インプラントは、歯の審美性や機能性を高められる歯科治療です。
治療後、口腔内を健康に保ちつつ、インプラントを長く使用しつづけるには、治療後の定期的なメンテナンスが欠かせません。

しかし、そのメンテナンスにどれほどの費用がかかるのかまでは、ご存じない方もいらっしゃるでしょう。

そこで本記事では、インプラント治療後のメンテナンスにかかる費用について解説します。
インプラント治療を検討中の方は、ぜひご一読ください。

インプラントの治療後にメンテナンスが必要なのはなぜ?

本題に入る前に、まずはインプラント治療後にメンテナンスが欠かせない4つの理由を解説します。

インプラントの治療後にメンテナンスが必要な理由

  • インプラントを長持ちさせるため
  • インプラント周囲炎を予防するため
  • 天然歯の健康を維持するため
  • 保証制度が受けられるようにするため

インプラント治療を施した箇所は、血液から歯に免疫細胞を送る歯根膜(しこんまく)とよばれる組織がないため、天然歯と比べて細菌に感染しやすいといわれています。
細菌が入り込むと歯肉の炎症や歯周病、天然歯の虫歯を引き起こすほか、重症化するとインプラント体が抜け落ちてしまうといったトラブルにもつながりかねません。
そのような事態を防ぐためにも、定期的にメンテナンスを受けることが必要になるわけです。

くわえて、メーカーの保証制度を受けられるようにしておくことも、定期的なメンテナンスが欠かせない理由の一つです。
一般的にインプラントメーカーでは、一定期間内で起こった不具合に対して、交換や修理、再治療にかかる費用を負担する保証制度が設けられています。

しかし、その多くは「定期的にメンテナンスを受けている」ことが条件として含まれます。
メンテナンスを怠った状態でインプラントに関するトラブルが発生すると、制度が適用されず、高額な治療費をすべて負担することになるかもしれません。

このように、インプラント治療後のメンテナンスは、口腔内を正常に保つとともに、トラブルが起こった際の負担を減らすうえで重要な役割を果たしているのです。

インプラントの寿命はどのくらい?

インプラントの平均的な寿命は10~15年程度といわれています。
この寿命は、「インプラントが破損せず正常に機能しつづける期間」と定義されるのが一般的です。
天然歯を土台にして人工歯を装着するブリッジは7~8年程度、入れ歯は3~5年程度といわれているため、インプラントの耐用年数は比較的長いといえます。

しかし、上述した寿命は定期的なメンテナンスにくわえ、徹底したセルフケアが行われていることを前提とした数値です。
インプラントが十分に管理されていなければ、寿命が平均よりも短くなる可能性があります。

インプラント治療後のメンテナンスで行われること

インプラント治療後のメンテナンスでは、主に以下の4項目が行われます。

インプラント治療後のメンテナンスで行われること

  • ①口腔内検査
  • ②レントゲン検査
  • ③PMTC(クリーニング)
  • ④ブラッシング指導

①口腔内検査

口腔内検査では、インプラントの埋入箇所やその周囲の状態を、歯科医師が目視で確認します。
歯肉の腫れや出血、噛み合わせの不一致の有無をチェックし、異変が認められる場合は治療計画が策定されます。

口腔内の確認は、異常を早期に発見して速やかに対処するための、基本的かつ重要なメンテナンス項目の一つです。

②レントゲン検査

目視での確認が難しい箇所は、レントゲン写真を撮影してチェックします。
インプラント体は、あごの骨に埋入するため、結合部の状態を目視で正確に判断することは困難です。
また、インプラント体を埋入した箇所やその周辺の骨は、目視では正常に見えても、異変が起こっているケースも少なくありません。

このような場合にレントゲン検査を行うことで、見えない異常の早期発見が可能となるのです。

③PMTC(クリーニング)

「Professional Mechanical Tooth Cleaning」の略称であるPMTCは、専用機器を用いて、セルフケアでは対応しきれない汚れや細菌を除去することを指します。
日常のセルフケアをどんなに徹底していても、歯周病や虫歯の原因となるプラークや細菌を完全に除去するのは難しいといわれています。

定期的なメンテナンスでPMTCを受けることにより、口腔内環境を清潔な状態で維持しやすくなり、インプラントを安心して使いつづけることができるようになるわけです。

④ブラッシング指導

ブラッシングの指導も、インプラントの定期メンテナンスの一つで、歯磨きをはじめとする日常生活での適切なケア方法を指導してもらいます。
特に、インプラントのブラッシング方法は天然歯と異なるため、口腔内のトラブルを防ぐには、これをきちんと把握しておくことが欠かせません。

セルフケアが十分にできているかどうかも確認してもらえるので、「きちんとブラッシングできているかわからない……」という不安を解消するのに役立ちます。

インプラント治療後にかかるメンテナンス費用の目安

インプラントのメンテナンス費用の目安は、1回あたり3,000~10,000円程度といわれています。
主な内訳は以下の通りです。

インプラント治療後のメンテナンス費用の内訳

  • 口腔内検査:1,000~3,000円程度
  • レントゲン検査:1,000~3,000円程度
  • PMTC(クリーニング):2,000~5,000円程度
  • ブラッシング指導:1,000~3,000円程度

なお、上記のメンテナンス費用および内訳はあくまでも目安であるため、正確な費用が知りたい方はクリニックに問い合わせてみましょう。
口腔内の状態によっては、目安よりも多くの費用を要することがある点にご留意ください。

メンテナンス費用には保険が適用される?

