インプラント治療ができない人の特徴と対処法
インプラント治療は多くの方に適用可能ですが、口腔内の状態によってすぐに治療できないケースもあります。
そういった場合でも、適切に処理すれば施術が可能です。
ここでは、インプラント治療ができない主な特徴と対処法について見ていきましょう。
特徴①骨が薄い
顎の骨が十分に発達していない場合、インプラントを埋め込むための強度が不足しているため、治療が難しくなります。
特に前歯の部分は奥歯よりも骨が薄いため、少し骨が吸収されるだけでもインプラントの固定が難しくなるのです。
対処法①骨造成治療で骨の量を増やす
骨が薄い場合は、骨の再生を促す「骨造成治療」により、インプラント治療が可能になるかもしれません。
代表的な方法として、GBR(骨組織誘導再生法)やサイナスリフト、ソケットリフトなどの技術があり、骨の厚みを増やすことで人工歯根をしっかり固定できるようになります。
骨造成の処置は専門的な技術が必要なため、対応できる歯科医院を選びましょう。
特徴②18歳以下の未成年である
成長期の未成年者は顎の骨の成長が続いているため、インプラントを埋め込んでも骨の変化に対応できず、噛み合わせや見た目に影響が出る可能性があります。
そのため、多くの歯科医院で未成年のインプラント治療を避ける傾向にあります。
対処法②顎の成長が完了するまで別の方法で対応する
顎の成長が完全に終わるまでは、入れ歯やブリッジなどの方法で歯を補い、成長が安定した後にインプラントを検討するのが一般的です。
顎の成長がどの段階まで進んでいるかは個人差があるため、歯科医と相談しながら適切なタイミングで治療を進めましょう。
特徴③口腔内の状態が悪い(歯周病や虫歯など)
歯周病や虫歯が進行していると、インプラントを埋め込んだ際に細菌感染を引き起こし、人工歯根が骨と結合できなくなる可能性があります。
歯周病が進行している場合、顎の骨が溶けてしまうため、インプラントの安定性が悪くなってしまいます。
対処法③口腔内の環境を整えてから治療に入る
インプラント治療を受ける前に、歯周病や虫歯の治療を完了させ、口腔内を健康な状態にしましょう。
重度の歯周病によって骨の量が減少している場合は、骨再生治療を併用することで、インプラント治療が可能になるケースもあります。
口腔内の衛生管理が不十分なままインプラントを埋入すると、術後の感染リスクが高まるため、前もってケアしておきましょう。
特徴④歯並びが悪い
歯並びが大きく乱れている場合、インプラントを適切な位置に埋め込むのが難しくなり、噛み合わせに問題が生じます。
特に、隣接する歯との間隔が狭すぎると、人工歯根の固定が困難に。
また、歯並びが悪いと清掃が難しくなり、インプラント周囲炎のリスクが高まってしまいます。
対処法④矯正治療で歯列を整えてからインプラントを検討する
歯並びが原因でインプラント治療が難しい場合、まずは歯列矯正し、噛み合わせを整えることで治療が可能になるかもしれません。
ただし、矯正とインプラント治療を組み合わせる場合は費用や期間がかかるため、慎重に検討しましょう。
歯科医と相談し、自分にとって最適な治療方法を選んでください。
特徴⑤全身疾患を抱えている
糖尿病や腎疾患などの全身疾患を持っている場合、インプラント治療が難しくなることがあります。
特に、血糖値のコントロールが不安定な糖尿病患者は免疫力が低下しやすく、手術後の治癒に時間がかかるため、感染症のリスクが高まります。
また、腎疾患で人工透析を受けている方は、手術時の出血や感染症のリスクがあるため、治療が困難と判断されるでしょう。
対処法⑤かかりつけ医と連携しながら治療を進める
全身疾患がある場合は、歯科医だけでなく主治医と連携しながら慎重に治療計画を立てましょう。
糖尿病の場合は血糖値が安定しているか確認し、コントロールができていればインプラント治療が可能なケースもあります。
腎疾患のある方も、透析のスケジュールや体調に配慮しながら治療計画を立てることで、安全に手術できるかもしれません。
特徴⑥メンテナンスに通えない
インプラントは一度埋め込んだら終わりではなく、定期的なメンテナンスが必要な治療法です。
適切にケアしないと、インプラント周囲炎を引き起こし、最悪の場合、埋め込んだ人工歯根が脱落することも。
そのため、治療後に定期的な通院が難しい場合、インプラント治療ができないと判断される可能性があるのです。
