医療控除とは

医療費控除は、高額な医療費を支払った場合に一部を還付金として受け取れる制度です。

1年間にかかった医療費の合計が一定額を超えた場合、確定申告により所得税や住民税から医療費が差し引かれます。その結果、払いすぎた税金が戻ってくる仕組みです。

なお保険適用外の自由診療も、一定の条件を満たせば対象となります。また、通院による交通費や薬の費用なども控除の対象です。

インプラント治療は医療費控除の対象になるのか

インプラント治療にかかる費用は、医療費控除の対象となるケースが一般的です。インプラント治療は、失われた歯を人工の歯で補う治療法です。

つまり歯の機能回復を目的とした治療であり、医療行為に該当します。

ただし医療費控除の対象となるのは、あくまでも治療を目的とした場合に限られます。治療ではなく、美容や健康予防が目的の場合は対象外となるため注意が必要です。

たとえば「歯を白くしたい」といった美容目的でインプラント治療を受ける場合や、ホワイトニング用の歯磨き粉などを購入する場合です。

健康上の問題がある場合は医療費控除の対象となり、美容目的のインプラント治療は対象外となることを覚えておきましょう。

医療費控除の対象となる条件

医療費控除を受けるためには、下記の条件を満たす必要があります。

  • 1年間にかかった医療費の合計額が一定額を超える(一般的には10万円以上)
  • 所得税を納めている

一般的には、1年間の医療費の合計額が10万円を超えると、医療費控除の対象となります。ただし所得金額が200万円未満の場合は、所得金額の5%の医療費が対象です。

また医療費控除の対象となるのは、所得税を納めている人です。

医療費控除は、所得税の還付や軽減を目的とした制度のためです。したがって所得税を納めていない人は、医療費控除の対象とはなりません。

なお家族で医療費を負担している場合は、家族全員の医療費を合算して計算できます。

インプラント治療で医療費控除を受けるメリット

インプラント治療で医療費控除を受けるメリットは、おもに以下の3つです。

  • 税金の還付や軽減につながる
  • 金銭的な負担を軽減できる
  • 確定申告の知識が深まる

インプラント治療は高額ですが、医療費控除を申請すれば所得税や住民税が軽減されます。経済的な不安を少しでも解消するため、ぜひ積極的に活用したいところです。

では、それぞれのメリットを詳しく見ていきましょう。

税金の還付や軽減につながる

支払った税金の一部が還元されるのは、医療費控除を申請する最大の利点です。

医療費控除は1年間にかかった医療費の合計が一定額を超えた場合、所得控除を受けられる制度です。所得税の控除額に応じて、翌年の住民税も軽減されます。

インプラント治療は自由診療のため、基本的に治療費は全額自己負担です。1本あたり安くても30万円以上が相場のため、歯の本数が増えるほど金銭的な負担も大きくなります。

費用を軽減するためにも、確定申告で医療費控除を申請しましょう。

金銭的な負担を軽減できる

医療費控除は治療費だけではなく、さまざまなケースで控除の対象となります。

たとえば、下記のようなケースがあげられます。

医療費控除の対象 注意点
歯科ローンやクレジットでの支払い
  • 歯科ローンは元金部分が控除対象(利息は対象外)
  • 信販会社が医療機関に対して立替払いをした年が対象(請求日や支払日ではない)
通院のための交通費 公共交通機関のみが対象(自家用車での通院は対象外)
家族のために支払った医療費 生計を共にする配偶者やその他の親族のために支払った医療費が対象

インプラント治療は高額のため、歯科ローンやクレジットで治療費を支払うケースも少なくありません。いずれも医療費控除の対象のため、支払い方法の選択肢が広がります。

また通院にかかった交通費や、配偶者や子どもなどにかかった医療費も控除対象となります。これらの医療費控除を活用し、家計の金銭的負担を軽減させましょう。

確定申告の知識が深まる

医療費控除を通して、確定申告の知識を深められます。医療費控除を申請する過程で、所得税の計算方法や控除の仕組みを学べるためです。

医療費控除には確定申告書や源泉徴収票(会社員の場合)といったさまざまな書類が必要となり、書類の書き方や申請方法といった一連の流れを理解できます。

確定申告を通して節税意識が高まれば、余剰資金を貯蓄や投資に回すことで資産形成にもつながります。税金について詳しく学びたい方は、ぜひ医療費控除を申請してみましょう。

