高齢者がインプラント治療を受けるための条件

「しっかりと噛んで食事を味わいたい」「入れ歯だと管理が大変……」といった考えから、インプラント治療を検討しているご高齢の方もいらっしゃるかもしれません。

基本的に、あごの骨の成長が終わった20歳以上の方であればインプラント治療を受けられますが、口内環境や健康状態によっては、治療を受けられないケースもあります。
ここでは、高齢の方がインプラント治療を受けるための2つの条件を紹介します。

条件①持病がないこと

糖尿病や高血圧などの持病がある患者様は、そもそもインプラント治療を受けられない可能性があります。

糖尿病の方は傷が治りにくい傾向があるので、外科手術をともなうインプラント治療はあまりおすすめできません。
高血圧の方は、手術の際の緊張やストレスで通常よりも血圧が上がると、脳梗塞や心筋梗塞を発症するリスクが高まってしまいます。

また、心臓疾患がある方も、外科手術の際に出血が止まらなくなるおそれがあるので慎重に判断しなければなりません。
上記の持病をお持ちの方は、まずはかかりつけ医に相談しましょう。

条件②あごの骨の量が足りていること

十分なあごの骨の量があることも、高齢の方がインプラント治療を受けるための条件として挙げられます。

歯を失って年月が経過すると、歯がない部分のあごの骨は痩せていきます。
歯がないと骨に刺激が伝わらず、その結果骨が痩せてしまい、インプラント体を埋入できるスペースがないので治療できません。

また、骨の強度が弱い骨粗しょう症の方がインプラント治療を受ける場合は、あごの骨とインプラント体の結合に通常よりも時間がかかります。

ただし、骨造成とよばれる手術を事前に施せば、インプラント治療を行える可能性があります。

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インプラント治療を受ける方の年齢層

平成28年度に厚生労働省が行った調査によると、インプラント装着者の割合は65~69歳が4.6%でもっとも多いことがわかりました。
70~74歳が3.7%、75~79歳が3.4%と、インプラント治療を選択した上位3つの年齢層を高齢者が占めています。

この数字からわかるように、多くのご高齢の方がインプラント治療を受けています。

参照元:厚生労働省「平成28年歯科疾患実態調査」

高齢者向けのインプラント治療

インプラント治療のなかでも、高齢の方に適したインプラント治療を紹介します。

オーバーデンチャー

オーバーデンチャーは、残っている天然歯や埋入した2~4本のインプラントで、入れ歯を固定する治療方法です。

金具と粘膜で支える通常の入れ歯とは異なり、天然歯やインプラントで固定するので安定性が高く、食事や会話の最中にずれたり外れたりする心配がありません。
なお、一般的なインプラントと比べると、噛む力が弱く、入れ歯を装着している違和感が出ることもあります。

関連記事:インプラントオーバーデンチャーの費用はいくらでしょうか?

オールオンフォー

オールオンフォー(All on 4)では、あごの骨に埋めた4本のインプラントで、歯が12本連結した人工歯を支えます。

あごの骨が残っている部分を選んでインプラント体を埋入できるので、すべての歯を失った方や歯がほとんど残っていない方でも、天然歯と変わらない力で噛めるようになります。
ただし、オールオンフォーはどのクリニックでも受けられる治療ではなく、対応していないところも少なくないので、あらかじめ調べておきましょう。

関連記事:オールオンフォーの費用はどのくらいかかりますか?

高齢者がインプラント治療を受ける際に発生しうるリスク

ご高齢の方でもインプラント治療を受けられますが、リスクもともないます。
ここでは、高齢の患者様がインプラント治療を受ける際に起こりうる、2つのリスクを紹介するので、参考になさってください。

リスク①体力がなく手術や通院に耐えられない

高齢になると、若い頃に比べて体力が落ちているので、手術に耐えられないというリスクがあります。

手術自体に耐える体力はもちろん、術後のメンテナンスに通う体力も必要です。
歯茎が治癒するまでにかかる期間も患者様の回復力次第で変わるので、体力に自信がない方は、入れ歯やブリッジなどの手術をともなわない治療方法も視野に入れたいところです。

