インプラント治療は多くの場合、施術後に痛みを感じます。
また、治療完了後もインプラントを適切に使用しなければ、口腔内が痛む要因となりえます。
こうした痛みを抑えるには、歯科医師だけでなく患者様ご自身での対処も必要です。
そこで本記事では、インプラント治療に伴う痛みと、治療から数年後に現れる痛みへの対処法を解説します。
「インプラント治療を受けたいけど痛みが不安……」という方はぜひご一読ください。
インプラント治療の流れと痛み
インプラント治療には、痛みを感じるタイミングがいくつかあります。
まずは、インプラント治療の流れとともに、治療期間中の痛みについて詳しく解説します。
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インプラント体の埋入時
インプラント体を埋入する手術中は、治療箇所に局所麻酔を投与するため、骨を削られるときに振動を感じることはあるものの、痛みはほとんどありません。
しかし、麻酔の効きには個人差があるので、施術中に軽い痛みを感じる可能性もあります。
その場合は、歯科医師に伝えて対応してもらいましょう。
手術中の痛みに強い不安や恐怖心がある場合は、“静脈内鎮静法”による施術を相談してみるのも一つの手です。
静脈内鎮静法は、鎮静薬を点滴で静脈に投与し、患者様がリラックスした状態で手術を受けられる方法で、不安や恐怖心を和らげながらインプラント治療を受けられます。
インプラント体の埋入後
インプラント体の埋入後は、麻酔が切れた時点で治療した箇所に痛みを感じる可能性があります。
インプラント体を埋入する際は、歯肉の切開やあごの骨の掘削、縫合を行うため、術後に痛みを感じる患者様が多くいらっしゃるのです。
痛みの度合いや期間には個人差があるものの、一般的には術後2~3日程度をピークに引き始め、長くても1週間程度で落ち着きます。
インプラント体の埋入後、10日ほど経過したタイミングで、縫合した箇所の抜糸を行います。
このときも痛みを感じる可能性がありますが、クリニックによっては事前に相談することで、麻酔を使用してもらえるでしょう。
なお、インプラント治療を行う歯科医院では、施術後に痛み止めを処方しています。
万が一、インプラント埋入後に痛みが1週間以上続く場合や、痛み止めを服用しても痛みが治まらない場合は、歯科医師に相談して対応を求めてください。
アバットメント・人工歯の装着
抜糸から2~6か月ほど経過し、インプラント体があごの骨に定着したタイミングで、インプラント体と人工歯をつなぐ“アバットメント”を取りつけます。
なお、アバットメントの装着自体に痛みはありません。
しかし、インプラント体を埋入した箇所を再度切開するため、施術後に痛みを感じる可能性があります。
アバットメントを装着して3~7日ほどたったら、歯の型取りや噛み合わせの調整を行い、さらに1週間後、完成した人工歯を装着したらインプラント治療は完了です。
インプラント治療に伴う痛みを抑えるためには
以上のように、外科手術を要するインプラント治療は、痛みを感じる患者様が多い歯科診療です。
治療が完了するまでに生じる痛みを抑えるには、以下に記した5つのポイントを守ることが大切です。
インプラント治療に伴う痛みを抑えるポイント
- 処方された痛み止めや抗生物質をきちんと服用する
- できるだけ柔らかいものを食べる
- 運動・入浴を控える
- 飲酒・喫煙を控える
- 歯磨きを慎重に行う
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処方された痛み止めや抗生物質をきちんと服用する
インプラント体の埋入後や、アバットメントの装着後などに感じる痛みを抑えるには、痛み止めや抗生物質を、歯科医師から指示された通りに服用することが大切です。
先述したように、多くの歯科医院では、インプラント治療後に痛み止めや抗生物質が処方されます。
治療直後の痛みは、痛み止めを服用することで抑えることができます。
このとき、痛みが強いからといって飲み過ぎることはせず、用法・容量を守って服用してください。
なお、痛み止めはご自身の痛みの程度に合わせて服用を減らしても問題はありませんが、抗生物質は、処方された量を歯科医師の指示に基づいて飲み切らなければなりません。
抗生物質には細菌の感染を防ぐ役割があり、服用を怠ると、歯周病の発症によりインプラント治療を妨げるリスクが生じます。
インプラント治療を安全に終わらせるためにも、処方された痛み止めや抗生物質は、必ず用法・容量を守ってきちんと服用してください。
できるだけ柔らかい食品を食べる
