「前歯のインプラント治療はできない」と言われる2つの理由

前歯のインプラント治療が難しいと言われている理由として、以下の2つが挙げられます。

理由①審美性の高さを求められる

前歯は目立つ位置に生えているので、治療に際して審美性が重要です。

そもそも前歯の役割は、食事の際に口に入れる食べ物を小さく切ることなので、口を開けたらすぐに見える場所に生えています。
そのため話したり笑ったりしたときに人の目に触れる機会が多く、自然な見た目が求められます。

インプラント治療に際し、審美性に優れた前歯を作るには、インプラントを埋める位置や上部構造(人工歯)の形、素材、色などにこだわらなければなりません。
患者様の歯の健康を考えつつ、同時に審美性も兼ね備えた治療を実現するには、技術力と経験が重要になるため、前歯のインプラント治療は難しいと言われているのです。

一方、奥歯は前歯で切った食べ物を細かくすり潰し、飲み込みやすい大きさにする役割を持つので、口内の奥のほうに生えています。
口を大きく開けない限りは見えないので、前歯ほど審美性にこだわる必要がなく、インプラント治療を断られることもほとんどありません。

理由②前歯を支える骨が奥歯に比べて薄い

前歯を支える上あごの骨はもともと薄く、インプラントを埋め込むための土台としては小さすぎるというのも、前歯のインプラント治療を難しくしている理由の一つです。

さらに、上あごには上顎洞(副鼻腔)とよばれる空洞があり、あごの骨に厚みが足りないと、この空洞部分にインプラント体が突き抜けてしまいます。
ただし、骨造成とよばれる術前治療を行えば解決するケースが多くあります。

インプラント治療ができる人の条件については「インプラント治療ができない人はいますか?」をご覧ください。

上あごの骨造成の種類

骨造成とは、あごの骨に厚みを足す手術のことです。
あごの骨が少なくても、骨造成を行えばインプラント治療を受けられるようになります。
上あごの骨に厚みを足す手術方法には、以下の3種類があります。

方法①サイナスリフト

上あごの骨の厚さが5ミリ以下とほとんどない場合は、サイナスリフトが採用されます。
小鼻の脇に位置する上顎洞の底に骨補填剤や自家骨を入れ、骨の厚みを増やす手術方法です。

手術は、以下の手順で進めます。

サイナスリフトの手順

  1. インプラントを埋入する頬側の歯肉を切開し、あごの骨に穴を開ける
  2. 上顎洞を覆っているシュナイダー膜を剥離して持ち上げ、スペースを作る
  3. 骨補填剤を充填するか、粉砕した自家骨を入れる
  4. 骨に開けた穴をふさぎ、歯肉を縫合する
  5. 骨ができるまで3~6か月ほど待つ

サイナスリフトは、あごの骨が極端に少なくても十分な厚みを足せる一方、傷口が大きくなるため体に負担がかかりやすいのが難点です。

方法②ソケットリフト

ソケットリフトは、上あごの骨の厚みが5ミリ以上10ミリ以下の方に適している手術です。
補う骨の量が少ないため、インプラントの埋入と同時に行います。
手術方法は、上顎洞の底に骨を足すという点ではサイナスリフトと同じです。

ソケットリフトの手順

  1. インプラントを埋め込む部分の歯肉を切開して、あごの骨に穴を開ける
  2. 上顎洞を覆うシュナイダー膜を押し上げて空間を作る
  3. 骨補填剤や粉状の自家骨を入れたら、インプラント体を埋入する
  4. 歯肉を縫合して、骨とインプラント体が定着するまで3~6か月ほど待つ

インプラントを埋め込む部分にのみ穴を開けるので、傷口が小さく済み、患者様への負担も最小限に抑えられます。

方法③GBR法

GBR法(Guided Bone Regeneration:骨誘導再生法)は、骨が少ない部分に骨補填剤や自家骨を足し、メンブレン膜とよばれる特殊な膜で覆って骨を再生させる手術方法です。
メンブレン膜は、骨補填剤や自家骨を固定するだけではなく、歯肉が入り込むことによって骨の成長が妨げられるのを防ぐ役割も担います。

GBR法は、インプラントの埋入と同時に行う場合と、骨ができるまで待ってからインプラントを埋入する場合と2つのパターンがあります。

GBR法で治療を行う際の費用については「【GBR法】インプラント治療の骨造成手術にかかる費用の相場はどのくらいですか?」をご覧ください。

パターン①GBR法とインプラント治療を同時に行う

GBR法をインプラントの埋入と同時に行う際は、先にインプラント体を埋め込みます。
骨が少なすぎてインプラント体が露出してしまう部分を見つけるためです。

GBR法とインプラント治療を同時に行う手順

  1. 歯肉を切開してインプラント体を埋め込む
  2. インプラント体が露出した部分に骨補填剤や自家骨を入れて、メンブレン膜で覆う
  3. 骨が再生されるまで3~6か月ほど待つ
  4. インプラント体と骨の定着具合を確認し、問題なければ上部構造を取りつける

