インプラントとは

インプラント治療のやり直しが必要なケース

インプラントの治療をしたあとに、まれに不具合や違和感を覚える場合があるかもしれません。
放置するとインプラントだけでなく、周りの歯やあご、さらには全身に影響が出る場合もあるため、早急にクリニックに相談し、やり直し治療を検討する必要があります。

やり直し治療が必要になるケースとして、ここでは以下の6つについて解説します。
ご自身がどの症状に当てはまっているか、確認してみてください。

インプラント治療のやり直しが必要な6つのケース

  • ケース①噛み合わせが悪くなった
  • ケース②被せている人工歯が取れた・破損した
  • ケース③インプラント周囲炎に感染した
  • ケース④痛みが長期的に続いている
  • ケース⑤埋入したインプラントが結合せずにぐらつく
  • ケース⑥金属アレルギーを発症した

ケース①噛み合わせが悪くなった

インプラント治療後、噛み合わせが悪くなることがあります。
これは、インプラントとほかの歯との位置関係や高さが合っていない場合に起こります。
噛み合わせが悪くなると、ほかの歯だけでなく身体全体に影響を与える可能性があります。
たとえば、インプラントが高すぎると、噛むたびに過剰な圧力がかかり、顎関節症や頭痛などの全身的な症状を引き起こすことも考えられます。
一方、低すぎる場合は、隣接する歯への負担が増え、噛む動作そのものが不快に感じられるかもしれません。

放置すると、インプラントの寿命が短くなるだけでなく、口全体の健康に悪影響を及ぼすため、必要に応じてやり直し治療を検討しましょう。

ケース②被せている人工歯が取れた・破損した

インプラント治療では、骨に埋入したインプラントに人工の歯を取り付けます。
その人工歯が取れたり破損したりするトラブルが発生するケースがあります。
原因は人によって異なりますが、人工歯の経年劣化や取り付ける際の固定部品の緩み、接着剤の不具合などが考えられます。
また、硬い食べ物を噛んだときや、噛み合わせが不適切なために、過度な力が特定の箇所に集中し、破損につながる可能性もあるのです。

人工歯の脱落や破損の場合は、修復や交換を行うことで、さらなる悪化を防ぐことができます。

そのままにしておくと、周囲の歯やインプラント本体にも悪影響が及ぶかもしれないため、すぐに歯科医師に相談してください。

ケース③インプラント周囲炎に感染した

インプラント周囲炎は、インプラント周辺の組織が歯周病に感染する病気です。
初期の段階では目立った症状はありませんが、進行するにつれ、歯茎が腫れたり、出血したりするなど、歯周病に似た症状を発症します。

主な原因としては、日常のブラッシングが不十分だったり、定期的な歯科メンテナンスを怠ったりすることなどが考えられます。

重症化すると、インプラントが支えられなくなるほど骨が溶けてしまう可能性もあり、そうなると新しいインプラント治療もできません。

インプラント歯周炎の進行を止めるには、早期発見が重要なので、インプラント周囲に異常を感じたら、すぐに適切な治療を受けるようにしてください。

ケース④痛みが長期的に続いている

インプラントの治療後は、1週間程度の痛みや腫れは通常の反応ですので心配は必要ありません。

しかし、痛みが2~3週間以上も続く場合は注意が必要です。
長期的な痛みがある場合、手術部位の感染や骨への損傷、あるいはインプラントの埋入位置に問題がある可能性があります。
そのほか、細菌感染や骨結合不全、骨の吸収不全などが原因で痛みが治まらないケースも考えられます。

こうした痛みの場合、痛み止めの服用だけでは根本的な解決にはなりません。
長期間、痛みが続く場合は、原因を特定した上で適切な治療を受けるようにしてください。

ケース⑤埋入したインプラントが結合せずにぐらつく

あごの骨とインプラント体との結合がうまく進まず、インプラントが不安定になり、グラつくことがあります。
このような状態では、インプラントが本来の機能を果たせないため、やり直しが必要です。

