そもそもインプラント治療とは?

「インプラント」と聞くと、歯の治療を思い浮かべる方も少なくないでしょう。
しかし、そもそもインプラントとは、「植え付ける・差し込む」を意味する単語であり、体内に埋入する医療器具や材料自体を示します。
歯科治療以外では、心臓のペースメーカーや美容整形に用いるシリコンもインプラントの一種です。

歯科領域で言うところのインプラントは、顎骨に埋め込む人工歯根のことを指します。
顎骨に埋入したインプラントを土台にし、セラミックなどで製作した人工歯を取り付けて失われた歯を補います。

事故や重度の虫歯、あるいは先天的な理由で歯根がないケースでも活用される治療法です。

インプラント治療の概要については「インプラントとは?メリット・デメリットや他の治療との違い」をご覧ください。

オールオン6とは?

オールオン6は、上顎もしくは下顎に6本のインプラントを埋め込み、12本の歯が一体となった義歯を固定する歯科治療の手法です。

1993年にポルトガルの医師、パウロ・マロ氏が開発したインプラント治療「オールオン4」を応用した手法であり、顎骨が薄くなっている方に対しても処置できる点が強みです。

歯列を一挙に治療できるため、短期間で審美性が劇的に改善され、天然歯と遜色ない咬合力が取り戻せます。
食生活の充実は生活の質に直結するため、オールオン6による治療は、自然な咀嚼を助け、老後の人生を豊かにする要素となり得ます。

オールオン6とオールオン4の違い

オールオン6は、オールオン4を応用した施術ということでした。
以降では、オールオン6とオールオン4の違いを解説します。

①適性条件

オールオン6とオールオン4の違いは、顎骨に埋入するインプラントの本数にあります。

どちらの施術も、特定の本数のインプラントを埋め込み、上顎あるいは下顎の歯を一挙に補う点は相違ありません。
ただし、オールオン6は6本、オールオン4は4本のインプラントを使用します。
この数字の違いは、患者様の骨格に起因します。

原型のオールオン4は、欧米人の骨格に合わせて作られた治療法です。
欧米人の骨格は、日本人に比べてしっかりとした構造をもつ傾向があるため、顎骨が薄くなりがちな日本人の場合、オールオン4では耐久力が足りないケースが発生します。

顎骨が薄い方でも治療を受けられるようにと、オールオン4を改良したのがオールオン6です。
オールオン6とオールオン4は、患者様の顎骨の状態に応じて使い分けられます。

②費用

オールオン6は、オールオン4より埋入するインプラントの本数が2本多いため、金額がやや高い傾向にあります。

それぞれの費用相場は、オールオン6が230万~500万円、オールオン4が200万~400万円です。
とはいえ、こちらの金額はあくまで目安であり、患者様の口腔内の状態や施術内容、クリニックによって費用額が異なります。
実際の費用については、専門のクリニックにお問い合わせください。

③手術時間

オールオン6とオールオン4は、埋入するインプラントの本数に応じて手術の所要時間が異なります。

オールオン6は2~3時間程度、オールオン4は1時間半~3時間程度かかります。
なお、費用と同様に患者様の口腔内の状態など、条件によって所要時間が変動する点はご留意ください。

どちらの施術も入院する必要はありません。

オールオン6のメリット

オールオン6の概要については、ご理解いただけましたでしょうか?
ここからは、一般的なインプラント治療と比較した際の、オールオン6のメリットを紹介します。

メリット①治療期間が短い

オールオン6のメリットの一つは、治療期間が短く抑えられる点です。

総入れ歯を製作する場合、入れ歯ができるまでに1か月程度かかります。
また、インプラントを1本ずつ埋め込む治療をする場合は、インプラントを埋入してから顎骨と結合するまでの3~6か月ほど、期間を空けなければなりません。

一方、オールオン6は、通常のインプラントを複数本埋入するケースに比べて治療期間が短いうえに、施術した日に仮歯が装着できます。
仮歯を装着した直後でも、柔らかい食べ物であれば、問題なく食事が摂れます。
正式な義歯の装着は、約3か月後になりますが、歯がない状態で過ごす必要がないのは、大きなメリットです。

メリット②身体にかかる負担が少ない

オールオン6は、1本ずつインプラントを入れる施術に比べて、身体にかかる負担が少ないです。

インプラントは埋め込む本数が多いほど、身体にかかる負担が大きくなります。
通常のインプラントは、義歯1本に対して1本のインプラントを埋入しなければならず、片顎すべての歯を入れようとすると、12本の処置が必要です。

