前歯のインプラントとは?
前歯を失ってしまった場合でも、インプラント治療によって、まるで天然歯のような見た目と機能を取り戻せる可能性があります。インプラント治療とは、顎の骨に人工歯根(インプラント体)を埋め込み、その上に人工歯を装着する治療法です。
天然歯は、歯根が顎の骨に固定されることで、噛む力や発音・顔のバランスを保つ役割を果たしています。しかし、虫歯や歯周病・事故などで歯を失ってしまうと、これらの機能だけでなく、見た目の美しさも損なわれるでしょう。
インプラント治療は、失われた歯根の代わりとなるインプラント体を顎の骨に埋め込むことで、天然歯と同様の機能と審美性の回復を目指します。
前歯をインプラントにするメリット
前歯は、食事や会話、そして笑顔といった日常生活のさまざまな場面で重要な役割を担っています。そのため、前歯を失ってしまった場合、機能面だけでなく審美面も考慮した治療法の選択が大切です。
前歯のインプラント治療を選択するメリットは、以下3つがあります。
- 自然な見た目と噛み心地
- 周りの歯への負担が少ない
- 長持ちする
それぞれ見ていきましょう。
自然な見た目と噛み心地
前歯のインプラント治療では、見た目の美しさが大切です。インプラント治療では、人工歯にセラミックを使うことで天然歯に近い色や質感、自然で美しい口元を実現できます。セラミックは耐久性にも優れ、変色しにくい素材なので、長期間にわたって白い歯を維持できます。
また、インプラントは顎の骨に固定されるため、天然歯と変わらない噛み心地を得られるでしょう。違和感なく噛めることで、食事をおいしく楽しむだけでなく、脳への刺激や消化促進にもよい影響を与えます。
周りの歯への負担が少ない
たとえばブリッジという治療法では健康な歯を削って土台にするため、周りの歯に負担をかけてしまいます。
しかし、インプラント治療は人工歯根を顎の骨に直接埋め込むため、周りの歯に負担をかけません。結果として、残っている歯を長持ちさせることにもつながります。
長持ちする
前歯のインプラント治療は、ほかの治療法と比べて長持ちする点も大きなメリットです。適切なケアを継続することで、10年以上使用できる場合もあります。
しかし、インプラント自体は虫歯になりませんが、歯周病リスクは忘れてはなりません。歯周病が進行するとインプラント周囲炎を引き起こし、インプラントが抜け落ちてしまう可能性があります。
インプラントを長持ちさせるためには、日々の丁寧なブラッシングが効果的です。また、歯科医院での歯石除去や口腔内チェックなど、専門家のケアを定期的に受けることも大切です。
前歯をインプラントにするデメリット
前歯のインプラント治療は、多くのメリットがある一方で、以下のデメリットも存在します。
- 治療期間が長い
- 費用が高い
- 手術が必要
詳しく見ていきます。
治療期間が長い
インプラント治療は、入れ歯やブリッジ治療と比べて期間が長くなる傾向にあります。一般的な治療の流れは以下のとおりです。
- カウンセリング・検査
- 虫歯・歯周病治療などの事前治療(必要な場合)
- インプラント体埋め込み手術
- インプラント体と顎の骨の結合期間(数ヶ月)
- 人工歯の装着
このように、顎の骨とインプラント体が結合するまでの期間や、患部の治癒を待つ期間などさまざまな段階があります。全体の治療期間は、患部の状態や治療内容によって個人差がありますが、平均すると数ヶ月から1年程度かかる場合が多いでしょう。
費用が高い
前歯のインプラント治療は、保険適用外となるため費用が高額になる傾向があります。一般的な費用相場は、1本あたり約30万〜50万円です。これはインプラント体や手術費用、人工歯の製作費用などを含みます。
費用は使用するインプラントの種類や、歯科医院によって異なります。高品質な素材や高度な技術を用いる場合は、さらに費用が高額になる可能性も。
治療前に複数の歯科医院で見積もりを取り、費用や治療内容を比較検討することが大切です。費用の内訳や追加費用の有無なども確認しておきましょう。
手術が必要
インプラント治療では、顎の骨に人工歯根を埋め込むため外科手術が必要です。手術と聞くと不安を感じる方もいるかもしれませんが、大半は1〜2時間程度の日帰りで行えます。
