インプラントは、見た目や噛み心地が自然で、歯を失った際の治療法として多くの方に選ばれる治療法です。
そこで、「何歳までインプラント治療は可能なのか?」「高齢でも安全に受けられるのか?」と疑問を抱く方もいるでしょう。

実際の判断では、年齢よりも健康状態や骨の状態が重視されます。
本記事では、インプラント治療を受けられる年齢の目安、高齢者が治療を受ける際の注意点、リスクや代替案まで詳しく解説します。

快適な噛み心地を取り戻したい方は、ぜひ最後までご覧ください。

インプラント治療は何歳から何歳まで可能?

インプラント治療に明確な年齢制限はありません。治療の可否は年齢よりも「顎の骨の成長」と「全身の健康状態」によって判断されます。

まず、治療を始められるのはおおよそ20歳前後からです。
顎の骨が成長途中の10代でインプラント治療を行うと、成長に伴い歯並びが変化し、埋め込んだインプラントがずれるおそれがあります。
顎の成長がほぼ完了する18~20歳以降であれば、治療を検討できると考えられます。

一方で、上限については「何歳まで」といった制限はなく、80代以上の方でも全身状態が良好であれば手術を受けられます。
高齢であっても骨の量や質が十分に保たれ、持病が安定していれば問題なく治療を受けられるケースも多く見られます。

つまり、インプラント治療は年齢ではなく、体の状態と骨の健康が何より重要と言えます。

高齢者がインプラント治療を受けられないケース

インプラント治療に年齢制限はありませんが、全身状態や口腔内の健康状態によっては治療が難しくなることもあります。
高齢者の場合、加齢による骨の変化や体力の低下、持病の影響が大きく、医師が「安全に施術できない」と判断するケースがあります。

以下では、インプラント治療を受けられない主なケースを紹介します。

関連記事:インプラント治療ができない人の条件は?原因とできない場合の対処法

骨の状態が悪い

インプラントを支えるには、しっかりとした顎の骨が必要です。
顎の骨が薄い、または骨密度が低下していると、人工歯根が安定せず、インプラントがぐらついたり脱落したりするおそれがあります。

長期間歯を失ったままにしている場合や、骨粗しょう症の影響で骨量が減っている方が当てはまります。
こうした場合は、骨移植や骨造成といった前処置によって改善できることもあります。ただし、すべての人に適用できるわけではありません。

骨の状態を正確に把握するにはCT撮影が欠かせません。まずは歯科医院で検査を受け、状態を確認しましょう。

関連記事:骨が少ない場合でもインプラント治療はできますか?

全身の健康状態が悪い

インプラント治療は外科的手術を伴うため、糖尿病や心疾患、高血圧、血液疾患などの全身疾患がある場合は、治療中や術後に合併症が生じるおそれがあります。
特に糖尿病は感染の危険を高め、傷の治りを遅らせる要因となるため、十分な注意が必要です。

さらに、服用中の薬によっても治療へ影響が及ぶ場合があります。
たとえば、骨粗しょう症の治療薬(ビスフォスフォネート製剤)を使用している方は、顎骨壊死のリスクが上がるとされています。

こうした場合は、内科の主治医と連携しながら治療計画を立てることが大切です。
健康状態が安定していれば治療できる場合もあるため、自己判断せず医師に相談することが重要です。

関連記事:高血圧の方のインプラント治療について

口腔内の衛生状態が悪い

口腔内が清潔に保たれていない場合、インプラントを入れても長期間の使用は難しくなります。
特に歯周病が進行している場合は、インプラント周囲炎を発症するおそれもあるでしょう。

インプラント周囲炎は、天然歯の歯周病と同じように歯茎や骨が炎症を起こし、最悪の場合はインプラントが抜け落ちてしまうこともあります。

インプラント治療を成功させるためには、歯茎が健康であり、プラークコントロールが十分にできていることが前提となります。
もし歯周病や虫歯がある場合は、まずそれらの治療を優先し、口腔内を整えてからインプラント手術を検討しましょう。

体力の状態が悪い

高齢になると、体力や免疫力の低下により、手術後の回復に時間を要するようになります。
術後の腫れや痛み、感染症に対する抵抗力が弱くなっている場合、治療リスクが高まります。

インプラント手術は局所麻酔で進めるケースがほとんどですが、数時間にわたる処置や術後のケアを考えると、一定の体力が必要です。
そのため、体調が優れない時期や持病が悪化している場合は、医師の判断で手術が延期されることもあります。

