骨造成手術とは

骨造成手術とは、骨が不足している部分に骨を増やすために行う手術を指します。

インプラント治療を行うためには、インプラント体を埋め込むために、あごの骨に十分な厚みが必要です。
なぜなら、あごの骨の厚みが十分にない状態でインプラント手術を行うと、インプラント体が骨を突き抜けたり、歯肉からインプラント体が見えてしまったりするためです。

そのため、インプラント治療の前には、まずインプラント体を埋め込める程度の骨が残っているかどうかをレントゲン撮影やCTで確認します。
骨の厚みが足りない場合には、インプラント治療を行う前に骨造成手術を行って、十分な骨の厚みが確保できる状態にします。

骨造成については「インプラント治療で聞く「骨造成」とはなんでしょうか?」をご覧ください。

インプラント治療前に骨造成手術が必要な理由

そもそもインプラント治療とは歯がない箇所・顎骨にインプラントを埋め込み、それを軸とし人工歯を被せ、歯を再現するという仕組みです。
インプラントを埋め込むためには、十分な厚みや高さが必要になってくるわけですが、人によっては歯周病や外傷、加齢などが原因で顎の骨が減っていることがあります。

顎の骨が減っている状態でインプラントをしてしまっては、他の組織を損傷したり、インプラントを埋められたとしてもトラブルが起きやすくなってしまったりといったことが懸念されます。
骨造成手術を行い骨を増やせば、顎骨が少ない方であってもインプラントにも耐えられる安全な土台作りができます。

骨造成手術の種類

インプラント治療における骨造成手術には、3つの種類があります。
それぞれの方法の具体的な治療の流れを、以下にまとめました。

種類①サイナスリフト

サイナスリフトは、上あごの奥歯の骨の厚みが5mm以下の場合や、多数の歯がなくなっている場合に使われる骨造成手術です。

上あごの奥歯には、上顎洞という鼻へと通じる大きな空洞が存在します。
そのため、インプラント治療を行う際に上顎洞まで通じる穴を開けてしまうと、鼻の奥を傷つけることになり、副鼻腔炎(蓄膿症)を引き起こす可能性があるのです。

上顎洞に穴を貫通させないためには、サイナスリフトとよばれる方法で骨を移植し、骨の厚みを増やす必要があります。
以下に、サイナスリフトの手術の流れをまとめました。

サイナスリフトの手術の流れ

  1. 麻酔を打ち、歯が生えていた部分の側面から歯ぐきを切開する
  2. 上あごの骨にあるシュナイダー膜(上顎洞粘膜)を慎重に剥がす
  3. 歯ぐきとシュナイダー膜のあいだに、10mm以上の厚みが確保できるように骨を移植する
  4. 歯ぐきを縫合する
  5. レントゲン撮影で骨に厚みができたかを確認する

サイナスリフトを行うことで、上あごの骨の厚みが足りない方でもインプラント治療が行えるようになります。
しかし、上あごに移植した骨が定着するためには約6か月の期間が必要になり、そのあとにインプラント手術を行うため、治療の期間が長くなる点はデメリットでしょう。

種類②ソケットリフト

上あごの奥歯の骨の厚みが5mm以上あるにもかかわらず十分な骨がない場合には、ソケットリフトと呼ばれる骨造成手術を行います。
また、上あごの骨が局所的にない場合にも同様です。

ソケットリフトの特徴は、あごの骨の移植と、インプラント体を埋入する手術を同時に行えるという点です。
サイナスリフトよりも負担が少なく、短期間で治療ができる点は、ソケットリフトのメリットといえるでしょう。

ソケットリフトの具体的な手術の流れを、以下にまとめました。

ソケットリフトの手術の流れ

  1. 麻酔を打ち、歯がなくなった部分に専用のドリルを使用して穴を開ける
  2. シュナイダー膜を傷つけないように、骨の厚みを1mm残して骨を移植する
  3. 骨を移植した箇所にインプラント体を埋め込む

インプラント体と移植した骨が安定するまで約3か月待ち、そのあとに人工歯を被せてインプラント治療は完了です。

種類③GBR法

GBR法は、あごの骨の幅や厚みが足りない場合に行う手術で、骨誘導再生法とも呼ばれます。
具体的には、骨の厚みや幅が不足している部分に、骨や人工骨を注入して盛り込んだあと、メンブレンという専用の膜で覆い、骨を自然に再生させる方法です。
以下に手術の流れを詳しくまとめました。