インプラント治療は外科手術を伴うため、事前に治療内容や症状など疑問点を確認しておくことが大切です。また、手術時間は短い方が体への負担も少ないため、経験豊富な歯科医師が担当してくれるクリニックを選びましょう。
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前歯のインプラントで後悔しないための注意点
前歯は人目につきやすく、審美的にも重要な部分のため、インプラント治療を受ける際には以下に注意しましょう。
- インプラント治療の専門医を選ぶ
- 審美性を左右する技術力
- 費用と期間について理解しておく
- カウンセリングで疑問を解消
これらの注意点を踏まえ、信頼できる歯科医院を選び、納得のいくまで相談することが大切です。
インプラント治療の専門医を選ぶ
前歯のインプラント治療は、高度な技術が求められるため、専門知識と豊富な経験を持つ歯科医師を選ぶことが重要です。
具体的には、インプラント治療の実績が豊富なクリニックを選ぶことが大切です。症例写真や治療例などを参考に、医師の技術力や審美センスの確認をおすすめします。
さらに、カウンセリングで丁寧に説明してくれる医師を選びましょう。治療内容やリスク、費用について納得いくまで相談できる環境であることが大切です。
審美性を左右する技術力
前歯のインプラント治療では、自然で美しい歯並びを実現するために、歯科医師の高度な技術力が求められます。
たとえば、骨造成は高度な技術を要する治療です。顎の骨が不足している場合には、骨造成を行い、インプラントを固定するために必要な骨の量を確保します。
また、精密な型取りも重要です。インプラントを埋入する位置や角度、人工歯の形や色などを決定し、自然で美しい人工歯を歯科技工士と連携して製作します。
これらの高度な技術を駆使することで、天然歯に近い自然な見た目と噛み心地を再現できます。
費用と期間について理解しておく
前歯のインプラント治療は保険適用外の自由診療となるため、治療費や期間は歯科医院によって大きく異なる点がポイントです。
高額な費用がかかるイメージを持ちやすいですが、近年では使用するインプラントの種類や治療方法の選択肢も広がっています。そのため、予算や治療期間に合わせて最適なプランを検討できます。
費用の透明性を重視し、治療前に説明してくれる歯科医院を選ぶようにしましょう。また、治療期間についても、仕事や生活スタイルに合わせた治療計画を立ててもらう必要があります。
カウンセリングで疑問を解消
前歯のインプラント治療は外科手術を伴い、高額になるため、治療前に疑問や不安を解消しておくことが肝要です。
カウンセリングでは、治療期間や費用・手術方法、リスクや合併症などについて、歯科医師に相談しましょう。費用は総額だけでなく、内訳や支払い方法も確認しておくと安心です。
手術方法については、術後の痛みや腫れ、日常生活への影響なども具体的に質問してみましょう。そのほか、不安なことや気になることは遠慮なく質問し、納得したうえで治療を開始することが大切です。
前歯のインプラント治療ができない理由
インプラント治療は以下の状態では治療が難しい場合があります。
- 顎の骨の量が不足している
- 歯周病が進行している
- 全身疾患がある
上記のようなケースに該当するかどうかは、歯科医師による診察や検査によって判断されます。インプラント治療を検討している方は、まずは歯科医師に相談しましょう。
顎の骨の量が不足している
インプラント治療では顎の骨に人工歯根を埋め込むため、骨の量が不足していると治療が難しい場合があります。歯周病や歯の喪失後の放置などが原因で骨が痩せてしまうと、人工歯根を支える十分な骨量が得られなくなってしまうのです。
このような場合は、骨を増やす治療を検討します。人工骨や自分の骨を移植する「骨造成治療」、上顎の骨の厚みを増やす「ソケットリフト」、上顎の骨の高さを増やす「サイナスリフト」といった方法があります。
インプラント治療は、口腔内の状態に合わせて適切な治療法の選択が重要です。歯科医師とよく相談し、ご自身の状況に合った治療法を選択しましょう。
歯周病が進行している
歯周病とは、歯茎や歯を支える骨(歯槽骨)が細菌感染によって炎症を起こす病気です。重症化すると歯槽骨が溶け、インプラントを埋め込む土台がなくなってしまいます。
インプラント治療には、健康な歯槽骨が不可欠です。歯周病が進行していると、インプラントを支える骨が不足し、治療が困難になる可能性があります。