治療を長期的に成功させるためにも、体調管理は徹底しないといけません。

インプラント治療による不安が解消されていない

インプラント治療に強い不安や恐怖を感じている場合、心理的なストレスが身体に悪影響を及ぼすことがあります。
緊張や不安によって血圧が上昇したり、手術中に強いストレス反応が現れたりする可能性もあるでしょう。

このような場合は、治療内容を丁寧に説明してくれる歯科医院を選び、不安を解消したうえで手術に臨むことが大切です。
近年では、静脈内鎮静法を用いることで、リラックスした状態で手術を受けられるようになっています。

心配なことは遠慮せず医師に相談し、納得したうえで治療を進めましょう。

高齢でもインプラント治療が受けられる条件

年齢を重ねても、全身状態や口腔環境が整っていれば、インプラント治療を受けることは十分に可能です。
重要なのは「年齢」ではなく、「健康状態」「骨の質」「術後のメンテナンス体制」の3点です。

これらの条件を満たしていれば、70代や80代でも問題なくインプラント治療によって快適な噛み心地を取り戻すことができます。
ここでは、高齢でも治療が可能とされる主な条件について見ていきましょう。

全身の健康状態が良好

インプラント治療は外科的な手術を伴うため、一定の身体的負担が生じます。
そのため、高血圧や糖尿病、心疾患などの全身疾患が安定しており、血圧や血糖値が適切にコントロールされていることが条件です。

しっかり管理されていれば、高齢の方でも問題なく治療を受けられます。

さらに、服用中の薬が治療へ影響を及ぼす場合もあります。
特に骨粗しょう症の治療薬や抗凝固薬を使用している場合は、顎骨壊死や出血リスクを避けるため、主治医との連携が欠かせません。

体調を整え、医師と連携しながら安全に治療を進めることで、リスクを最小限に抑えることができます。

顎の骨の質や量が十分

インプラントは、顎の骨に人工歯根を埋め込み、その上に人工歯を固定する治療法です。
そのため、骨の量が不足していたり、骨密度が低下している場合は、インプラントを安定させるのが難しくなります。

高齢になると、歯を失った部分の骨が徐々に吸収されて薄くなったり、骨粗しょう症の影響で骨がもろくなったりすることがあります。
ただし、近年では「骨造成」や「サイナスリフト」など、骨を補う治療法が発達しています。十分な骨量を確保できれば、高齢の方でもインプラント治療を受けることが可能です。

CTなどによる精密検査で骨の状態を確認し、必要に応じて前処置を行うことが、成功の鍵となります。

手術への耐性

インプラント治療は局所麻酔で実施されますが、手術時間が長くなる場合や複数本のインプラントを埋入する場合は、身体的な負担が大きくなります。
高齢の場合は、手術に耐えられる体力があるかどうかを確認する必要があります。

心臓や呼吸器への負担を軽減するため、近年では「静脈内鎮静法(セデーション)」と呼ばれる点滴麻酔を用い、リラックスした状態で手術を受けられる方法も導入されています。

全身の状態を十分に把握したうえで、無理のない治療計画を立てることが重要です。

関連記事:インプラント手術の麻酔にはどのようなものがあるのでしょうか?

定期的な通院が可能

インプラント治療は、手術後のメンテナンスが成功の可否を左右する治療法です。
高齢の方であっても定期的に歯科医院へ通い、インプラントや歯ぐきの状態をチェックしなければいけません。

清掃が不十分な状態では、「インプラント周囲炎」と呼ばれる炎症が起きやすくなり、せっかくのインプラントが抜け落ちてしまうおそれがあります。
通院が難しい場合は、訪問歯科診療を利用するのもおすすめです。
自宅でケアを受けられる環境を整えれば、長期的に健康な口腔状態を維持できます。

高齢者がインプラント治療を受ける際の歯科医院の選び方

高齢の方がインプラント治療を受ける際は、選ぶ歯科医院によって治療の安全性や成功率が左右されます。
年齢を重ねると健康状態や骨の質などに個人差が生じるため、それに対応できる技術と設備が整った歯科医院を選ぶことが大切です。

ここでは、高齢者が歯科医院を選ぶ際に注目すべきポイントを解説します。

高齢者への治療実績が豊富か

高齢者のインプラント治療では、若年層とは異なる配慮が必要です。
加齢による骨密度の低下や持病の影響など、患者ごとにリスク要因が異なるため、高齢者の症例を多く扱っている歯科医師を選ぶことが重要です。

