インプラント治療「オールオン4」とは?
オールオン4は、すべての歯を失っている方や多くの歯を失っている方に適したインプラント治療の1つです。従来が1本の歯につき1本のインプラントを埋め込むのに対し、オールオン4では、上顎や下顎の歯を4本のインプラントで支える方法を取ります。
このため、費用面や治療期間の負担を軽減できるのが大きな特徴です。少ないインプラント数ですべての人工歯を支える構造により、術後のメンテナンスも簡便に行いやすく、安定した機能と見た目の回復が期待できます。
総入れ歯との違い
オールオン4と総入れ歯には、以下の違いがあります。
項目 | オールオン4 | 総入れ歯 |
固定方法 | 顎の骨に直接固定 | 粘膜に吸着 |
安定性 | 高い | ズレやすい傾向あり |
噛む力 | 天然歯の70~80% | 天然歯の20~30% |
違和感 | 少ない | ある程度感じる |
寿命 | 適切なケアで15年以上 | 5~7年程度 |
初期費用 | 高額 | 比較的安価 |
オールオン4は安定性や機能面で優れていますが、費用や適用条件に注意が必要です。総入れ歯は初期費用が安いものの、長期的には作り替えが必要となる場合があります。どちらを選択するかは、個々の状況や希望に応じて検討することが大切です。
オールオン4の寿命はどれくらい?
オールオン4は、適切なケアと定期的なメンテナンスを行うことで、15年から20年以上持続する可能性があります。寿命に影響を与える要因と延命のポイントを、以下の表にまとめました。
影響要因 | 延命のポイント |
口腔衛生状態 | 丁寧な歯磨き、歯間ブラシやフロスの使用 |
メンテナンス頻度 | 定期的な歯科検診(3~6ヶ月に1回程度) |
生活習慣 | 禁煙 |
全身の健康状態 | バランスの取れた食事 |
咬合力の強さ | 歯ぎしりなどの悪習慣の改善 |
オールオン4の寿命を最大限に延ばすには、歯科医師の指示に従い、定期的なメンテナンスを欠かさないことが大切です。何か異常を感じた場合は、すぐ歯科医院に相談しましょう。
オールオン4のメリット
オールオン4は、多くの歯を失った方や総入れ歯に抵抗のある方にとって、安定性があり、見た目や機能も優れたインプラント治療の選択肢です。おもなメリット6つを紹介します。
- 費用を抑えられる
- 手術の負担が少ない
- 治療期間が短い
- 固定式で安定感がある
- 自然な見た目と噛み心地
- 違和感が少なく発音しやすい
詳しく見ていきましょう。
費用を抑えられる
オールオン4は、従来のインプラント治療と比較して、費用を抑えられます。その理由は、片顎あたり4本のインプラントですべての歯を支えるため、インプラント本数を大幅に減らせることがあげられます。
また、骨の量が少ない部分を避けて埋入するため、多くの場合、骨造成手術を回避できるのも特徴です。さらに、即時荷重法を採用することで治療期間が短縮され、通院回数も減少します。
これらの要因により、オールオン4は従来の治療法と比較して、総合的に見て費用を抑えられる可能性が高い治療法だといえます。ただし、個々の症例によって適用可能かどうかは異なるため、歯科医院での相談が必要です。
関連記事:インプラントのオールオン4治療の費用の目安を教えてください
手術の負担が少ない
オールオン4は、わずか4本のインプラントで上下の歯列全体を支えるため、手術時間が短縮されます。また、多くの場合で骨移植が不要となり、追加の外科的処置を避けられるため、身体的・精神的負担が軽減されます。
さらに、即日または翌日に仮歯を装着できるため、日常生活への影響を最小限に抑えられるでしょう。
手術時間が短いことで麻酔時間や身体への負担も軽減されます。これらの特徴により、オールオン4は患者にとって身体的負担の少ない治療法といえます。
治療期間が短い
オールオン4の治療期間は約6ヶ月で、通常のインプラント治療と比べて短期間です。
オールオン4は初日にインプラント埋入と仮歯装着を行い、6ヶ月の骨結合期間後に永久的な人工歯をセットします。一方、通常のインプラントは骨造成や二次手術が必要な場合があり、さらに時間がかかります。
オールオン4は手術当日から仮歯を使用でき、骨造成も多くの場合不要です。これにより治療期間が短縮され、患者の負担軽減と早期の機能回復が可能となります。
固定式で安定感がある
オールオン4は顎の骨に直接固定されるため、従来の総入れ歯と比べて格段に高い安定感があります。固定式のメリットには以下があります。
- 脱着の必要がない
- 食事中に外れる心配がない