また、歯周病菌はインプラント周囲炎のリスクを高めます。これは、インプラント周囲の組織が炎症を起こし、インプラントの寿命を縮める病気です。そのため、歯周病がある場合はインプラント治療前に歯周病治療を行い、口腔内環境を整えることが重要となります。
全身疾患がある
インプラント治療は外科手術を伴うため、心臓病や糖尿病・骨粗鬆症などの持病がある方は注意が必要です。
たとえば糖尿病の方は、血糖コントロールが不十分だと傷の治癒が遅れたり、感染リスクが高まる可能性があります。また、骨粗鬆症の治療薬であるビスフォスフォネート薬を服用している方は、顎骨壊死のリスクがあるため、事前に歯科医師に相談が必要です。
このように、全身疾患がある場合は、インプラント治療のリスクや注意点について事前に相談し、十分な理解を得たうえで治療を受けましょう。
インプラント以外の前歯治療法
前歯のインプラント治療以外の方法として、以下の2つがあげられます。
治療法 | メリット | デメリット |
ブリッジ |
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入れ歯 |
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インプラント以外の治療法にもメリット・デメリットがあります。費用や治療期間・見た目などを総合的に考慮して、ご自身に最適な治療法を選択することが大切です。
ブリッジのメリット・デメリット
前歯のインプラント以外の治療法として、ブリッジという選択肢があります。ブリッジは、失った歯の両隣の歯を土台として、人工歯を橋渡しするように装着する方法です。
メリット | デメリット |
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前歯の治療法としてブリッジを選択する場合は、これらをよく理解したうえで歯科医師と相談しながら決定することが大切です。
入れ歯のメリット・デメリット
入れ歯には、部分的に歯を失った場合に用いる「部分入れ歯」と、すべての歯を失った場合に用いる「総入れ歯」があります。部分入れ歯には、残っている歯にバネをかけて固定するタイプや、残っている歯に固定装置を装着して入れ歯と連結させるタイプがあります。
メリット | デメリット |
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保険診療の入れ歯と自由診療の入れ歯がありますが、一般的に保険診療の入れ歯は、比較的安価に作製できるのがメリットです。一方、耐久性や審美性に劣るというデメリットがあります。
自由診療の入れ歯は保険診療のものと比べ、審美性や耐久性に優れており装着感も良好なものが多いですが、費用が高額になる傾向があります。
まとめ:後悔しない前歯インプラント選択のために
前歯のインプラント治療は、自然な見た目と機能性を回復できる優れた治療法ですが、治療期間や費用・リスクなどを理解しておくことが大切です。
後悔しないためにはインプラント治療の専門医を選び、十分なカウンセリングを受け、疑問を解消しておくことが重要です。
また、治療後のメンテナンスも肝要になります。定期的な検診を受け、適切なケアを行うことで、インプラントを長持ちさせられます。
きぬた歯科では、豊富な実績をもとに、短時間で正確なインプラント治療を行っています。
痛みや腫れを最小限に抑え、患者様のご予算に応じた治療計画を提案しています。
前歯のインプラントを検討中の方はぜひご相談ください。
この記事の監修者
日本歯科大学新潟生命歯学部を卒業後、インプラント治療に従事。現在では年間3000本以上のインプラント治療の実績がある。
日本でインプラント治療が黎明期だったころからパイオニアとして活躍し、インプラントメーカーのストローマン社やノーベルバイオケア社から公認インストラクターの資格を得た。
本の執筆やTV・雑誌などのメディア出演、自身のYouTubeチャンネルなどで情報発信を積極的に行っている。
<主な著書>
インプラント治療は史上最強のストローマンにしなさい!!
歯医者が受けたい!インプラント治療
あっそのインプラント、危険です!!
<YouTubeチャンネル>
八王子きぬた歯科
<外部サイト>
きぬた 泰和 Wikipedia