インプラントを長く快適に使うには、治療後のメンテナンスが欠かせません。
見た目が自然で噛み心地も良い一方で、放置すると歯ぐきや骨に炎症が起こり、最悪の場合にはインプラントが抜け落ちるおそれがあります。
本記事では、インプラントのメンテナンス頻度や内容、セルフケアの方法を詳しく紹介します。
「どのくらいのペースで通えばよいのか」「自宅ではどのようなケアをすればよいのか」といった疑問を持つ方は、ぜひ参考にしてみてください。
インプラントのメンテナンスはなぜ重要なのか
インプラントは見た目こそ天然の歯に近いものの、あくまで「人工物」です。
治療後も放置せず、定期的にメンテナンスを行うことで、インプラント本体だけでなく周囲の組織も健康に保つことができます。
メンテナンスを怠ると、歯ぐきの炎症や骨の吸収、装置の不具合などが起こり、せっかくのインプラントが短期間で機能を失うおそれがあります。
インプラントを長く快適に使い続けるには、歯科医院での定期チェックと日常のセルフケアを両立させることが欠かせません。
ここでは、メンテナンスが重要とされる主な理由を詳しく解説します。
インプラント周囲炎の予防
インプラントは虫歯になりませんが、歯ぐきの健康を守らなければ周囲の組織が炎症を起こす「インプラント周囲炎」を発症します。
歯周病と似た病気で、歯垢や歯石に潜む細菌が原因です。
炎症が進行すると顎の骨が溶け、インプラントがぐらついたり脱落する恐れもあります。
早期に気づいて治療すれば回復が望めますが、重度になると再治療が必要になることも。
プロによる定期的なクリーニングと正しいブラッシングで、細菌の繁殖を防ぐのが何より大切です。
周囲の歯肉や骨の健康維持
インプラントを長持ちさせるには、支えている歯ぐきと骨の健康をキープするのが大切です。
天然歯とは異なり、インプラントには「歯根膜」というクッションのような組織がないため、感染や炎症の影響を直接受けやすい構造になっています。
歯肉が弱って炎症を起こすと、骨にも負担がかかりインプラントの固定力が低下してしまいます。
メンテナンスでは、歯ぐきの状態や骨の吸収を細かくチェックし、早期に異常を発見することで長期的に安定させていきます。
全身疾患のリスクの軽減
口腔内の健康は、全身の健康と密接に関係しています。
歯周病菌による炎症は、糖尿病や心疾患、誤嚥性肺炎などのリスクを高めることが知られています。
インプラント周囲に炎症が起こると、疾患を悪化させる原因にもなりかねません。
定期的なメンテナンスを受け、口腔内を清潔に保つことで全身への悪影響を防げるのです。
インプラントを守ることは、結果として健康寿命を延ばすことにもつながります。
インプラントのメンテナンス頻度
インプラントを長く健康に維持するためには、定期的なメンテナンスが欠かせません。
一般的な目安としては、3〜6か月に1回のペースで歯科医院を受診するのが望ましいとされています。
手術から1年以内の方や、歯周病リスクが高い方、喫煙の習慣がある方は、より短い間隔でチェックを受けるのが望ましいでしょう。
インプラントは人工歯であるため虫歯にはなりませんが、周囲の歯ぐきや骨は天然の組織です。
メンテナンスを怠ると歯周病のような炎症を引き起こし、インプラントがぐらつく原因となります。
定期的に検診を受けることで、トラブルを早期に発見・予防できる点が大きな利点といえます。
メンテナンスにかかる費用
インプラントの定期メンテナンス費用は、1回あたりおおよそ5,000円が目安となります。
歯科医院の設備やメンテナンス内容、使用する器具や検査の有無によって費用は異なりますが、3,000〜10,000円程度に収まるケースが一般的です。
なお、インプラントの定期メンテナンス費用が医療費控除の対象となるケースもあります。
領収書は必ず保管し、確定申告時に確認すると良いでしょう。
定期的なメンテナンスは、インプラントを長く快適に保つための重要な自己投資といえます。
歯科医院で行うメンテナンスの主な内容
歯科医院でのメンテナンスでは、セルフケアだけでは除去しきれない汚れや、気づきにくい不具合を早期に発見できます。
ここでは、主なチェック内容を詳しく解説します。
専門的な器具によるクリーニング
インプラント専用の器具を使い、口腔内を徹底的に清掃します。
人工歯や金属部分を傷つけないように設計された、チタン専用のスケーラーや超音波機器を用いて歯石やプラーク(歯垢)を丁寧に除去します。
インプラント周囲に汚れが蓄積すると炎症を起こしやすく、放置するとインプラント周囲炎につながる可能性が。
