奥歯の役割とは?

奥歯とは、小臼歯や大臼歯など、前歯より後ろにある歯を指します。食べ物を細かくすりつぶし、食事や消化を支える重要な歯です。

また、奥歯は噛み合わせ全体を支えているため、失うと周囲の歯並びやあごのバランスに影響する場合があります。

さらに、奥歯を失うと、口元を支える力が弱くなり、頬がこけたり口元が下がったりして、老けた印象につながることもあります。

このように、奥歯は単に「食べ物を噛むための歯」ではなく、噛み合わせや口元の印象を支える重要な役割も担っているのです。

奥歯をインプラントにするデメリットと注意点

奥歯は重要な役割を果たしているため、失った場合はインプラントが有効な治療法の一つです。

ただし、奥歯のインプラントには、事前に知っておきたいいくつかのデメリットや注意点があります。治療を検討する際は、デメリットや注意点を理解したうえで、判断することが大切です。

奥歯のインプラント治療のデメリットと注意点

  • 自由診療のため費用が高額になりやすい
  • 治療期間が長い
  • 全身状態による制限
  • 外科手術が必要
  • 骨の量が足りないと追加処置が必要
  • インプラント周囲炎のリスク
  • 定期的なメンテナンスが必須

自由診療のため費用が高額になりやすい

インプラントの場合、保険適用外となるケースが多く、入れ歯やブリッジと比べると費用が高額になりやすい治療法です。

費用には、インプラント本体だけでなく、被せ物やCT検査、手術費用、メンテナンス費用なども含まれます。

さらに、骨量が不足している場合は、骨造成などの追加処置が必要になることもあるため、治療費の総額が想定より高くなるケースもあります。

見積もりや保証内容を確認し、追加費用が発生する可能性についても事前に説明を受けておくようにしましょう。

治療期間が長い

インプラントは、人工歯根を埋め込むだけで治療が終わるわけではありません。

埋入後は、インプラントとあごの骨がしっかり結合するまで様子を見る必要があります。

そのため、治療完了まで数か月以上かかるケースも珍しくありません。

また、抜歯後すぐに治療できない場合や、骨造成が必要な場合は、さらに期間が長くなる可能性があります。

「すぐに歯を入れたい」と考えている方にとっては、治療期間が長い点はデメリットとなり得るでしょう。

全身状態による制限

治療には外科手術を伴うため、全身状態によっては治療を受けられない場合や、治療の時期を調整しなければならない場合があります。

たとえば、糖尿病や心疾患などの持病がある方、骨粗しょう症の薬を服用している方などは注意が必要です。また、喫煙習慣があると、傷の治りが遅れたりインプラント周囲炎のリスクが高まったりする可能性があります。

そのため、持病や服薬中の薬、喫煙習慣がある場合は、事前に歯科医師へ伝えておきましょう。

外科手術が必要

インプラントでは、あごの骨へ人工歯根を埋め込むための外科手術を行います。

局所麻酔を使用するため、手術中の痛みは比較的少ないとされていますが、術後に腫れや痛みが出る場合があります。

また、体質や全身状態によっては、身体への負担が大きくなるため、注意しなければなりません。特に高血圧や糖尿病などの持病がある方は、慎重な判断が必要です。

外科手術に不安がある場合は、事前に歯科医師へ相談し、治療内容を十分に理解したうえで判断しましょう。

骨の量が足りないと追加処置が必要

インプラント手術ではあごの骨へ人工歯根を固定するため、骨の量や厚みが不足していると、そのままでは治療ができないこともあります。

特に歯を失ってから時間が経っている場合、あごの骨が痩せていることがあるのです。また、上あごの奥歯付近には上顎洞(じょうがくどう)という空洞があり、十分な骨の厚みを確保しにくいケースも見られます。

このように骨量が足りない場合は、骨を再生させる「GBR」という治療や、上顎洞の底を持ち上げて骨量を増やす「サイナスリフト」などの追加処置が必要です。

追加処置が必要になると、治療期間が長くなったり、費用が増えたり、身体的な負担が大きくなったりする点はデメリットといえるでしょう。

インプラント周囲炎のリスク

治療後に注意したいのが、「インプラント周囲炎」です。

これはインプラント周囲の歯茎や骨に炎症が起きる病気で、進行するとインプラントを支える骨が溶け、インプラントがぐらついたり、抜け落ちたりする可能性があります。

天然歯の歯周病と似ていますが、自覚症状が少ないまま進行するケースも少なくありません。特に、セルフケアが不十分な場合や喫煙習慣がある方、定期検診を受けていない場合は注意が必要です。

