インプラント2本で奥歯にブリッジを取りつける治療方法とは

3本連続で奥歯が欠損している場合、インプラントとブリッジの両方の仕組みを利用する治療方法を選択できます。

まず、失った3本の奥歯のうち、両端のあごの骨にインプラントを埋め込みます。
この2本のインプラントを土台として、歯が3つ連なった人工歯を橋渡しのように被せることで、歯を取り戻す治療方法です。

天然歯を支台歯として用いるために削る通常のブリッジ治療とは異なり、併用治療では、インプラントを支台歯の代わりにするので健康な歯に負担がかかりません。

また、欠損した3本の奥歯すべてをインプラントにするよりもあごの骨への負担を減らせるうえに、治療費も抑えられます。

インプラント2本でブリッジを取りつける治療にかかる費用の相場

ここでは、奥歯が3本連続して欠損した際の治療にかかる費用を、インプラント2本とブリッジを併用して治療する場合と、3本ともインプラント治療する場合で比較します。
連なっている奥歯3本を欠損した際の治療にかかる費用の相場は、以下の表のとおりです。

連続する奥歯3本を失った際の治療にかかる費用の相場の一例

  インプラント(2本)とブリッジの併用治療 インプラント治療(3本)
インプラント本体+手術代 64万~86万円

 

(32万~43万円×2本)

96万~129万円

 

(32万~43万円×3本)

人工歯(ブリッジ用) 3万~5万円
費用の合計 67万~91万円 96万~129万円

インプラント2本でブリッジを奥歯に取りつける治療にかかる費用の相場は、67万~91万円程度です。
3本ともインプラント治療する場合、96万~129万円程度の費用がかかるので、インプラントとブリッジの併用治療のほうが、治療費の負担を減らせます。

インプラントとブリッジの併用治療では、3本の歯の欠損でもインプラント2本だけで治療できるので、そのぶん費用を抑えられます。
インプラント治療は自由診療で、基本的に全額自己負担となり費用が高額になってしまうからです。

ただし、紹介した内容はあくまでも一例であり、クリニックの規定やあごの骨の状態などによって費用は変動します。

奥歯は何本ある?

ここまでは、インプラント2本で奥歯にブリッジを取りつける治療方法を解説しました。
ところで、奥歯はどの歯を指し、どのような役割を担っているのでしょうか。

奥歯は、臼歯(きゅうし)とよばれ、奥から上下に2本ずつ生えている歯を、大臼歯(だいきゅうし)、その横から2本ずつ生えている歯を、小臼歯(しょうきゅうし)と言います。
このように、奥歯は左右に8本ずつ生えるので、合計16本になります。

患者様によっては、上下左右の1番奥にある「第三大臼歯(親知らず)」がすべて生えてくる方もいるので、その場合は合計20本です。

奥歯の役割

噛む力が非常に強い奥歯は、食事の際に食べ物を噛み砕いたり、すりつぶしたりする役割を担っています。
歯の噛み合わせにも影響を与えるので、欠損した奥歯をそのままにしておくと、噛み合わせのバランスが崩れてしまいます。

奥歯を失うと食事や噛み合わせなどに悪影響をもたらすので、なるべく早めにインプラント治療やブリッジ治療を受けましょう。

奥歯のインプラント治療を受けるメリット

ここまでは、インプラントとブリッジの併用治療を紹介しました。
ここからは、インプラント治療とブリッジ治療のメリット・デメリットをそれぞれ紹介します。

まずは、奥歯のインプラント治療を受けるメリットをみていきましょう。

メリット①健康な歯を傷つけずに治療できる

奥歯にインプラント治療を施せば、ほかの健康な歯を傷つけずに歯の機能を取り戻せます。

欠損した歯を補うにはブリッジ治療という選択肢もありますが、ブリッジ治療では支台歯にするために両隣の天然歯を削らなければなりません。
健康な歯にダメージを与えることによって、虫歯になりやすくなるリスクや、歯周病を発症する可能性があります。

一方インプラント治療では、歯が抜けた箇所にインプラント体を埋入したあとに、人工歯を取りつけるので、ほかの歯の寿命を縮めずに済みます。

メリット②あごの骨が痩せるのを防げる

インプラント治療では、インプラント体をあごの骨に埋め込むので、あごの骨が痩せるのも防げます。

あごの骨は咀嚼による刺激が与えられないと強度を保てなくなり、段々痩せていってしまいます。
歯を抜けたままにしている場合はもちろん、入れ歯やブリッジには歯根がないので、噛む力があごの骨にあまり伝わりません。

