インプラントが抜けるケース

インプラントが抜けた際は、まずどの部分が抜けたのかを確かめましょう。

インプラントは、人工歯(被せ物)・アバットメント(土台)・インプラント体(人工歯根)の3つの部品で成り立っています。
どの部品が抜けたのかによって、再治療の可否や治療内容も変わるので、確認が必要です。

ケース①人工歯(被せ物)が抜けた

インプラントの1番上にある人工歯が抜けた場合は、飲み込んだり無くしたりしないように注意して保管しましょう。

人工歯には食べものを噛む役割があるため、長く使用していると欠けることや抜け落ちることが起きます。
人工歯が抜けた場合は、自分で直そうとせずに歯科医師に相談しましょう。

また、人口歯が抜けた患部はアバットメントがむき出しになっています。
食べかすや細菌などが入る恐れがあるため、その部分で食べものを噛まないように食事の際は注意が必要です。

ケース②アバットメント(土台)が抜けた

アバットメントも、経年劣化などによって抜けることがあります。

アバットメントは、人工歯と合わせることで上部構造と呼びます。
状態によっては再利用できる場合もあるため、無くさないように保管して早めに歯科医師へ相談しましょう。

ケース③インプラント体(人工歯根)が抜けた

インプラント体が抜けた場合は、歯ぐきや骨にトラブルが起きている可能性が高いです。

インプラント体は骨と結合しているため、基本的に抜けることはありません。
そのため、抜けた場合はうまく骨と結合しなかった可能性や、インプラントを埋入した骨が痩せた可能性があります。

多いケースとしては、インプラント周囲炎という歯周病にかかり、骨が痩せたことでインプラント体が抜けた場合です。

この場合でも、部品をきちんと保管して歯科医院を受診しましょう。

インプラントが抜けた際にやってはいけないこと

続いて、部品が抜けた際にやってはいけないことを2つ紹介します。

無理にもとに戻そうとしない

どの部品が抜けたとしても、抜けた部分を無理にもとに戻そうとすることはやめましょう。
特に、インプラント体が抜けた場合は骨や歯ぐきがむき出しになっているため、手や舌で患部をいじると細菌などが入り、歯周病を引き起こす可能性が高くなります。

また、部品が抜けただけに見えても、実際は部品が破損していることもあります。
抜けた部品は保管して、歯科医院を受診しましょう。

抜けた部分を放置しない

インプラントが抜けた部分を、そのままにしないことも大切です。
理由としては、患部を放置することで細菌に感染し、歯周病を引き起こす可能性があるためです。

また、食事の際に患部を避けて食べものを噛むと、ほかの歯に負担がかかってしまいます。
放置せずに歯科医院を受診することが、口内全体の負担を減らすことにも繋がります。

インプラントが抜ける原因

インプラントが抜ける原因はいくつかありますが、もっとも多いとされるのが「インプラント周囲炎」です。インプラントを埋め込んだ周りの組織に炎症が起こるもので、病態は歯周病とよく似ています。

歯垢などの汚れが蓄積していると、歯周病菌が繁殖して歯ぐきが腫れたり、膿が出たりします。放置しておくと、炎症は骨にまで及ぶため、最悪の場合インプラントが抜け落ちてしまうおそれがあります。インプラント周囲炎を予防するには、毎日正しく、丁寧にブラッシングを行い、お口の中を清潔に保つことが重要です。

また、歯ぎしりや食いしばりなどの癖、かみ合わせの不具合などによって、インプラントに過剰な力がかかり続けることも、インプラントが抜ける原因の一つです。

就寝時の歯ぎしりや、無意識の食いしばりなどは、患者様にとっては自覚しづらいため、気づかない間に再治療が必要な状態になっていた、というケースも多いです。インプラントにかかる力を軽減するには、マウスピースの装着が効果的です。