原因としては、手術前の検査が不十分だったり、インプラントの周りの骨が細菌に感染していたりなどが考えられます。
また、骨の密度や量が不足している場合や、インプラント体の不適切な位置決めなどの可能性もあります。

インプラントのぐらつきは、周囲の組織や骨にも損傷を与える可能性があるため、早期に適切な処置を行うことが重要です。

ケース⑥金属アレルギーを発症した

インプラントには、金属アレルギーの症状が出にくいチタンが使われていることが多いものの、まれに金属アレルギーを発症することがあります。
また、治療時にはどうもなくても、長期間にわたって金属が体内に存在することで、突然アレルギー反応が現れることがあるのです。

金属アレルギーの場合、インプラントを除去し、金属を含まないセラミックなどの代替材料で治療を進めることが一般的です。

アレルギー症状が現れたまま使いつづけると、全身の健康状態に悪影響を与えるかもしれないため、早めに医師に相談してください。

インプラント治療のやり直しができない、または難しいケース

先に挙げたようなケースの場合、基本的にはやり直しが可能です。
しかし、再治療は最初の治療よりも難易度が高いため、身体の状態によっては、やり直し治療ができなかったり、難しかったりする場合があります。

主なケースとして3つを紹介しましょう。

喫煙量が多い

タバコに含まれるニコチンは血管を収縮させ、その結果、血流が悪化します。
そのため、喫煙量が多い場合はインプラント治療のやり直しが難しいことがあります。
血流が不足すると、骨が再生しにくくなり、インプラントと骨が結合しにくくなるためです。
また、免疫力が低下して傷の治りが遅くなったり、唾液の分泌が減少して口内環境が悪化し細菌感染のリスクも高まったりします。

喫煙量が多い場合はインプラント治療のやり直しを断られる場合があるため、再治療にあたっては、禁煙に取り組むことをおすすめします。

あごの骨の量が少ない

インプラントは、骨の量が十分でないとやり直し治療が難しくなります。

骨量が不足していると、支える土台が弱くなり、インプラントがうまく結合できずに治療が失敗するリスクが高まるためです。

骨の量が少ない場合でも、骨造成手術や人工骨の移植手術を受けることでインプラントの治療ができる場合もあります。
しかし、これには時間や費用がかかるほか、患者さまの身体への負担も大きくなります。

特に骨が再生しづらい方や、手術が困難な場合は、ほかの治療法を医師と相談して検討しましょう。

健康状態に問題がある

糖尿病や高血圧といった生活習慣病、腎臓病や肝臓病などの機能障害があると、免疫力が低下し、細菌に感染しやすくなります。
また服用中の薬によっては、手術への悪影響が出る場合もあります。
こうした健康状態に問題がある場合、インプラントのやり直しができないかもしれません。

その場合は、入れ歯やブリッジといったほかの方法を選択することも視野に入れましょう。

再治療を検討する場合、クリニックに現在の健康状態や服用中の薬について詳細を伝え、最適な治療方法を相談することが大切です。

インプラント治療をやり直す方法

では実際にインプラント治療のやり直しとなった場合、どのような方法で処置がされるのでしょうか。

やり直し方法には、患者さんの口腔内や骨、健康状態などによって異なりますが、ここで
インプラントで再治療する方法とそれ以外の治療法を解説します。

インプラントで再治療

インプラントで再治療する具体的な手順は、基本的には以下の流れになります。

再治療の具体的な手順
手順 詳細

手順 詳細
➀今のインプラントを除去する 問題のあるインプラントを取り除き、インプラント歯周炎の有無や骨や歯茎の状態を確認する
②必要に応じて骨造成手術を受ける インプラント周囲炎や骨吸収が見られる場合には、骨造成手術や歯茎の治療を施す
③新しいインプラントを埋入する 口腔内を定期的にチェックし、健康な骨が再生するのを待って、新たなインプラントを埋入

