歯を失ったときの選択肢として人気のあるインプラント治療ですが、高額な費用がかかる点から「生命保険で補償されるのか」と気になる方も多いでしょう。
実際、保険適用外のケースがほとんどですが、条件次第で一部保険が適用される場合もあります。

本記事では、インプラント治療に生命保険が適用されるかどうか詳しく解説します。
対象外となる理由や保険が適用される特例、費用を抑える方法についても紹介しているので、ぜひ参考にしてください。

インプラント治療が高額になる理由

インプラント治療は、虫歯や入れ歯の治療に比べて費用が高くなる傾向があります。
その理由は「自由診療であること」や「高い技術力と専用設備が必要であること」など、いくつもの要素が重なっているためです。

ここでは、インプラント治療が高額とされる主な4つの理由を詳しく見ていきましょう。

自由診療であるため

インプラント治療は健康保険の適用外である「自由診療」に分類されます。
虫歯や歯周病のように病気の治療を目的とする場合は保険が使えますが、インプラントは審美性や機能回復を目的とする治療とみなされるため、保険が適用されません。

そのため、治療費は全額自己負担となるため、一般的な歯科治療よりも費用負担が大きくなります。
また、自由診療では素材や治療法の選択肢が広く、より高品質な治療を選ぶほど費用も上がる傾向があります。

高度や設備や技術が必要であるため

インプラント治療は、人工歯根を顎の骨に埋め込む外科手術を伴う高度な医療です。
安全に手術するには、CTスキャンで骨や神経の位置を確認し、3Dシミュレーションで埋入位置を精密に設計する工程が欠かせません。

これらの設備は高額であり、さらに医師には専門的な知識と経験が求められます。
治療精度を維持するための技術研修や最新機器の導入にもコストがかかり、その分が治療費に反映されます。

インプラント自体が高額であるため

使用するインプラント体(人工歯根)やアバットメント(支台部)、上部構造(人工歯)は、いずれも精密な医療機器です。
特に海外の主要メーカーによる製品は、長期間の使用に耐える耐久性と安全性を兼ね備えており、品質管理コストが価格に反映されています。

さらに、自然な見た目を重視する場合は、セラミックやジルコニアなどの高価な素材が選ばれるため、結果として治療費が高くなります。
これらの部品は体内に埋め込まれるため、品質や安全性に妥協が許されないのです。

カウンセリングや検査に時間を要するため

インプラント治療では、治療前のカウンセリングや検査を丁寧にしなければいけません。
顎の骨の状態や噛み合わせ、全身の健康状態を詳細に確認し、治療計画を立てる必要があります。

この過程には時間と専門的な分析が求められ、カウンセリング費用や検査費用として反映されます。
さらに、治療後も定期的なメンテナンスや経過観察が必要となるため、総合的に見ても費用が高くなる傾向です。

これらの工程を丁寧に行うことで、長期的に安定した結果が得られる治療を実現できます。

インプラント治療に生命保険は適用される?

インプラント治療を検討する際、「生命保険で補償を受けられるのでは」と考える方も少なくありません。
外科的な手術を伴う治療であるため、手術給付金や入院給付金の対象になるように思えますが、実際には、多くの生命保険で対象外とされています。

生命保険は、病気やケガによって入院・手術が必要になった場合に保険金が支払われる仕組みです。
しかし、インプラント治療は医療行為ではありますが、自由診療に分類されるため、公的医療制度や多くの生命保険の給付対象には含まれません。

ただし、健康保険が適用される例外的なケースでは、治療の一部が生命保険の給付対象となる場合もあります。
たとえば、先天的な欠損や事故による歯の喪失など、機能回復を目的とした治療の場合です。

このような特例に該当するかどうかは、保険契約の内容や治療の目的によって異なります。

インプラント治療が生命保険の対象外になる理由

インプラント治療は見た目や噛む機能の回復に優れた治療法ですが、生命保険や医療保険の給付対象外とされています。
その理由は、インプラントが「自由診療」に分類されていること、そして「先進医療特約」の対象外であるためです。

ここでは、それぞれの理由を分かりやすく解説します。

インプラント治療は自由診療の対象

生命保険や医療保険で給付の対象となるのは、原則として健康保険が適用される「保険診療」です。
しかし、インプラント治療は保険適用外の「自由診療」として扱われています。

したがって、病気やケガの治療費を補う目的で設計された生命保険の対象外となります。

インプラントは、見た目の美しさを保つとともに噛む機能を取り戻す治療でもありますが、歯列矯正やホワイトニングなどと同じく審美的な目的が強いと判断される傾向にあります。
また、保険診療のように公的制度で費用が一部補助されることもなく、すべてが自己負担となります。

