インプラント治療は、さまざまな理由で歯と歯根を失ってしまった方が、歯を歯根から再建できる治療です。
治療後は歯に汚れが溜まりやすいため、自宅や外出先などでこまめにセルフケアを行うことが大切です。
さらに、治療を受けた歯科医院でも、1〜2か月に1回を目安に定期検診を受けるようにしましょう。
今回は、専門医による定期検診が必要な理由について、検診を受けない場合のトラブルや費用などのポイントも紹介します。
定期検診を怠ると起こりうるトラブル
インプラント治療後は、自宅でのセルフケアだけではなく定期的なメンテナンスが必要です。
定期検診を怠ると、口内のわずかな異変を見逃しやすく、対応が遅れて症状が悪化するおそれがあります。
特に「インプラント歯周炎」と呼ばれる炎症や、人工歯の破損は、治療後によく見られる代表的な問題です。
インプラント歯周炎
インプラント歯周炎は、天然の歯でいう歯周病に相当するもので、インプラントを支える歯ぐきや骨が炎症を起こす病気です。
定期検診を怠ると、歯垢や歯石がインプラントの周りに蓄積し、細菌感染が進行しやすくなります。
初期段階では自覚症状が乏しく、痛みや腫れが出たときにはすでに進行しているケースもあります。
症状が進行すると、インプラントを支える骨が減少し、最悪の場合はインプラントが脱落することもあります。
予防のためには定期的なチェックと丁寧な清掃、早期発見・早期治療が重要です。
人工歯の破損
人工歯は強度の高い素材で作られていますが、かみ合わせの異常や小さな損傷が重なると破損に至ることがあります。
定期検診を怠ると、摩耗やひび割れを早期に発見できず、破損や欠けのリスクが高まります。
人工歯の破損は噛む力や食生活に影響を及ぼし、周囲の歯や顎関節への負担が増加するため、定期的に専門家による点検を受けることが大切です。
インプラント治療後に定期検診を受ける理由
インプラント治療後に定期検診を受けるのは、インプラント歯周炎をはじめとする炎症や虫歯・歯周病の発生リスクを抑えるためです。
ここからは、なぜ予防に定期検診が必要なのかを詳しく紹介します。
インプラント周囲炎を予防するため
インプラント周囲炎は、歯ぐきや骨が炎症を起こし、インプラントの脱落につながる細菌感染症です。
しかし、定期検診を受けることで、専門家が歯垢や歯石の除去を行い、細菌感染の進行を抑え、治療後の歯を長く使い続けることができます。
炎症の兆候が小さい段階で発見できるため、治療や処置も容易に実施できます。
自分では清掃が難しい部分や歯ぐきの深い部分もチェックできるため、長期的にインプラントを健康に保つためにも定期検診が必要です。
虫歯や歯周病の発症を予防するため
インプラントの周囲だけでなく、周囲の天然歯も定期的にチェックすることが重要です。
インプラント治療後もお口の中にはさまざまな細菌が棲んでおり、他の歯が虫歯や歯周病になる可能性があります。
検診では虫歯や歯周病の早期兆候を発見し、それぞれの状態に合った治療や予防措置を取ります。
早期発見・早期対応がお口全体の健康を維持し、インプラントの長期的な安定性を守ることができます。
お口全体の健康を維持し、インプラントの長期的な安定を保つためには、早期の虫歯・歯周病予防が欠かせません。
現状のかみ合わせを確認するため
インプラントは人工歯であるため、かみ合わせがずれた場合には調整をしなければなりません。
定期検診では、かみ合わせの状態を確認し、微細なずれを修正して快適に噛めるよう整えます。
かみ合わせのバランスが崩れるとインプラントや周囲の歯に負担がかかるため、人工歯の摩耗や破損、顎関節症のリスクが高まります。
定期検診は、インプラント自体の寿命を延ばす役割も果たしているのです。
定期検診がインプラント保証の対象になっているため
多くの歯科医院では、インプラント治療後の保証制度を設けていますが、保証を受ける条件として定期検診の受診が必須とされています。
定期的なメンテナンス記録がない場合、保証対象外になることもあるため注意が必要です。
定期検診を受けることで、保証の条件を満たすだけでなく、万が一問題が起きたときにもすぐに対応が受けられます。
保証と健康管理の双方について、重要な役割を果たしています。
定期検診の内容
定期検診は、お口の中の確認やレントゲンの撮影といった複数の方法を組み合わせて行います。
