インプラントは、天然歯に近い噛み心地を再現できる治療法として人気がありますが、永久的に使用できるものではありません。
また、定期的なメンテナンスや正しいケアを怠ると、寿命が短くなるおそれがあります。
本記事では、インプラントの平均的な耐用年数、他の治療法との比較を解説します。
寿命を縮める原因や、長持ちさせるためのポイントについても詳しく解説します。
「インプラントはどのくらいもつの?」「交換費用はいくらかかる?」と気になる方は、ぜひ最後までご覧ください。
インプラントの耐用年数
インプラントの耐用年数は、おおよそ10〜15年が目安とされています。
治療から10年経過後も高い残存率を維持しており、20年以上使用しているケースも少なくありません。
メーカーによっては10年保証を設けている場合もあり、耐久性の高さが分かります。
ただし、この数値は定期的にメンテナンスを受け、適切なケアを続けている場合に限られます。
ケアを怠ったり、歯周病やインプラント周囲炎を放置したりすると、数年で不具合が生じる場合もあります。
一方で、歯科医院での定期検診と自宅での丁寧なセルフケアを継続すれば、20〜30年にわたり使用することも可能です。
入れ歯やブリッジとの耐用年数の比較
歯を失った際の代表的な治療法は、インプラントのほかに入れ歯やブリッジがあります。
それぞれの治療法に特徴があり、耐用年数にも大きな違いがあります。
一般的に、インプラントの耐用年数は10〜15年程度で、定期的なメンテナンスを受ければ20年以上使用できると解説しました。
これに対し、ブリッジの寿命は7〜8年、入れ歯は3〜5年が目安です。
つまり、3つの治療法の中でも、インプラントは最も長期間にわたり機能を維持しやすい方法です。
耐用年数の判断基準
インプラントは「インプラント体(人工歯根)」と「人工歯(上部構造)」の2つの部分から成り立っています。
見た目に異常がなくても、内部で劣化やトラブルが進行していることがあるため、定期的な検診で状態を確認することが大切です。
寿命を判断する際は、人工歯の破損とインプラント体のトラブル、それぞれの状態を見極めることが重要になります。
人工歯の破損
インプラントの上部構造である人工歯は、長年使用するうちに摩耗やひび割れが起こります。
強い噛み締めや歯ぎしり、硬い食べ物を頻繁に噛む習慣がある場合、人工歯が欠けたり外れたりするリスクが高くなります。
小さな欠損であれば修理で対応できることもありますが、破損が大きい場合や内部構造にまで影響しているときは、人工歯そのものを交換する必要があるでしょう。
人工歯は耐久性の高いセラミックやジルコニアなどで作られていますが、経年劣化は避けられません。
定期的に歯科医院でチェックを受け、必要に応じて早めに補修や交換を行いましょう。
インプラント体のトラブル
インプラントの土台となるインプラント体は、顎の骨と結合することで安定します。しかし、この結合部分に問題が生じると、ぐらつきや痛みが起こり、最悪の場合はインプラントが脱落することもあります。
主な原因としては、歯周病と似た症状を引き起こすインプラント周囲炎が挙げられます。
プラークや歯石が溜まり、炎症が進行すると骨が吸収され支えを失うため、インプラントが固定できなくなるのです。
さらに、歯ぎしりや強い噛み締めによる負担、またはインプラントの埋入位置が不適切な場合もトラブルの原因となります。
耐用年数を迎えてしまったときの対処法
インプラントは長期間使用できる治療法ですが、永久的に使い続けられるわけではありません。
経年劣化や噛み合わせの変化、歯周組織のトラブルなどにより、人工歯やインプラント体のいずれかに不具合が生じます。
ただし、寿命が来たからといって慌てる必要はありません。
多くのケースでは部分的な修復で対応できることもあり、再手術によって再び快適に使用できるようになります。
ここでは、人工歯とインプラント体のそれぞれに適した対処法を紹介します。
人工歯の場合
人工歯は、インプラントの上に装着されるセラミックやジルコニア製の被せ物です。
長年の使用により、噛み合わせや食生活の影響で表面の摩耗や欠け、変色などが起こります。
このような場合、人工歯のみ交換・修復で対応可能です。