その他の原因として、喫煙習慣がある方や、糖尿病、骨粗しょう症などの全身疾患をお持ちの場合も、インプラントと骨の結合がうまくいかずに抜け落ちることがあります。

歯科医院を受診するまでに

ここからは、インプラントが抜けたあとから、歯科医院を受診するまでに準備しておくことなどを紹介します。

抜けた部品の保管方法

インプラントの部品は小さいため、よく無くすケースがあります。
特にインプラントの上層部分は状態によっては再利用できる可能性があるため、抜けたあとの保管が大切です。

また、人工歯はセラミックなどでできているため、強い力がかかると欠けてしまいます。
そのため、布やティッシュペーパーではなく、タッパーや中身が見えるケースなどにいれて保管することがおすすめです。

歯科医師に伝えること

歯科医院では、部品が抜けたことをただ相談するのではなく、抜けた原因や日時も伝えましょう。
なぜなら、再治療ができるかどうかの判断材料になるからです。

外れた部品を持参して、いつ・何をしているときに・どのように抜けたのかを伝えられるようにしておくと、診察や治療がスムーズに進められます。

インプラントが抜けた後の注意点

インプラントが抜けたら、早急にかかりつけの歯科医師に相談することが大切です。
しかし、すぐに歯科医院に行けないという場合は、以下の3つの注意点に気をつけましょう。

注意点①患部で食べものを噛まないようにする

インプラント体ごと抜けた場合は、歯ぐきや骨がむき出しになっています。
歯ぐきや骨がむき出しになっている患部で食べものを噛むと、食べかすが患部に入りこみ痛みや出血などの症状が起きます。

食事の際は、患部で食べものを噛まないように注意しましょう。

注意点②歯に負担がかかるものは食べないようにする

患部を避けて食事をすると、必然的にほかの歯で食べものを噛む必要があります。

その際に硬いものなどを食べすぎると、ほかの歯に負担がかかってしまいます。
歯科医院を受診するまでは、できるだけ柔らかい食べものや噛む必要がないものを食べるようにしましょう。

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注意点③周囲の天然歯などに影響がないか確認する

歯周病の症状が進行してインプラントが抜けた場合は、周囲の歯にも歯周病の原因となる菌が残っている可能性があります。
歯周病の菌などをそのままにしておくと、周りの歯も歯周病にかかることが考えられます。

インプラントが抜けた患部だけではなく、周囲の歯ぐきや骨の状態を確認して、早めに歯科医院を受診しましょう。

インプラントが抜けたら早急に歯科医院を受診しよう

いかがでしたでしょうか。

インプラントは、さまざまな原因で部品が抜けることもあります。
しかし、どのような場合でも、自分でもとに戻すことや抜けた部分をいじることはしないでください。
細菌などが患部に入り込み、歯周病を引き起こす原因になるためです。

インプラントが抜けたら、早急に歯科医師に相談することが大切です。
受診する際は抜けた部品を持参して、いつ・なぜ・どのように抜けたのかを話せると対応がスムーズに行えます。
また、すぐに歯科医院へ行けない場合は、患部をできるだけ清潔に保ちましょう。

きぬた歯科では、インプラントが抜けた際の対応を、患者様の患部の状態に合わせて提案しています。
インプラント治療にお悩みのある方は、ぜひ当院へご相談ください。

この記事の監修者

日本歯科大学新潟生命歯学部を卒業後、インプラント治療に従事。現在では年間3000本以上のインプラント治療の実績がある。

日本でインプラント治療が黎明期だったころからパイオニアとして活躍し、インプラントメーカーのストローマン社やノーベルバイオケア社から公認インストラクターの資格を得た。

本の執筆やTV・雑誌などのメディア出演、自身のYouTubeチャンネルなどで情報発信を積極的に行っている。

<主な著書>
インプラント治療は史上最強のストローマンにしなさい!!
歯医者が受けたい!インプラント治療
あっそのインプラント、危険です!!

<YouTubeチャンネル>
八王子きぬた歯科

<外部サイト>
きぬた 泰和 Wikipedia