高齢者でもインプラント治療はできる?

インプラント治療は年齢に関係なく受けられる治療法ですが、健康状態や口内環境が整っていることが条件となります。
一般的に成人であれば治療は可能ですが、高齢になると持病や骨の状態によっては適用が難しくなるのです。

また、手術時の負担を考慮し、体力や回復力を確認した上での治療計画が求められます。
そのため、治療の可否を判断する際は、歯科医だけでなく主治医と相談しながら進めましょう。

高齢者のインプラント治療によるリスク

高齢者がインプラント治療を受ける際は、いくつかあるリスクを理解しておく必要があります。
特に、加齢に伴う免疫力の低下や持病の影響は、治療の成功に大きく関わります。

治療前に以下3点を確認してください。

全身疾患による影響

高齢になると、糖尿病や高血圧、骨粗しょう症といった疾患を抱えている方が多く、これらの病気がインプラントの成功率に影響を与える可能性があります。

糖尿病の方は傷の治りが遅く、細菌感染を起こしやすいため、手術後の経過が長引くケースがあるのです。
また、骨粗しょう症を患っている場合、骨密度が低下しているため、インプラントと骨が結合しにくくなるのも懸念点です。

免疫力の低下による細菌感染のリスク

高齢者の免疫機能の低下によって、手術後の細菌感染リスクが高まる点も注意が必要です。
インプラントは人工歯根を埋め込むため、手術後の適切なケアが重要になりますが、免疫力が低下していると炎症が起こりやすく、治療が長期化することも考えられます。

骨との結合が遅れる可能性

インプラントが顎の骨と結合するまでには一定の時間が必要ですが、高齢者の場合は組織の回復が遅いため、通常よりも結合に時間がかかる場合があります。

万が一、インプラントと骨の結合がうまくいかない場合、追加の治療が必要になるため、事前に歯科医と十分に相談しましょう。

高齢者がインプラント治療を受けられる条件

インプラント治療は高齢者でも受けられますが、手術を安全に進めるためにはいくつか条件を満たしていないといけません。
特に全身の健康状態や口内環境は治療の成功に大きく関わるため、事前のチェックが必要です。

持病がない

高血圧や糖尿病、骨粗しょう症などの持病がある場合、インプラント手術が難しくなると解説しました。

糖尿病の方は傷の治りが遅く感染リスクが高いため、血糖値のコントロールが求められます。
骨粗しょう症の場合、骨の強度が低下しているとインプラントが定着しづらく、追加の治療が必要になることもあります。

持病をお持ちの方は治療前にかかりつけ医と相談し、手術の可否を判断してもらいましょう。

服薬していない

特定の薬を服用している場合、インプラント治療が難しくなるケースがあります。
血液をサラサラにする抗凝固薬を服用している方は、手術時に出血が止まりにくくなるため、注意が必要です。

また、骨粗しょう症の治療に使用されるビスホスホネート製剤は、顎の骨に副作用を引き起こす可能性があるため、服用中の方は必ず歯科医師に相談しましょう。

口内環境に問題がない

インプラント治療する前に、口内環境が健康であることが必須です。
歯周病や重度の虫歯がある場合、そのままインプラントを埋め込むと感染のリスクが高まり、治療が失敗する可能性が高まります。

治療前に口腔内のトラブルを改善し、清潔な状態を維持しましょう。

手術に耐えうる体力がある

インプラント治療は外科手術を伴うため、一定の体力が求められます。
高齢になると回復力が低下するため、手術後の経過にも影響を及ぼします。

また、インプラントは治療後も定期的なメンテナンスが必要なため、通院できる体力があることも必須条件です。
体調が不安な場合は、医師と相談しながら慎重に検討してください。

インプラント治療をどうしても受けたい場合の対処法

インプラント治療を希望しているものの、口腔環境や生活習慣が原因で治療が難しいと判断される場合もあるでしょう。

そこで諦めるのはまだ早く、適切な対策によってインプラントが可能になるケースも少なくありません。
口腔衛生の改善や生活習慣の見直しを行い、インプラント治療を受けるための準備を整えましょう。

歯磨き指導を受ける

インプラント治療を成功させるには、日々の口腔ケアが欠かせません。
高齢者の方は長年の習慣により自己流の歯磨きを続けている場合が多く、磨き残しが原因で歯周病のリスクが高まります。

治療前に歯科医院で適切な歯磨き指導を受け、正しいブラッシング方法を身につけることで、口内の清潔な状態を保てます。

喫煙を控える

喫煙はインプラント治療に大きな悪影響を与える要因の一つです。
タバコに含まれるニコチンは血流を悪化させ、歯ぐきの回復を妨げるため、インプラントの定着が難しくなります。

また、喫煙習慣のある人はインプラント周囲炎のリスクが高まり、治療後のトラブルが発生しやすくなります。
インプラント治療を成功させるには、手術前後の禁煙を徹底しましょう。

歯周病を治療する

歯周病はインプラントの大敵とされており、治療前にしっかりと改善しておく必要があります。
歯周病が進行していると、インプラントを支える骨が十分に存在せず、治療の成功率が低下してしまうのです。

また、歯周病菌による感染がインプラント周囲炎を引き起こし、最悪の場合、インプラントが抜け落ちてしまう可能性もあります。
インプラント手術を受ける前に、歯科医院で適切な歯周病治療を行い、口腔環境を健康な状態に整えましょう。