インプラントを長持ちさせるためには、毎日の歯磨きだけでなく、クリニックでの定期的なメンテナンスも欠かせません。

定期的なメンテナンスが必須

インプラントは、「入れたら終わり」ではありません。長期間安定して使用するためには、定期的なメンテナンスや噛み合わせの確認が必要です。

噛み合わせに問題がある状態を放置すると、被せ物の破損やインプラント本体への負担が大きくなる場合があります。また、セルフケアが不十分だと、インプラント周囲炎のリスクも高まります。

そのため、治療後も定期的に通院できるか、日々のケアを継続できるかを考えたうえで、インプラントを検討することが大切です。

奥歯のインプラントが難しいと言われる理由

インプラントは部位によって難易度が異なります。

特に奥歯は、以下のような理由で、前歯と比べて難しいケースが多いとされています。

奥歯のインプラントが難しいと言われる理由

  • 上あごの奥歯は骨の質と量が不足しやすいため
  • 下あごの奥歯は神経や血管との距離が近いため
  • 奥歯は強い噛む力に耐える設計が必要なため
  • 口の奥は視野やスペースが限られるため

上あごの奥歯は骨の質と量が不足しやすいため

先述の通り、上あごの奥歯近くには、上顎洞という空洞があるため、骨の厚みが不足しやすく、インプラントを十分な深さまで埋め込めないケースがあります。

また、上あごの骨は下あごより柔らかく、インプラントを固定しにくい場合があります。そのため、上あごの奥歯はインプラント治療の難易度が高いとされているのです。

ただし、骨量が足りない場合でも、GBRやサイナスリフトなどの追加処置によってインプラント治療が可能になるケースもあります。まずは検査を受けたうえで、歯科医師と相談しながら治療方法を検討しましょう。

下あごの奥歯は神経や血管との距離が近いため

下あごの奥歯付近には、下歯槽神経(かしそうしんけい)という重要な神経や血管が通っています。そのため、インプラントを埋め込む位置や角度を誤り、この神経を傷つけてしまうと、唇やあごのしびれなどにつながる可能性があります。

特に骨量が少ない場合は、インプラントを入れられるスペースが限られ、神経との距離も近くなりやすいため、治療の難易度が高くなるのです。

安全に治療を進めるためには、CT検査で神経や血管の位置を正確に確認し、慎重に治療計画を立てることが重要です。

奥歯は強い噛む力に耐える設計が必要なため

奥歯は食べ物を噛み砕く役割を担っているため、前歯よりも強い力がかかります。

そのため、インプラントを埋め込む位置や角度、被せ物の形、噛み合わせの調整が適切でなければ、インプラントや周囲の組織に過度な負担がかかる可能性があります。

こうした奥歯の役割が、インプラント治療の難しさにつながる要因の一つです。

特に食いしばりや歯ぎしりの癖がある場合は、被せ物の破損やネジのゆるみなどにつながるケースもあるため、より慎重な治療が求められます。

また、必要に応じて噛み合わせを細かく調整したり、ナイトガードを使用したりするなど、治療後の管理も重要になります。

口の奥は視野やスペースが限られるため

口の奥にある奥歯は、治療中に見える範囲や治療用の器具を動かすスペースが限られます。

インプラントは、人工歯根を正確な位置・角度・深さで埋め込む必要があるため、視野やスペースが限られることも、治療が難しいと言われる理由の一つです。

特に一番奥の歯は器具操作が難しく、細かな調整がしにくい場合があることにくわえ、治療を受ける方も口を長時間開けつづける必要があるため、大きな負担を感じることもあります。