インプラントであれば、インプラント体があごの骨と結合していて噛む力があごの骨まで伝わるので、あごの骨が痩せるのを防止できます。

メリット③天然歯と同じように噛める

奥歯のインプラント治療を受けるメリットとして、天然歯と同じように噛めるという点も挙げられます。

入れ歯やブリッジでも噛めるようになりますが、天然歯と比較すると、入れ歯では15~30%程度、噛み心地が自然と言われるブリッジでも60%程度です。
インプラントは、インプラント体があごの骨と結合していて土台が安定しているので、天然歯とほとんど同じ噛み心地で噛めます。

特に、奥歯には食事の際に、食べ物を噛み砕いたりすりつぶしたりする役割があります。
インプラントは噛む力があるうえに、強い力がかかってもずれる心配が少ないので、食事を今までどおり楽しめるでしょう。

メリット④噛み合わせのバランスがよくなる

奥歯をインプラントにすると、噛み合わせのバランスも整えられます。

噛み合わせの高さは奥歯によって決まるので、奥歯を失ったまま放置するとバランスが崩れます。
バランスが崩れると、頭痛や肩こり、輪郭の歪みなど健康にも悪影響を及ぼしかねません。

インプラント治療では、インプラント体を埋入する前に、噛み合わせのバランスを調整したうえで手術を実施します。
万が一、手術後に違和感がある場合は、治療を受けたクリニックに相談すれば、対処してもらえるので安心です。

奥歯のインプラント治療を受けるデメリット

続けて、奥歯のインプラント治療を受けるデメリットを紹介します。

デメリット①費用が高額になる

インプラント治療は、基本的に保険適用外となるので、全額自己負担しなければなりません。

前述したように、連続する奥歯3本を失った場合、3本ともインプラントにすると、96万~129万円程度、インプラントとブリッジの併用治療でも、67万~91万円程度かかります。

ただし、クリニックによっては、クレジットカードの分割払いや、歯科治療専用のデンタルローンを利用できます。
これらの支払い方法を利用すれば、手元に十分なお金がない場合であっても、インプラント治療を受けることが可能です。

費用面に不安がある方は、対応しているクレジットカードの種類やデンタルローンの取り扱いの有無を、事前に確認してみてください。

デンタルローンの概要については「デンタルローンとは?インプラント治療の費用をローンで支払えるのは本当ですか?」をご覧ください。

デメリット②インプラント周囲炎を発症する可能性がある

奥歯のインプラント治療は、インプラント周囲炎を発症するおそれもあります。

インプラント手術後に、歯茎に細菌が入り込んで感染が引き起こされると、歯茎の腫れや痛み、出血などが発生します。
歯周病に似たインプラント周囲炎を発症すると、あごの骨が溶かされ、最悪の場合、インプラントを除去しなければなりません。

インプラント周囲炎の発症を防ぐには、毎日のケアを入念に行うことが重要です。
奥歯は歯ブラシが届きにくく、特に汚れが溜まりやすいので、丁寧なブラッシングを心がけてください。

さらに、毎日のケアとともに、インプラントのメンテナンスを6か月に1回程度は受診しましょう。
クリニックのメンテナンスでは、専用の機械によるクリーニングを受けられるので、歯石や歯垢など、セルフケアでは取り除けなかった汚れも除去できます。

デメリット③治療期間がかかる

インプラントは治療が完了するまでに、少なくとも3か月~1年程度の期間が必要です。
これは、インプラント体を埋入したあとに、あごの骨と結合するまで待たなければならないからです。

一方、ほかの治療方法である入れ歯では1~4か月程度、ブリッジは2週間~4か月程度で済みます。

さらに、あごの骨の量が十分でない場合は、骨の量を増やす処置を手術前に行います。
歯周病の症状がある場合は、手術前に治療を受けるための期間を別に確保しなければなりません。

奥歯をインプラントにするメリットとデメリットについては「奥歯を抜歯してインプラントにするメリット・デメリットを教えてください」をご覧ください。

奥歯のブリッジ治療を受けるメリット

それでは、奥歯のブリッジ治療を受けた場合のメリットには、どのようなものがあるのでしょうか。
ここでは、奥歯のブリッジ治療を受けるメリットを紹介します。

メリット①治療期間が短く済む

インプラントや入れ歯と比較すると、ブリッジは短期間で治療が完了します。

前述したように、インプラントの治療には3か月~1年程度、入れ歯でも1~4か月程度かかります。
ブリッジは、2週間~4か月程度で治療が完了し、治療のために何度も通院する必要もありません。