定期的なプロによるクリーニングを受けることで、清潔で健康な状態を長く維持できます。
かみ合わせの調整
噛み合わせは時間の経過とともに少しずつ変化します。
インプラントに過度な負荷がかかると、スクリューの緩みや人工歯の欠け、さらに顎関節へ影響します。
そのため、定期メンテナンスでは「咬合紙」を使い噛み合わせのバランスを確認し、必要に応じて細かく調整。
適切な噛み合わせをキープすることでインプラントへの負担を減らし、より長く快適に使い続けられるのです。
レントゲン検査
インプラントや顎の骨の内部状態は目視で判断できないため、定期的にレントゲン撮影します。
顎骨とインプラントがしっかり結合しているか、骨吸収や炎症が起きていないかなど確認します。
早期に異常が見つかれば、軽度の処置で改善できる場合も多く、重症化を防げるでしょう。
歯科用レントゲンは被ばく量が非常に少なく、安全性の高い検査ですので安心して受けられます。
インプラントの状態確認
メンテナンスでは、インプラント本体や人工歯、スクリュー部分の状態を細かくチェックします。
使用年数が長くなると、金属の摩耗や部品の緩みが生じ、そのまま放置するとトラブルの原因に。
また、歯ぐきの炎症や違和感などが見られる場合は、早期に原因を特定して対処します。
歯周ポケットの測定
歯ぐきとインプラントの間にある「歯周ポケット」の深さを測定し、炎症の有無を確認します。
ポケットが深くなると細菌がたまりやすくなり、インプラント周囲炎のリスクが高まります。
初期の段階で発見できれば、クリーニングや薬剤の塗布など軽度な処置で改善できるため、定期的な測定は非常に重要なのです。
見た目では気づきにくいトラブルも、この検査によって早期に察知できます。
ブラッシング指導
自宅でのケアをより効果的にするため、歯科衛生士が患者一人ひとりに合ったブラッシング方法を指導します。
インプラントの周囲は磨き残しやすく、普通の歯磨きだけでは不十分な場合があるためです。
デンタルフロスや歯間ブラシ、マウスウォッシュの適切な使い方を学ぶことで、より清潔な口腔環境を維持できます。
セルフケアの質を高めることが、インプラントを長持ちさせる秘訣です。
自身でできるセルフケアの内容
インプラントを長く健康に維持するためには、歯科医院での定期的なメンテナンスと同様に、日常のセルフケアも欠かせません。
自宅で実践できる基本的なケア方法について見ていきましょう。
毎食後の歯磨き
インプラントを守るうえで、歯磨きは最も基本的なケアといえます。
食後の汚れを放置すると、歯垢が固まって歯石となり、炎症を引き起こす原因となります。
インプラント周囲は汚れが溜まりやすいため、柔らかめの歯ブラシを使い、歯と人工歯の境目を意識して磨きましょう。
研磨剤が強い歯磨き粉は人工歯を傷つけるおそれがあるため、低研磨タイプを選んでください。
また、夜は細菌が繁殖しやすいため、就寝前のブラッシングはより丁寧に意識しましょう。
デンタルフロスや歯間ブラシの活用
歯ブラシだけでは落としきれない汚れを除去するには、デンタルフロスや歯間ブラシを併用するのが効果的です。
インプラントと隣の歯の間には食べかすやプラークが残りやすく、炎症の温床になりやすい部分です。
隙間が狭い箇所にはフロス、広い箇所には歯間ブラシを使うと効果的です。
スポンジ状のフロスやシリコン素材のブラシは、インプラント周囲のデリケートな歯ぐきを傷つけにくいためおすすめです。
フロスケアを日々の習慣にすれば、口内全体の健康維持にも役立ちます。
マウスウォッシュの使用
マウスウォッシュやデンタルリンスは、ブラッシング後の仕上げとして口腔内を清潔に保つ効果が期待できます。
抗菌作用のあるタイプを使用することで細菌の繁殖を抑え、インプラント周囲炎や口臭の予防に役立ちます。
就寝前に使用すれば、唾液量が減って細菌が増えやすい夜間のトラブルを防ぐ効果が期待できます。
ただし、アルコール成分が強いものは刺激を感じやすいため、歯科医師に相談して自分に合った製品を選びましょう。
禁煙
喫煙はインプラントの大敵とも言われています。
タバコに含まれるニコチンや一酸化炭素は血流を悪化させ、歯ぐきの治癒力や免疫機能を低下させます。
その結果、インプラントと骨の結合が不十分になる、炎症が起こりやすくなるのです。
また、インプラント周囲炎の発症率も非喫煙者に比べ高くなる傾向です。
インプラントを長く維持するには、治療前後問わず禁煙を意識し、口腔環境の改善に努めましょう。
メンテナンスは他院でも受けられる?
