インプラント治療ができない場合とは

インプラント治療は外科手術をともなうため、身体が手術の負担に耐えられないと判断されると治療を受けられません。
では、どのような方が治療を受けられないとされるのかを紹介します。

あごの骨が足りない

インプラント治療では、インプラント体(人工歯根)を歯槽骨というあごの骨に埋め込み、その上に人工歯を装着して歯を補います。

そのため、インプラント体を埋入する歯槽骨の厚みや高さが不足していると、治療を断られることがあります。
骨が足りていないにもかかわらず無理やり施術すると、インプラント体の破損または脱落につながります 。

歯周病にかかっている

歯周病は、細菌感染が原因で歯茎に炎症が起こる疾患です。
症状が進行すると歯槽骨が溶け、最終的に歯が抜け落ちてしまいます。

歯周病にかかっていると、手術の際に口内感染のリスクがあるので、インプラント治療に着手する前に歯周病の症状を抑えなければなりません。
また、重度の歯周病で歯槽骨が溶けていると、骨を補う治療も求められます。

歯周病ではない部分にインプラントをおこなったとしても、その後に歯周病になることもありますので、その注意点については「インプラントでも歯周病になりますか?」をご覧ください。

妊娠している

妊婦の方は、母子の安全を守るためにインプラント治療を断られることがあります。
インプラント体を埋入するには、歯茎を切開する手術やそれにともなう投薬、レントゲン撮影を受けます。
デリケートな状態の身体に大きな負担をかけないよう、妊娠期間中のインプラント治療は避けるのが一般的です。

しかし、今すぐに歯科治療が必要な場合は、入れ歯で歯を補うのも1つの手です。
インプラント治療を受けるのであれば、産後、体調が安定してからにしましょう。

特定の病気を患っている

以下に挙げる疾患をお持ちの方は、インプラントの手術によって身体に悪影響が出る可能性があります。

インプラント治療を避けたほうがよい疾患の例

  • 糖尿病
  • 狭心症
  • 不整脈
  • 高血圧
  • 腎疾患
  • 骨粗しょう症

これらの病気を患っているからといって、必ずしもインプラント治療を断られるわけではありません。
かかりつけの医師に相談し、許可が出れば治療を受けられます。
また、上記以外であっても内科的疾患や血液疾患の持病がある方は、一度医師に確認してから治療を受けてください。

年齢が低い

骨がまだ成長途中の方は、インプラント治療を受けられません。

歯槽骨にインプラント体を埋め込んだあとに骨が成長すると、噛み合わせや歯並びに不具合が生じるためです。
当院は、18歳以上の患者様であれば治療を受け付けていますが、なかには20歳未満の方の治療を引き受けないクリニックもあるようです。

インプラント治療ができる人の条件については「インプラント治療ができない人はいますか?」をご覧ください。

あごの骨を作る骨造成治療とは

歯槽骨というあごの骨の厚みや高さが足りないと、インプラント治療を断られるケースがあります。
しかし「骨造成治療」を受ければ、あごの骨が少ない方であってもインプラント治療を受けられるようになります。
以下で骨造成の主な治療方法を3つ紹介するので、ご自身に合った方法を選ぶ参考にしてみてください。

骨造成治療の種類

骨造成の治療方法は、「サイナスリフト」「ソケットリフト」「GBR法」の3種類が代表的です。
それぞれ詳しく解説します。

サイナスリフト

サイナスリフトは、上あごの奥歯の上にある上顎洞という空洞を持ち上げ、骨補填材を入れて骨を補う治療方法です。
上顎洞底挙上術(じょうがくどうていきょじょうじゅつ)ともよばれ、あごの骨が非常に少ない症例に選択されます。

ほかの治療方法では、あごの骨の高さが5ミリメートル以上ないと骨造成ができませんが、サイナスリフトでは骨の高さがそれ以下でも施術可能です。
広範囲の骨が増やせるので、長めのインプラントも埋入できます。

しかし、骨補填材が固まるまで6~10か月かかる点や、治療範囲が広いゆえに身体への負荷が大きいなどのデメリットもあります。

ソケットリフト

ソケットリフトの治療の流れはサイナスリフトと同じですが、造成する骨の量が少ない点が特徴です。

増やす骨の量が少ないので、骨造成とインプラント体を同時に埋入できるほか、処置する範囲がごく小さいので身体への負担が軽く済みます。

ただし、あごの骨の高さが5ミリメートル以上なければ治療を受けられません。
また、骨に開けた小さな穴から上顎洞を挙上するため、上顎洞の粘膜の様子が見えづらく、粘膜を傷つけるリスクが高まります。