インプラント治療は先進医療特約の支払い対象外

生命保険や医療保険には、「先進医療特約」と呼ばれるオプションが用意されています。
厚生労働省が認めた高度な医療技術を受けた際に、自己負担となる費用を補償する仕組みです。

しかし、インプラント治療はこの「先進医療」に含まれていません。

かつては一部のインプラント治療が先進医療として扱われていましたが、2012年4月以降は対象外となっています。
つまり、現在はどの生命保険会社でもインプラント治療を先進医療特約の対象として扱うことはありません。

その結果、インプラント治療を受けたとしても、先進医療特約による給付金は支払われない仕組みです。
ただし、先天的な欠損や事故による欠損など、医療行為として保険診療に該当するケースでは、一部が給付の対象となる可能性があります。

インプラント治療で保険が適用されるケース

インプラント治療はごく限られた条件を満たす場合に限り、保険適用となるケースがあります。
「先天的な疾患」や「事故・病気による顎骨の欠損」など、歯の機能回復を目的とした医療行為とみなされる場合です。

ここでは、具体的にどのようなケースでインプラント治療が保険の対象となるのか、先天的・後天的な理由に分けて解説します。

先天的な理由の場合

生まれつき顎の骨や歯の形成に異常がある場合は、機能回復を目的としたインプラント治療が保険の対象となることがあります。
このようなケースでは、医師による診断書の提出、保険適用の条件を満たした医療機関での治療が必要です。

  • 先天性疾患により顎の骨の3分の1以上が連続して欠損している場合
  • 顎の骨が生まれつき形成不全である場合
  • 生まれつき複数の歯が欠損している(先天性欠損歯)の場合
  • 顎の変形や骨の成長異常があり、機能的な障害が認められる場合

これらの症例では、見た目の改善ではなく「噛む」「話す」といった日常生活に必要な機能の回復が目的とされるため、保険診療として扱われます。
ただし、治療を受ける医療機関が保険適用の指定を受けていることが前提条件です。

後天的な理由の場合

外傷や病気で顎の骨が損傷・欠損した場合も、医科的治療としてインプラントが保険適用となることがあります。
事故や手術などで顎骨の一部を失い、骨移植や再建手術を経てインプラント治療するケースが該当します。

  • 交通事故などで顎骨の3分の1以上が連続して欠損している場合
  • 腫瘍の摘出や顎骨骨髄炎などにより顎の骨が大きく失われた場合
  • 外傷後に骨移植し顎骨が再建された場合
  • 重大な病気や手術の結果、顎の骨や歯を失い機能回復が必要となった場合

後天的な理由による保険適用では、顎骨の再建や骨移植を含む複合的な治療が必要で、歯科単独ではなく医科との連携が求められます。
また、治療を受ける際は、保険適用の対象となるかどうか医師および保険機関に事前確認しましょう。

保険適用になる歯科医院の特徴

インプラント治療で保険を適用するには、治療内容だけでなく治療する医療機関にも条件があります。
一般的な町の歯科クリニックでは条件を満たすのは難しく、保険診療でインプラントを受けられるのは限られた施設に限られます。

ここでは、保険適用が認められる歯科医院の主な特徴を紹介します。

  • 20床以上の入院用ベッドを備え、入院治療に対応できる環境が整っている
  • インプラント治療に3年以上の経験、または歯科・口腔外科で5年以上の実績をもつ常勤歯科医師が2名以上在籍している
  • 夜間や緊急時にも対応できる当直体制が整っている
  • 医薬品や医療機器を安全に管理・使用できる体制が確立されている

これらの条件を満たす施設は、大学病院や総合病院の歯科・口腔外科など、一定の規模と設備をもつ医療機関に限られます。
そのため、一般的な歯科医院で保険診療としてインプラント治療を受けるのは難しいのが現状です。

インプラント治療にかかる費用を抑える方法

インプラント治療は1本あたりの費用相場は30〜50万円程度といわれています。
しかし、いくつかの制度や支払い方法を上手に活用すれば、経済的な負担を軽減することが可能です。

ここでは、インプラント治療にかかる費用を抑えるための代表的な方法を見ていきましょう。

医療費控除を利用する

インプラント治療にかかった費用は、医療費控除の対象になります。
1年間に支払った医療費が10万円を超えた場合(または年収200万円未満の人は所得の5%を超えた場合)、確定申告すれば所得税の一部が還付されます。

家族の医療費も合算して申告できるため、世帯全体で見ても節税効果が期待できます。

領収書やクレジットカード明細などの支払証明書を保管しておき、翌年の確定申告で申請しましょう。
申告には手間がかかるものの、還付額によって実質的な治療費の負担を減らせる点は大きな利点です。