インプラント体の埋入後や、アバットメントの装着後などの傷口が治癒していないうちは、硬い食品を食べてはなりません。
治療してから間もない箇所に強い力がくわわると、傷口が開いて痛みや出血の原因となります。
また、辛味や酸味といった刺激物や、餅やガムのように弾力のある食品も、痛みや炎症につながるおそれがあるため、食べるのはなるべく控えましょう。
運動・入浴を控える
運動や入浴は、血行を促進させて痛みを強めるとともに、出血を伴うおそれがあるため、術後から3日程度は控えてください。
また、運動によって体が疲れると免疫力が低下し、傷口の回復速度を落としてしまう可能性があります。
通勤・通学といった移動でも痛みが生じる可能性もあるため、切開や縫合を伴う施術を受けた直後は、できるかぎり安静に過ごせるように調整することが望ましいです。
飲酒・喫煙を控える
痛みにくわえて、口腔内の炎症や感染症の併発といったさまざまなリスクを抑えるためにも、インプラント治療後の飲酒・喫煙は控えましょう。
たとえば、アルコールの摂取は血流を促進するほか、治療した箇所を刺激や細菌から保護する“血餅(けっぺい)”の形成を阻害してしまいます。
血餅は傷口の治癒を促進する役割も果たしているため、これが形成されないということは、インプラント治療の妨げにもなるのです。
また、たばこに含まれるニコチンや一酸化炭素は、血管収縮や血流を妨げて、歯茎の免疫力を下げるうえに、歯茎の萎縮や骨密度の低下を招きます。
このように、飲酒・喫煙はインプラント治療の大きな妨げになるため、施術前後は控えるように心がけてください。
歯磨きを慎重に行う
インプラント体の埋入やアバットメントを装着したあとの歯磨きは、治療箇所を刺激しないよう慎重に行うことが大切です。
歯ブラシが治療した箇所に触れると、痛みを感じるほか、出血するおそれがあります。
できる限り刺激を抑えるためにも、研磨剤入りの歯磨き粉の使用は避け、毛先が細く柔らかい歯ブラシで磨くとよいでしょう。
インプラント治療の数年後に痛みが起こる原因
なかには、インプラント治療が完了して数年間経過してから、以下の原因で痛みを感じる患者様もいらっしゃいます。
インプラント治療の数年後に痛みが起こる原因
- インプラント周囲炎を発症している
- 噛み合わせが変化している
- インプラント周辺の歯にトラブルが起きている
- 人工歯が破損している
インプラント周囲炎を発症している
施術した部分に“インプラント周囲炎”を発症し、それが重症化している場合は痛みを感じる可能性があります。
インプラント周囲炎とは、インプラント治療を施した周囲の歯肉に歯周病菌が感染し、腫れや出血を引き起こす歯周病です。
発症後の初期段階では痛みを感じることはほとんどないため、深刻化するまで、ご自身では気づきにくいのが特徴です。
痛みを感じる段階ではすでに症状が深刻化しており、歯肉のほか、あごの骨まで炎症が達しているかもしれません。
症状の進行が速いうえに、最悪の場合、インプラント体があごの骨から抜け落ちるおそれもあるため、違和感に気づいたら速やかに歯科医師へ相談しましょう。
嚙み合わせが変化している
インプラントの使用に伴う噛み合わせの変化も、治療後数年たって痛みが生じる要因として挙げられます。
インプラントは、使用しつづけるうちに緩みやずれが発生し、噛み合わせの不一致を引き起こす場合があります。
また、噛み合わせの不一致は、一部の歯に負荷がかかりつづけて痛みを引き起こすほか、顎関節症の原因にもなりえるため、インプラントのメンテナンスを怠ってはなりません。
インプラント周辺の歯にトラブルが起きている
施術した箇所やその周辺の歯に何らかの異常が起こっていると、痛みを感じることがあります。
人工歯は、歯垢が蓄積しやすい構造をしているため、十分なブラッシングが行われていないと、隣接する天然歯が虫歯になる可能性があります。
人工歯自体は虫歯にはならないものの、残された天然歯には虫歯のリスクが伴うため、セルフケアはきちんと行いましょう。
人工歯が破損している
人工歯が破損していると、噛み合わせの不一致が起こり、痛みを覚える可能性があります。
人工歯にはセラミックや金属が使用されており、日常生活で使用するには十分な強度を持っています。
しかし天然歯とは異なり、衝撃を吸収する歯根膜(しこんまく)がないため、外部の力を軽減できません。
そのため、事故などの意図しない強い衝撃や、噛み癖による偏った負荷がかかると、破損するおそれがあるのです。
破損したインプラントを使用しつづけると、噛み合わせが悪くなり、痛みが生じるほか、インプラント歯周炎を発症するおそれがあります。
インプラント治療から数年後の痛みを予防するには?