土台となるインプラント体がしっかりしていれば、再手術せずに新しい人工歯を取り付けるだけで、見た目や噛み心地を元通りに戻せます。
また、保証期間内であれば無料で再製作してもらえる歯科医院もあるので、保証内容を確認しておきましょう。
インプラント体の場合
インプラント体は、顎の骨に埋め込まれる「人工歯根」にあたる部分です。
骨としっかり結合していれば何十年も機能しますが、歯周病やインプラント周囲炎が進行すると骨が溶け、支えを失ってぐらついたり、最悪の場合は脱落してしまうケースも。
このような場合は、再手術で新しいインプラント体を埋め込む治療をします。
再手術では、失われた骨を補う「骨再生治療(GBR法など)」を併用する場合もあります。
保証期間内であれば無償で対応できる場合もありますが、ほとんどの医院では定期的なメンテナンスを受けていることが保証の条件です。
耐用年数を迎えたインプラントの交換費用
インプラントが寿命を迎えた場合、交換費用は部位や交換内容によって大きく異なります。
人工歯のみを交換する場合の費用は、1本あたりおおよそ5万〜15万円が目安となります。
使用素材(セラミックやジルコニアなど)によって金額は変わります。
一方、インプラント体(人工歯根)やアバットメント(土台)を交換する場合は、1本あたり30万〜60万円程度です。
骨の再生治療(GBR法など)を併用する際には、追加費用がかかるケースもあります。
インプラントの耐用年数を縮める原因
インプラントは、適切なケアを行えば10年以上維持できますが、生活習慣やメンテナンス不足によって寿命が短くなることもあります。
炎症や喫煙、噛み合わせの問題などが重なると、数年でトラブルが生じることもあり得ます。
ここでは、インプラントの耐用年数を縮める主な原因を詳しく見ていきましょう。
インプラント周囲炎の発症
インプラント周囲炎は、インプラント周囲の歯茎や骨に炎症が起こる病気です。
原因は歯垢や歯石の中に潜む細菌です。
初期段階では痛みなどの自覚症状はほとんど見られませんが、放置すると骨が吸収されてインプラントがぐらつき、最悪の場合は脱落します。
歯磨きの磨き残しや定期的なクリーニング不足によって発症しやすいため、日々のセルフケアと定期メンテナンスの両立が欠かせません。
早期発見・早期治療がインプラントを長持ちさせるポイントです。
メンテナンス不足
インプラントを長く使うには、定期的なメンテナンスが欠かせません。
人工歯は虫歯にならないものの、周囲の歯茎や骨は天然の組織です。
そのため、プラークがたまると炎症を起こし、インプラントの寿命を縮めてしまいます。
歯科医院での専門的なクリーニングや噛み合わせのチェックは、トラブルを未然に防ぐために非常に重要です。
なお、メンテナンスを怠ると保証が適用されなくなることもあるため、定期検診を習慣化しましょう。
喫煙
喫煙は、インプラントの寿命を縮める大きな要因です。
タバコに含まれるニコチンは血管を収縮させ、歯茎への血流を悪化させます。
その結果、インプラント手術後の治癒が遅れる、骨との結合がうまくいかないことがあります。
さらに、喫煙者は非喫煙者に比べインプラント周囲炎の発症率が高いことも分かっています。
長期的にインプラントを守るためにも、治療後だけでなく治療前から禁煙を意識し口腔環境を改善していきましょう。
歯ぎしり・食いしばり
歯ぎしりや食いしばりは、インプラントに過度な負担を与える原因です。
天然歯には衝撃を吸収する「歯根膜」がありますが、インプラントにはそれがないため、強い力が直接伝わってしまうのです。
その結果、スクリューの緩みや人工歯の破損、骨への負担が増え結合部分が弱くなることがあります。
歯ぎしりが強い場合は、就寝時にマウスピースを使用するなどして、負荷を軽減する工夫が必要です。
信頼度の低いメーカーの使用
インプラントの品質はメーカーによって異なります。
格安インプラントなど信頼性の低いインプラントは、破損や骨との結合不良が起きやすく、再治療のリスクが高まります。
メーカー選びは、価格だけでなく、品質や保証体制を重視しましょう。
治療を受ける際は、歯科医院で取り扱うメーカーや保証内容を確認し、公式HPやパンフレットなどで信頼性を確認することが大切です。