高齢者がインプラント治療を受ける際の注意点

インプラント治療の成功率を高めるために、高齢者が押さえておくべき3つの重要なポイントがあります。

高齢者の場合、骨の状態や体力の問題などが影響するため、適切なクリニックの選定や治療後のケアをしっかりと考えましょう。

信頼できるクリニックを選ぶ

高齢者がインプラント治療を受ける場合、クリニック選びが成功の鍵となります。
加齢により顎の骨が痩せている場合、通常のインプラント治療では対応が難しくなるでしょう。

そのため、骨造成や高度な治療技術を備えたクリニックを選んでください。
また、インプラントの実績が豊富な歯科医院であれば、治療計画の立案からアフターケアまで安心して任せられます。

治療記録を保管する

インプラント治療を受けた後は、治療の詳細が記載された記録を大切に保管しておきましょう。
インプラントの種類や埋入位置、治療履歴が記載された記録があれば、万が一転居した場合や担当医が変わった場合でも、メンテナンスを受けやすくなります。

長期的な管理が必要なインプラント治療では、治療記録を持っておくことで、トラブルを未然に防げます。

通院に配慮する

インプラント治療後は定期的なメンテナンスが欠かせません。
しかし、高齢になると体力の低下や移動の負担が大きくなり、通院が難しくなるケースもあります。

そのため、前もって通院の利便性を考慮し、アクセスしやすいクリニックを選びましょう。
また、訪問診療などのサポート体制が整っているクリニックを選べば、万が一通院が困難になった場合でも安心してメンテナンスを受けられます。

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高齢者向けのインプラント治療とは?

高齢者に適したインプラント治療の一つに「オーバーデンチャー」があります。
インプラントや残存している天然歯を支えにして装着する特殊な入れ歯のことで、一般的な入れ歯よりも安定性に優れています。

オーバーデンチャーの大きなメリットは、インプラントを固定源とすることでしっかりと噛む力を確保できる点です。
また、通常の入れ歯のように粘膜で支える必要がないため、歯茎への負担が軽減され、装着時の違和感も少なくなります。

一方で、完全なインプラントと比べると噛む力がやや劣る点や、装着時の違和感を感じる可能性がある点には注意が必要。

オーバーデンチャーは、体力的な負担を軽減しながらしっかりとした噛み心地を得られる治療法として、多くの高齢者に選ばれています。
通常のインプラントに不安がある方や、入れ歯が合わずに悩んでいる方にとって、選択肢の一つになるでしょう。

高齢者がインプラント治療を受けるメリット

加齢によって歯を失うと、食事の楽しみが減ったり、顔の輪郭が変化することがあります。
インプラント治療は、しっかり噛める歯を取り戻し、健康的な生活を維持するための有効な方法です。

ここでは、高齢者がインプラント治療を受けることで得られる、主なメリット4つを見ていきましょう。

しっかりと噛める

インプラントは顎の骨にしっかりと固定されるため、天然歯とほぼ同じ感覚で噛むことができます。
入れ歯のようにずれる心配がなく、食べ物をしっかり噛み砕けるので、消化を助け、栄養の吸収を促進します。

食事の満足感が向上し、生活の質が大きく改善されるでしょう。

あごの骨量を保てる

歯を失ったままにすると、噛む刺激が伝わらず顎の骨が次第に痩せてしまいます。
インプラントは骨に直接埋め込むため、しっかりと噛むことで骨の退縮を防ぎ、顔の輪郭を維持するのに役立ちます。

認知症リスクの低下につながる

噛む動作は脳を刺激し、認知機能の低下を防ぐと言われています。
高齢者にとって、しっかり噛めることは記憶力や集中力を維持するうえで重要です。

インプラントによって適切な咀嚼機能を取り戻すことで、認知症予防にもつながるでしょう。

若々しい外見を保てる

歯を失うと、顎の骨が痩せて頬がこけ、老けた印象を与えてしまいます。
インプラントはしっかりとした噛み合わせを維持し、顎のラインを支えるため、自然な表情を保ちやすくなります。

また、人工歯の見た目も自然で、美しい口元をキープできるでしょう。

高齢者でもインプラント治療は可能

いかがでしたでしょうか?高齢者でもインプラント治療が可能な条件や注意点についてお分かりいただけたかと思います。

健康状態や口内環境が整っていれば、年齢に関係なく治療を受けられますが、手術のリスクやメンテナンスの必要性をしっかり理解しておきましょう。
また、信頼できるクリニックを選ぶことで、安全に治療を進められます。

累計4万本以上のインプラント治療実績を誇るきぬた歯科では、高齢者のインプラント治療にも対応しており、最適な治療方法を提案しています。
気になる方は、ぜひ相談してみてください。

この記事の監修者

日本歯科大学新潟生命歯学部を卒業後、インプラント治療に従事。現在では年間3000本以上のインプラント治療の実績がある。

日本でインプラント治療が黎明期だったころからパイオニアとして活躍し、インプラントメーカーのストローマン社やノーベルバイオケア社から公認インストラクターの資格を得た。

本の執筆やTV・雑誌などのメディア出演、自身のYouTubeチャンネルなどで情報発信を積極的に行っている。

<主な著書>
インプラント治療は史上最強のストローマンにしなさい!!
歯医者が受けたい!インプラント治療
あっそのインプラント、危険です!!

<YouTubeチャンネル>
八王子きぬた歯科

<外部サイト>
きぬた 泰和 Wikipedia