チタンがインプラント治療に使われる理由

チタンは金属の一種ですが、人体に異物として認識されにくくなじみやすい、「生体親和性」の高い素材です。

一般的な金属と異なり、チタンは空気に触れるとすぐに酸化皮膜を形成するため、金属イオンが溶け出すことはほぼありません。そのため、金属アレルギーを引き起こしにくいという特徴があります。また、骨と強く結合するという珍しい特性も持ち合わせています。

軽くて強度が高く、かつ錆びにくいという点でも、チタンはインプラント治療に適した素材と言えるでしょう。

オッセオインテグレーションとは

「骨と強く結合する」というチタンの特性は、ラテン語で「骨」を表す「オス」と、英語で「結合」を意味する「インテグレーション」を合わせ、「オッセオインテグレーション」と呼ばれます。

チタンが骨の中に埋め込まれると、その周りに新しい骨の組織が取りついていきます。やがてチタン表面の細かい部分にまで入り込み、まるで体に取り込まれたような状態になります。この作用によって、自分の歯に近い感覚でインプラントを使うことができるのです。

オッセオインテグレーションをより強固にするため、多くのインプラントには、ネジのような溝や凸凹が設けられています。骨としっかりと結合するには、3か月~半年ほどの期間が必要です。

チタン以外のインプラントの材料

ご紹介してきたように、チタンは金属アレルギーを引き起こしにくい素材ではありますが、ごくまれにアレルギー反応を呈する方もいらっしゃいます。金属アレルギーが心配な方は、チタン以外の非金属素材を用いることも検討してみましょう。ただし、土台となるインプラント体・アバットメント・上部構造(人工歯)ごとに、使える素材は限られます。

①ジルコニア

ジルコニアは、人工ダイヤモンドとも言われる非常に硬い素材です。強度に優れているため、強い力がかかりやすい奥歯のインプラントに向いています。

白色で審美性が高く、主に人工歯やアバットメントに用いられます。ジルコニア製のインプラント体も存在しますが、日本ではまだ承認されていません。

②オールセラミック

オールセラミックは、金属やプラスチックを使わずに作成されています。ジルコニアに比べて透明度が高く、天然の歯に近い見た目です。特に審美性を重視する、前歯の人工歯に向いています。

③ハイブリッドセラミック

ハイブリッドセラミックは、セラミックとプラスチックレジンを混ぜた素材で、人工歯として用います。

低コストではありますが、耐久性・審美性という点では、他の素材に比べて劣る部分があります。

インプラント治療は金属アレルギーでも受けられる

金属アレルギーをお持ちの方は、チタンでできているインプラント治療を受けられるかどうか心配ですよね。

チタンは、金属のなかでも生体親和性と呼ばれる、人体に異物として認識されにくい性質を持つ金属です。
そのため、チタンはアレルギー反応が起きにくく、金属アレルギーの方でも基本的には問題なくインプラント治療を受けられます。

純度の高いチタンでインプラント治療をしよう

チタンは基本的にアレルギー反応が起きにくい金属ですが、インプラントにチタン以外の金属や不純物が混ざっていると、アレルギー反応が起きる可能性があります。

そのため、金属アレルギーが不安な方は、チタンの純度が高いインプラントを購入することをおすすめします。
メーカーや歯科医院で、取り扱っているインプラントにはさまざまな種類があるため、歯科医師と相談してインプラントを選びましょう。

チタン以外のインプラントの材料

金属アレルギーが心配な方には、非金属素材のインプラントもおすすめです。
以下に、非金属素材のインプラントの種類をまとめました。

非金属素材のインプラント

  • ジルコニア
  • オールセラミック
  • ハイブリッドセラミック

ジルコニアはセラミックの1種ですが、本物の歯のような美しさがあり審美性が高い素材です。
また、噛み合わせる歯に対して負担が少ないことも特徴だといえます。

オールセラミックは、セラミックのみでできたインプラントです。
摩耗しにくいことが特徴ですが、強い力で噛むと割れる可能性があるため、注意しましょう。

ハイブリッドセラミックは、プラスチックとセラミックが混ざった素材です。
摩耗しにくく低コストですが、経年劣化で変色してしまう点がデメリットです。

インプラントとセラミックの違いについては「インプラントとセラミックってなにが違うのでしょうか?」をご覧ください。

インプラント治療で金属アレルギーが発症することはある?