GBR法の手術の流れ

  1. 歯がなくなった部分に直接穴を開ける
  2. 穴にインプラント体を埋入する
  3. 骨が不足している部分に骨を注入する
  4. 注入した部分をメンブレンで覆う

GBR法では、骨の注入とインプラント体を埋め込む手術を同時に行うことが多いです。
ただし、骨が大きく減少している場合は、骨に厚みを持たせてからでなければ、インプラント体を埋入できません。
そのため、治療期間は人によりますが、骨の再生には約4~6か月かかる場合があります。
そのあと、骨とインプラント体がしっかり定着したことを確認して、人工歯を被せます。

GBR法によって生じる腫れや痛みの原因、対処法については「インプラント治療でGBR法を行った際に、腫れや痛みは起きますか?」をご覧ください。

骨造成手術をしたあとの3つの注意点

ここからは、骨造成手術をしたあとに注意したい点を紹介します。
手術をしてしばらくのあいだは、患部に気をつけて過ごしましょう。

注意点①頻繁にうがいをしない

手術をした患部からはしばらく出血があり、血液が患部に留まると、血餅(けっぺい)という血液の塊ができます。
血餅には、細菌や刺激から患部を守り、傷の治りを早くするという重要な役割があります。
血餅を作るためには、血液をしばらくその部分に留めておく必要があるのですが、うがいを頻繫に行うと血液が流されるため、血餅ができにくくなるのです。

そのため、手術のあとは、できるだけうがいを控えましょう。

注意点②歯ブラシで患部を刺激しない

患部の歯磨きは、うがいと同様に血餅ができにくくなる一因となります。
手術当日から抜糸までのあいだは歯ブラシが患部に当たらないように注意しましょう。

また、患部がむき出しになってしまうと、細菌による感染症が起きる可能性が高くなります。
患部には触れずに、口内を清潔に保つように意識して歯を磨きましょう。

注意点③舌や手で患部に触れない

歯磨きと同様に、患部を舌や手で触れることも、血餅が作れない原因になります。
手術のあとに麻酔が切れると、患部に痛みが発生することがありますが、できるだけ触れないように注意することが大切です。

また、作られた血餅を剥がすような行為も、患部の出血や細菌による感染症を引き起こすことに繋がるため、控えましょう

骨造成手術にかかる費用

実際に骨造成手術にかかる費用はどのくらいなのでしょうか。
サイナスリフトとソケットリフト、そしてGBR法のそれぞれの費用の相場を紹介します。

骨造成手術にかかる費用

  • サイナスリフト:5万~35万円程度
  • ソケットリフト:1歯につき3万~5万円程度
  • GBR法:1歯につき6万円程度

実際にかかる費用は、患部や口内の状態によって異なるため、上記で紹介した治療費はあくまで目安です。
インプラント治療を依頼するクリニックで、自分の口内や骨の状態を診察してもらい、費用や治療期間、そして治療方法を詳しく相談しましょう。

インプラント治療は骨が少ない方でも骨造成手術によって治療が可能になる

いかがでしたでしょうか。

骨の厚みがない上あごのインプラント治療には、骨造成手術という骨を厚くする手術が必要になる場合があります。

骨造成手術には、サイナスリフトとソケットリフト、そしてGBR法の3種類があり、骨の状態や埋め込みたいインプラントの種類によって手術方法や費用が変わります。

また、骨造成手術をしたあとは、細菌による感染症を防ぐために、患部を舌や手、歯ブラシなどで刺激しないように気をつけましょう。

きぬた歯科では患者様の患部の状態に合わせて、適切な治療方法を提案しています。
インプラント治療にお困りの方は、ぜひ当院へご相談ください。

この記事の監修者

日本歯科大学新潟生命歯学部を卒業後、インプラント治療に従事。現在では年間3000本以上のインプラント治療の実績がある。

日本でインプラント治療が黎明期だったころからパイオニアとして活躍し、インプラントメーカーのストローマン社やノーベルバイオケア社から公認インストラクターの資格を得た。

本の執筆やTV・雑誌などのメディア出演、自身のYouTubeチャンネルなどで情報発信を積極的に行っている。

<主な著書>
インプラント治療は史上最強のストローマンにしなさい!!
歯医者が受けたい!インプラント治療
あっそのインプラント、危険です!!

<YouTubeチャンネル>
八王子きぬた歯科

<外部サイト>
きぬた 泰和 Wikipedia