インプラント治療で医療費控除を受けるデメリットや注意点

インプラント治療で医療費控除を受ける際のデメリットや注意点は、おもに以下の3つです。

  • すべての治療が対象とはならない
  • 診断書や領収書の保管が必要
  • 確定申告の手続きが煩雑

歯科治療にかかる費用のうち、医療費控除の対象となるのは一般的な水準を超えない部分です。内容によっては医療費控除を受けられない可能性があるため注意しましょう。

では、それぞれ詳しく解説します。

すべての治療が対象とはならない

以下のように健康維持や審美目的にかかる費用は、医療費控除の対象外です。

医療費控除の対象外となるケース 内容
審美的な目的 ホワイトニングや美容目的の歯列矯正など
健康維持や予防を目的とした治療 ビタミン剤や歯ブラシなどの購入費
健康診断の費用 健康診断の結果、疾病などにより治療が必要な場合は対象となる

インプラント治療の場合、歯を失ったことによる機能回復が目的であれば医療費控除の対象となります。歯列矯正など審美的な目的の場合は、対象外となるため注意しましょう。

診断書や領収書の保管が必要

インプラント治療で支払った領収書や医師の診断書は、大切に保管しておきましょう。医療費控除を受ける際に、医師の診断書が必要になる場合があるためです。

また、領収書は申告期限から5年間の保存が必要です。確定申告での提出は不要ですが、税務調査が入った際には提出が求められます。

なお医療機関に申請すれば、手数料はかかりますが支払証明書を発行できる可能性があります。もし領収書が手元にない場合は、医療機関に相談してみましょう。

確定申告の手続きが煩雑

確定申告に慣れていない場合、手続きが煩雑で戸惑う可能性があります。年末調整は基本的に会社側が対応しますが、確定申告は個人で対応しなければなりません。

もしマイナンバーカードを所持していれば、「マイナポータル」との連携で医療費通知情報を一覧で確認し、取得できます。

マイナポータルとの連携により、確定申告時に取得したデータを自動で入力できます。確定申告の手間を大幅に減らせるので、ぜひ活用しましょう。

医療費控除金額の計算方法

年収400万円の場合

参考までに総所得が400万円、インプラントの治療費が40万円の場合の医療費控除を算出してみましょう。(保険金などの補填金は0円として計算)

  • 医療費控除額 =(総医療費ー10万円)
  • 総医療費:40万円
  • 控除額:40万円ー10万円=30万円

今回のケースだと総所得が400万円のため、10万円を超える部分の医療費が全額控除の対象となります。なお、医療費控除の上限は200万円です。

年収200万円未満の場合

年収が200万円未満の場合、10万円ではなく所得金額の5%の金額が差し引かれます。年収400万円のケースと計算式が異なるため注意しましょう。

参考までに総所得が180万円、インプラント治療費が40万円、保険金などの補填金が0円の場合の医療費控除額は以下のとおりです。

  • 医療費控除額=医療費の総額ー保険金などの補填金ー総所得金額の5%
  • 医療費の総額:40万円
  • 保険金などの補填金:0円
  • 総所得金額の5%:18万円×5%=9万円
  • 医療費控除額=40万円ー0円ー9万円=31万円

つまり上記のケースだと、31万円が医療費控除額として算出されます。なお医療費控除は所得税から控除されます。現金で戻るわけではないため注意しましょう。

医療費控除の申請方法

インプラント治療にかかった費用を医療費控除で戻したい場合は、翌年の確定申告で申請します。

なお、医療費控除を確定申告する際の大まかな流れは以下のとおりです。

  1. 1年間にかかった医療費を集計する
  2. 医療費控除に必要な書類を揃える
  3. 確定申告書に必要事項を記入する
  4. 期日までに確定申告書と必要書類を税務署に提出する