そのため、奥歯のインプラントでは、精密な診断や設備だけでなく、歯科医師の技術力や経験も重要です。

奥歯を失ったまま放置することで生じるリスク

奥歯のインプラントには、いくつかのデメリットがあるため、「どうせ見えないから」「1本くらいなら問題ないだろう」と考え、治療せずに放置してしまう方もいます。

しかし、奥歯を失ったまま放置すると、以下のようなトラブルにつながる可能性があります。

奥歯を失ったまま放置することで生じるリスク

  • 隣の歯や対合歯が動く
  • 歯並びと噛み合わせが悪化する
  • 健康な歯の寿命を縮める
  • 顔貌が変化し老けた印象につながる

隣の歯や対合歯が動く

歯は、空いたスペースがあると少しずつ動こうとする性質があります。

そのため、隣の歯が倒れ込んだり、対合歯とよばれる噛み合う相手の歯が伸びてきたりする場合があるのです。

歯の位置が変わると、歯磨きがしにくくなり、その結果として、虫歯や歯周病のリスクが高まることもあります。

歯並びと噛み合わせが悪化する

奥歯は、噛み合わせ全体を支える重要な歯です。

奥歯を失うと噛む力のかかり方が変わり、噛み合わせのバランスが崩れやすくなります。

その状態が続くと、顎関節への負担が増えたり、肩こり・頭痛などにつながったりする場合もあるため注意が必要です。

健康な歯の寿命を縮める

奥歯がなくなると、残っている歯だけで噛むことになります。

その結果、一部の歯へ負担が集中し、歯の破損や歯周病リスクの増加につながる可能性があります。

奥歯を1本失っただけでも、ほかの健康な歯に悪影響が及ぶ場合があるため、できるだけ早めに対処することが大切です。

顔貌が変化し老けた印象につながる

歯を失うと、その部分のあごの骨に噛む刺激が伝わりにくくなり、徐々に骨が痩せていく場合があります。

特に奥歯は、口元や頬を内側から支える役割にも関わっています。そのため、奥歯を失った状態が続くと、頬がこけたり口元が下がったりすることがあるのです。

その結果、実年齢よりも老けた印象に見えてしまう場合があるため、見た目の面でも放置しないことが大切です。

奥歯にインプラントを選ぶメリット

ここまで解説したように、奥歯のインプラントにはデメリットがある一方で、多くのメリットもあります。

ここでは、奥歯にインプラントを選ぶ主なメリットを解説します。

奥歯にインプラントを選ぶメリット

  • 周囲の健康な歯を削らずに治療できる
  • 天然歯に近い噛み心地で食事が楽しめる
  • 胃腸などの消化器官への負担を軽減できる
  • 噛み合わせのバランス維持につながる
  • あごの骨が痩せるのを防ぐ
  • 違和感が少なく審美性が高い

周囲の健康な歯を削らずに治療できる

奥歯を失った場合、治療法によっては周囲の健康な歯を削る必要があります。健康な歯を削ると、その歯の寿命に影響する場合があるため注意が必要です。

しかし、インプラントはあごの骨に人工歯根を埋め込み、独立した歯として固定する治療法です。そのため、周囲の健康な歯を大きく削らずに治療できます。

できるだけ自分の歯を残したい方にとって、周囲の歯への負担を抑えやすい点は大きなメリットといえるでしょう。

天然歯に近い噛み心地で食事が楽しめる

食べ物を噛み砕く役割がある奥歯を失うと、硬いものが食べにくくなる場合があります。

インプラントはあごの骨に固定されるため、噛む力が伝わりやすく、天然歯に近い感覚で食事をしやすい点が特徴です。ほかの治療法と比べ、さまざまな食事が楽しめ、噛むことへの不安が減る点は、奥歯にインプラントを選ぶメリットの一つです。

胃腸などの消化器官への負担を軽減できる

奥歯を失ったままにすると、食べ物を十分に噛み砕けず、大きなまま飲み込んでしまうことがあり、胃腸に負担がかかりやすくなります。

インプラントで奥歯の噛む力を補うことで、食べ物を細かくしてから飲み込みやすくなり、消化器官への負担軽減につながります。

また、硬いものや繊維質の多いものも食べやすくなるため、食事の幅が広がり、栄養バランスの維持にも役立つでしょう。

噛み合わせのバランス維持につながる

奥歯は噛み合わせ全体を支える重要な歯です。奥歯を失ったままにすると、噛む力が一部の歯に偏り、噛み合わせのバランスが崩れることがあります。

インプラントで奥歯を補うことで、噛む力が分散され、残っている歯に過度な力がかかりにくくなります。

また、噛み合わせが安定すれば、残っている歯を守ることにもつながり、口腔内全体を健康な状態に保ちやすくなる点も、奥歯インプラントのメリットです。

あごの骨が痩せるのを防ぐ

奥歯に限らず、歯を失うとその部分のあごの骨に噛む刺激が伝わりにくくなり、少しずつ骨が痩せていく場合があります。

インプラントはあごの骨に人工歯根を埋め込むため、噛む力が骨へ伝わりやすい点が特徴です。そのため、奥歯を失った部分の骨に刺激が伝わりやすくなり、あごの骨が痩せるのを防ぎやすくなります。