欠損した奥歯を治療したいものの、忙しく通院の時間をあまり確保できない方は、ブリッジ治療を検討してみてはいかがでしょうか。

メリット②種類によっては保険が適用できる

ブリッジ治療で使用する人工歯には、銀歯とセラミックがあり、銀歯を選べば保険が適用されるので治療費を抑えられます。

セラミックは審美性に優れ、変色しにくいという特徴がありますが、保険は適用されません。

メリット③手術によるリスクを減らせる

ブリッジ治療では外科手術を行わないので、手術にともなうリスクを減らせます。

欠損した奥歯を補うには、インプラント治療も有効ですが、インプラント体を埋入する外科手術を受けなければなりません。
インプラント体を埋め込むために、歯茎を切開しあごの骨に穴を開けるので、細菌感染のリスクがともないます。

ブリッジ治療であれば、大掛かりな手術は不要です。

奥歯のブリッジ治療を受けるデメリット

奥歯のブリッジ治療には、メリットがある一方でデメリットも存在します。
ここからは、奥歯のブリッジ治療を受けるデメリットを紹介します。

デメリット①健康な歯を削る必要がある

ブリッジ治療では、人工歯の支えを作るために、欠損している部分の両隣に生えている歯を削らなければなりません。

削ることで健康な歯にダメージを与えるだけではなく、支台歯は橋渡しのように被せた人工歯を支えるので、そのぶん負担がかかります。

負担がかかった歯は寿命が縮むリスクがあるという点には、留意しておきましょう。

デメリット②周りの歯の状態によっては治療できない

支台歯にする歯が不健康であったり、失った歯の本数が多かったりすると、ブリッジ治療を受けられないことがあります。

具体的には、支台歯が重度の歯周病に罹患していると、人工歯を支えられないので治療が困難です。
また、奥歯を3本以上連続して欠損しているケースでは、支台歯を作れず通常のブリッジ治療はできません。
ただし、インプラントとブリッジを併用すれば、連なっている奥歯3本を欠損していても治療できます。

インプラント治療を受けるには、あごの骨の状態を確認する必要があるので、まずはクリニックを受診してみてください。

デメリット③虫歯や歯周病のリスクが高くなる

奥歯のブリッジ治療を受けると、虫歯や歯周病になるおそれもあります。

ブリッジの人工歯と歯茎のあいだには汚れが溜まりやすく、放置していると細菌が発生してしまいます。
奥歯は特に歯ブラシで磨きにくいうえに、歯間ブラシも入らず、不衛生になってしまうので要注意です。

虫歯や歯周病になるリスクを抑えるには、日々のケアをより丁寧に行って、クリニックの定期健診も忘れずに受けることをおすすめします。

インプラントとは

奥歯を欠損したらインプラント2本とブリッジの併用治療を適用できる

いかがでしたでしょうか?

失った奥歯が3本連続している場合、インプラント2本で奥歯にブリッジを取りつける治療方法を選べます。
通常のブリッジ治療とは異なり、併用治療ではインプラントを支台歯の代わりにするので、健康な歯に負担がかかりません。

インプラントとブリッジの併用治療では、欠損した3本の奥歯すべてをインプラントにするよりもあごの骨への負担を減らせて治療費も抑えられます。
ただし、クリニックの規定によって費用は変動するので見積もりを依頼してみましょう。

きぬた歯科では、インプラント治療を実施しており、年間3,000本の治療実績を誇ります。
インプラントとブリッジの併用治療も行っていますので、ぜひご相談ください。
インプラント治療のきぬた歯科

この記事の監修者

日本歯科大学新潟生命歯学部を卒業後、インプラント治療に従事。現在では年間3000本以上のインプラント治療の実績がある。

日本でインプラント治療が黎明期だったころからパイオニアとして活躍し、インプラントメーカーのストローマン社やノーベルバイオケア社から公認インストラクターの資格を得た。

本の執筆やTV・雑誌などのメディア出演、自身のYouTubeチャンネルなどで情報発信を積極的に行っている。

<主な著書>
インプラント治療は史上最強のストローマンにしなさい!!
歯医者が受けたい!インプラント治療
あっそのインプラント、危険です!!

<YouTubeチャンネル>
八王子きぬた歯科

<外部サイト>
きぬた 泰和 Wikipedia