純チタンではない場合や微量な不純物がチタンに混ざっている場合、チタン本来の高い生体親和性が低くなるため、アレルギー反応が起きる可能性があります。
しかし、チタンにはもう1つ金属アレルギー症状を起こしにくい特徴があるので、ご安心ください。

チタンは空気に触れると酸化して、酸化被膜と呼ばれる膜を作ります。
この酸化被膜が、唾液やリンパ液といった体液からチタンの成分が流れることを防ぐため、アレルギー反応も起こりにくくなるのです。

そのため、インプラント治療をする際はアレルギー反応を起こす確率が非常に低い純チタンがおすすめです。

インプラント治療で金属アレルギーになった場合

もし、インプラントのチタンが原因で、金属アレルギーの症状が現れた場合は、インプラントを取り除かなければなりません。
以下に、金属アレルギーの主な症状をまとめました。

金属アレルギーの症状例

  • 全身の赤い腫れ
  • 全身の痛み
  • 全身のかゆみ
  • 口腔扁平苔癬
  • 掌蹠膿疱症

インプラントの金属によるアレルギー症状は、口の周りのみに現れるものではなく、全身に現れることが多いです。
口腔扁平苔癬(こうくうへんぺいたいせん)や、掌蹠膿疱症(しょうせきのうほうしょう)といった、治療が難しいアレルギー反応が起きる可能性もあります。

インプラント埋入後にアレルギー反応が現れたら、すぐに病院で診察してもらいましょう。

金属アレルギーが不安な場合は「パッチテスト」を受ける

インプラントの治療をする前に、金属アレルギーの反応が起きないか不安な方は、アレルギーのパッチテストを行うことがおすすめです。

インプラント治療や歯科治療で多く使用される金属の、アレルギーがないかどうかをパッチテストで確認をしてからインプラント治療をしましょう。
以下に、歯科治療で多く使用される金属をまとめました。

歯科治療で多く使われる金属

  • チタン
  • パラジウム
  • ニッケル
  • 第二水銀

チタンは生体親和性や骨との結合性に優れているためインプラントに使われる

いかがでしたでしょうか。

チタンは、直接骨と結合する性質を持っているため、インプラントの材料として多く使われています。
また、チタンは生体親和性が高く人体になじみやすい金属でもあります。

しかし、絶対にアレルギー反応が起こらないとは限りません。
事前にパッチテストを受けることや、純度の高いチタンをインプラントとして使用することでアレルギーのリスクを減らせます。

きぬた歯科では、インプラント治療を行うだけでなく、アフターフォローも充実しています。
金属アレルギーに関する不安やインプラント治療に不安のある方は、ぜひ当院へご相談ください。
インプラントの費用について気になる方はぜひ、「インプラントの費用の基礎知識と1本あたりの費用について」をご覧ください。

この記事の監修者

日本歯科大学新潟生命歯学部を卒業後、インプラント治療に従事。現在では年間3000本以上のインプラント治療の実績がある。

日本でインプラント治療が黎明期だったころからパイオニアとして活躍し、インプラントメーカーのストローマン社やノーベルバイオケア社から公認インストラクターの資格を得た。

本の執筆やTV・雑誌などのメディア出演、自身のYouTubeチャンネルなどで情報発信を積極的に行っている。

<主な著書>
インプラント治療は史上最強のストローマンにしなさい!!
歯医者が受けたい!インプラント治療
あっそのインプラント、危険です!!

<YouTubeチャンネル>
八王子きぬた歯科

<外部サイト>
きぬた 泰和 Wikipedia