対処法⑥通院が可能な環境を整えるか別の治療法を検討する
インプラント治療を受ける場合は、治療後も定期的に歯科医院に通える環境を整えなければいけません。
通院が難しい場合はブリッジや入れ歯など、メンテナンスの負担が少ない治療法を検討するのも一つの方法です。
また、遠方に住んでいる場合は通いやすい歯科医院を選ぶことで、メンテナンスを継続しやすくなります。
特徴⑦喫煙している
喫煙者は、インプラント治療の成功率が低下する傾向があります。
タバコに含まれるニコチンには血管を収縮させる作用があり、インプラントを埋め込んだ部位の血流が悪くなってしまうのです。
傷の治りが遅くなるだけでなく、骨と人工歯根が結合しにくくなったりするリスクが高まります。
また、喫煙は歯周病を悪化させるため、インプラント周囲炎のリスクも増大するでしょう。
対処法⑦治療前後は禁煙し可能なら禁煙を継続する
インプラント治療を成功させるには、最低でも治療中は完全に禁煙しましょう。
手術後に傷がしっかりと治るまでの期間(約3カ月~6カ月)は特に大切なので、禁煙を徹底してください。
さらに、長期的なインプラントの維持を考えるなら、そのまま禁煙を続けられると理想的です。
禁煙が難しい場合は歯科医に相談し、禁煙外来などのサポートを受けるのも有効な手段です。
特徴⑧妊娠している
妊娠中のインプラント治療は、母体と胎児への影響を考慮し、基本的に推奨されません。
インプラント手術では局所麻酔を使用しますが、妊娠中のホルモンバランスの変化によって傷の治癒が遅くなったり、歯周病のリスクが高まる可能性があります。
また、レントゲン撮影や手術中のストレスが母体に負担をかけることもあるため、妊娠中はインプラント治療を避けるのが一般的です。
対処法⑧出産後に治療を検討する
インプラント治療を希望する場合は、出産後に体調が落ち着いてから治療を開始するのが最善の選択肢です。
特に産後は育児の負担が大きいため、無理なく通院できる環境が整ってから治療を始めましょう。
妊娠中に歯の欠損が気になる場合は、一時的に入れ歯やブリッジで対応し、産後に本格的なインプラント治療を検討すると良いでしょう。
「骨が足りないためインプラント治療ができない」と言われた時の対処法
インプラント治療を希望しても、顎の骨が不足していることで「治療が難しい」と診断されるケースがあります。
しかし、近年は骨造成技術が進歩し、骨が足りない場合でもインプラント治療できる方法が増えています。
ここでは、代表的な対処法について見ていきましょう。
オールオン4
オールオン4は、顎の骨が不足していてもできる、最低4本のインプラントで全体の人工歯を支える治療法です。
従来の方法では8〜14本のインプラントが必要でしたが、奥のインプラントを斜めに埋め込むことで骨のある部分を最大限活用し、少ない本数で固定できるのが特徴です。
骨移植の必要がないケースも多く、手術当日に仮歯を装着できるため、すぐに見た目や噛む機能を回復できるメリットがあります。
関連記事:インプラント治療の「オールオン4」とはなんですか?
ソケットリフト
上顎の奥歯の部分は骨が薄くなりやすく、そのままではインプラントの埋入が困難な場合があります。
ソケットリフトは、インプラントを埋め込む穴から上顎洞の粘膜を持ち上げ、そこに骨補填材を充填して骨を増やす治療法です。
骨の不足が比較的軽度な場合に適用され、インプラントの埋入と同時にできるため、治療期間を短縮できる点がメリットです。
サイナスリフト
サイナスリフトは、ソケットリフトよりもさらに骨の不足が顕著な場合に適用される方法です。
上顎洞の側面を開き、粘膜を持ち上げて骨補填材を充填することで、広範囲にわたり骨を増やすことが可能です。
骨の厚みが5mm以下のケースでも適用でき、インプラントが埋入できる状態を作り出します。
ただし、骨の再生を待つため、インプラント埋入までに数カ月の期間が必要です。
GBR
GBR(Guided Bone Regeneration)は、骨の幅が不足している場合に行われる治療法です。
骨が足りない部分に骨補填材を埋め込み、特殊な膜で覆うことで骨の再生を促します。
顎の骨が極端に薄い場合に有効であり、インプラントの安定性を確保するために重要な治療法の一つです。
骨の再生には一定の期間が必要ですが、従来インプラントが難しかったケースでも治療が可能になります。
関連記事:インプラント治療のGBR法とはどのような治療ですか?