ここでは、インプラント治療後の定期検診について、検査項目と内容をみていきましょう。
口内の確認
定期検診では口内全体の状態を目視で確認したあと、レントゲンや触診でも細かくチェックするため、自宅では難しい丁寧なケアが受けられます。
検診中は歯や歯ぐきに加え、舌や粘膜などインプラント周囲の組織も確認します。インプラント自体に着色やひび割れがないかもチェックします。
インプラント周囲は自分では見えにくいため、専門家による診察が重要です。
口内の状況を定期的に把握することで、問題が進行する前に早期対策を講じることができます。
口内の清潔状態やブラッシングの効果も確認されるため、日常ケアの改善にもつながります。
レントゲン撮影
レントゲン撮影は、X線を使用してお口の中を撮影し、肉眼では見えない骨や歯の状態を画像として確認する方法です。
レントゲン撮影で、歯やインプラント周囲の骨の状態を確認します。
肉眼では見えない骨吸収や歯根の異常、隠れた虫歯の有無を正確に把握できるため、早期発見にも有効です。
インプラント周囲炎は骨の吸収が進行すると自覚症状が少なくなるため、定期的なレントゲンチェックが必要です。
必要に応じて治療計画を見直すことができ、インプラントや天然歯の長期的な健康維持に役立ちます。
歯周ポケットの確認
歯周ポケットとは、歯と歯ぐきの間の隙間のことです。
ここに汚れや歯石が溜まると、細菌がそれらをえさとして増殖し、炎症が進行しやすくなります。
定期検診では専用の器具で歯周ポケットの深さを測定し、歯周病やインプラント周囲炎の兆候を確認します。
ポケットが深くなると、さらに汚れが溜まって細菌が増殖するため、症状が進行する前に清掃や治療を行うことが大切です。
専用の器具や機械での洗浄
定期検診では、自宅でのブラッシングでは取りきれない歯石や汚れを、専用器具や超音波機械を使って除去します。
これにより、歯周病やインプラント周囲炎のリスクを大幅に減らすことができます。
インプラントの周囲は天然歯と構造が異なるため、専用器具による丁寧な清掃が欠かせません。
定期的に洗浄を受けることで、口腔内を清潔に保ち、長期的にインプラントや歯の健康を守ることができます。
かみ合わせの確認
かみ合わせのバランスは、インプラントや周囲の歯、顎関節の健康に大きく影響するため、少しでも不具合があれば正しい位置への調整が必要です。
定期検診では、咬合の状態を確認し、必要に応じて微調整を行います。
かみ合わせが悪いと、インプラントや人工歯の破損、天然歯の摩耗、顎関節への負担が増える可能性があります。
早期に調整することで、日常生活での不快感やトラブルを防ぎ、インプラントを長く安定して使用できる環境を整えられるでしょう。
セルフケアの指導
定期検診では、正しいブラッシング方法や歯間ブラシの使い方など、日常的に行うセルフケアについても指導を受けられます。
個々の状態に応じたアドバイスを受けることで、インプラントや天然歯の健康をより効率的に維持できます。
歯周病や虫歯の予防効果が高まることで、将来的な治療費やトラブルのリスクを軽減しやすくなるでしょう。
自身でできるセルフケアの方法
ご自身でできるセルフケアの方法について、ブラッシングのポイントやセルフケアに役立つ方法を紹介します。
歯磨きは丁寧に行う
インプラント周囲や歯と歯ぐきの境目は、細菌が溜まりやすい場所です。
歯磨きは時間をかけ、丁寧に行うことが大切です。
ブラシを軽く歯に当てて細かく動かすことで、表面についた歯垢を除去します。
力を入れすぎると歯ぐきやインプラント周囲を傷つけるため、やさしく磨くことを意識してください。
1回の歯磨きに少なくとも2〜3分かけることで、口腔内の清潔を維持し、インプラントや天然歯の健康を守ることができます。
デンタルブラシや歯間ブラシを使用する
歯ブラシだけのブラッシングでは、歯と歯の間に溜まる汚れを完全に除去することはできません。
デンタルブラシや歯間ブラシのように、細かい隙間に合わせたアイテムを活用することで、細菌の塊である歯垢や食べかすを効果的に取り除くことができます。
インプラントや矯正器具の周囲は歯垢が溜まりやすいため、細かなケアが予防の鍵となります。
毎日の習慣として取り入れることで、虫歯や歯周病、インプラント周囲炎のリスクを大幅に減らすことができ、定期検診との相乗効果で口腔内の健康を維持できます。