インプラント治療は、原則として自由診療となる歯科治療です。
メンテナンスも原則として自由診療に分類されるため、費用は全額自己負担となります。

医療費控除について

インプラントのメンテナンス費用は保険が適用されないものの、場合によっては医療費控除の対象となります。
医療費控除とは、その年に支払った医療費の総額が10万円を超えた場合に、確定申告をすると所得税が控除される制度のことです。
具体的な控除額は、以下の計算式で求められます。

医療費控除額の計算方法

所得が200万円以上 医療費控除額=年間の医療費-保険金などの補てん額-10万円
所得が200万円以下 医療費控除額=年間の医療費-保険金などの補てん額-所得の5%

医療費控除の対象となるのは、メンテナンスの目的が歯周病の治療や噛み合わせの調整といった口腔内の健康維持である場合です。
メンテナンス費用にくわえ、公共交通機関を利用して通院した際の交通費や、医薬品の購入費も控除の対象となります。

しかし、審美性の向上が目的の場合は、医療費控除の対象外となる点に注意しておきましょう。
また、控除の最終判断は税務署で行われるため、受診内容が医療費控除の対象となるかどうかがわからない方は、クリニックで領収書の発行する際に確認しておくと安心です。

医療費控除について詳しく知りたい方は、国税庁のホームページをご覧ください。

参照元:国税庁「No.1120 医療費を支払ったとき(医療費控除)」

インプラント治療後のメンテナンスを受ける流れ

インプラント治療後のメンテナンスの概要を押さえたところで、本項では実際の流れをご紹介します。
先述したメンテナンスの項目をすべて行う場合は、以下の流れに沿うのが一般的です。

インプラント治療後のメンテナンスの流れ

  • ①口腔内検査
  • ②レントゲン検査
  • ③PMTC(クリーニング)
  • ④ブラッシング指導

①口腔内検査

まずは、口腔内の状態を確認します。
確認する内容は以下の通りです。

口腔内のチェック内容

  • インプラントのぐらつき
  • 歯周ポケットの深さ
  • 歯茎の炎症の有無
  • 噛み合わせ
  • 天然歯の虫歯の有無
  • 歯周病の有無
  • 歯ぎしりや食いしばりの有無

痛みや違和感を覚える箇所がある場合は、歯科医師にあらかじめ伝えておくことで、チェックをスムーズに進められるでしょう。

②レントゲン検査

口腔内に異常があるものの、どのような状態かを目視で確認できなかった場合には、レントゲン検査も行われます。
レントゲン撮影では、骨の吸収度合いや、歯槽骨の状態、インプラント周辺の天然歯の状態や虫歯の有無などを確認します。

③PMTC(クリーニング)

検査が完了したら、PMTC(クリーニング)に移ります。
専用の機器を使用し、セルフケアでは落とし切れない汚れや歯垢を除去するメンテナンスです。
頑固な汚れが付着している場合には、人工歯を取り外して洗浄することもあります。

着色汚れや細菌も取り除けるため、インプラント治療後の清潔な口腔内環境を維持するうえで、非常に重要な役割を果たしています。

④ブラッシング指導

口腔内のチェックで汚れや歯垢の蓄積が確認された場合は、歯科衛生士によるブラッシングの指導が行われます。
効果的なブラッシングのほか、歯間ブラシやデンタルフロスを用いたケアの方法も教えてもらえます。

磨き残しのある箇所もあわせて確認してもらえるので、セルフケアの質の向上にも役立つでしょう。

インプラント治療後のメンテナンスでクリニックに行く頻度

口腔内の状態によって異なりますが、インプラント治療後にクリニックでメンテナンスを行う頻度は、3~4か月に1回程度が望ましいです。
先述したようにインプラントは天然歯と比べて細菌に弱く、歯周病を発症しても自覚症状がないまま進行してしまうケースが多いといわれています。
また、人工歯の噛み合わせも、時間の経過とともに少しずつ変化が生じます。

メンテナンスを長期間受けずにいると、無自覚のうちに口腔内環境が悪化し、最悪の場合、天然歯が破折したり、インプラントが破損したりするかもしれません。
定期的なメンテナンスはこうした症状の予防につながり、万が一、異常が見つかった場合にも、早期発見で治療の負担も軽減できます。

インプラント治療後にライフスタイルが変化した場合の対応

ここまで解説してきた通り、インプラント治療後は、定期的にメンテナンスを受けることが不可欠です。
しかし、ライフスタイルの変化に伴い、「インプラント治療を受けたクリニックに通いにくくなった……」という方もいらっしゃるはずです。