インプラントのメンテナンスは、基本的には治療を受けた歯科医院で継続するのが理想です。
過去の治療データや使用したインプラントのメーカー情報を把握しているため、より的確なケアを受けられます。
しかし、引っ越しや転勤などで通院が難しくなった場合、他院でメンテナンスを受けることは可能です。
多くの歯科医院で他院で施術されたインプラントにも対応しており、他メーカーのパーツや器材を扱える体制を整えています。
ただし、インプラントの種類やシステムによっては対応できないケースもあるため、転院前には、自分のインプラント情報を正確に把握しておく必要があります。
使用しているメーカー名や型番、埋入日、保証内容などを記録しておくと、新しい医院でもスムーズに対応してもらえます。
また、前の歯科医院で紹介状や治療記録をもらっておくと、転院後の診療がより正確になるでしょう。
引っ越しで転院する際の注意点
引っ越しなどでかかりつけの歯科医院を変える場合、インプラントの種類や保証制度など、いくつか注意しておくべき点があります。
転院前後で確認すべきポイントを見ていきましょう。
注意点①事前にかかりつけの歯科医院に相談する
転院が決まったら、できるだけ早めに現在通っている歯科医院に相談しましょう。
医院によっては、紹介状やインプラントに関する記録を作成してもらえます。
使用しているインプラントのメーカーやサイズ、埋入位置、治療履歴などの情報があると、新しい歯科医院での診療がスムーズに進みます。
紹介状の発行には手数料がかかる場合もありますが、後々のトラブル防止のために用意しておきましょう。
注意点②インプラントの種類を確認する
インプラントには国内外のさまざまなメーカーがあり、ネジの形状やパーツの互換性が異なります。
新しい歯科医院で同じメーカーのインプラントを取り扱っていない場合、修理や調整が難しくなるケースがあるのです。
そのため、自分がどのメーカー・システムのインプラントを使っているか事前に確認しておきましょう。
保証書や治療時の説明書を保管しておくと安心です。
注意点③保証内容を確認する
多くの歯科医院で、インプラント治療に対して独自の保証制度を設けています。
しかし、他院でメンテナンスを受けた場合、保証が継続されないケースもあります。
保証の有効範囲や期間、転院後も保証が適用されるかどうかを事前に確認しておくことが大切です。
保証が無効になってしまうと、再治療や修理費用を自己負担しなければならないこともあるため、十分注意しましょう。
注意点④再治療が必要になる可能性もある
転院先でインプラントの状態を確認したとき、周囲炎や骨吸収などのトラブルが見つかることもあります。
その場合、単なるメンテナンスではなく再治療が必要となる場合もあります。
長期間メンテナンスを受けていない場合や、セルフケアが不十分な場合は注意してください。
新しい歯科医院で初診を受ける際には、レントゲンやCT検査を通して状態を正確に把握してもらうことが重要です。
インプラントを長持ちさせるために大切なこと
インプラントを長く快適に使用し続けるには、定期的なメンテナンスと日々のセルフケアの両立が不可欠です。
3〜6か月に一度は歯科医院でチェックを受け、炎症や装置の不具合を早期に発見できます。
さらに、毎日の丁寧なブラッシングやフロス習慣が、清潔で健康な口腔環境を維持するうえでの鍵となります。
インプラントは「治療して終わり」ではなく、「育てて守る歯」であるという意識が大切です。
適切なケアを継続し、健康なインプラントを長く保ちましょう。
この記事の監修者
日本歯科大学新潟生命歯学部を卒業後、インプラント治療に従事。現在では「インプラント治療のきぬた歯科」を開業し年間3000本以上のインプラント治療の実績がある。
日本でインプラント治療が黎明期だったころからパイオニアとして活躍し、インプラントメーカーのストローマン社やノーベルバイオケア社から公認インストラクターの資格を得た。
本の執筆やTV・雑誌などのメディア出演、自身のYouTubeチャンネルなどで情報発信を積極的に行っている。
<主な著書>
インプラント治療は史上最強のストローマンにしなさい!!
歯医者が受けたい!インプラント治療
あっそのインプラント、危険です!!
<YouTubeチャンネル>
八王子きぬた歯科
<外部サイト>
きぬた 泰和 Wikipedia