研磨剤が含まれていない歯磨き粉で磨く
研磨剤入りの歯磨き粉は汚れを落とす力が強い反面、インプラントや人工歯の表面を傷つける可能性があります。
インプラント周囲や被せ物の表面を長持ちさせるためには、研磨剤が含まれていない歯磨き粉を使用すると良いでしょう。
低刺激のものを選ぶことで、歯ぐきを傷つけずに清潔を保つことができ、長期的に安定した使用が可能です。
セルフケアの質を高めることが、お口の中のトラブル予防にも役立つでしょう。
定期検診に通う頻度
インプラント治療後の定期検診は、3〜6ヶ月に1度の頻度で通うのが一般的です。
治療直後はインプラントや歯ぐきの状態が安定するまでの経過観察が重要なため、3ヶ月ごとの受診が推奨されることが多いです。
状態が良好に保たれていれば、6ヶ月に1度のペースへと間隔を延ばすこともできます。
定期検診では、インプラント周囲の清掃・炎症の有無・噛み合わせの確認などを行い、トラブルの早期発見につなげます。
定期検診にかかる費用
インプラント治療後の定期検診にかかる費用は、1回あたり数千円〜1万円程度が一般的です。
費用は歯科医院や検診内容によって異なり、基本的な口内チェックやクリーニングのみの場合は比較的安価ですが、レントゲン撮影や専用機器による洗浄やかみ合わせの調整を行う場合は費用が高くなることがあります。
インプラント治療は自費診療のため、定期検診も保険適用外となる場合が多く、注意が求められます。
ただし、医院によってはメンテナンスプランや保証制度に定期検診が含まれていることもあります。
定期検診にかかる費用を抑える方法
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定期検診にかかる費用を抑える方法として、医療費控除の利用や複数の歯科医院で費用を比較するといった方法が挙げられます。
治療後のメンテナンス費用を抑えたい場合、どのようなポイントを意識すべきなのでしょうか。
医療費控除を利用する
インプラントや定期検診にかかる費用は、確定申告時に医療費控除の対象となる場合があります。
年間の医療費が一定額を超える場合、税金の還付を受けられる可能性があるため、領収書や明細を保管しておくことが重要です。
医療費控除を活用することで、実質的な負担を軽減でき、定期的な検診を継続しやすくなります。
特に高額なインプラント治療後は、控除制度を上手に利用することで費用の負担が軽減できます。
複数の歯科医院から説明を聞く
同じ治療内容でも、歯科医院によって費用やサービス内容が異なることがあります。
複数の医院とカウンセリングや相談を行い、費用の内訳や検診内容を比較することで、納得できる歯科医院選びができるでしょう。
医院ごとの特徴や設備、メンテナンス方法を確認することで、自分に合った医院選びがしやすくなります。
インプラント治療後は定期検診が大切
今回は、インプラント治療後の定期検診の重要性と、その内容や費用、セルフケアのポイントについて紹介しました。
インプラントは天然歯と異なり、歯根から人工的に再建されるため、治療後も歯周炎や人工歯の破損などトラブルが起こりやすく、定期的な専門医によるチェックが不可欠です。
検診では目視による確認のほか、レントゲン撮影や歯周ポケット測定、かみ合わせの調整やセルフケアに関するアドバイスが行われ、インプラントやその他のトラブルの早期発見・予防を目指します。
定期検診を数か月に1回の頻度で継続することで、インプラントの長期的な安定と口内の健康を保てます。
この記事の監修者
日本歯科大学新潟生命歯学部を卒業後、インプラント治療に従事。現在では「インプラント治療のきぬた歯科」を開業し年間3000本以上のインプラント治療の実績がある。
日本でインプラント治療が黎明期だったころからパイオニアとして活躍し、インプラントメーカーのストローマン社やノーベルバイオケア社から公認インストラクターの資格を得た。
本の執筆やTV・雑誌などのメディア出演、自身のYouTubeチャンネルなどで情報発信を積極的に行っている。
<主な著書>
インプラント治療は史上最強のストローマンにしなさい!!
歯医者が受けたい!インプラント治療
あっそのインプラント、危険です!!
<YouTubeチャンネル>
八王子きぬた歯科
<外部サイト>
きぬた 泰和 Wikipedia