何らかの理由で前歯を失ってしまった場合、インプラント治療を検討する方は少なくありません。
しかし、「前歯はインプラントができない」「歯医者で断られた」といった話もあり、不安に思っている方もいらっしゃるのではないでしょうか。
そこで、この記事では前歯のインプラント治療ができるのかどうかをはじめ、治療が難しいケースやメリット・デメリットについて、わかりやすく解説します。
前歯のインプラント治療はできない?
結論からいうと、前歯でもインプラント治療ができないわけではありません。
ただし、奥歯やほかの歯に比べると治療の難易度が高いのは事実です。
前歯の周辺は骨や歯茎が薄いため、CT検査などを用いて骨の厚みや位置関係を立体的に確認しながら、慎重に治療を進めなければなりません。
また、前歯は会話や笑顔の際に目立ちやすく、噛む機能だけでなく、見た目の自然さにも配慮する必要があります。
このように、前歯のインプラント治療では、骨の量や歯茎の状態だけでなく、周囲の歯との色味や形の調和も踏まえた治療計画が求められるのです。
しかし、歯科医院で「前歯のインプラントは難しい」と判断されたからといって、インプラント治療をあきらめる必要はありません。
適切な設備が整っており、治療実績が豊富な歯科医院であれば、治療できる可能性があります。
「前歯はインプラントができない」と決めつけず、なぜ難しいのか? どうすればできるようになるのか? を相談できる歯科医院を選ぶことが大切です。
インプラント治療ができないケースは?
前歯に限らず、口の中の状態や全身の状態によって、「現状ではインプラント治療ができない」と判断される場合があります。
ここでは、どういう場合にインプラント治療ができないと判断されるのかを見ていきましょう。
インプラント治療ができない主なケース
- あごの骨が不足している
- 歯周病が進行している
- 全身疾患がある
- 喫煙習慣がある
- 18歳未満である
- 妊娠している
あごの骨が不足している
インプラント治療は、あごの骨に人工歯根を埋め込んで固定する治療法です。
そのため、骨の厚みや高さが不足していると、インプラントを十分に支えられないことがあります。
前歯周辺は、もともと骨が薄いうえ、抜歯後は骨が痩せやすく、骨量が不足しがちな部位なのです。
前歯のインプラント治療が難しいとされるのは、このような理由があるためです。
ただし、骨造成(GBR)によって骨を補うことで、治療が可能になるケースもあるので、まずは歯科医師に相談してみるとよいでしょう。
歯周病が進行している
歯周病が進行していると、歯を支える骨や歯茎が弱くなり、インプラントを埋入しても長期的に安定しにくいことがあります。
状態によっては、すぐにインプラント治療を行えない可能性があるのです。
また、歯周病が残ったまま治療を進めると、インプラント周囲炎のリスクが高まることも、治療ができない理由の一つです。
まずは歯周病の治療を優先し、口の中の環境を整えたうえで、改めてインプラント治療を検討することをおすすめします。
全身疾患がある
糖尿病や骨粗しょう症などがある場合は、傷の治りに影響が出たり、インプラントと骨が結合しにくくなったりするおそれがあります。
このような全身疾患が理由で、状態によってはインプラント治療が難しいと判断されることもあるでしょう。
たとえば、糖尿病で血糖値のコントロールが不十分だと、感染のリスクが高くなります。
また、骨粗しょう症では病状や服用している薬の内容によっては、インプラント治療ができないケースも考えられます。
全身疾患がある場合は、歯科医師だけでなく主治医とも連携しながら治療計画を立てることが大切です。
喫煙習慣がある
喫煙習慣があると、血流が低下しやすくなります。
歯茎やあごの骨のまわりの血流が低下すると、治療後の回復やインプラントの安定に影響することがあります。
特に前歯のインプラント治療は、骨の厚みや歯茎の状態に左右されやすく、喫煙習慣があるとインプラントが安定しにくくなるのです。
そのため、喫煙者がインプラント治療を希望する場合は、禁煙や喫煙本数の見直しを求められることもあります。
18歳未満である
成長期は、あごの骨や歯並びがまだ変化する可能性が高いため、インプラントを埋入しても、将来的に位置関係や噛み合わせがずれるおそれがあります。
成長によって、周囲の歯の位置が少しずつ変わる一方で、インプラントだけが動かずに同じ場所にとどまるため、数年後に見た目や噛み合わせに影響が出るのです。
基本的に、18歳未満でのインプラント治療は推奨されませんが、骨の成長には個人差があるため、一度、歯科医師と相談してみましょう。
妊娠している
インプラント治療では、手術の際にレントゲン検査や麻酔を行うほか、術後には投薬が必要になることもあります。
こうした処置が母子に影響を与える可能性も考えられるため、原則として妊娠中のインプラント治療は行われません。
インプラント治療は緊急性が高い治療ではないため、無理に進めず、出産後に体調が落ち着いてから、改めて検討することをおすすめします。
前歯のインプラント治療が難しいのはなぜ?