経験豊富な医師であれば、治療中のリスクを最小限に抑え、安全に進めるための工夫をしてくれます。
さらに、実績のある歯科医院では、過去の症例を踏まえた上で、患者に適した治療計画を提案してくれるでしょう。

症例数や高齢者向けの実績がホームページで公開されている医院や、口コミで評価の高い医師を選ぶことで、治療の失敗リスクを軽減できます。

健康に配慮した治療計画を立ててくれるか

高齢者のインプラント治療では、健康状態をしっかり考慮した治療計画が必要です。
糖尿病や高血圧などの持病をもつ方も多いため、歯科医師が医科と連携しながら安全に手術できるか確認しましょう。

信頼できる歯科医院では、事前のカウンセリングで血圧・血糖値・服用中の薬などを丁寧に確認し、無理のない治療スケジュールを立ててくれます。
た、治療に対する不安を軽減するため、静脈内鎮静法(リラックス麻酔)を用いた方法を提案される場合もあります。

術後のサポートはしっかりしているか

インプラント治療は、手術後のケアや定期的なメンテナンスが成功の鍵を握ります。
特に高齢者の場合、手や指の動きが鈍くなる、通院が難しくなる場合があるため、アフターケアが充実している医院を選びましょう。

術後の清掃方法やケア指導が丁寧な医院、あるいは訪問診療に対応している医院であれば、長期的に安心してインプラントを維持できます。
定期検診や噛み合わせの調整を継続することで、早期にトラブルを防ぐことが可能です。

長く快適にインプラントを維持するには、術後フォローまで一貫した体制を整えている歯科医院を選びましょう。

高齢者のインプラント治療におけるリスク

高齢であっても、健康状態や骨の条件が整っていればインプラント治療を受けることが可能です。
ただし、若年層に比べて身体機能や免疫力が低下している傾向があるため、治療には一定のリスクを伴います。

特に骨密度の低下や体力の衰え、持病の影響などが重なると、治療の難易度が高まる傾向があります。
ここでは、高齢者のインプラント治療で起こりやすい主なリスクについて詳しく見ていきましょう。

インプラント体と骨が結合しづらい

インプラントは、人工の歯根(インプラント体)を顎の骨に埋め込み、骨としっかり結合させることで安定します。
高齢になると骨密度が低下し、骨の再生力や結合力が弱くなるため、インプラントと骨が十分に結合しない場合があります。

さらに、免疫力の低下により傷の治りが遅れ、感染や炎症が長引くおそれもあります。
このような場合は、骨を補う「骨造成」や「サイナスリフト」などの手術を併用することもあります。ただし、すべての患者に適用できるとは限りません。

手術が難しい場合がある

齢者のインプラント手術では、体力や心肺機能の低下により、手術時間や麻酔による負担が問題となることがあります。
1本あたりの埋入でも30分前後、複数本になると1時間を超えることもあり、長時間の手術が体に負担をかける可能性があるのです。
また、顎の骨がもろくなっている場合は、削る際に骨が欠けたり割れたりするおそれがあるため、高度な技術をもつ歯科医師の対応が必要です。

これらのリスクを回避するためには、体力や持病を考慮し、局所麻酔に加えて静脈内鎮静法を併用するなど、安全性を重視した治療方針を立てることが重要です。

持病によってインプラント治療を受けられない可能性がある

糖尿病や高血圧、心臓病、骨粗しょう症といった持病は、高齢者に多く見られます。
これらの疾患がある場合、インプラント手術中や術後のリスクが高まります。

糖尿病は傷の治りを遅らせ、感染の危険を高める要因となります。
また、抗血栓薬を服用している方は出血が止まりにくくなるケースもあるので注意しなければいけません。

インプラント治療を希望する場合は、歯科医師と内科の主治医が連携し、全身の健康状態を確認したうえで進めてもらいましょう。

術中や術後に細菌感染を発症するおそれがある

インプラント手術では歯茎を切開し、顎の骨に人工歯根を埋め込むため、口腔内の細菌が傷口から侵入するリスクがあります。
特に高齢者は免疫機能が低下しており、感染症にかかりやすく、治癒にも時間がかかります。

感染を防ぐには、手術前後の口腔ケアを徹底しましょう。
歯周病や虫歯がある場合は前もって治療を終えておく必要があります。

また、術後も抗菌薬の服用や定期的なクリーニングで清潔な状態をキープしてください。

体力の低下によって治療後の通院が難しい場合がある

インプラントは手術後も長期的なメンテナンスが欠かせません。
定期的な通院で噛み合わせやインプラント周囲の状態を確認し、トラブルを早期に発見する必要があります。

しかし、高齢になると体力の低下や交通手段の制限により、歯科医院へ通うこと自体が負担になります。
通院が難しいと、インプラント周囲炎などのトラブルを放置してしまう危険があるでしょう。

