なぜインプラントの治療期間に違いが生まれるのか

インプラントの治療期間の一般的な目安は3か月~1年程度ですが、4倍も差があるのはなぜなのでしょうか?
それは、歯肉の状態やあごの骨の密度など、お口のなかの環境は人によって大きく異なるためです。

インプラント治療では、歯が抜けてしまった場所の歯肉を切開し、その下にある骨に穴をあけて、金属でできたインプラント体を埋め込みます。
この埋め込んだインプラント体が、ほかの歯と同じようにしっかりと安定しなければ歯として使えないため、骨とインプラント体が結合することを待つ必要があるのです。

健康的な歯肉で、なおかつあごの骨も密度があれば2~3か月という比較的短期間で骨とインプラント体が結合します。
逆に、歯周病で歯肉が炎症を起こしている場合やあごの骨が溶けている場合、また骨粗しょう症などで骨密度が低い場合は骨とインプラント体の結合に時間がかかります。

また、あごの骨が少ない場合はインプラント治療とは別で、あごの骨を増やす治療や歯肉を移植する治療を行う可能性もあるため、その場合はさらに長い期間を要するでしょう。

 

インプラントの治療の流れと必要な治療期間

ここからは、インプラント治療の流れと治療に必要な期間をご紹介します。

インプラント治療を検討している方は、ぜひ参考にしてみてくださいね。

①治療計画と精密検査

まずは口腔内の治療歴や現在の状態、そのほか喫煙歴や既往歴など全身の健康状態を把握します。インプラント治療は外科手術を伴うので、入念な検査が必要です。

そのうえで、インプラント治療を行う歯や残存歯も合わせた治療計画を立てます。

治療計画と同時進行で、CTやレントゲンを使った精密検査も行い、骨の状態もチェックするのです。ここまで終わればある程度の治療費や治療期間、治療方針が決定します。

治療計画中には何度かカウンセリングも行うので、不安な点や確認しておきたいことはあらかじめその場で聞くようにしましょう。

ここまでに必要な期間は通院回数として2~3回程度、期間として2週間程度です。

②事前治療

事前治療はインプラント治療を行う人全員にあるわけではなく、インプラントを入れる前に治療しておきたい項目があった場合に行われます。

例えば歯周病がある人は、インプラント治療よりも先に歯周病を治す必要があります。

そのほかにもCTやレントゲン等の精密検査で、骨の量が少ないと判断された場合は、骨を増やす骨造成治療をしなければなりません。

このように人によってすぐにインプラント治療に入るのではなく、前準備で治療を行うこともあるのです。

事前治療の期間や通院回数は明確なものがありませんが、治療している箇所の状態が改善するまで通う必要があるでしょう。

③人工歯根埋入手術

ここまできたら、ようやくインプラント治療に入ります。

顎骨にインプラントの土台となるチタン製の人工歯根を埋め込む手術が「人工歯根埋入手術」です。

顎骨の状態がよいという前提で、1度の手術で終わる1回法と、1度の手術で人工歯根と顎骨が定着させ、その後2度目の手術で人工歯根と人工歯を連結させる2回法の2つから選ぶことができます。

1回法も2回法も仕上がりに差はありませんが、1回法の方が1度の手術で終わるので、通院回数が少なくて済み、手術時間も短縮につながると人気です。

とはいえ、先述したように1回法ができるのは顎骨の状態が良いことが前提で、できる医院も限られているのが現状。

自分はどちらか分からないという方は、治療計画を決める段階で、医師に相談しておくとよいでしょう。

④インプラントの定着期間

インプラントの埋め込みが完了したら、人工歯根と顎骨が定着するのを待つ定着期間が入ります。

2回法で手術した場合は、1回目と2回目の手術の間におよそ3~6ヶ月の定着期間を要します。とはいえ、人工歯根と顎の骨が結合するまでには、個人差があるのを覚えておきましょう。

ちなみに2回法の2回目の手術は、およそ30分程度で完了します。2回目の手術から最大で1ヶ月半ほど開けたのち、人工歯のセットに入る流れです。

⑤人工歯のセット

人工歯と顎の骨が無事に定着・結合できているのが確認できたら、型を取って自分に合う人工歯をセットします。

このとき切開した歯茎の傷口が治っているかも同時に確認します。

セットしたら嚙み合わせを調整してOKであれば、人工歯とアバットメントをつなげてインプラント治療は完了です。

インプラント治療後も、定期的にメンテナンスを受けて良い状態をキープする必要があります。また自宅でのケアも行いましょう。

インプラントの治療期間が延びる要因

インプラント手術の効果を適切に得るためには、あごの骨や歯肉の状態が健康であることが大切です。
そのため、もし骨や歯肉が一定の条件を満たしておらず、このままインプラント手術を行うのは難しいと医師から判断された場合は、別の手術を行うことがあります。
別の手術を行うということは、それだけインプラントの治療期間も長くなるということです。

