インプラント治療とは?

インプラント治療とは、あごの骨に人口の歯根を埋め込み、その上に人工的に作られた、天然歯を思わせる義歯を装着する治療のことを言います。
審美性に優れているだけではなく、噛む力が衰えないのが特徴です。

入れ歯やブリッジのように、使わない顎骨が痩せる心配もなく、健全な歯を削る必要もありません。
欠損した歯だけを治療できます。

さらに、適切にメンテナンスしていけば、長期的に使用できる面でも魅力的です。

インプラント治療の概要については「インプラントとは?メリット・デメリットや他の治療との違い」をご覧ください。

前歯をインプラント治療することはできるのか?

結論から述べると可能ですが、さまざまな要因があり簡単ではありません。

前歯のインプラント治療を困難にする主な要因としては、あごの骨の薄さや審美性の問題、医師に求められる技術力の高さが挙げられます。
以下の事項にて、詳細を述べていきます。

前歯のインプラント治療が難しい理由

ここからは、前歯のインプラント治療が難しいとされる理由をそれぞれ解説していきます。

理由①あごの骨が薄いため

インプラント治療は、あごの骨にインプラントを埋め込む必要があり、骨が薄い部分だと安定しません。

前歯は奥歯よりも薄い形状をしており、あごの骨の形状も同様に薄いので、インプラントを埋め込む幅が制限されます。
骨の厚みが十分でない場合、厚みを増す骨造成手術を行わなければなりません。

そのため、前歯のインプラント治療は難易度が高いと言われています。

理由②審美性が求められるため

前歯は奥歯よりも見た目が重要視されます。
見た目を美しくするには、以下の条件をクリアしなければなりません。

前歯の美しさを保つための条件

  • 左右対称である
  • 歯茎の形が出ている
  • インプラントの接合部が見えない

前歯のインプラント治療は、歯としての機能を維持するだけではなく、見た目も美しく仕上げる必要があり、難しいとされています。

理由③歯科医師に高い技術や知識が求められるため

インプラント治療は、外科手術をともなう治療方法です。

数ミリのずれが、術後に大きく影響を及ぼす可能性があることから、歯科医師には高い技術と知識、豊富な治療経験が求められます。

前歯のインプラント治療を検討する際は、受診を考えている歯科医院のwebサイトで、過去の事例を確認することをおすすめします。

前歯をインプラント治療するときの費用の目安

前歯1本のインプラント費用の相場は30万~40万円で、手術費用や人工歯などの費用を含みます。

インプラント治療は保険適用外なので、全額自費で支払う必要があり、治療費が高額になりがちです。
さらに、前歯のインプラント治療は奥歯よりも難易度が高く、必要な追加処置が生じた場合は、費用が上がる可能性があることも知っておくとよいでしょう。

事前に、治療計画と費用の詳細を確認しておくと、予算に合った歯科医院を選ぶ際に役立ちます。

前歯をインプラント治療するメリット

前歯のインプラント治療は一般的に難しいと言われていますが、インプラントを埋入することにより、さまざまなメリットがあります。

ここでは、3つの項目に分けて解説していきます。

メリット①自然な見た目になる

まず、 インプラントの見た目が綺麗であることが、メリットの一つです。

入れ歯やブリッジは、天然歯と色味が違ったり、装着するための金具が見えたりしてしまいます。
その点インプラントは、天然歯と遜色ない素材が使用されており、周りから見ても自然な見た目となり、日常生活においても違和感がありません。

メリット②ほかの歯を削る必要がない

インプラントは、周囲の健康な歯を削ることなく装着が可能です。

ブリッジの場合は、両隣の健康な歯を削る必要がありますが、インプラントの場合はあごの骨に直接装着するので、健康な歯を温存できます。

前歯は見えやすい部分なので、削らずに済むことは大きなメリットと言えるでしょう。

メリット③天然歯と同等の咀嚼力がある

インプラントは、あごの骨に直接装着するのでご自身の歯と同じ感覚で噛めます。
咀嚼力が下がる傾向にある入れ歯やブリッジと違い、インプラントは天然歯と同じように歯茎に埋める構造なので、周囲の歯に負担をかけずに咀嚼機能を維持することが可能です。

また、咀嚼機能を維持することで、あごの骨が痩せにくくなり、周囲の歯へ悪影響を及ぼす危険性も低くなります。

前歯をインプラント治療するデメリット

ここまで、前歯のインプラント治療について、多くのメリットを紹介してきました。
しかし、メリットばかりではなく、デメリットを理解することも大切です。

ここからは、前歯のインプラント治療におけるデメリットを解説していきます。
メリット・デメリットの両方を押さえたうえで、ぜひ治療を受ける際の判断材料にしてください。