以上のように、インプラントは治療後数年たってから、施術した箇所に痛みを感じるケースがあります。
インプラントを安全に使用しつづけるためには、以下の予防法を押さえておくことが大切です。
インプラント治療から数年後の痛みを予防する方法
- 日々のケアを徹底する
- 歯科医院でクリーニング・定期健診を受ける
- 違和感があったらすぐに受診する
日々のケアを徹底する
インプラント治療後は、日々の適切なケアが欠かせません。
歯垢が蓄積しやすいインプラント周辺は、歯ブラシに力を入れ過ぎず、小刻みに動かして念入りに磨きましょう。
このとき、歯肉や天然歯にも配慮して、柔らかい毛の歯ブラシを使用するのがおすすめです。
さらに、デンタルフロスやマウスウォッシュを使用すれば、口腔内をより清潔に保つことができます。
歯科医院でクリーニング・定期健診を受ける
インプラント治療後の痛みを予防するには、日々のケアにくわえて、歯科医師のもとで定期的にクリーニングや健診を受けることも重要です。
先述したように、インプラントは日々の使用に伴って緩みが発生するため、最適な噛み合わせを維持するには定期的な調整が必要となります。
このとき、セルフケアでは対処しきれなかった汚れを除去してもらうことで、口腔内を清潔に保つことも可能です。
万が一、歯周炎をはじめとする歯周病を発症していた場合でも、早期発見によって、症状の深刻化を防止できます。
違和感があったらすぐに受診する
インプラント治療から数年後、治療した箇所に違和感を覚えたらインプラント周囲炎を発症している可能性があるため、速やかに歯科医へ相談しましょう。
これを放置しつづけると強い痛みや炎症、噛み合わせの不一致を引き起こし、口腔機能に問題が生じるおそれがあります。
セルフケアや定期健診を徹底している方であっても、口腔内のトラブルは起こりえるため、何かおかしいと感じたら早急に歯科医師へ相談することを心がけてください。
インプラント治療の痛みを抑えるには、日常生活に配慮することが大切
今回は、インプラント治療に伴う痛みと、施術後数年たって現れる痛みへの対処法を解説しました。
外科的手術を行うインプラント治療には、麻酔が使用されるため、施術中に痛みを感じることはほとんどありません。
施術直後の痛みを抑えるには、処方薬をきちんと服用したうえで、運動や入浴、飲酒や喫煙を控えることが大切です。
またインプラント治療の完了後も、日常的なケアや定期健診を徹底し、トラブルを未然に防止するよう心がけましょう。
インプラント治療のきぬた歯科では年間3,000本のインプラント埋入を行っており、患者様の状態に合わせた的確な治療をご提案いたします。
インプラントができないと言われた方も、ぜひきぬた歯科にご相談ください。
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この記事の監修者
日本歯科大学新潟生命歯学部を卒業後、インプラント治療に従事。現在では「インプラント治療のきぬた歯科」を開業し年間3000本以上のインプラント治療の実績がある。
日本でインプラント治療が黎明期だったころからパイオニアとして活躍し、インプラントメーカーのストローマン社やノーベルバイオケア社から公認インストラクターの資格を得た。
本の執筆やTV・雑誌などのメディア出演、自身のYouTubeチャンネルなどで情報発信を積極的に行っている。
<主な著書>
インプラント治療は史上最強のストローマンにしなさい!!
歯医者が受けたい!インプラント治療
あっそのインプラント、危険です!!
<YouTubeチャンネル>
八王子きぬた歯科
<外部サイト>
きぬた 泰和 Wikipedia