また会社員の場合は、通常は会社で年末調整が実施されるため確定申告は不要です。ただし医療費控除を受けるためには、年末調整とは別に確定申告が必要になります。

医療費控除の申告に必要なもの

医療費控除の確定申告で必要なものは、以下のとおりです。

種類 概要
確定申告書 国税庁のホームページからダウンロードするか、税務署で入手する
医療費控除の明細書 医療費を一覧にした書類で、医療費通知や領収書などを参考に作成したもの
医療費の領収書 提出は不要だが、5年間の保存義務があるため保管しておく
源泉徴収票 会社員の場合、一般的に12月末に会社から発行される
マイナンバーカードもしくは通知カード 確定申告書にマイナンバーを記載する必要があるため
印鑑 認印でも可能

なお医療費控除の明細書は、健康保険組合などから送付される医療費通知をもとに作成します。もし通知がない場合は、領収書を参考に作成しましょう。

確定申告書の作成方法

確定申告書を作成する流れは、以下のとおりです。

確定申告を作成する手順 内容
1.医療費を集計し整理する
  • 対象となる医療費を確認する(薬代や交通費も確認)
  • 領収書を確認する(日付、医療機関名、支払金額を確認)
  • 医療保険組合から送付される「医療費のお知らせ」でも申請可能
2.確定申告書を入手する
3.確定申告書に必要事項を記入する
  • 医療費控除の欄に集計した医療費の合計額を記入する
  • 所得金額や扶養家族に数なども正確に記入する
4.提出書類を揃える
  • 確定申告書
  • 医療費の明細書
  • 源泉徴収票(会社員の場合)
  • 医師の診断書(必要に応じて)
5.税務署へ提出
  • 対象の税務署を確認する(原則として提出時点の住民票の住所地を管轄している税務署)
  • 窓口に直接持参、郵送、e-Taxで提出できる

確定申告の結果、還付金がある場合は指定された口座に振り込まれます。なお確定申告の期間は、毎年2月16日から3月15日までです。

医療費控除の提出方法

医療費控除の確定申告書は、おもに以下のような方法で提出します。

  • 税務署の窓口で直接提出する
  • 税務署に郵送する
  • 税理士が代理人として提出する
  • e-Taxにて書類を送信する

なお提出する税務署は、提出時点の住民票の住所地を管轄している税務署です。国税庁のホームページで確認できるので、不明な方は調べてみましょう。

またe-Taxを利用すれば、PCやスマートフォンでいつでも手続きできます。還付も書面より早く受けられるので、ぜひ活用してみましょう。

医療費控除の提出期限

医療費控除の申請は、基本的に毎年3月15日が締め切りです。ただし大地震などの天災により社会情勢が変化した場合は、申請期限が延長されることもあります。

また医療費控除の良い点は、過去5年分の医療費についてさかのぼって申請できる点です。インプラント治療は高額のため、医療費控除が適用されれば経済的負担も軽減します。

5年以内に高額な医療費を支払っており、医療費の領収書も保管している場合は医療費控除を検討しましょう。

インプラント治療に適用される医療費控除は医療費の負担を軽くする制度

インプラント治療は高額なため、医療費控除が適用できれば金銭的な負担を大きく軽減できます。

一般的に失った歯を取り戻すための治療目的のインプラントであれば、医療費控除の対象です。期日内に確定申告を済ませれば、所得税や住民税から一定額が控除されます。

また過去5年分の医療費まで控除の対象となるため、すでにインプラント治療を終えた方でも対象になる場合もあります。

インプラント治療を受けたいとお考えの方は、ぜひきぬた歯科までご相談ください。
インプラント治療における技術や実績が豊富であるため、どんな疑問にもお答えします。
インプラントの費用の基礎知識と1本あたりの費用について

この記事の監修者

日本歯科大学新潟生命歯学部を卒業後、インプラント治療に従事。現在では年間3000本以上のインプラント治療の実績がある。

日本でインプラント治療が黎明期だったころからパイオニアとして活躍し、インプラントメーカーのストローマン社やノーベルバイオケア社から公認インストラクターの資格を得た。

本の執筆やTV・雑誌などのメディア出演、自身のYouTubeチャンネルなどで情報発信を積極的に行っている。

<主な著書>
インプラント治療は史上最強のストローマンにしなさい!!
歯医者が受けたい!インプラント治療
あっそのインプラント、危険です!!

<YouTubeチャンネル>
八王子きぬた歯科

<外部サイト>
きぬた 泰和 Wikipedia