インプラントにメンテナンスが必要となる理由

インプラントは、差し歯や入れ歯といった人工歯と比べると治療費が高額です。
主な要因は、インプラントに使われるチタンと呼ばれる金属製の素材が高額なことと、治療に保険が適用できないことにあります。

そのため、埋め込んだインプラントはできるだけ長持ちさせて、再度治療し直すといった余計なコストをかけたくないものです。
インプラントを長持ちさせるために必要なことが、定期的なメンテナンスの実施です。

メンテナンスは歯科医院で診てもらうのと、自宅でのセルフメンテナンスの2つがあり、どちらも並行して行うことをおすすめします。口の中をより清潔に、衛生的に保つことでインプラントはもちろん、残存歯の寿命を延ばすことができるのです。

メンテナンスを行うことで、インプラント周囲炎と呼ばれる炎症や脱落(抜け落ちること)を防ぐことができ、長持ちにつながります。

インプラントの寿命はどれくらいなのでしょうか?

通院して行うインプラントのメンテナンス

ここからは、通院でのインプラントのメンテナンスで実施する3つのことを紹介します。

口の中の状態のチェック

まずは、口の中が清潔に保たれているかどうかの確認です。
具体的には、以下のようなことを確認します。

口の中のチェック事項

  • インプラントを構成する各部品がしっかりと固定されたままであるかどうか
  • 各部品が壊れていないかどうか
  • 炎症を起こしていないかどうか
  • インプラントだけではなく周囲の歯に虫歯や歯周病がないかどうか
  • ほかの被せ物や詰め物の状態は良好かどうか

口の中はデリケートなため、上記のようにさまざまなことを確認し、問題があった場合は早い段階で対処する必要があります。

レントゲン検査

レントゲン検査は、目に見えない部分の状態を確認するために行われる検査です。
インプラントを埋め込んだあごの骨や、周囲にある歯の根元の状態などを見ます。
また、上あごの奥歯にインプラントを埋め込んだ場合は、周囲の骨の空洞あたりで炎症が起きていないかどうかもレントゲン検査で確認します。

クリーニング

日頃どれだけ丁寧に歯磨きを行っていたとしても、歯科医院で用いるような専用の器具や薬剤がないと行き届かないケアがあります。
このような器具などを用いた特別なクリーニングを行うことも、メンテナンスの重要な工程の1つです。
また、歯の汚れがひどい場合には、一度人工歯を取り外してクリーニングを行うこともあり得ます。

クリニックのメンナンス費用

クリニックでメンテナンスを受ける場合の費用は、1回あたり3,000~10,000円程度です。
インプラント治療だけではなく、インプラントのメンテナンスも保険適用外となってしまうため、内容次第ではより高額になってしまう可能性もあります。

気になる方はインプラント治療前に、インプラントのメンテナンス費用についても質問しておきましょう。
クリニックで定期的なメンテナンスを受けていない場合、もしインプラントが破損しても、保証対象外となってしまうケースもあります。合わせて保証内容についても確認しておくと安心です。
自由診療となるインプラント治療・インプラントのメンテナンスですが、申告すれば医療費控除に適用され、一部控除されます。

ちなみにメンテナンスの頻度ですが、最初の1年は3ヶ月に1度程度、2年目以降は2~3年に1度で良いので、費用と頻度でいくら見積もっておけばいいか把握しておきましょう。

クリニックのメンテナンスの流れ

ここからはインプラント治療後のメンテナンスの流れについて解説します。

手順①口腔内のチェック

まずは口腔内を診て、インプラントのぐらつきがないか、インプラント周囲炎になっていないか、歯茎の腫れや炎症を起こしていないかを目視でチェックします。
そのほかインプラントと人工歯の連結がうまくいっているか、嚙み合わせは問題ないか、破損や不具合がないかを確認します。このとき違和感や不安な点がある場合は、該当箇所と状態を説明してください。

手順②レントゲン撮影

痛みや違和感があるといった異常がある場合や目視で確認できない状態のときは、レントゲン撮影をして内部の炎症の有無を調べます。
レントゲン撮影では骨の吸収具合や歯槽骨に炎症がないかなどを診ますが、それ以外にも残存歯に虫歯がないかなど、インプラント周辺の歯もチェックします。
上顎の奥歯にインプラント治療を施した場合、 上顎洞炎の疑いがないかも診ます。もし虫歯や歯周病があったときそれらを放置していると上顎洞炎を引き起こすので、合わせて確認します。

