インプラント治療とは?
インプラント治療は、歯を失った部分に人工の歯根を埋め込み、その上に人工歯を取り付けて歯の機能を回復させる治療法です。
従来のブリッジや入れ歯とは異なり、インプラントは顎の骨にしっかりと固定されるため、噛む力や安定感が非常に優れています。
見た目も自然な仕上がりになるため、審美性が求められる前歯などの治療にもおすすめ。
インプラントは、あたかも自分の歯のような感覚を取り戻せることから、幅広い世代の方に支持されています。
インプラント治療は高齢者でも受けられるのか?
インプラント治療は基本的に年齢制限はなく、上限も設けられていません。
たとえ80歳や90歳を超えても、全身の健康状態が良好で、手術に耐えられる体力があれば治療を受けることは可能です。
高齢者の場合、年齢よりも全身の健康状態が治療における重要な判断材料となります。
骨粗鬆症などの疾患により顎の骨が弱っている場合や、持病として糖尿病や高血圧がある場合は、インプラント手術にリスクが伴います。
自身の状態をしっかりと管理した上で、顎の骨の状態や体力が治療に耐えられると判断されれば、年齢を問わず治療は可能です。
一方で、顎の成長が完了していない若年層に対して、インプラントを埋め込むことで噛み合わせや骨の発達に悪影響を与える可能性があります。
顎の成長が完了する20歳頃を目安に、多くの方がインプラント治療の候補となります。
高齢者向けのインプラント治療とは?
高齢者に対するインプラント治療の一つとして、「オーバーデンチャー」という方法が注目されています。
オーバーデンチャーは、残っている天然歯やすでに埋め込まれたインプラントを支えとして使用する入れ歯の一種で、患者の口腔内の状態に合わせて形を調整できるのが特徴。
この治療のメリットは、通常の入れ歯よりも安定感が高く、噛む力が強くなること。
また、一般的な入れ歯とは異なり、粘膜に直接圧力をかけないため、歯茎や口内の粘膜に対する負担を軽減できるのも魅力です。
特に体力が低下している高齢者や、通常の入れ歯に不快感を抱えている方に適した選択肢となります。
ただし、オーバーデンチャーは通常のインプラントと比べ噛む力がやや弱い、入れ歯を装着することによる違和感を感じる点がデメリットとなる可能性があります。
それでも、全体として高齢者にとって負担の少ない方法であり、日常生活の質を向上させる効果が期待できる治療法でしょう。
インプラント手術を受けるに際しての必要条件
インプラント手術は外科的な処置を伴うため、一定の健康状態が求められます。
特に高齢者の場合、手術を安全に進めるために満たすべき条件があります。
ここでは、高齢者がインプラント治療を受ける条件について見ていきましょう。
条件①持病がない
インプラント手術において、持病がないことは非常に重要です。
特に糖尿病や高血圧などの生活習慣病を持っている場合、手術中や術後にリスクが高まってしまいます。
糖尿病は傷の治癒が遅くなる傾向があり、インプラントが骨と結合しにくくなる場合があるのです。
また、高血圧の患者は麻酔に対する制限があるため、治療に影響を及ぼす可能性も。
持病がある場合、事前にしっかり管理すること、そして医師との相談が必須でしょう。
条件②口内環境に問題がない
インプラント手術を受ける前に、口内環境が健康であることも重要な条件です。
歯周病や虫歯がある場合は、まずこれらの問題を解決してからインプラント手術を検討しなければいけません。
手術後も適切な口腔ケアを続けなければ、インプラント周囲炎などの感染症を引き起こすリスクが高くなります。
インプラント治療後のメンテナンスも、成功には欠かせない要素です。
条件③服薬していない
インプラント手術に影響を及ぼす可能性のある薬を服用している場合も、注意が必要。
例えば、抗凝固薬を服用していると、手術中に出血が止まりにくくなるリスクがあります。
また、骨粗鬆症の治療薬であるビスホスホネート製剤を使用している場合、顎骨に感染症が起こる可能性が高まり、インプラント手術に影響を及ぼす可能性があります。
手術前には、必ず服薬内容を歯科医師に伝えてください。
条件④手術に耐えうる体力がある
高齢者の場合、インプラント手術に耐えられるだけの体力が必要です。
手術自体は局所麻酔で行われることが多いですが、術後の回復や定期的なメンテナンスにも体力が求められるからです。
また、術後の傷の治癒が正常に進むかどうかも、患者の体力に依存する部分が大きいため、十分な健康状態と体力がなければいけません。
インプラント手術を受けるに際しての必要条件を満たしていない場合の対処法
まず、骨密度が低下している場合、骨再生治療が一つの選択肢となります。
骨の量が不足しているとインプラントの固定が難しくなりますが、骨造成などの手術で、骨を補強しインプラント治療の成功率を高められるのです。
免疫力が低下している、もしくは細菌感染のリスクが高い場合は、術前・術後の感染管理が非常に重要です。
手術ではしっかりとした抗菌対策を講じ、免疫力を補うための生活改善や適切な栄養摂取が求められるでしょう。