そうした場合は、訪問歯科診療を利用する、家族や介護者の協力を得て定期的にチェックを受ける体制を整えましょう。

高齢者のインプラントの重要性

年齢を重ねると歯を失う機会が増え、噛む力の低下によって食事の楽しみが減少し、栄養が偏ることがあります。
インプラント治療は、こうした問題を改善し、自然な噛み心地を取り戻すのに有効な治療法です。

ここでは、インプラントがもたらす主なメリットを見ていきましょう。

噛む力を維持できる

インプラントは顎の骨にしっかり固定されるため、入れ歯のようにズレたり外れたりする心配がありません。
そのため、硬い食べ物でも自然に噛むことができ、若いころと変わらない食生活を続けられます。

噛むことは、消化を助けるだけでなく、脳への刺激を通じて認知症の予防にも寄与します。

さらに、しっかり噛むことで食事の満足度が高まり、タンパク質やビタミンなどの栄養を十分に摂取できるようになります。
栄養バランスが整うことで、筋力や免疫力の維持に役立ち、結果的に健康寿命の延伸にも寄与するでしょう。

入れ歯に比べてメンテナンスの手間がかからない

入れ歯は毎日の取り外しや洗浄が必要で、長期使用によって合わなくなり、再調整を繰り返す手間がかかります。
一方、インプラントは天然の歯と同じようにブラッシングやデンタルフロスでケアでき、特別な手入れは不要です。

また、インプラントは虫歯になることがなく、清潔な状態を保ちやすいため、老後の負担を軽減できます。
セルフケアが難しくなっても、定期的に歯科医院でクリーニングを受けることで、長期間快適な状態を維持できる点も利点です。

発音がきちんとできる

歯を失うと舌の位置や口の形が変化し、言葉が不明瞭になる、発音しづらくなることがあります。
入れ歯の場合、会話中にズレや外れが生じ、発音が不明瞭になることもあります。

その点、インプラントは顎の骨に固定されているため安定性が高く、自然な発音を取り戻せます。
人前で話すときも口元を気にせず、自信をもって会話ができるでしょう。
社会的なつながりを保ち、精神的な充実感を得る意味でも、発音の安定は大きなメリットと言えます。

高齢者の方にはオーバーデンチャーもおすすめ

高齢者の中には、顎の骨が痩せてインプラントの埋入が難しい場合もあります。
そのような場合におすすめなのが「オーバーデンチャー」です。

オーバーデンチャーは、残存歯やインプラントを支えに入れ歯を固定する治療法で、通常の入れ歯よりも高い安定性が得られます。

顎の骨量が少ない方でも治療可能で、取り外しが容易なため、清掃やメンテナンスがしやすい点が特徴です。
見た目や噛み心地が自然で、快適な使用感を得られるため、インプラントと入れ歯の中間的な選択肢として注目されています。

年齢に関係なく自分に合ったインプラント治療を選ぼう

インプラント治療に明確な年齢制限はなく、健康状態や骨の質が整っていれば、高齢でも十分に治療を受けることが可能になります。
ただし、体力や持病、口腔環境などの個人差が大きいため、歯科医師と綿密に計画を立てることが重要です。

リスクを正しく理解し、信頼できる歯科医院を選ぶことで、長期的に快適な口腔環境を維持できます。
オーバーデンチャーなどの選択肢も視野に入れ、自分に最適な治療法を見つけましょう。

この記事の監修者

日本歯科大学新潟生命歯学部を卒業後、インプラント治療に従事。現在では「インプラント治療のきぬた歯科」を開業し年間4000本以上、累計50,293本のインプラント治療の実績がある。

日本でインプラント治療が黎明期だったころからパイオニアとして活躍し、インプラントメーカーのストローマン社やノーベルバイオケア社から公認インストラクターの資格を得た。

本の執筆やTV・雑誌などのメディア出演、自身のYouTubeチャンネルなどで情報発信を積極的に行っている。

<主な著書>
インプラント治療は史上最強のストローマンにしなさい!!
歯医者が受けたい!インプラント治療
あっそのインプラント、危険です!!

<YouTubeチャンネル>
八王子きぬた歯科

<外部サイト>
きぬた 泰和 Wikipedia