デメリット①治療費が高くつく

インプラント治療の費用は、全額自費で支払う必要があることは前述しましたが、治療費が高くなる理由はほかにもあります。

まず、インプラント体そのものが高額です。
その理由は、長期間体内に入れていても問題が起こらないよう、安全性の高い素材で作られているからです。

また、歯茎を切開し、インプラント体を埋め込む外科手術が必要で、手術内容も複雑であることから、ほかの治療法に比べて費用が高くなる傾向にあります。

デメリット②インプラントの接合部が見えてしまう

前歯の場合は、骨の量が少ないと接合部が見えてしまうおそれがあり、審美的な問題が生じます。

インプラントを支えるには、埋入する部分に十分な量の骨がある必要があり、足りない場合は骨量を増やす骨造成手術が必要になります。

骨造成手術については「インプラント治療で聞く「骨造成」とはなんでしょうか?」をご覧ください。

デメリット③メンテナンスが必要となる

インプラントは特殊な構造をしているため、セルフケア以外に、定期的に歯科医院でメンテナスを受けなければなりません。

頻度は歯科医院によって異なりますが、3~6か月に1回が一般的といわれています。

メンテナンスを怠ると、インプラント周囲炎になるリスクも高まります。
インプラント周囲炎とは、インプラントの周辺で起きた歯周病のことです。
インプラント周囲炎が悪化してしまうと、インプラントを取り除く事態にまで発展するおそれもあるので、定期的なメンテナンスが必要不可欠です。

前歯のインプラント治療に要する期間

インプラント治療には主に2種類の方法がありますが、今回は二回法を取り上げて紹介します。

検査から治療が終わるまでに、最短2か月程度、長くて6か月以上かかります。
第1治療でインプラントを埋め込んでから、数か月間の治癒期間を設け、インプラントを骨に定着させなければなりません。

なお、インプラントが骨に定着するには個人差があり、期間は多少前後します。

すべての治療が完了したあとは、半年ごとに定期メンテナンスを行います。

前歯のインプラント治療の流れ

ここからは、治療の流れについて順番に解説していきます。

検査、治療計画

まず、問診を行います。
問診は、インプラント治療における知識や、不安点・疑問点を質問できる機会です。

次に、口腔内検査とレントゲン検査を行います。
インプラント治療では、骨の状態を把握することが非常に大切です。
歯科CTといわれる、立体画像を撮影できる機器を備えたクリニックを選ぶとよいでしょう。

検査のあとは、治療計画のご提案を行います。
口腔内の写真を確認しながら治療方法の説明を行い、納得いただければ、第1治療に進みます。

第1治療

インプラント体をあごの骨に埋め込み、歯茎の縫合までを行います。
まず、麻酔をかけたのちに、歯茎を切開し骨に孔を開け、インプラントを埋め込みます。

このときは、仮の歯を設置するので、次の治療まで歯がないという状況にはなりませんのでご安心ください。

第2治療

第1治療で装着した、インプラントと骨の定着を待つため、約2~6か月おきます。
その後、インプラントの定着を確認したら、次は第2治療です。

第2治療では、歯茎を少し切開し、インプラントと人工歯をつなぐアバットメントという部品を差し込みます。
切開した傷が癒えるまでに必要な期間は、3~7日ほどです。

次に行うのが、人工歯を作るための型取りと、噛み合わせの調整です。
型取り後、石膏型をもとに約1週間で蝋の人工歯を作り、噛み合わせに違和感がないか最終調整を行います。
さらに1週間待てば、実際に装着する人工歯ができあがります。

できあがった人工歯をアバットメントに装着し、治療は完了です。

半年ごとの定期メンテナンス

第2治療後、特に違和感がなければ、以後は半年ごとに定期メンテナンスを受けていただくのみとなります。
主に歯のクリーニングや、日頃のケアのチェック、実際の使用感などについてヒアリングを行います。

長くインプラントを使用していただくには、定期メンテナンスは非常に重要です。
口腔内の健康を維持するためにも、忘れずにメンテナンスを受けましょう。

インプラントとは

前歯のインプラント治療は難易度が高いが施術可能

いかがでしたでしょうか。

前歯のインプラントは、歯としての機能性だけではなく、審美性やあごの骨の厚さなど、考慮する部分が多いのは事実です。
そのため、ほかの歯の治療と比べるとハードルが高いように感じるかもしれません。

しかし、デメリットばかりではなく、多くのメリットがあることも事実なので、どちらもしっかり押さえて、前歯のインプラント治療の検討をしていただけると幸いです。

きぬた歯科では、25年の施術経験と年間3,000本を超える埋入実績があります。
幅広い症例に対応可能ですので、前歯のインプラント治療を検討されている方は、お気軽にお問い合わせください。

この記事の監修者

日本歯科大学新潟生命歯学部を卒業後、インプラント治療に従事。現在では年間3000本以上のインプラント治療の実績がある。

日本でインプラント治療が黎明期だったころからパイオニアとして活躍し、インプラントメーカーのストローマン社やノーベルバイオケア社から公認インストラクターの資格を得た。

本の執筆やTV・雑誌などのメディア出演、自身のYouTubeチャンネルなどで情報発信を積極的に行っている。

<主な著書>
インプラント治療は史上最強のストローマンにしなさい!!
歯医者が受けたい!インプラント治療
あっそのインプラント、危険です!!

<YouTubeチャンネル>
八王子きぬた歯科

<外部サイト>
きぬた 泰和 Wikipedia