インプラント治療以外の選択肢も
インプラント治療は機能を回復する優れた選択肢の一つですが、すべての方に適用できるわけではありません。
顎の骨の状態や全身疾患の影響でインプラントが難しい場合、ほかの治療法を検討する必要があります。
ここでは、歯を補うための一般的な方法として、差し歯、ブリッジ、部分入れ歯について解説します。
差し歯
差し歯は、歯根が残っている場合にする治療法で、根の部分に土台を作り、その上から人工の歯を被せる方法です。
見た目が自然で、しっかりと固定されるため違和感が少ないのが特徴。
歯の神経を抜いた後に歯を補う目的で用いられることが多く、保険適用のものから審美性の高い自費診療のものまで選択肢があります。
ただし、歯根の状態が悪化している場合は、差し歯ではなく抜歯が必要になり、インプラントや入れ歯などの治療法へ移行する可能性があります。
ブリッジ
ブリッジは、欠損した歯の両隣にある健康な歯を支えにして人工歯を固定する治療法です。
取り外しの必要がなく、しっかりと噛めるため、入れ歯に比べ違和感が少ない点がメリットです。
また、治療期間が比較的短く、保険適用の選択肢もあり、費用を抑えたい方にもおすすめ。
しかし、支えとなる歯を削る必要があるため、健康な歯に負担をかけるデメリットがあります。
また、ブリッジを長期間使用すると支えとなる歯が弱くなり、将来的に別の治療が必要になるケースもあります。
部分入れ歯
部分入れ歯は、残っている歯に金属の留め具を引っ掛けて装着する方法で、歯が数本欠損している方に適しています。
手術を必要としないため、身体への負担が少なく、保険適用の範囲で作成すれば費用を抑えられる点が特徴です。
また、歯を削らずに治療を進められるため、健康な歯をできるだけ温存できるメリットも。
ただし、装着時に違和感を感じやすく、噛み心地や発音に影響が出る場合があります。
また、支えとなる歯に負担がかかるため、定期的なメンテナンスも必要です。
クリニックの技術次第ではインプラント治療ができる場合もある
インプラント治療は、歯科医院の技術や設備によって対応の可否が異なります。
ある医院では「難しい」と診断されても、インプラント治療に特化したクリニックでは、骨造成や歯周病治療を併用し、治療が可能になることがあるのです。
最新のデジタル技術や3Dシミュレーションを活用する医院では、より精密な治療計画を立てられるため、他院で断られたケースでも対応できる可能性が高いです。
インプラント治療を希望する場合は、セカンドオピニオンを活用し複数のクリニックを比較することも視野に入れましょう。
インプラント治療は段階を踏めばできる可能性がある
いかがでしたでしょうか?インプラント治療ができないケースや対処法についてお分かりいただけたかと思います。
骨が薄い、歯周病がある、全身疾患を抱えているなど、治療が難しいとされる条件はいくつかありますが、対策することでインプラントが可能になる場合もあります。
また、クリニックの技術によっては対応できるケースもあるため、まずは信頼できる歯科医に相談しましょう。
累計4万本以上のインプラント治療を手がけてきたきぬた歯科では、豊富な経験を活かし、さまざまな状態に対応できます。
インプラント治療について不安がある方は、ぜひ相談してみてください。
この記事の監修者

日本歯科大学新潟生命歯学部を卒業後、インプラント治療に従事。現在では年間3000本以上のインプラント治療の実績がある。
日本でインプラント治療が黎明期だったころからパイオニアとして活躍し、インプラントメーカーのストローマン社やノーベルバイオケア社から公認インストラクターの資格を得た。
本の執筆やTV・雑誌などのメディア出演、自身のYouTubeチャンネルなどで情報発信を積極的に行っている。
<主な著書>
インプラント治療は史上最強のストローマンにしなさい!!
歯医者が受けたい!インプラント治療
あっそのインプラント、危険です!!
<YouTubeチャンネル>
八王子きぬた歯科
<外部サイト>
きぬた 泰和 Wikipedia