違和感が少なく審美性が高い

奥歯は目立ちにくい部位ではあるものの、噛み合わせや会話のしやすさにも関わる重要な歯です。

インプラントは、あごの骨に固定する治療法のため、違和感が少なく、自分の歯に近い感覚で使用しやすいのが特徴です。また、色や形を周囲の歯に合わせることで、自然な見た目を目指すことも可能です。

会話時の違和感や発音への影響も比較的少ないため、日常生活に馴染みやすい点はメリットといえるでしょう。

ほかの治療法との違い

奥歯を失った際は、インプラント以外にもブリッジや入れ歯などの選択肢があります。

それぞれメリット・デメリットが異なるため、特徴を比較したうえで選ぶことが大切です。

奥歯を失った場合に考えられる治療法の特徴やメリット・デメリットを比較すると、以下のようになります。

奥歯治療の種類と特徴

治療法  特徴  メリット  デメリット 
インプラント  あごの骨に人工歯根を埋め込み、人工歯を固定する治療法  天然歯に近い噛み心地が期待でき、周囲の歯を大きく削らずに治療できる  費用が高額になりやすく、外科手術が必要 
ブリッジ  失った歯の両隣の歯を支えにして、人工歯を固定する治療法  固定式のため違和感が少なく、比較的短期間で治療しやすい  両隣の健康な歯を削る必要があり、支える歯に負担がかかる場合がある 
入れ歯  取り外し式の人工歯で、失った歯を補う治療法  外科手術が不要で、比較的費用を抑えやすい  ズレや違和感、噛みにくさを感じる場合がある 
治療せず放置する場合  失った奥歯を補わず、そのままにする状態  一時的には費用や通院の負担を避けられる  噛み合わせの悪化や残っている歯への負担など、将来的なリスクにつながる可能性がある 

奥歯のインプラントで確認したいクリニック選びのポイント

奥歯のインプラントは、骨の状態や神経の位置、噛み合わせなどによって治療の難易度が変わります。そのため、費用だけでなく、診断体制や治療後のサポートまで確認しておくことが大切です。

特に、次の点を確認しておきましょう。

クリニック選びのポイント

  • CTによる精密診断を行っているか
  • 奥歯のインプラント治療の実績があるか
  • デメリットや注意点まで丁寧に説明してくれるか
  • メンテナンスや保証制度が整っているか

メリットだけでなく、デメリットや治療後の管理まで説明してくれるクリニックを選ぶことが、適切なインプラント治療を受けるうえで大切です。

奥歯のインプラントはデメリットもあるが放置にも注意が必要

奥歯のインプラントには、費用が高額になりやすい、外科手術が必要、治療期間が長いなどのデメリットがあります。また、骨の量や神経の位置など、奥歯ならではの理由から治療の難易度が高くなるケースもあります。

しかし、奥歯を失った状態を放置すると、噛み合わせの悪化や周囲の歯への負担など、さらなる大きな問題につながりかねません。

そのため、デメリットだけで判断するのではなく、実績と技術のあるクリニックに相談することが大切です。

きぬた歯科は、年間4,000本以上、累計50,293本のインプラント治療実績を持つクリニックです。奥歯のインプラントを検討している方や治療に不安がある方は、ぜひご相談ください。

この記事の監修者

日本歯科大学新潟生命歯学部を卒業後、インプラント治療に従事。現在では「インプラント治療のきぬた歯科」を開業し年間4000本以上、累計50,293本のインプラント治療の実績がある。

日本でインプラント治療が黎明期だったころからパイオニアとして活躍し、インプラントメーカーのストローマン社やノーベルバイオケア社から公認インストラクターの資格を得た。

本の執筆やTV・雑誌などのメディア出演、自身のYouTubeチャンネルなどで情報発信を積極的に行っている。

<主な著書>
インプラント治療は史上最強のストローマンにしなさい!!
歯医者が受けたい!インプラント治療
あっそのインプラント、危険です!!

<YouTubeチャンネル>
八王子きぬた歯科

<外部サイト>
きぬた 泰和 Wikipedia