また、インプラント治療後は、定期的なメンテナンスと口腔内のケアが欠かせません。
特にインプラントは構造が複雑なため、適切なセルフケアができるよう、治療前にブラッシングやフロスの使い方を確認しておくことが大切。
必要な場合は、歯科医から適切な指導を受け、セルフケアの技術を向上させましょう。
高齢者がインプラント治療を受けるメリット
高齢者にとって、インプラント治療は単に歯を再建するだけでなく、生活の質を大きく向上させるさまざまなメリットをもたらします。
以下で、代表的なメリットについて詳しく見ていきましょう。
メリット①しっかりと噛める
インプラントは、顎の骨に固定されるため、食べ物をしっかりと噛むことができます。
特に高齢者は噛む力が衰えることで食事が制限されがちですが、インプラント治療すれば、天然歯に近い感覚で食事を楽しめるでしょう。
栄養摂取の向上が期待でき、健康維持にもつながります。
メリット②あごの骨量を保てる
インプラントは顎の骨に直接埋め込まれるため、噛む力が骨に伝わり、骨量の減少を防ぐ効果があります。
歯を失うと顎の骨は次第に痩せていきますが、インプラント治療によって骨に刺激が与えられ、骨が維持されるため長期的に顎の健康を保てるのです。
メリット③認知症リスクの低下にもつながる
しっかりと噛むことは、脳に良い刺激を与えると言われ、噛む力を取り戻すことで脳の活性化が期待できます。
特に高齢者にとっては、認知機能の維持が重要。
インプラント治療を通じて噛む力を取り戻すのは、認知症リスクの低下にも貢献する可能性が考えられます。
メリット④若々しい外見を保てる
歯を失うと顎が痩せ、顔の輪郭が崩れやすくなりますが、インプラントによって歯の形を再建することで、若々しい外見を保てるでしょう。
特に前歯をインプラントにすることで、自然な笑顔を取り戻し日常生活でも自信を持ってコミュニケーションができるようになります。
高齢者がインプラント治療を受けるにあたり覚えておきたいこと
高齢者にとってインプラント治療は多くのメリットがありますが、その一方でいくつかのリスクも理解しておきましょう。
ここでは、高齢者がインプラント治療を受ける際に気をつけたいデメリットについて説明します。
デメリット①細菌感染を起こしやすい
高齢者は若年層と比べ免疫力が低下しているため、細菌感染のリスクが高くなります。
インプラント治療では歯茎を切開し、顎の骨を削ってインプラントを埋め込む手術が行われるため、細菌が侵入しやすい環境が一時的に生じます。
そのため、手術後に感染症を引き起こす可能性が高まるのです。
高齢者の場合、特にこの点に注意が必要で、術後のケアや定期的なメンテナンスが重要となります。
デメリット②インプラント体と骨が結合しにくい
インプラント治療において、インプラント体と顎の骨がしっかりと結合するのは成功の鍵となります。
しかし、高齢者は骨の再生能力が低下しやすく、結合が遅れたり完全に結合しないケースもあります。
これにより、インプラントが安定せず再手術が必要になることも考えられるでしょう。
高齢の方がインプラント治療を受ける際は、骨の状態や治癒能力を事前にしっかり評価してもらいましょう。
高齢の方がインプラント治療を受ける際のクリニック選びのポイント
高齢者がインプラント治療を成功させるには、適切なクリニック選びが不可欠。
まず、インプラント治療の豊富な実績を持つクリニックを選びましょう。
特に高齢者向けのインプラント治療に精通しているかどうかが重要です。
また、術後のメンテナンスやアフターケアが充実しているクリニックも、長期的に安心して治療を受けるために欠かせません。
さらに、通いやすさやスタッフとの相性も考慮に入れて、信頼できるクリニックを選びましょう。
インプラント治療は高齢者の方でも受けられる
いかがでしたでしょうか?高齢者でもインプラント治療が可能かどうか、条件やメリットについておわかりいただけたかと思います。
高齢だからといってインプラントを諦める必要はありませんが、体調や口内の状態によって治療が難しい場合もありますので、しっかりとしたクリニック選びが大切です。
きぬた歯科は年間約3,000本のインプラント治療実績を誇り、正確かつ迅速な治療を提供しています。
費用面でも相談可能ですので、インプラント治療を受けるか悩んでいる高齢者の方は、ぜひ一度ご相談ください。
この記事の監修者
日本歯科大学新潟生命歯学部を卒業後、インプラント治療に従事。現在では年間3000本以上のインプラント治療の実績がある。
日本でインプラント治療が黎明期だったころからパイオニアとして活躍し、インプラントメーカーのストローマン社やノーベルバイオケア社から公認インストラクターの資格を得た。
本の執筆やTV・雑誌などのメディア出演、自身のYouTubeチャンネルなどで情報発信を積極的に行っている。
<主な著書>
インプラント治療は史上最強のストローマンにしなさい!!
歯医者が受けたい!インプラント治療
あっそのインプラント、危険です!!
<YouTubeチャンネル>
八王子きぬた歯科
<外部サイト>
きぬた 泰和 Wikipedia