そこで、ここからは、インプラント治療が伸びる要因となることの多い3つの手術を紹介します。

 

要因①サイナスリフト/ソケットリフト

上の歯でインプラント治療を行う場合、上あごの骨の厚みが十分な基準に達していないときには上あごの骨を増やす手術を行う必要があります。
インプラント治療において、上あごの骨を増やすときにはサイナスリフト、またはソケットリフトという手術を行うことが多いです。

サイナスリフトは元々歯が生えていた部分の側面に穴をあけ、移植骨を入れることで骨を増やせる手術で、4~7か月程度の期間がかかります。
ソケットリフトは、手術のために新しく穴をあける必要はなく、インプラント体を埋め込む穴から移植骨を入れる手術のため、インプラントの手術と同時に行えます。

 

要因②骨誘導再生手術(GBR法)

下のあごの骨の厚みや幅が足りない場合には、骨を再生させるためにGBR法と呼ばれる手術を行うことになります。
GBR法は、人工骨もしくはご自身のあごの骨の一部を埋め込み、特殊な人工膜で覆うことで骨の再生・成長を促すという手術です。

インプラントの手術と同時に行うため、手術日を別で設ける必要はありませんが、骨が成長してインプラント体が安定するようになるまで待つ必要があります。
そのため、ただインプラント手術を受けるだけの場合よりもインプラント体が安定するようになるまでやや時間を要することにはなります。
GBR法とインプラント手術を同時に行った場合、インプラント体が安定するまでの期間は人によって幅がありますが、およそ6~9か月程度が目安です。

GBR法によって生じる腫れや痛みの原因、対処法については「インプラント治療でGBR法を行った際に、腫れや痛みは起きますか?」をご覧ください。

 

要因③歯肉移植手術

たとえ、あごの骨が健康な状態であっても、重度の歯周病などが原因で歯肉が腫れ、下がってしまっている場合には、インプラント手術の前に歯肉移植手術を行う必要があります。

歯肉移植手術は、ご自身の上あごの裏側の歯肉を採取し、インプラント体を埋め込む箇所の周りに移植するという手術です。
上あごの歯肉は、どのような方でも基本的に固くて丈夫で、尚且つ範囲が広く採取しやすいため、移植手術に向いています。

歯肉を移植してから安定するまでの期間は1~2か月程度です。
インプラント体を埋め込む前にまず歯肉が安定している必要があるため、歯肉移植手術が終わってからインプラント手術を行うという順番になります。

 

インプラントの治療期間は人によって数か月単位で異なる

今回は、インプラントの治療期間の目安について解説しました。

インプラントの治療期間は、あくまでも目安とはいえ、その目安ですら3か月~1年と大きな幅があります。
これは、患者様の体質やお口のなかの状況によって、埋め込んだインプラント体が安定するまでの期間や、別途必要な手術の種類、またその治療にかかる期間が大きく異なるためです。

きぬた歯科では、最短2か月でインプラント治療が完了できます。
また、あごの骨が薄く他院で治療をお断りされた方でも、骨を増やす治療によって対応できる可能性があります。


インプラント治療に少しでも興味のある方は、ぜひ当院にご相談ください。

インプラントの費用について気になる方はぜひ、「インプラントの費用の基礎知識と1本あたりの費用について」をご覧ください。

この記事の監修者

日本歯科大学新潟生命歯学部を卒業後、インプラント治療に従事。現在では年間3000本以上のインプラント治療の実績がある。

日本でインプラント治療が黎明期だったころからパイオニアとして活躍し、インプラントメーカーのストローマン社やノーベルバイオケア社から公認インストラクターの資格を得た。

本の執筆やTV・雑誌などのメディア出演、自身のYouTubeチャンネルなどで情報発信を積極的に行っている。

<主な著書>
インプラント治療は史上最強のストローマンにしなさい!!
歯医者が受けたい!インプラント治療
あっそのインプラント、危険です!!

<YouTubeチャンネル>
八王子きぬた歯科

<外部サイト>
きぬた 泰和 Wikipedia