あっそのインプラント、危険です!!

<YouTubeチャンネル>
八王子きぬた歯科

<外部サイト>
きぬた 泰和 Wikipedia