インプラントの耐用年数を延ばす方法
インプラントはしっかりとケアすれば、10年以上、20年以上も使い続けられます。
長く快適に使うには、毎日のセルフケアに加え歯科医院での定期的なメンテナンス、そして生活習慣の見直しが欠かせません。
ここでは、インプラントをできるだけ長持ちさせる具体的な方法を紹介します。
セルフケアを丁寧に行う
インプラントを長持ちさせる基本は、日々の正しい口腔ケアです。
インプラントの周囲は天然歯よりも汚れが溜まりやすく、歯周病菌が繁殖しやすい環境です。
磨き残しがあるとインプラント周囲炎を引き起こし、寿命を大幅に縮める原因になります。
毛先の柔らかい歯ブラシを使い、歯と歯茎の境目をやさしく磨きましょう。
デンタルフロスや歯間ブラシを併用し、細部の汚れも丁寧に落としてください。
毎日のブラッシングを「なんとなく」ではなく「正確に」する意識が、インプラントを守る第一歩です。
定期的にメンテナンスを受ける
セルフケアだけでは落としきれない汚れや歯石を除去し、トラブルを未然に防ぐには、歯科医院での定期メンテナンスが欠かせません。
3〜6か月ごとの受診が理想です。
メンテナンスでは、インプラントや歯茎の状態、噛み合わせのバランスなどを確認します。
問題を早期に発見し対処できれば、トラブルの拡大を防げます。
禁煙する
喫煙は、インプラントの寿命を大きく縮める原因の一つです。
タバコに含まれるニコチンが血管を収縮させることで歯茎の血流が悪化し、治癒を遅らせ、インプラントと骨の結合を妨げます。
また、喫煙によって免疫力が低下するとインプラント周囲炎のリスクも高まるでしょう。
治療後、良好な経過を維持するには、禁煙または少なくとも喫煙量を減らしてください。
インプラントを長持ちさせたいと考えるなら、口腔と全身の健康のためにも禁煙を目指しましょう。
歯ぎしりや食いしばりを予防する
歯ぎしりや食いしばりは、インプラントに過度な負荷をかけ、スクリューの緩みや人工歯の破損を引き起こす要因になります。
天然歯と違い、インプラントは衝撃を吸収する歯根膜がないため、力が直接伝わりやすいのです。
歯ぎしりが疑われる場合は歯科医院で相談し、就寝時に専用のマウスピースを使用するなど対策しましょう。
噛み合わせの調整も定期的にすれば、負担を均等に分散させ、インプラントの長期安定につながります。
信頼度の高いインプラントメーカーを選ぶ
インプラントを長く使うには、メーカー選びも大切なポイントです。
格安インプラントや無認可製品の中には、耐久性や互換性に問題があるものも存在します。
これらを使用すると、破損や再治療のリスクが高まるでしょう。
治療を受ける際は、世界的に評価の高いメーカーを採用している歯科医院を選んでください。
パンフレットや公式HPなどでメーカー名や保証内容を確認し、安全性やアフターサポート体制を比較しましょう。
インプラントを長持ちさせるためにできること
インプラントを快適に使い続けるためには、治療後のケアと日常の習慣の両立が欠かせません。
平均寿命は10〜20年程度ですが、メンテナンスや生活習慣を工夫することで30年以上使用できる場合もあります。
定期的な検診で状態を確認し、正しいセルフケアを続けることで、トラブルを防ぎつつ寿命を延ばすことができます。
信頼できる歯科医院と相談しながら、インプラントを長期的に健康な状態で維持していくことを心がけましょう。
この記事の監修者
日本歯科大学新潟生命歯学部を卒業後、インプラント治療に従事。現在では「インプラント治療のきぬた歯科」を開業し年間3000本以上のインプラント治療の実績がある。
日本でインプラント治療が黎明期だったころからパイオニアとして活躍し、インプラントメーカーのストローマン社やノーベルバイオケア社から公認インストラクターの資格を得た。
本の執筆やTV・雑誌などのメディア出演、自身のYouTubeチャンネルなどで情報発信を積極的に行っている。
<主な著書>
インプラント治療は史上最強のストローマンにしなさい!!
歯医者が受けたい!インプラント治療
あっそのインプラント、危険です!!
<YouTubeチャンネル>
八王子きぬた歯科
<外部サイト>
きぬた 泰和 Wikipedia