ここまでは、前歯に限らず、インプラント治療が難しいと判断されるケースを見てきました。
ここからは、そのなかでも特に前歯のインプラント治療が難しいとされる理由について見ていきましょう。
前歯のインプラント治療が難しいとされる主な理由
- 理由①あごの骨が薄いため
- 理由②神経の位置が低いため
- 理由③求められる審美性が高いため
理由①あごの骨が薄いため
前歯、特に上あごの前歯は、もともと骨が薄い部分です。
骨が薄いと、インプラントを支えるために必要な厚みを確保しにくく、固定が不安定になってしまうのです。
その状態で無理にインプラントを埋入した場合、ぐらつきや脱落だけでなく、骨を突き抜けたり、見た目が不自然になったりする可能性があります。
また、抜歯後は、歯を失った部分のあごの骨が痩せやすく、特に骨の薄い前歯は短期間で骨量が減ってしまうこともあります。
抜歯から時間が経っている場合は、治療の難易度が高くなることもあるため、インプラントの治療時期について早めに歯科医師に相談しましょう。
理由②神経の位置が低いため
前歯の周辺には、神経や血管などの重要な組織が近くにあります。
そのため、インプラントを埋入できる位置や角度に細かな配慮が必要です。
なかでも上あごの前歯の近くには、鼻口蓋管との距離が近いため、埋入できる位置を特定することが難しい場合があります。
角度や深さを誤ると、しびれや痛みなどのトラブルにつながるおそれがあるため、CT検査で位置関係を立体的に確認したうえで、慎重に治療計画を立てることが重要です。
こうしたことも、前歯のインプラント治療が難しいといわれる理由となっています。
理由③求められる審美性が高いため
前歯は口元の印象に大きく関わるため、噛む機能だけでなく、見た目の自然さにも十分な配慮が必要な点も、前歯のインプラント治療の難しさの一つです。
インプラントの位置や角度がわずかにずれただけでも、歯の向きが不自然に見えたり、歯茎のラインが揃わず違和感が出たりすることがあります。
さらに、前歯を1本だけ治療する場合は、周囲の天然歯と色や形をなじませる必要があるため、奥歯以上に高い審美性と精密な調整が求められるのです。
前歯のインプラント治療を受けるメリット
前歯のインプラント治療は難易度が高い一方で、見た目や機能面など、さまざまなメリットがあります。
ここでは、前歯のインプラント治療を受ける主なメリットを4つ紹介します。
前歯のインプラント治療を受けるメリット
- メリット①ほかの歯にかかる負担を抑えられる
- メリット②食べ物をしっかりと噛める
- メリット③自然に仕上がる
- メリット④長期的に使用できる
メリット①ほかの歯にかかる負担を抑えられる
インプラントは失った歯だけを単独で補える治療法です。
ブリッジのように両隣の歯を大きく削る必要がなく、周囲の健康な歯への負担を抑えられるのです。
できるだけ自分の歯を残したいと考える方にとっては、大きなメリットといえるでしょう。
メリット②食べ物をしっかりと噛める
インプラント治療をすることで、食べ物を噛み切るという前歯の役割を回復できる点もメリットの一つです。
インプラントはあごの骨に固定されるため、天然歯と同じようにしっかりと噛みやすくなるのが特徴です。
食事のときも違和感が少なく、比較的自然な感覚で噛みやすくなるでしょう。
メリット③自然に仕上がる
前歯のインプラントは、天然歯に近い自然な見た目にできる治療法です。
口元全体のバランスに配慮しながら治療できるため、会話や笑顔も自然な印象を保ちやすいのがメリットです。
機能の回復にくわえ、見た目の自然さを重視したい方にとっては、魅力のある治療法といえます。
メリット④長期的に使用できる
インプラントは、適切な治療を受けたうえで、治療後も定期的なメンテナンスを受けることで、10年以上の長期にわたって使いつづけられる可能性がある治療法です。
ブリッジは約7年、入れ歯は約5年が寿命とされていることを考えると、インプラントがいかに長期間、使用をつづけられるかがおわかりいただけるのではないでしょうか。
そのため、再治療のリスクを抑えられる点もメリットといえます。
前歯のインプラント治療を受けるデメリット
前歯のインプラントには多くのメリットがある一方で、いくつか事前に理解しておきたいデメリットもあります。
ここでは、前歯のインプラント治療を受ける主なデメリットを3つ紹介します。
前歯のインプラント治療を受けるデメリット
- デメリット①治療費が高い
- デメリット②治療を受けられる歯科医院が少ない
- デメリット③治療期間が長い
デメリット①治療費が高い