リスク②細菌の感染が起こりやすい

高齢の患者様がインプラント治療を受けるリスクとして、細菌の感染が起こりやすいという点も挙げられます。
細菌の感染が起こりやすいのは、加齢によって抵抗力が弱くなるからです。

手術後に歯茎に細菌が入り込んで感染が引き起こされると、歯茎の痛みや膿が発生します。
歯周病のようなインプラント周囲炎を発症し、症状が進行すると、あごの骨が溶かされてインプラントが脱落し、最終的にインプラントを取り除かなければなりません。

インプラント周囲炎を予防するには、毎日の歯磨きを丁寧に行ったうえで、メンテナンスを定期的に受診しましょう。

関連記事:インプラントの治療に年齢制限はありますか?

高齢者がインプラント治療を受ける際の注意点

ここからは、高齢の患者様がインプラント治療を受ける際に押さえておきたい、3つの注意点を紹介します。

注意点①通院できなくなった場合の対策を考える

高齢の患者様の場合、通院が困難になったときの対策を考えておかなければなりません。
インプラントは、治療後もメンテナンスのために定期的に通院する必要があるからです。

治療後もクリニックに通ってメンテナンスを受けることで、インプラント周囲炎を発症するリスクを抑えられます。

通院できなくなった際に、たとえば訪問診療を利用できるような柔軟な対応を行ってくれるクリニックを探すとよいでしょう。

注意点②難しい手術にも対応できるクリニックを選ぶ

高齢の患者様は、難しい手術にも対応できるクリニックを選んでおくと安心です。

年を重ねるほど、あごの骨の量は減っていきます。
インプラント体を埋入するためのあごの骨の量を確保するには、骨造成という手術を受ける必要があり、骨造成には歯科医師の高度な技術が求められます。

どのクリニックでも骨造成を受けられるわけではないので、クリニックの選定の際に骨造成といった難しい手術にも対応しているかを確認してみてください。

関連記事:【GBR法】インプラント治療の骨造成手術にかかる費用の相場はどのくらいですか?

注意点③インプラントの情報を保管しておく

インプラントの情報を紛失すると、適切なメンテナンスを受けられなくなる可能性があるので注意しましょう。

口腔内に埋入したインプラントのメーカーや、治療の時期などのインプラントの情報は、治療後にもらえるインプラントカードに記載されています。

患者様が遠方に転居したり、クリニックが閉院したりした場合でも、インプラントカードがあれば新しいクリニックでも治療を継続できます。
適切なメンテナンスを受けられるように、インプラントカードをきちんと保管しておいてください。

インプラントとは

高齢者は歯科医師に相談のうえインプラント治療を受けるかどうかを決めましょう

いかがでしたでしょうか?

基本的に、高齢の患者様もインプラント治療を受けられますが、口内環境や健康状態によっては、治療を受けられないケースもあります。

高齢の方は、体力が低下していたり抵抗力が弱くなったりしているので、手術への耐性や細菌の感染に気をつけなければなりません。
糖尿病や高血圧などの持病がある患者様は、インプラント治療を受けられない可能性があるので、クリニックの医師とかかりつけ医の双方に相談しましょう。

きぬた歯科は、インプラント治療の実績が豊富なクリニックです。
治療に関して不安なことは、カウンセリングの際に何でもご質問ください。
インプラント治療のきぬた歯科

この記事の監修者

日本歯科大学新潟生命歯学部を卒業後、インプラント治療に従事。現在では年間3000本以上のインプラント治療の実績がある。

日本でインプラント治療が黎明期だったころからパイオニアとして活躍し、インプラントメーカーのストローマン社やノーベルバイオケア社から公認インストラクターの資格を得た。

本の執筆やTV・雑誌などのメディア出演、自身のYouTubeチャンネルなどで情報発信を積極的に行っている。

<主な著書>
インプラント治療は史上最強のストローマンにしなさい!!
歯医者が受けたい!インプラント治療
あっそのインプラント、危険です!!

<YouTubeチャンネル>
八王子きぬた歯科

<外部サイト>
きぬた 泰和 Wikipedia