再治療は初回治療よりも困難で、治療期間が延びる可能性があるため、早めにクリニックに相談し、計画を立てるようにしましょう。

インプラント以外の方法で治療

インプラント治療のやり直しが困難な場合は、入れ歯やブリッジといった別の治療方法を選択することがあります。

入れ歯の場合、歯がない箇所の両側の歯に金属バネで固定して覆う方法で、手術が不要なため比較的手軽に利用できます。
しかし、見た目や使用感がインプラントほど自然ではないという点がデメリットとして挙げられます。

ブリッジは、欠損している部分の両隣の歯を削り、その上に義歯を取り付ける治療法です。
見た目が自然で、噛む力も比較的強いですが、健康な歯を削る必要があるため、ほかの歯に負担がかかる可能性があります。

インプラント治療のやり直しにかかる費用と期間

インプラント治療をやり直す場合、事前に確認しておきたいのは、どれぐらいの費用と日数が必要なのかということです。

やり直すインプラント治療の状況や患者様の口腔内の状態などによって異なりますが、大まかな目安としてご判断ください。

費用

一般的に、インプラント治療のやり直しは自費診療で行われるため、全額自己負担になることが多い点に注意が必要です。

やり直しにかかる主な費用は以下になります。

治療内容 費用
インプラント除去 数万円
骨造成(必要な場合) 3万~30万円
新インプラント埋入 30万~50万円

インプラント治療では多くの場合、保証制度があり、保証期間内であれば、無償か無償に近い費用で再治療が可能です。
ただし、保証の条件として定期的なメンテナンスを受けていることが求められることが多いため、保証内容と条件について事前に確認しておくことをおすすめします。

期間

インプラントを除去せずに、簡単な治療や人工歯の交換だけで済む場合は、目安としては1〜3か月程度、3~6回ほどの通院で完了します。

インプラントを入れ直す場合は、目安としては半年程度かかり、その間に5~6回通院することになります。
骨造成が必要な場合は、骨が再生するのを待たなければいけないため、およそ1年、通院回数は10回得程度になるのが一般的です。

やり直し治療は初回よりも時間がかかるケースが多いため、計画的に治療に臨むことが重要です。

インプラント治療が失敗したときの対処方法

もし、「インプラントの治療が失敗だったかもしれない」と思ったら、どういう対処をすればよいのわからない方も多いと思います。
その際、取るべき対処法としては、以下の3つになります。

インプラント治療が失敗したときの対処法

  • 相談する
  • 治療のやり直しを依頼する
  • 返金を依頼する

それぞれについて詳しく解説します。

相談する

インプラント治療後に失敗したな……と思ったり、違和感を抱いたりしたら、まずは歯科医師に相談することが大切です。

ただ、相談するといっても、いろいろな相談先があるので、状況に合わせて判断してください。

インプラント治療を受けた医院に相談する

最初にすべきことは、治療を受けた医院に相談することです。
治療を行ったクリニックは、患者の口腔内の状態や治療履歴をもっともよく把握しているため、適切なアドバイスや対応が期待できます。
原因が軽微なものであれば簡単な処置で問題が解決することがあります。
さらに、保証制度がある場合は、費用を負担してもらえるかもしれません。

インプラントのトラブルの原因が患者さん側にあるのか、クリニック側にあるのかによって、対応の仕方が変わってきます。

ほかのクリニックに相談する

治療を受けた医院で納得のいく対応が得られない場合や相談しにくい場合は、ほかのクリニックでセカンドオピニオンを受けることを検討してください。
ほかのクリニックから意見をもらうことで、より正確な診断や新たな治療法の提案が期待できます。

その際は、インプラントの再治療の経験が豊富な医院や、インプラントに特化した専門医がいる医院を選ぶとよいでしょう。
ただし、新たに検査が必要なため、時間がかかることと、保証も効かないので注意が必要です。