その点、オールオン6なら、12本の歯に対して、6本のインプラントのみで済みます。
本数が少ないぶん、通常のインプラントより、術後の腫れや痛みが少ない傾向にあります。

メリット③顎骨が薄くても治療できる

顎骨が薄いために、インプラント手術が受けられなかった方も、オールオン6なら治療を受けられるケースがあります。

一般的なインプラント治療では、患者様の顎骨が不足している場合、骨の量を増やす「骨造成」という手術を行うか、それすらできない場合は、治療を断ることもあり得ます。

オールオン6なら、骨のある部分を選んでインプラントを埋入できるため、顎骨が薄い方でもインプラント手術を受けられる可能性が高いのです。

骨造成については「インプラント治療で聞く「骨造成」とはなんでしょうか?」をご覧ください。

オールオン6のデメリット

前項では、オールオン6のメリットをお伝えしました。
とはいえ、オールオン6にもいくつかのデメリットがあります。

オールオン6を受ける際には、以下の点に注意してください。

デメリット①残っている歯を抜歯する必要がある

オールオン6は、歯列すべてを模した義歯を固定する治療のため、装着予定の顎に歯が残っている場合、健康な歯だとしても抜かなくてはなりません。

抜歯時には、口内が腫れ、痛みが生じるケースもあります。
とはいえ、虫歯になっているなど状態が悪い歯を放置していると、ほかの歯に悪影響を及ぼす可能性もあるため、抜歯は必ずしも悪いことばかりではありません。

デメリット②施術できる医療機関が限られる

通常のインプラント治療と比較して、オールオン6に対応しているクリニックは多くありません。
高度な医療設備と医師の技術が求められるため、オールオン6の治療が受けられるクリニックは、必然的に限られてしまうのです。

オールオン6を受けたい場合は、クリニックのホームページを確認するか、直接問い合わせるなどして、事前に調べる必要があります。

デメリット③保険適用されない

オールオン6は自由診療であり、保険適用外となるため、総入れ歯など保険適用の治療と比べて費用が高額になりがちです。

とはいえ、インプラント治療は特殊なケースを除き、基本的には保険適用外となります。
通常のインプラント治療の費用は、歯1本につき30万~40万円が相場といわれており、複数のインプラント治療を施すより、オールオン6のほうが安く済む場合が多いです。

オールオン6に向いている方の特徴

オールオン6に向いている方の特徴は以下の通りです。

オールオン6に向いている方の特徴

  • 顎骨が薄い方
  • 治療したい歯の本数が多い方
  • 総入れ歯が合わない方

オールオン6は、顎骨が薄くても受けられるインプラント治療です。
骨を理由に、インプラント治療が受けられなかった方でも、オールオン6なら施術できる可能性があります。

また、歯がほとんどない方や、現在お使いの総入れ歯が合わないとお悩みの方にもおすすめできる治療法です。
オールオン6は、顎の骨にしっかりと固定されるため、装着に違和感がなく、天然歯と変わらない自然な咬合力が得られます。

インプラントとは

オールオン6は顎骨が少ない方でも受けられるインプラント治療

いかがでしたでしょうか?

オールオン6は、上顎または下顎に6本のインプラントを埋入し、歯列を模した義歯を固定するインプラント治療の一種です。
顎骨が薄いためにインプラント治療を受けられなかった方や、ほとんどの歯を失った方にご活用いただきたい治療法です。

類似した治療法のオールオン4との違いは、使用するインプラントの本数であり、2本多くインプラントを使用するオールオン6は、より耐久力が得られます。

きぬた歯科では、精密検査で歯と顎骨の状態を確認したうえで、オールオン6を含む、最適なインプラント治療をご提案いたします。
歯を治して心おきなく食事を楽しみたいとお考えの方は、ぜひ、当クリニックにご相談ください。

この記事の監修者

日本歯科大学新潟生命歯学部を卒業後、インプラント治療に従事。現在では年間3000本以上のインプラント治療の実績がある。

日本でインプラント治療が黎明期だったころからパイオニアとして活躍し、インプラントメーカーのストローマン社やノーベルバイオケア社から公認インストラクターの資格を得た。

本の執筆やTV・雑誌などのメディア出演、自身のYouTubeチャンネルなどで情報発信を積極的に行っている。

<主な著書>
インプラント治療は史上最強のストローマンにしなさい!!
歯医者が受けたい!インプラント治療
あっそのインプラント、危険です!!

<YouTubeチャンネル>
八王子きぬた歯科

<外部サイト>
きぬた 泰和 Wikipedia