- 会話中の不安がない
- 安定した噛み心地
これにより自信を持って笑顔になれ、食事の制限も少なくなり、口腔内の違和感も軽減されます。固定式の安定感は、オールオン4の大きな魅力の1つです。従来の総入れ歯では得られなかった安心感と快適さを提供してくれます。
自然な見た目と噛み心地
オールオン4は、自然な見た目と噛み心地を実現する治療法です。患者の顔に合わせた人工歯を使用し、本物の歯と見分けがつかない美しさを実現します。4本のインプラントで顎全体を支えることで、安定した咀嚼が可能かつ、総入れ歯よりも固定力が高くなります。
これにより、食事の安心感や会話時の自信、快適な装着感が得られるでしょう。ただし、最適な結果を得るには、経験豊富な歯科医師と技工士による適切な治療が不可欠です。また、定期的なメンテナンスで長期的な効果を維持できます。
違和感が少なく発音しやすい
オールオン4は、従来の総入れ歯と比べて違和感が少なく、発音がしやすいメリットがあります。
これは、顎骨に直接固定されるため口腔内での安定性が高く、舌の動きが自然になるためです。また、天然歯に近い形状と配置で設計されているため、唇や頬の形が自然に保たれ、口腔内の空間も適切に確保されます。
これらの特徴により、サ行音・タ行音・ラ行音などの発音が改善されやすくなります。口蓋部分をほとんど覆わないため、舌が正しい位置に収まりやすく、より自然な発音が可能です。
多くの方は1〜2週間程度で慣れていきますが、必要に応じて微調整を行うことで、さらに快適な状態に近づけられます。
オールオン4のデメリットやリスク
オールオン4は多くの利点がある治療法ですが、以下のデメリットやリスクも存在します。
- すべての症例に適用できるわけではない
- 顎の骨の状態によっては適さない場合がある
- 専門的な技術と設備が必要
- ほかの治療法と比べて費用が高額になる場合がある
- インプラント周囲炎のリスク
これらを理解することで、より適切な治療選択ができるでしょう。
すべての症例に適用できるわけではない
オールオン4は多くの患者に適していますが、すべての方に適用できるわけではありません。この治療法を選択する前に、以下を検討する必要があります。
検討項目 | 注意点 |
全身の健康状態 | 重度の糖尿病、骨粗しょう症、血液凝固障害、免疫系の疾患がある場合は適用できない |
生活習慣 | 喫煙習慣やアルコールの過度な摂取は治療の妨げになる |
アレルギー | 金属アレルギーがある場合は適用できない |
口腔内の状態 | 重度の歯周病や口腔内感染症がある場合、事前の処置が必要となる |
これらの要因を考慮し、歯科医師との詳細な相談を通じて、オールオン4が適切な治療法かどうかを判断することが大切です。
顎の骨の状態によっては適さない場合がある
オールオン4は革新的なインプラント治療法ですが、顎の骨の状態によっては適さない場合があります。以下の状況ではオールオン4が困難になる可能性があります。
- 骨量が極端に少ない場合
- 骨質が脆弱な場合
- 顎の形状が特殊な場合
骨移植やサイナスリフトなどの補助的な処置を併用することで、適用範囲を広げられることもあります。しかし、これらの追加処置により、治療期間の延長や費用の増加が生じる可能性も。
そのため、オールオン4を検討される際は、事前に詳細な診断と検査を受け、担当医と十分に相談することが重要です。CT撮影などの精密検査により、顎の骨の状態を正確に把握し、最適な治療計画を立てられます。
専門的な技術と設備が必要
オールオン4は、高度な専門技術と最新の設備を必要とする治療法です。歯科医師には、CTスキャンによる顎骨の詳細な分析やインプラント埋入位置の正確な計画など、専門的なスキルが求められます。これらの技術を習得するには、専門的なトレーニングと多くの症例経験が不可欠です。
また、3D CTスキャナーやCAD/CAMシステムなどの最新設備も要します。これらの設備は高額であり、導入には相当な投資が必要です。
ほかの治療法と比べて費用が高額になる場合がある
オールオン4は、ほかの歯科治療法と比べて費用が高額になる場合があります。
入れ歯やブリッジは多くの場合健康保険が適用されますが、オールオン4は一般的に自由診療です。そのため、患者の自己負担額が大きくなります。
ただし、長期的な耐久性や機能性を考慮すると、費用対効果は高いといえるでしょう。治療法の選択時は、初期費用だけでなく長期的な視点も大切です。
インプラント周囲炎のリスク