前歯のインプラント治療は、基本的には保険適用外の自費診療のため、治療費が高くなりがちです。
また、見た目への配慮や精密な診断・治療が必要になるため、一般的な治療よりも費用が高くなりやすい傾向があります。
くわえて、骨造成(GBR)のような追加処置が必要な場合は、さらに費用がかさむこともあるでしょう。
具体的な治療費は歯科医院や症例によって異なりますが、前歯1本あたり30万〜50万円程度が相場となっています。
歯科医院によっては、分割払いに対応しているところもあるため、事前に治療内容とあわせて相談しておくと安心です。
デメリット②治療を受けられる歯科医院が少ない
前歯のインプラント治療は、骨や歯茎の状態、埋入する位置や角度など、治療そのものに高い精度が求められます。
もともと難易度の高い治療であるうえ、前歯は目立ちやすいため、見た目の自然さにも配慮しなければなりません。
そのため、前歯のインプラント治療では、精密な診断を行うための設備に加えて、経験や技術、さらに仕上がりの美しさまで見据えた治療が必要になるのです。
こうした条件がそろっていないと対応が難しいため、前歯のインプラント治療を受けられる歯科医院が限られていることが大きなデメリットとなっているのです。
前歯のインプラント治療を受ける歯科医院を選ぶ際は、対応できる設備や治療実績があるかどうかも確認しておきたいポイントです。
デメリット③治療期間が長い
前歯のインプラント治療は、インプラントが骨と結合するまでに時間がかかるため、治療完了までの期間が長くなります。
特に前歯は骨が薄いことが多く、骨造成や歯茎の処置が必要な場合は、さらに治療期間が延びる可能性もあります。
また、手術が終わったあとも、定期的に歯科医院に通院してメンテナンスを続ける必要があるため、治療には半年程度かかると考えて計画しておくとよいでしょう。
前歯のインプラント治療ができないときの選択肢
歯科医院での診断の結果、「前歯のインプラントが難しい」と言われた場合でも、治療の選択肢がなくなるわけではありません。
インプラント以外での代表的な治療法として、ブリッジや部分入れ歯といった選択肢もあります。
ブリッジは外科手術が不要で、比較的短期間で治療しやすいのが特徴です。
ただし、両隣の歯を削る必要があることは理解しておきましょう。
一方、部分入れ歯の場合は、外科治療が難しい方にも対応しやすいというメリットがあります。
装着感や見た目に個人差がありますが、天然歯に近い仕上がりにできる可能性もあります。
また、口の中の状態や全身疾患などを理由に、「現状ではインプラント治療は難しい」と判断されることもあるかもしれません。
そのような場合でも、歯周病治療や骨造成などを行うことで、改めてインプラント治療を検討できるケースもあります。
大切なのは「できない」と言われた理由を確認し、治療法ごとのメリット・デメリットを踏まえながら、自分に合った治療法を選ぶことです。
前歯のインプラント治療では、適切な設備と豊富な実績を持つ歯科医師選びが大切
前歯のインプラント治療は、あごの骨が薄いことや、見た目の自然さが求められることなどから、ほかの歯に比べて難易度が高い治療です。
ただし、前歯だからといって、一概にインプラント治療が受けられないわけではありません。
適切な診断ができる設備が整っており、インプラント治療の経験や実績が豊富な歯科医師であれば、治療が可能になる場合もあります。
きぬた歯科は、累計5万本以上のインプラント治療実績がある、東京都八王子市の歯科医院です。
13名の常勤歯科医師が在籍し、複数の医師による症例検討や、明瞭な料金設定、負担に配慮した治療計画を提案いたします。
前歯のインプラント治療を検討している方は、ぜひ当院へご相談ください。
この記事の監修者
日本歯科大学新潟生命歯学部を卒業後、インプラント治療に従事。現在では「インプラント治療のきぬた歯科」を開業し年間4000本以上、累計50,293本のインプラント治療の実績がある。
日本でインプラント治療が黎明期だったころからパイオニアとして活躍し、インプラントメーカーのストローマン社やノーベルバイオケア社から公認インストラクターの資格を得た。
本の執筆やTV・雑誌などのメディア出演、自身のYouTubeチャンネルなどで情報発信を積極的に行っている。
<主な著書>
インプラント治療は史上最強のストローマンにしなさい!!
歯医者が受けたい!インプラント治療
あっそのインプラント、危険です!!
<YouTubeチャンネル>
八王子きぬた歯科
<外部サイト>
きぬた 泰和 Wikipedia