高額療養費制度を利用する

高額療養費制度とは、1ヶ月の医療費が自己負担限度額を超えた場合に、超過分が払い戻される公的制度です。
ただし、対象となるのは健康保険が適用される治療のみであり、自由診療であるインプラント治療には基本的に利用できません。

一方で、顎骨の再建や腫瘍摘出など、保険適用となるインプラント治療の場合はこの制度を利用できるケースもあります。

限度額は年齢や所得によって異なります。
加入している保険組合や自治体の案内を確認し、申請方法を確認しましょう。

デンタルローンを利用する

インプラント費用を分割で支払いたい場合は、デンタルローンを活用しましょう。
銀行や信販会社が提供しているローン商品で、通常のカードローンよりも低金利で設定されているケースがあります。

一度に高額な出費を避けられるため、家計への負担を軽減しながら治療を受けられます。
ローンを利用して支払った場合でも、医療費控除の対象となるのを覚えておきましょう。

複数の歯科医院から見積もりを取る

自由診療であるインプラント治療は、歯科医院によって費用設定が大きく異なります。
治療内容やインプラント体のメーカー、技工費、アフターケアの内容などに差があるため、複数医院で見積もりを比較しましょう。

費用だけで判断せず、治療実績や説明の丁寧さ、術後の保証内容なども合わせて確認しましょう。

クレジットカードで支払う

インプラント治療をクレジットカード払いで利用すれば、分割払いやポイント還元を活用できます。
支払い明細がそのまま医療費の証明書として使えるため、医療費控除の申請もスムーズです。

一括払いが難しい場合は、カード会社の分割払いやリボ払いを活用すれば、月々の支払額を調整できます。
また、高還元率のカードを選べば、治療費の一部をポイントとして有効活用することも可能です。

格安インプラントを避けたほうがよい理由

インプラント治療は自由診療であるため、歯科医院ごとに費用設定が異なります。
中には「他院の半額」「1本10万円以下」といった格安広告を掲げる歯科医院も見られますが、費用の安さだけで選ぶのは避けたほうが賢明です。

ここでは、格安インプラントを避けたほうが良い具体的な理由を見ていきましょう。

未承認のインプラントを使用されるおそれがある

極端に安価なインプラント治療は、厚生労働省の承認を受けていない製品が使われている可能性があります。
承認されたインプラントは、耐久性・安全性・生体適合性が厳しく検査されており、一定の品質基準を満たしています。

一方で、未承認のインプラントは安価で仕入れられる反面、長期的な安定性が保証されていません。

医師が専門的な技術をもっていないおそれがある

インプラント治療は、外科的な手術を伴う高度な医療行為です。
骨の厚みや神経の位置を正確に把握したうえで、安全にインプラント体を埋入するためには、熟練した技術と豊富な臨床経験が欠かせません。

格安を売りにしている歯科医院の中には、経験の浅い医師が症例数を増やすために低価格で施術しているケースもあります。
技術不足による埋入位置の誤りや、骨の損傷、神経へのダメージなどのリスクも高まります。

治療後にトラブルが発生するおそれがある

格安インプラントを選んだ結果、治療後にトラブルが発生するケースは少なくありません。
未承認の素材や低品質なパーツを使うと、治療後しばらくしてからネジの緩み、インプラント体の破損、歯茎の炎症などの問題が生じるケースがあります。

また、アフターケアが十分でない医院では、術後に痛みや腫れが続いても適切なフォローが受けられません。
一度トラブルが起きると、再治療には費用と時間がかかり、結果的により高額になる可能性があります。

インプラント治療は信頼性と安全性を重視して選ぶことが大切

インプラント治療は、審美性と機能性を両立できる優れた治療法とされています。
ただし、自由診療であるため費用が高く、生命保険の対象外となる点には注意が必要です。

費用の安さだけで判断せず、経験豊富で信頼できる歯科医院を選ぶことが何よりも重要になります。

この記事の監修者

日本歯科大学新潟生命歯学部を卒業後、インプラント治療に従事。現在では「インプラント治療のきぬた歯科」を開業し年間3000本以上のインプラント治療の実績がある。

日本でインプラント治療が黎明期だったころからパイオニアとして活躍し、インプラントメーカーのストローマン社やノーベルバイオケア社から公認インストラクターの資格を得た。

本の執筆やTV・雑誌などのメディア出演、自身のYouTubeチャンネルなどで情報発信を積極的に行っている。

<主な著書>
インプラント治療は史上最強のストローマンにしなさい!!
歯医者が受けたい!インプラント治療
あっそのインプラント、危険です!!

<YouTubeチャンネル>
八王子きぬた歯科

<外部サイト>
きぬた 泰和 Wikipedia