パターン②GBR法で骨が再生してからインプラント治療を行う

骨が再生されてからインプラント体を埋め込むパターンは、顎の骨がほとんど無い方に適用されます。

GBR法で骨を生成してからインプラント治療を行う手順

  1. あごの骨が足りない部分の歯肉を切開して骨補填剤や自家骨を入れ、メンブレン膜で覆う
  2. 骨が再生されるまで4~6か月ほど待つ
  3. 再び歯肉を切開してあごの骨に穴を開け、インプラント体を埋め込む
  4. 3~6か月後にインプラント体が骨に定着したのを確認し、上部構造を装着する

前歯のインプラント治療を任せられるクリニックを選ぶには

ここまで紹介したように、前歯のインプラント治療には高い技術力が必要です。
そこで、信頼できるクリニックを選ぶための3つのポイントを紹介します。

ポイント①前歯のインプラント治療の実績があるかを確認する

前歯のインプラント治療には技術力が不可欠なので、治療を断っているクリニックもあります。
まずはクリニックのホームページを確認し、症例ページがないか探してみてください。
前歯を治療している実績があれば、執刀できる医師がいるという証拠です。

ただし、医師によって経験年数や技術力も変わるため、自分の担当医に実績があるのかを確認することが肝心です。
直接聞いてみるか、聞きづらければお問い合わせページから確認するのもよいでしょう。

ポイント②医師やスタッフと相性がよいか見極める

インプラント治療は、ほかの歯科治療に比べると期間が長く、治療後もメンテナンスに通う必要があります。

医師やスタッフとの相性が悪いと、クリニックに通うのが苦痛になってしまうかもしれません。
相性を確かめるためにも、まずはクリニックに直接足を運びましょう。
カウンセリングで医師やスタッフとコミュニケーションを取れば、相性の良し悪しはある程度把握できます。

ポイント③クリニックが通いやすく快適な環境であるか確かめる

インプラント治療後は定期的なメンテナンスが欠かせません。
そのため、通いやすさはクリニックを選ぶうえで重要な決定打となります。

また、クリニックの過ごしやすさも確認しておきたいところです。
待合室や施術室の雰囲気・衛生環境など、気になる点がないかチェックしましょう。
インプラントを長く使いつづけるためにも、通いやすく過ごしやすいクリニックを選ぶことをおすすめします。

前歯のインプラント治療にかかる期間と費用

前歯のインプラント治療を検討する際は、治療にかかる期間や費用も押さえておきましょう。

治療期間

前歯のインプラント治療にかかる期間は、3~6か月ほどが目安です。

おおまかな流れとしては、まず1次手術で歯肉を切開し、あごの骨にインプラント体を埋め込んで縫合します。
骨にインプラント体が定着するまで3~6か月ほど待ち、2次手術で再び切開して、インプラント体にアバットメントとよばれる連結装置と、仮歯を装着します。
1次手術も2次手術も、およそ30分~1時間ほどで終わることがほとんどです。

人工歯ができあがるまで1~2週間ほど待ったら、仮歯を外して人工歯を取りつけ、噛み合わせの状態を確認します。

上記の工程に骨造成も加わると、もう2~3か月ほど治療期間が伸びる可能性があります。
ただし、インプラントの埋入と同時に骨造成も行うのであれば、期間はあまり変わりません。

治療費の相場

インプラント治療にかかる費用の相場は、人工歯の素材により異なり、インプラント体と人工歯、手術代などを含めて、1本あたり30万~40万円ほどです。

また、骨造成にかかる費用は手術方法により異なります。

骨造成にかかる費用

  • サイナスリフト:15万~30万円
  • ソケットリフト:3万~10万円
  • GBR法:3万~15万円

歯が無い期間が長い方や、歯周病が進行して歯茎が下がっている方は、骨が少なく、費用も高くなる傾向があります。

インプラントとは

前歯のインプラント治療は安心して任せられるクリニックに頼もう

本記事では、前歯のインプラント治療が難しいと言われる理由や、骨造成の種類、クリニックの選び方などを紹介しました。
上あごの骨は薄いので、インプラントを埋め込むための土台としては小さく、骨造成が必要になるケースが多くあります。
技術力と経験のある医師でなければ執刀できないので、クリニックを選ぶ際は、前歯のインプラント治療の実績があるところを選ぶと安心です。

きぬた歯科では、年間3,000本を超えるインプラントを埋入しております。
カウンセリングは無料で承りますので、どうぞお気軽にご相談ください。
インプラント治療のきぬた歯科

この記事の監修者

日本歯科大学新潟生命歯学部を卒業後、インプラント治療に従事。現在では年間3000本以上のインプラント治療の実績がある。

日本でインプラント治療が黎明期だったころからパイオニアとして活躍し、インプラントメーカーのストローマン社やノーベルバイオケア社から公認インストラクターの資格を得た。

本の執筆やTV・雑誌などのメディア出演、自身のYouTubeチャンネルなどで情報発信を積極的に行っている。

<主な著書>
インプラント治療は史上最強のストローマンにしなさい!!
歯医者が受けたい!インプラント治療
あっそのインプラント、危険です!!

<YouTubeチャンネル>
八王子きぬた歯科

<外部サイト>
きぬた 泰和 Wikipedia