その他の相談先

治療を受けたクリニックに相談してもトラブルが解決しない場合、日本歯科医師会や弁護士、国民生活センターといった外部機関に相談する方法もあります。

日本歯科医師会は、公正な立場から歯科医療に関する相談を受け付けています。
弁護士は、法的手段を含めた対応を検討する際に頼りになります。
また、国民生活センターは消費者と事業者の間で生じたトラブル解決を支援しており、公平な立場から相談員が処理にあたってくれるのが特徴です。

これらの機関を活用し、問題解決を目指しましょう。

治療のやり直しを依頼する

クリニックに相談後、その対応や費用、期間などで納得したなら、引き続いて、インプラント治療のやり直しを依頼しましょう。

やり直しにあたっては、最初にインプラント治療をしたクリニックに依頼するか、ほかのクリニックに依頼するかのどちらかになります。

インプラント治療を受けたクリニックでやり直す

最初にインプラント治療を受けたクリニックなら、患者様の治療履歴や口腔内の状態を把握しているため、やり直しの治療にもスムーズに対応できます。

また、インプラントをやり直す原因が、患者様の落ち度でなければ、保証の範囲で再治療・再手術が受けられる可能性があります。
逆に、定期的なメンテナンスを怠る、ブラッシングが不十分など患者さんのケア不足でインプラントに不具合が出た場合は、自費負担になることもあるので注意しましょう。

ほかのクリニックでやり直す

今のクリニックでのやり直しに不安があるときは、ほかのクリニックを検討しましょう。

ただしインプラントの再治療は、簡単ではありません。
そのため、インプラントの失敗症例を多く診てきたクリニックや大学病院など、経験豊富なクリニックを選ぶようにしましょう。

ほかのクリニックで再治療すると、最初のインプラントと同じメーカーのものがないケースがあります。
その場合、取り寄せなければならず時間と費用がかかることがあります。

返金を依頼する

インプラント治療の失敗の原因が医院の過失であると明確な場合、治療費の返金を依頼することが可能です。
この場合、患者側は問題の原因について客観的な証拠を持っていることが重要です。

たとえば、セカンドオピニオンの結果や診断書があれば、医院に対して説得力のある主張ができます。
返金を求める際にクリニック側との交渉が円滑に進まない場合は、先に紹介したように、弁護士や国民生活センターなどの第三者機関に調整を依頼することも検討しましょう。

インプラント治療はやり直し可能!治療したクリニックに相談しよう

インプラント治療後、まれに噛み合わせの悪化やインプラント周囲炎などのトラブルが生じることがあります。
そんな場合でも、インプラントのやり直し治療は可能なので心配は不要です。
ただし、そのまま放置していると、周囲の歯や全身にも不調が広がる可能性があるため、速やかにクリニックに相談しましょう。
また、最初にインプラント治療したクリニックとは別のクリニックでも、やり直し治療は可能です。

インプラントのきぬた歯科では、他院で施術を受けたインプラント治療の失敗やトラブルのやり直しにも対応しています。
豊富な経験と高い技術で、インプラントにおけるトラブルを解決いたしますので、まずはお気軽にご連絡ください。

この記事の監修者

日本歯科大学新潟生命歯学部を卒業後、インプラント治療に従事。現在では年間3000本以上のインプラント治療の実績がある。

日本でインプラント治療が黎明期だったころからパイオニアとして活躍し、インプラントメーカーのストローマン社やノーベルバイオケア社から公認インストラクターの資格を得た。

本の執筆やTV・雑誌などのメディア出演、自身のYouTubeチャンネルなどで情報発信を積極的に行っている。

<主な著書>
インプラント治療は史上最強のストローマンにしなさい!!
歯医者が受けたい!インプラント治療
あっそのインプラント、危険です!!

<YouTubeチャンネル>
八王子きぬた歯科

<外部サイト>
きぬた 泰和 Wikipedia