インプラントを除去するケース

一般的に、インプラントの寿命は10年前後ですが、場合によっては耐用年数を迎える前に抜かなければならないケースもあります。

ここでは、インプラントを抜かなければならない6つのケースを紹介します。

インプラントの寿命については「インプラントの寿命はどれくらいなのでしょうか?」をご覧ください。

ケース①治療後に神経麻痺を起こした

顎の骨の内部には「下歯槽神経」という神経が通っています。
インプラントの埋入時に、この下歯槽神経が傷つくと、下顎の歯肉や下唇が麻痺する可能性があります。

時間の経過とともに回復することもありますが、治療から数日経過しても麻痺が残る場合は、インプラントを除去しなければなりません。

ケース②治療後に上顎洞炎を発症した

鼻の横には、「上顎洞」という骨の空洞部分があります。

インプラントの埋入時に、この部分に干渉すると、まれに「上顎洞炎」という、頭痛や鼻づまり、歯や顎の骨の痛みをともなう炎症が起こります。
2~3か月程度で完治することがほとんどですが、症状が改善されない場合は、インプラントを抜かなければなりません。

ケース③噛み合わせが悪くなった

噛み合わせが悪くなった場合も、インプラントを抜く場合があります。

インプラントは、自然歯に近い感覚で咀嚼できる点がメリットですが、埋入位置がずれると、次第に噛み合わせが悪くなります。
噛み合わせがずれると、一部の歯に負担がかかり、人工歯の破損や自然歯の欠損につながるので、人工歯の高さを調整する必要があるのです。
高さを調整しても噛み合わせが改善されない場合は、インプラントを除去しなければなりません。

インプラントの埋入による噛み合わせの悪化を防ぐには、事前に仮の人工歯を作り、噛み合わせに問題がないかどうかを確認する方法が有効です。
問題があれば人工歯を削る、もしくは高さを変えるなどと調整し、違和感なく使用できる状態にしてから取り付けます。

ケース④金属アレルギーを発症した

インプラント体に使われている素材に対してアレルギー反応が起きた場合も、インプラントを抜く必要があります。

インプラント体の素材には、「チタン」が多く使用されます。
チタンは、金属アレルギーが起きにくい素材ですが、ごくまれに、アレルギー反応が出ることがあります。

金属アレルギーを心配される方は、事前にパッチテストを受けましょう。

ケース⑤人工歯が破損した

インプラント治療後に人工歯が破損した場合も、歯科医院で除去手術を受けなければなりません。

残念ながら、1度破損した人工歯は修復できません。
破損したまま放置すると、咀嚼しづらくなるだけではなく、細菌が入り込んで炎症を起こすこともあります。

状況を悪化させないためにも、早急に歯科医院を受診してください。

ケース⑥インプラント周囲炎に感染した

患部に細菌が入り込むと「インプラント周囲炎」といわれる炎症が生じることがあります。
インプラント周囲炎になると、歯茎に痛みや腫れが出るほか、インプラントがぐらついたり、歯肉から出血したりするなどの症状が現れます。

初期段階であれば、抗生物質の投与やブラッシングで治療できますが、重症化した場合においては、インプラントを除去したうえで治療しなければなりません。

インプラントを抜く場合にかかる費用

インプラントの除去にかかる費用は、保険適用と保険適用外の場合で異なります。

保険が適用されるのは、インプラントを埋入したあとに、ほかの歯科医院で除去するケースのみです。
インプラント治療を受けた歯科医院で除去する場合には、保険は適用されません。

ここからは、保険治療と保険適用外の治療のそれぞれのケースで必要な費用を詳しく解説します。

保険適用の場合

保険が適用される場合、インプラント1本あたりの除去費用は4,600円程度です。
また、インプラントを抜くために骨を削る場合は「骨開削加算」として、インプラントの除去にかかる費用の50%が治療費に上乗せされます。

もともと、保険診療でインプラント治療を受けており、自己負担の割合が少なければ、その分費用を軽減できます。

保険適用外の場合

治療を受けた歯科医院でインプラントを抜く場合は、全額自費で治療を受けなければなりません。
歯科医院ごとに治療費は異なるので、インプラントを除去する前には、どの程度の費用がかかるのかを確認しておきましょう。

インプラントを抜いたあとに再治療ができないケースと対処法

インプラントの摘出後に、再度インプラントを埋入できないというケースも少なくありません。

インプラントの再治療の可否は、骨の状態で決まります。
除去したインプラント周辺の骨に厚みがあれば、埋入位置を変えて再度インプラントを取り付けられます。
しかし、骨が薄くなっている場合は、再治療を受けられず、インプラント以外の治療方法を選択しなければなりません。

ここからは、インプラントを抜いたあとに再治療ができないケースにおいて、代わりに受けられる治療方法を紹介します。

入れ歯の使用

歯を失った場合の知名度の高い治療方法として、入れ歯治療が挙げられます。

入れ歯はインプラントと比べると、咀嚼力が弱く、審美性に劣るというのが難点です。
その代わり、治療期間が短く、インプラント治療を受けるよりも費用を抑えられるなどのメリットがあります。

インプラントと入れ歯の違いについては「インプラントと入れ歯はどう違うのでしょうか?」をご覧ください。

ブリッジの装着

入れ歯治療のほかに、ブリッジ治療を受けるという選択肢もあります。
ブリッジとは、摘出したインプラントの両隣の歯を土台にして、橋渡しのように装着する被せもののことです。

ブリッジをかける際には、失った歯の両隣に生えている自然歯を削らなければならないため、健康な歯の寿命を縮めるというデメリットがあります。

一方で、インプラント治療と比べると治療内容が簡単で、なおかつ短期間で治療を終えられるという点は、大きなメリットです。

インプラントとは

感染症やインプラント体の破損によりインプラントを抜くケースがある

いかがでしたでしょうか。
今回は、インプラントを抜く必要があるケースや除去・再治療にかかる費用を解説しました。

インプラントの埋入後に、上顎洞炎やインプラント周囲炎の発症、また人工歯の破損などが起こると、インプラントを抜かなければならない可能性があります。
なお、このようなケースで必要になる費用は、保険適用なのか保険適用外なのかで異なります。
また、顎の骨の状況によってはインプラントの再治療ができない場合もあり、その場合は入れ歯やブリッジ治療などを受けます。

きぬた歯科は、年間3,000本以上のインプラントの埋入実績をもつ歯科医院です。
インプラント治療を受けて美しい歯を取り戻したい方は、お気軽にご相談ください。

この記事の監修者

日本歯科大学新潟生命歯学部を卒業後、インプラント治療に従事。現在では年間3000本以上のインプラント治療の実績がある。

日本でインプラント治療が黎明期だったころからパイオニアとして活躍し、インプラントメーカーのストローマン社やノーベルバイオケア社から公認インストラクターの資格を得た。

本の執筆やTV・雑誌などのメディア出演、自身のYouTubeチャンネルなどで情報発信を積極的に行っている。

<主な著書>
インプラント治療は史上最強のストローマンにしなさい!!
歯医者が受けたい!インプラント治療
あっそのインプラント、危険です!!

<YouTubeチャンネル>
八王子きぬた歯科

<外部サイト>
きぬた 泰和 Wikipedia