GBR法

GBR法はGuided Bone Regenerationの略で、日本語では骨誘導再生療法といいます。
骨を増やしたい場所を選び、骨補填材や自分の歯から採取した骨を移植して歯槽骨を造成する治療方法です。

ソケットリフトと同じように、骨造成とインプラント体を同時に埋め込めるので、治療期間が短縮できる点が魅力です。
その代わり、自分の骨を補填材として使用する際は、骨の採取も行う分身体への負荷が大きくなる点に留意しなければなりません。

骨造成についてインプラント治療で聞く「骨造成」とはなんでしょうか?」をご覧ください。

骨造成治療のメリット・デメリット

ここからは、骨造成治療のメリット・デメリットを解説します。
骨造成治療を受けるかどうか迷っていらっしゃる方は、参考にしてみてください。

メリット

骨造成治療を施せば、インプラント体を安全に埋入するのに十分なあごの骨を作れます。
骨がしっかり造成されれば、インプラント体が上顎洞に突き抜けたり、歯槽骨から抜け落ちたりするなどのトラブルを防げます。

また、骨が痩せて歯茎が下がっていた状態が回復するので、骨造成治療には審美的効果も期待できるでしょう。

デメリット

骨造成治療は、骨補填材が安定するまで数か月かかるので、インプラント治療のみを受ける場合よりも治療期間が長くなります。

くわえて、喫煙者の方や全身疾患をお持ちの方は、骨の吸収がうまくいかないケースがあるなどの理由で骨造成を受けられません。

歯茎を再生する歯肉再生療法とは

インプラント治療を受ける際の抜歯が原因で、歯茎が下がったと感じる患者様もいらっしゃいます。

抜歯してからインプラント体を埋入するまでに時間が空くと、歯茎の組織が退化する「廃用性萎縮」が起きて、歯茎が下がります。
また、抜歯により陥没した歯茎が回復していく過程で、歯茎が元のかたちに戻らず、少し窪んだ状態で完治してしまうケースもあります 。
しかし「歯肉再生療法」を用いれば、下がった歯茎を元の状態に戻せるのでご安心ください。

歯肉再生療法には、ほかの箇所の歯茎を移植する「遊離歯肉移植術」や、歯茎の一部をずらして歯根を覆う「歯肉弁側移動術」などいくつかの選択肢があります。
専門的な治療を受ければ、歯茎の退縮による審美性の低下や、歯根の露出が原因で起こる知覚過敏の誘発を防げます。

歯肉再生治療にかかる期間と費用

歯肉再生治療の費用は、歯科クリニックごとに大きく変わりますが5万~8万が相場です。

上記は自由診療の費用相場なので、保険適用が認められた場合はもう少し費用を抑えられます。
インプラント治療を受けている歯科クリニックで、保険適用の有無を確認してみましょう。

インプラントとは

インプラント治療が困難と判断されても骨造成で解決できる

いかがでしたでしょうか?

あごの骨が少ないと、インプラント治療を断られることがあります。
しかし、骨造成治療を受けて骨の厚みと高さを補えば、安全にインプラントの手術を受けられるようになります。

また、インプラント治療の過程で抜歯した結果、歯茎が下がったと感じるケースがありますが、これは歯肉再生治療で回復することが可能です。
歯茎が下がると審美性の低下だけでなく、知覚過敏も招くので、歯茎の退縮を感じた際は歯肉再生治療をおすすめします。

きぬた歯科では、インプラント治療にくわえて骨造成治療も受け付けています。
他院で難症例と診断された方も、ぜひ一度ご相談ください。
インプラント治療のきぬた歯科

この記事の監修者

日本歯科大学新潟生命歯学部を卒業後、インプラント治療に従事。現在では年間3000本以上のインプラント治療の実績がある。

日本でインプラント治療が黎明期だったころからパイオニアとして活躍し、インプラントメーカーのストローマン社やノーベルバイオケア社から公認インストラクターの資格を得た。

本の執筆やTV・雑誌などのメディア出演、自身のYouTubeチャンネルなどで情報発信を積極的に行っている。

<主な著書>
インプラント治療は史上最強のストローマンにしなさい!!
歯医者が受けたい!インプラント治療
あっそのインプラント、危険です!!

<YouTubeチャンネル>
八王子きぬた歯科

<外部サイト>
きぬた 泰和 Wikipedia