手順③ブラッシング指導

口腔内の汚れがひどかった場合や歯垢が溜まっていたと判断された場合、歯科衛生士からブラッシング・歯磨きの指導が入ることもあります。
効果的なブラッシング方法や歯間ブラシやデンタルフロス等の使い方を伝授してくれます。
また磨き残しがあった場所の確認もしてくれるので、手が届いていない箇所を把握できます。
歯磨きも大切ですが、歯磨きの効果をより引き立ててくれる、清掃用具は積極的に使うのがおすすめです。

手順④PMTC

すべての手順が終わったら、PMTC(プロフェッショナル・メカニカル・トゥース・クリーニング)を行います。
PMTCとは、歯科医師や歯科衛生士といった歯科専門家による歯のクリーニングのことです。専用の機械を使って磨くので、歯磨きでは落とせないような汚れや歯垢も除去できます。
汚れがひどい場合や汚れがなかなか取れない場合、人工歯を外してクリーニングすることもあります。PMTCをすれば長時間ついていた着色汚れや細菌も取り除くことができ、口腔内を清潔に保つことができます。

自身で行うインプラントのメンテナンス

インプラントを良好な状態に保つためには、歯科医院での定期的なメンテナンスだけではなく、日頃から自身で行えるセルフメンテナンスを行うことも重要となります。
ここからは、セルフメンテナンスにおいて大切な3つのポイントを紹介します。

ポイント①柔らかい歯ブラシで丁寧に磨く

歯磨きはセルフメンテナンスの基本ですが、何も考えずに適当に行うとインプラントに悪影響を与えてしまうので、しっかりとした方法で行うことが重要です。

まず、インプラントを傷つけないためにも、柔らかい歯ブラシを使ってあげることがポイントです。
そして、歯ブラシは一つひとつの歯に対して丁寧に当てて磨くことが重要となります。

ポイント②デンタルフロスで歯垢を除去する

ブラッシングで汚れが取りにくい歯の部分には、デンタルフロスを活用するとよいでしょう。
歯と歯のあいだには歯垢や歯石などの汚れができやすく、それらを除去するためにはデンタルフロスが有効です。
今まであまりデンタルフロスを使ってこなかったという方も、歯ブラシと併用してセルフメンテナンスを行うことを習慣化したほうがよいでしょう。

ポイント③マウスウォッシュで口内を清潔に保つ

マウスウォッシュを用いて口内を清潔に保つことは、歯周病を予防するために有効なケアです。
歯周病になってしまうと、天然の歯だけでなく、インプラントを埋め込んだ周囲のあごの骨も溶けてしまうといったリスクがあります。
そのため、マウスウォッシュを使うことは、インプラントの長持ちにつながります。

インプラントは歯科医院でのメンテナンスだけでなく日頃のケアも大事

いかがでしたでしょうか。

インプラントは治療費が高額なため、せっかく埋め込んだものを劣化させず、長期に渡って使いつづけたいものです。
長持ちさせるためには、年に2~4回程度通院しメンテナンスを行う必要があります。
インプラントとほかの歯の状態を見てもらい、異常がないかどうかを確認してもらいましょう。

また、日頃からのセルフメンテナンスも重要です。
歯磨きだけでなく、マウスウォッシュやデンタルフロスなどを使ったケアを丁寧に、そして継続して行っていきましょう。

きぬた歯科は年間3,000本のインプラント治療をした実績を持つ歯科医院です。
治療後のメンテナンスも徹底して行っていますので、インプラント治療に関心のある方は、ぜひご相談ください。

この記事の監修者

日本歯科大学新潟生命歯学部を卒業後、インプラント治療に従事。現在では年間3000本以上のインプラント治療の実績がある。

日本でインプラント治療が黎明期だったころからパイオニアとして活躍し、インプラントメーカーのストローマン社やノーベルバイオケア社から公認インストラクターの資格を得た。

本の執筆やTV・雑誌などのメディア出演、自身のYouTubeチャンネルなどで情報発信を積極的に行っている。

<主な著書>
インプラント治療は史上最強のストローマンにしなさい!!
歯医者が受けたい!インプラント治療
あっそのインプラント、危険です!!

<YouTubeチャンネル>
八王子きぬた歯科

<外部サイト>
きぬた 泰和 Wikipedia