オールオン4治療には、インプラント周囲炎のリスクがあります。これは、インプラント周囲の組織に炎症が起こる状態を指します。おもな原因は以下のとおりです。
- 不十分な口腔衛生
- 喫煙
- 糖尿病などの全身疾患
- 過度の咬合力
リスク軽減のためには、定期的なメンテナンスや適切な口腔ケア・禁煙、全身疾患の管理、過度の咬合力の回避が効果的です。
初期症状には、歯肉の腫れや赤み・出血、違和感や痛み、口臭などがあります。これらの症状に気づいたら、すぐに歯科医院を受診しましょう。
オールオン4が向いている方
オールオン4は多くの方に適した治療法ですが、とくに以下のような方に向いています。
- 総入れ歯に抵抗がある
- 顎の骨の量が少ない
- 多くの歯を失っている
ただし、オールオン4が適しているかどうかは、個々の状況によって異なります。
総入れ歯に抵抗がある
従来の総入れ歯に不満や違和感を覚える方にとって、オールオン4は魅力的な選択肢です。総入れ歯特有の問題点、たとえば違和感や不安定さ、味覚の低下などを解消できるからです。
オールオン4は顎骨に直接固定されるため、食事中や会話中に外れる心配がありません。また、口蓋を覆わない設計により、食べ物の味を明確に感じられます。さらに、見た目も自然で、他人に入れ歯だと分かりにくいのも利点です。
総入れ歯では困難だった固い食べ物も、ある程度噛めるようになるため、食生活の質も向上します。
顎の骨の量が少ない
顎の骨の量が少ない方にとって、オールオン4は有効な選択肢となります。従来のインプラント治療では、骨量不足のために適用が難しかった方でも、オールオン4なら治療可能な場合が多いからです。
オールオン4では、骨量の多い前歯部と奥歯部の骨を効果的に利用し、わずか4本のインプラントで全体の歯列を支えます。また、インプラントを斜めに埋入する特殊な技術により、骨密度の高い部分を最大限に活用できるでしょう。
これにより、多くの場合は骨移植手術を回避でき、治療期間の短縮や費用の削減にもつながります。ただし、極端に骨量が少ない場合は追加の処置が必要になる可能性もあるため、詳細な診断と相談が欠かせません。
多くの歯を失っている
多くの歯を失っている方にとって、オールオン4は機能性と審美性を両立する優れた選択肢です。従来の総入れ歯やブリッジと比較して、より安定した咀嚼機能と自然な見た目を提供します。即日仮歯装着により、治療中も笑顔や会話に自信を持てるでしょう。
また、骨量が少ない場合でも適用できる可能性が高く、骨移植の必要性が低いため、治療期間の短縮と費用抑制にもつながります。
オールオン4が向いていない方
オールオン4は多くの方に適した治療法ですが、以下の方には向いていない場合があります。
- 金属アレルギーがある
- 喫煙習慣がある
- 糖尿病を患っている
- 骨粗しょう症である
- インプラント後のメンテナンスに通えない
これらの特徴に該当する方は、歯科医師と相談のうえ、別の治療法の検討をおすすめします。
金属アレルギーがある
金属アレルギーがある方は、オールオン4治療に適していない可能性があります。インプラントにはおもにチタンが使用されますが、まれにアレルギーを持つ方もいます。金属アレルギーがある場合、インプラント埋入後に炎症や痛み、腫れなどの症状が現れるかもしれません。
ただし、近年ではジルコニアなどの非金属材料を使用したインプラントも開発されています。これらの代替材料を使用することで、金属アレルギーがある方でもインプラント治療を受けられる可能性があります。
治療を検討する際は、事前にアレルギー検査を受け、詳細な診断を行うことが大切です。歯科医師と相談しながら、最適な治療法を選択しましょう。
喫煙習慣がある
喫煙は口腔内の血流を悪化させ、インプラントの成功率を低下させるおもな要因の1つです。また、歯周病のリスクを高め、インプラント周囲炎の発症率も上昇させます。
治療後の回復期間中も、喫煙は傷の治りを遅らせ、感染リスクを高める可能性も。長期的には骨密度の低下を引き起こし、インプラントの安定性に悪影響を及ぼします。
このため、オールオン4治療を検討している喫煙者は、治療前に禁煙を強く推奨されます。少なくとも治療前後の一定期間は禁煙することが望ましいでしょう。
糖尿病を患っている
血糖値の上昇は傷の治りを遅らせ、感染リスクを高める可能性があります。
ただし、血糖値が適切にコントロールされている場合は治療を受けられる可能性があります。検討時は主治医と歯科医師の連携が不可欠で、血糖値管理状況や合併症の有無、全身状態の詳細な評価が必要です。
