サイナスリフトを用いたインプラント治療後に起こりうる症状
サイナスリフトとは、インプラント治療を受けるための、上あごの骨の高さや厚みが不足している場合に用いられる、骨造成治療の一種です。
治療後は、6か月程度の期間を空けたのち、インプラントを埋め込みます。
インプラントの埋入後に起こるかもしれない症状としては、2つ挙げられます。
それぞれ、どういった症状なのかをみていきましょう。
インプラントが上顎洞に入る
インプラントが上顎洞に入るケースが、まれに起こります。
鼻の両側には、上顎洞という空洞があり、この空洞の大きさは一人ひとり違います。
上顎洞が大きい方は骨が薄い傾向にあるため、上あごにインプラントを埋め込むことが困難です。
骨の高さや厚みが不足している状態で、インプラントを埋め込むと、ちょっとした衝撃にも耐えることができず、上顎洞にインプラントが入ってしまうおそれがあります。
骨を補うサイナスリフトの治療後であっても、インプラントが上顎洞の中に入り込み、くしゃみしたことで鼻からインプラントが出てくるといった事例も挙がっています。
副鼻腔炎になる
サイナスリフトが適切に行われなかった際は、インプラント治療が原因で副鼻腔炎になる可能性があります。
副鼻腔炎とは、蓄膿症ともよばれており、上顎洞に細菌が侵入して炎症を起こす病気のことです。
鼻水や鼻づまり、鼻の中の悪臭が主な症状として現れます。
また、目の下あたりに痛みを感じることもあります。
インプラント治療後にこれらの症状がみられる場合は、上顎洞にインプラントが貫通している、または脱落しているかもしれません。
こういった症状が続いた際は、担当の歯科医師に相談してみてください。
サイナスリフトの治療後の注意点
サイナスリフトの治療後には、以下のポイントに注意してください。
サイナスリフトの治療後に控えたほうがよいこと
- うつ伏せ寝
- 激しい呼吸をともなう運動や歌唱
- くしゃみ
- タバコ
患部を下にしてうつ伏せ寝すると、手術した部分に血液が行きわたらなくなり、傷の治りが遅くなるため仰向けで寝ることを心がけましょう。
また、上顎洞にあるシュナイダー膜という粘膜は薄いので、ちょっとした拍子に破れてしまうことがあります。
まれなケースですが、患者様のくしゃみでシュナイダー膜が破れてしまい、鼻から人工骨が出てくるといった事例もあるため、些細なことにも注意したいところです。
あごの骨が痩せる原因とは
サイナスリフトの治療後の注意点を紹介しましたが、あごの骨が痩せる原因を知って、日々の生活で気をつけておくことで、サイナスリフトを受ける必要がなくなるかもしれません。
それぞれ、ご自身と照らし合わせてご覧ください。
抜けた歯を放置している
歯がない状態を放置していると、徐々にあごの骨が痩せていきます。
人間の身体は、使われない部分が衰えていくという性質があり、これはあごの骨にも同じことがいえます。
歯がなければ、噛んだときの力があごの骨に伝わりません。
骨が痩せることを防ぐためにも、歯がない箇所を放置せずにすぐに治療を受けましょう。
歯周病にかかっている
歯周病は、歯茎の腫れや、出血はもちろんのこと、症状が重くなると歯周炎とよばれる状態になり、骨を溶かしてしまうことがあります。
骨が溶けてしまうと、インプラントを埋入するのに必要な骨の量が不足するかもしれません。
歯周病の症状が軽いうちに、治療を受けることをおすすめします。
ブリッジや合わない入れ歯を使っている
ブリッジや合わない入れ歯の使用も、あごの骨が痩せる原因の1つです。
インプラント治療は、インプラント体(人工歯根)を骨に埋め込むことで人工歯を固定させます。
しかし、ブリッジ治療は、失った歯の両隣の歯を支台として、人工歯を固定させるため、歯の根の部分がありません。
入れ歯もブリッジ同様、歯の根の部分がなく、合わない入れ歯となると、嚙み合わせが悪くなってしまうので、あごの骨に伝わる力はほんのわずかです。
ブリッジや入れ歯は、インプラントより安く歯を補えますが、インプラントは寿命が長く、骨が衰えることもないので、将来を見据えてインプラントを選択する方もいます。
関連記事:インプラントとブリッジにかかる費用を教えてください
サイナスリフトやインプラント治療を受ける際のクリニックの選び方
サイナスリフトやインプラント治療は、外科手術をともなうので不安な方もいらっしゃるのではないでしょうか。
クリニックによっては、「事前に聞いていた治療の内容と違う」など、治療後のトラブルに発展しかねません。
クリニックを選ぶ際は、これから紹介する5つのポイントを重点的に確認しましょう。
ポイント①丁寧な精密検査を行っているか
インプラント治療を受ける前に、虫歯や歯周病などの口内トラブルや、骨の高さや厚みが足りなかった場合は、術前治療が必要になります。