本項では、同じクリニックに通院する場合と、通院が困難となった場合の適切な対応を紹介します。

①インプラント治療を受けたクリニックを受診しつづける

治療後のメンテナンスは、可能な限り、インプラント治療を行ったクリニックに通いつづけることが望ましいです。
治療内容の詳細や、ご自身の口腔内の状態を既に把握しているため、万が一トラブルが生じた場合にも、迅速かつ的確に対応してもらえます。

口腔内の状態によっても変わりますが、推奨されているメンテナンスのタイミングは3~6か月に1回程度であることから、頻度は高くないといえます。
「遠くに引っ越したけど、なんとか通えそうだ」といった場合には、クリニックを変更せず、通いつづけるのがおすすめです。

②紹介状でほかのクリニックへ案内してもらう

引っ越しや転職により、インプラント治療を受けたクリニックに通いつづけるのが困難となってしまうケースは少なくありません。
そういった場合には、通院中のクリニックに、他院への紹介状を書いてもらいましょう。
クリニックを新たに探す手間が省けるほか、治療内容やメンテナンス歴が転院先に共有されるため、高い精度でメンテナンスが受けられるようになります。

ご自身でできるインプラント治療後のメンテナンス

インプラント治療後のメンテナンスは、口腔内の健康維持をサポートします。
しかし、良好な状態を保つためには、セルフケアを徹底することも重要です。

最後は、インプラント治療後に実践すべきセルフケアの方法をご紹介します。

インプラント治療後のセルフケア

  • ①日頃から丁寧に歯を磨く
  • ②デンタルフロスを使用する
  • ③マウスウォッシュを使用する

①日頃から丁寧に歯を磨く

セルフケアのなかでも、もっとも重要なのが日常生活でのブラッシングです。
インプラント治療を行った箇所には、歯を細菌から守る歯根膜がありません。
したがって、日頃の丁寧なブラッシングが、口腔内環境を良好に保つうえで重要となります。

歯ブラシを治療箇所の周囲の歯肉に沿って小刻みに動かすと、溜まった汚れを効果的に落とせます。
このとき、歯肉を傷つけるのを防ぐために、柔らかい毛先の歯ブラシを使用して、力を入れ過ぎないように注意しましょう。

とはいえ、適切な方法でブラッシングができているかどうかを判断するのは難しいでしょう。
そんなときは、メンテナンス時にブラッシングの指導を受けることで、より効果的な方法を身につけられます。

②デンタルフロスを使用する

デンタルフロスの使用も、口腔内の環境を清潔に保つのに有効です。
歯間は歯ブラシが届きにくい箇所でもあるため、デンタルフロスもあわせて使用すると、口腔内を清潔に保つうえで、より効果的なセルフケアが可能となります。

通常のデンタルフロスも有効ですが、インプラント専用のスーパーフロスを使えば、ケアが難しい奥歯のインプラントもきれいにできます。

③マウスウォッシュを使用する

補助的なケアとして、マウスウォッシュを使用するのも一つの手です。
殺菌成分が含まれたものを使用すれば、虫歯や歯周病のもととなるプラークの付着を防止できます。
歯ブラシやデンタルフロスを使用したあとの仕上げとして使用すれば、口腔内環境をより清潔に保てます。
ノンアルコールタイプのものを使用すると、インプラント治療を行った箇所への刺激を抑えられるでしょう。

口腔内の細菌は、唾液の分泌が減る就寝中に増えやすくなります。
したがって、マウスウォッシュを使うタイミングは就寝前がおすすめです。
ただし、使い過ぎると免疫機能を担う常在菌まで減少させてしまう可能性があるので、製品ごとに推奨されている使用頻度を守ることが大切です。

インプラント治療後のメンテナンスにかかる費用の目安は3,000~1万円程度

インプラント治療後、口腔内環境を正常に保ちつづけるには、定期的なメンテナンスが不可欠です。
メンテナンスでは、目視での口腔内検査やレントゲン検査、ブラッシング指導やPMTC(クリーニング)が行われ、1度にかかる費用の目安は3,000~10,000円程度です。

日常のセルフケアを徹底し、定期的にメンテナンスを受ければ、口腔内の清潔を維持しやすくなり、トラブルの予防や早期発見、重症化のリスク回避にもつながります。

インプラント埋入本数年間4,000本の実績を持つきぬた歯科では、ほかのクリニックからの転院にも対応しています。
治療後のメンテナンスにお悩みがある方や、転院をお考えの方は、ぜひ当院へご相談ください。

この記事の監修者

日本歯科大学新潟生命歯学部を卒業後、インプラント治療に従事。現在では「インプラント治療のきぬた歯科」を開業し年間4000本以上、累計50,293本のインプラント治療の実績がある。

日本でインプラント治療が黎明期だったころからパイオニアとして活躍し、インプラントメーカーのストローマン社やノーベルバイオケア社から公認インストラクターの資格を得た。

本の執筆やTV・雑誌などのメディア出演、自身のYouTubeチャンネルなどで情報発信を積極的に行っている。

<主な著書>
インプラント治療は史上最強のストローマンにしなさい!!
歯医者が受けたい!インプラント治療
あっそのインプラント、危険です!!

<YouTubeチャンネル>
八王子きぬた歯科

<外部サイト>
きぬた 泰和 Wikipedia