治療後も定期的な血糖値チェックと口腔ケアが重要です。糖尿病患者はインプラント周囲炎のリスクが高いため、慎重なアフターケアが求められます。
骨粗しょう症である
骨粗しょう症の患者にとって、オールオン4は慎重な検討が必要です。骨密度低下がインプラントの安定性に影響するためです。ただし、適用不可能というわけではありません。
詳細な診断と主治医・歯科医師の連携が重要です。骨粗しょう症の治療と並行して進めることも考えられます。
治療後は定期的なフォローアップと適切な口腔ケア、骨粗しょう症の管理が不可欠です。これらの取り組みにより、オールオン4の恩恵を受けられる可能性があります。
インプラント後のメンテナンスに通えない
定期的なメンテナンスは、インプラントの審美性と口腔衛生の維持に欠かせません。
通院が困難な場合、インプラント周囲炎のリスクが高まり、治療の効果が低下するおそれがあります。また、問題の早期発見・対処が難しくなり、結果的に大きな治療が必要になる可能性も。
メンテナンスの重要性を理解し、定期的に通院できる環境にある方が、オールオン4治療に適しているといえるでしょう。通院が難しい場合は、ほかの治療法を検討することをおすすめします。
オールオン4の費用相場
オールオン4の費用相場は、片顎で200万〜400万円程度、上下両方で400万〜800万円程度です。もっとも多い価格帯は200万〜300万円です。費用の差は歯科医師の専門性や経験、使用する材料の質、クリニックの設備などによって生じます。
通常のインプラント治療と比較すると、オールオン4は大幅に費用を抑えられます。全顎のインプラント治療が480万〜960万円程度かかるのに対し、オールオン4は最低400万円程度で済むことがあります。
ただし、オールオン4は保険適用外の自由診療であり、全額自己負担です。費用面での負担は大きいものの、長期的な機能性や快適さを考慮すると、費用対効果の高い治療法といえるでしょう。治療を検討する際は、複数の歯科医院で相談し、適切な判断をすることが重要です。
オールオン4治療の流れ
オールオン4治療は、まずカウンセリングから始まります。患者の悩みや希望を詳しく聞き取り、適切な提案を行うのがこの段階の目的です。続いて、精密検査を実施。歯や顎の骨の状態を確認するため、歯周検査や口腔内写真撮影、CT撮影・レントゲン撮影などが行われます。
検査結果を元に具体的な治療方針を決定し、費用や期間について説明。その後手術に進み、インプラント体の埋入とアバットメントの装着、仮の人工歯の取り付けが行われます。約6ヶ月の経過観察期間を経て、最終的な人工歯を装着して治療は完了となります。
治療後も定期的なメンテナンスが欠かせません。インプラントの長期的な維持のために、継続的なケアが重要となるでしょう。
まとめ:オールオン4はメリットの多い治療法
オールオン4は、従来のインプラント治療と比べて多くのメリットを持つ革新的な歯科治療法です。
4本のインプラントで全顎の歯を支えることで、費用と治療期間を抑えつつ、高い安定性と自然な見た目を実現します。骨量が少ない方や総入れ歯に不満を感じる方にも適しており、咀嚼機能や発音の改善、QOLの向上が期待できます。
ただし、すべての方に適用できるわけではないため、詳細な診断と歯科医師との綿密な相談が不可欠です。適切な症例選択とアフターケアにより、長期的な満足度の高い治療結果が得られるでしょう。
きぬた歯科では、年間3,000本のインプラントを埋入しており、その実績は国内最多です。
もちろん、オールオン4のご相談も受けておりますので、インプラント治療を検討されている方は、ぜひお気軽にご相談ください。
この記事の監修者
日本歯科大学新潟生命歯学部を卒業後、インプラント治療に従事。現在では年間3000本以上のインプラント治療の実績がある。
日本でインプラント治療が黎明期だったころからパイオニアとして活躍し、インプラントメーカーのストローマン社やノーベルバイオケア社から公認インストラクターの資格を得た。
本の執筆やTV・雑誌などのメディア出演、自身のYouTubeチャンネルなどで情報発信を積極的に行っている。
<主な著書>
インプラント治療は史上最強のストローマンにしなさい!!
歯医者が受けたい!インプラント治療
あっそのインプラント、危険です!!
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八王子きぬた歯科
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きぬた 泰和 Wikipedia