そのため、インプラントを埋め込む前に、レントゲンや歯科用CTで患部の周りを撮影しなければなりません。
また、インプラントが上顎洞に入るなどのトラブルを避けるためにも、サイナスリフトの前段階で、丁寧な精密検査を行っているクリニックに通院することをおすすめします。
事前に精密検査の有無をカウンセリング時に確認しておくことで、そういったトラブルの回避につながります。
ポイント②治療計画を立ててくれるか
サイナスリフトを受ける場合、特に、インプラント治療は治療期間が長く外科手術もともなうため、クリニック側で治療計画を綿密に立てることが大切です。
計画が不十分な場合、患者様ご自身が不安を感じるのはもちろんのこと、治療中や治療後のトラブルにつながるかもしれません。
大まかな治療計画だけではなく、治療の内容までを詳細に伝えてくれるクリニックであれば、しっかりと計画を立ててくれると判断してよいでしょう。
安心して治療を受けるためにも、治療計画が綿密に立ててくれるかどうかを、カウンセリング時にチェックしてください。
ポイント③歯科治療全般に精通しているか
インプラント歯周炎やインプラントの脱落をはじめとする、インプラントを埋め込んだあとのトラブルを回避するためにも、術前治療を受ける必要があります。
歯科治療全般に対応できないクリニックの場合は、ほかのクリニックで口内の虫歯などの症状を治さなければならないので、通院に負担がかかってしまいます。
また、インプラント治療を受けられないと医師から判断された場合は、サイナスリフトを含む骨造成治療を施してもらわなければなりません。
そのため、インプラント以外の歯科治療にも、幅広く精通しているクリニックで治療を受けることが望ましいです。
関連記事:【GBR法】インプラント治療の骨造成手術にかかる費用の相場はどのくらいですか?
ポイント④定期健診が行われているか
インプラントには、アフターケアも欠かせません。
インプラントの寿命は、10~15年と言われていますが、日々のケアを怠れば寿命は短くなり、インプラントの脱落や破損につながる可能性もあります。
高い金額を支払ったのに、すぐに使用できなくなってしまっては残念ですよね。
定期健診を行っているクリニックでは、患者様の口内の状態を通院するたびに診察してくれるため、トラブルの予兆があれば早い段階で対応することが可能です。
さらに、正しいセルフケアの方法を教えてもらうことで、インプラントを長持ちさせることができます。
また、サイナスリフトが適切に行われずにインプラント治療を受けた際は、副鼻腔炎になることも考えられます。
鼻づまりなどの違和感があった場合にも、すぐに相談できるため、定期健診があるクリニックに通院しましょう。
ポイント⑤クリニックが清潔に保たれているか
サイナスリフトやインプラントの埋入は外科手術であるため、クリニック内が清潔に保たれているかどうかも重要です。
衛生管理を怠っているクリニックで治療を受ければ、細菌感染によって口内の環境に悪影響を与えるおそれがあります。
術後の腫れや痛み、インプラントの脱落などの、さまざまな症状を避けるためにも、クリニック内に足を運んで自分の目で確認しましょう。
関連記事: インプラントの専門医の選び方を教えてください
サイナスリフトを安心して受けるためにも、歯科クリニックは慎重に選びましょう
今回は、サイナスリフトを用いたインプラント治療後に起こりうる症状や、歯科クリニックの選び方などを紹介しました。
サイナスリフトは、インプラント治療を受けるための骨を造成できる反面、治療後の症状に不安を感じる方もいらっしゃるでしょう。
ですが、クリニックを選ぶ際の5つのポイントを意識して適切なクリニックで治療を受けることで、リスクの大幅な低下が期待できます。
ほとんどのクリニックでカウンセリングが行われているので、一度足を運ばれてみてはいかがでしょうか。
当院では、歯科用CTで患部の状態を確認したうえで、患者様に適切なインプラント治療をご提案しております。
歯科用CTでの撮影を無料で行っているので、ぜひ一度ご来院ください。
インプラント治療のきぬた歯科
この記事の監修者
日本歯科大学新潟生命歯学部を卒業後、インプラント治療に従事。現在では年間3000本以上のインプラント治療の実績がある。
日本でインプラント治療が黎明期だったころからパイオニアとして活躍し、インプラントメーカーのストローマン社やノーベルバイオケア社から公認インストラクターの資格を得た。
本の執筆やTV・雑誌などのメディア出演、自身のYouTubeチャンネルなどで情報発信を積極的に行っている。
<主な著書>
インプラント治療は史上最強のストローマンにしなさい!!
歯医者が受けたい!インプラント治療
あっそのインプラント、危険です!!
<YouTubeチャンネル>
八王子きぬた歯科
<外部サイト>
きぬた 泰和 Wikipedia