サイナスリフトとは

サイナスリフトとは、上あごにインプラントを埋入するための骨の高さが、不十分な際に用いられる治療法のことです。
骨の高さが5ミリ以下の場合や、骨の量が広範囲にわたって不足している場合に行われます。

サイナスリフトは、上顎洞底部のシュナイダー膜という粘膜を持ち上げて、そこにできた空間に自家骨(自分の骨)や骨補填材を充填して骨を補う術式です。

サイナスリフトが必要な理由

上あごの骨には、左右に上顎洞(サイナス)という大きな空洞があります。
上あごの奥歯を失った方は、周囲の骨が歯を失った箇所の骨を吸収するため、上顎洞が拡大し、インプラントの埋入に必要な骨が不足してしまいます。

あごの骨が不足している場合は、インプラントの脱落などのトラブルが起こる可能性があるので、インプラント治療を受けられません。
サイナスリフトは、このようなケースに当てはまる方が、インプラント治療を受けられるように骨を造成する役割を担っています。

サイナスリフトの治療費

前述で少し触れましたが、サイナスリフトの治療は、ほかの骨造成と比べてもかなりの費用がかかります。
ほかの骨造成より費用が高い理由も交えて紹介しているので、ご参考になさってください。

費用の相場

サイナスリフトの治療費は、15万~30万円と高額です。
それだけの費用がかかる理由には、サイナスリフトが広範囲に骨を造成する治療であることが関係しています。
ですから、1歯あたりの金額で換算すれば、ほかの骨造成とそこまでの違いはありません。

また、サイナスリフトを含む骨造成の治療後には、患部の状態の確認や消毒が必要なため、1,500円程度の費用がかかります。

上記の金額はあくまで目安であり、クリニックや患部の状態によっては異なるので、カウンセリングなどで質問してみてください。

サイナスリフトの治療期間の目安

サイナスリフトの治療期間は、自家骨や骨補填材が完全に自分の骨になるまでの6か月程度が目安です。
期間を空けたのち、インプラント体(人工歯根)を埋入します。
インプラント体の埋入後にも、3か月以上の期間を設けてから人工歯を装着するため、治療は長期にわたります。

インプラント治療を含むサイナスリフトの治療期間は、多大な時間を要するので、ご自身の予定を考慮して治療に臨みましょう。

サイナスリフトの治療の流れ

サイナスリフトの治療の流れは、以下のとおりです。

サイナスリフトの治療の流れ

  1. 麻酔する
  2. 歯茎を切開する
  3. シュナイダー膜を剥がして、あごの骨との間に隙間を作る
  4. できた隙間に自家骨や骨補填材を充填する
  5. 歯茎を縫合する
  6. 充填した自家骨や骨補填材が自分の骨になるまで待つ

サイナスリフトで充填した材料が、完全に自家骨になったのちにインプラント治療を行います。

サイナスリフトの特徴

サイナスリフトは、骨を広範囲に造成することができるため、長さのあるインプラントも使用できます。
また、直視下で行われる治療ですから、治療中にトラブルが起きるリスクも低くなります。

ただし、自家骨や骨補填材が完全に自分の骨になるまで、インプラント治療を受けられないので、長期的な治療になることを考慮しなければなりません。
くわえて、広範囲で骨を補う治療であることから、骨補填材を使用するほど費用も高くなります。
身体的にも経済的にも負担が大きいことを、把握しておきましょう。

サイナスリフトの治療を受けたあとの注意点

サイナスリフトだけに限らず、骨造成の治療後には注意しなければならない点が、3つあります。
治療後は、以下のポイントに気をつけてください。

サイナスリフトを含む骨造成の治療後の注意点

  • 手術後3日間は頻繁なうがいを避ける
  • 患部に歯ブラシを当てないようにする
  • 指や舌で触れないようにする

傷の治りを遅くする原因としては、頻繁なうがいが挙げられます。
頻繁なうがいは、傷口に刺激を与えることになるため、避けたほうが賢明です。
また、歯ブラシを患部へ直接当てることや、指や舌で触る行為も傷の治りを遅くする点には、注意が必要です。
細菌が患部へ侵入するおそれもあるため、患部にはなるべく触れないことを意識しましょう。

安心してインプラント治療を受けるためにもこれらの3つに注意して、治療後の期間を過ごしてください。

リスクについては「サイナスリフトに失敗することはありますか?」をご覧ください。

そのほかの骨造成

骨造成は、サイナスリフト以外にもソケットリフトとGBR法の2つの治療法があります。
治療の流れは、患部の骨の状態やインプラントを埋入する位置によって、それぞれ異なるため確認しておきましょう。

ソケットリフト

ソケットリフトは、サイナスリフトと同様、上あごにインプラントを埋入するための骨の高さが、不足している際に用いられます。

サイナスリフトとの違いは、治療に必要な骨の高さや質量です。
ソケットリフトの場合、骨の高さは6ミリ以上、骨の量は局所的に足りていないときに行われる治療です。

また、インプラントを埋入する部分に特殊なドリルを使用して、あごの骨に穴をあけるなど、術式も異なります。
その穴に自家骨や骨補填材を充填して、シュナイダー膜を押し上げます。
インプラント体を埋入して、3か月程度の期間を空けてから人工歯を取り付けて、治療は完了です。

骨造成と同時にインプラント体を埋入するため、治療期間もサイナスリフトより短くなります。
ただし、局所的に骨を補う治療のため、広範囲で骨の量が不足しているケースには適用されません。

GBR法

GBR法は、日本語で「骨誘導再生法」ともよばれる治療法です。

あごの骨の厚みや高さが不足している場合に、自家骨や骨補填材を充填して、その上にメンブレン膜という人工膜を覆い被せ、骨の造成を促します。

上あごに限らず、下あごの骨を補うこともできますが、治療期間が長く費用も高くなります。

インプラントとは

サイナスリフトの治療費はクリニックや患部の状態によって異なる

今回は、サイナスリフトにかかる治療費や期間などを解説しました。

サイナスリフトは、広範囲にわたって骨の量を補うことができるため、長いインプラントでも埋入できます。
ただし、治療期間が長期にわたることにくわえ、費用も高い点は考慮しなければなりません。
サイナスリフトの治療費は、クリニックや患部の状態によって異なるので歯科医師に確認したうえで、治療に臨みましょう。

当院は、年間3,000本のインプラントを埋入した実績と経験が豊富なクリニックです。
骨造成も行っているため、インプラント治療に関わることは何でもご相談ください。
インプラント治療のきぬた歯科

この記事の監修者

日本歯科大学新潟生命歯学部を卒業後、インプラント治療に従事。現在では年間3000本以上のインプラント治療の実績がある。

日本でインプラント治療が黎明期だったころからパイオニアとして活躍し、インプラントメーカーのストローマン社やノーベルバイオケア社から公認インストラクターの資格を得た。

本の執筆やTV・雑誌などのメディア出演、自身のYouTubeチャンネルなどで情報発信を積極的に行っている。

<主な著書>
インプラント治療は史上最強のストローマンにしなさい!!
歯医者が受けたい!インプラント治療
あっそのインプラント、危険です!!

<YouTubeチャンネル>
八王子きぬた歯科

<外部サイト>
きぬた 泰和 Wikipedia